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荒木さんの最新刊
知られざる重要組織「自衛隊警務隊」にスポットを
当て、警務隊とは何か?の問いに応えるとともに、
警務隊で修練されている「逮捕術」を初めて明らか
にしたこの本は、小平学校の全面協力を受けて作ら
れました。
そのため、最高水準の逮捕術の技の連続写真が実に
多く載っています。それだけでなく、技のすべてを
QRコードを通して実際の動画をスマホで確認できる
のです!
自衛隊関係者、自衛隊ファン、憲兵ファンはもちろん、
武術家、武道家、武術ファンにも目を通してほしい
本です。
『自衛隊警務隊逮捕術』
荒木肇(著)
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こんにちは。エンリケです。
きょうは、
「防衛省の秘蔵映像」の解説 7回目です。
きょうも興味深いです。
さっそくどうぞ。
エンリケ
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防衛省の秘蔵映像(7)
3次防の終了-(3)反自衛隊の動き
─昭和46年映像─
荒木 肇
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昭和46年映像の紹介
https://www.youtube.com/watch?v=HK0v9n-PTIM
□はじめにとお礼
MMさま、いつもご愛読とご教示ありがとうござ
います。大学闘争のお話、なるほどと感じ入りまし
た。わたしは、Mさまと同じく、やはり他大学から
の運動家たちの出前で授業がよく妨害されました。
彼らの口吻には「いいか、こうしている暇には世界
中で命の危険に脅え、弾圧されている人がたくさん
いるんだ」という特徴がありました。わたしは教育
学の学生だったので、「口に世界平和を唱えて隣人
に不親切な者の言うことは信じるな」というフラン
スのルソーの言葉を思い出していました。
国産装備の開発、運用などを目指した3次防はこ
の年最終年を迎えました。この頃は国内外に反戦・
平和運動が力を伸ばしていた頃でした。1971(
昭和46)年の時代を映す貴重な映像をご紹介しま
しょう。
「この国のありかた」について、さまざまな議論が
され、多くの「闘争」も起きた時代でした。前年の
1970年には、いまもファンが多い高名な作家三
島由紀夫の自決事件もありました。市ヶ谷駐屯地で
当時の東部方面総監部で自衛官を傷つけ、演説をす
るといういささか過激な行動でした。自衛隊を巻き
込んだ思想闘争とも言えましょう。
1966(昭和41)年には、高名な思想家やジャ
ーナリスト、学者などが「ベトナムに平和を!市民
連合」(通称「ベ平連」)を結成し、さまざまな分
野で活動を始めました。帝国主義のアメリカが始め
たベトナム戦争を支持する日本政府に闘いを挑もう
という、あまりに素朴な動機だったようです。
わたしの青少年時代(1950年代から70年代半
ばまで)は、そんな素朴で単純な思想動向が主流で
した。敢えていえば自分は安全地帯に立ったままの
空想的国際平和論が横行した頃です。アメリカは悪、
自衛隊の行動は米帝国主義への追随になるといった
ことが一部の人々の常識でした。
わたしは今も、どんなことであれ他人が一生懸命に
なることを否定しません。しかし、単純なものの考
え方(世界には悪の勢力と善の勢力があるといった
ような)にはどうにも同調できません。自衛隊につ
いても、安全保障についてもさまざまな考え方があ
り、中には「分かっているけど、世間の風潮に敢え
て反発するのだ。それが社会にとって良いことだ」
と信じている人がいるのも認めます。
しかし、あの輝いていた「ベ平連」が実は、当時、
ソ連のKGBから資金援助をされていたことが今は
分かっているようです。1988年のソ連邦崩壊で
公開された文書は当時の裏側の事情をよく教えてく
れます。
さて、この頃の反自衛隊、憲法9条改定反対運動。
誰が、どのような考えから動いていたのでしょうか
。
▼空自のナイキJが夕張郡長沼町へ
航空自衛隊の防空部隊である第3高射群第11高
射隊が、北海道夕張郡長沼町へ展開しました。この
高々度用の地対空ミサイルは航空自衛隊によって運
用されます。高度1万メートル以上は航空自衛隊高
射部隊、未満は陸上自衛隊高射特科部隊が担任しま
した。
空自のナイキは当初、アジャックスが配備されま
した。続いてハ―キュリーズに変更され、この年に
は最新型のナイキJが長沼町の基地に配備されます。
これに先立ち、農林大臣は長沼町の保安林の指定
解除を行いました。保安林とは水質汚染や土砂流失
などによる安全を確保するために伐採や地形の改変
などを許されない緑地です。
町民とそれを応援する人々はこの指定解除への差
し止めを求めて札幌地方裁判所に提訴を行ないます。
北海道では、1962(昭和37)年に起こった
「恵庭事件」に続く、自衛隊違憲運動の第2弾でし
た。
原告と弁護団は「自衛隊は違憲である」という主
張をしました。憲法9条に書かれた「戦力」にあた
るというので、基地建設そのもの、自衛隊の存在そ
のものを否定する。そうした主張をしました。
▼驚きの判決と英雄の誕生
札幌地裁の福島判事は、その主張を認めました。
保安林の解除は公益目的にはあたらないという国側
の全面敗訴でした。1973(昭和48)年9月の
ことです。反対派の人たち、当時の最大野党社会党
も、共産党も、そしてソ連からの資金援助を受けて
いたらしいマスコミも、学者も、評論家も、人権派
弁護士もみな諸手を挙げて「違憲判決」を褒め称え
ました。
福島判事は一気に英雄になったのです。さらに彼
は当時の上司である地裁所長から渡された私的文書
まで公開します。それは所長からの、判事は慎重に
案件に対応するように、統治行為に関わることには
十分配慮せよという内容でした。判事たる者に司法
の原則を曲げて、上司が圧力をかけるとはけしから
ん。マスコミ各社も、運動家たちも鬼の首をとった
ように大喜びでした。
すでに大学紛争の後始末期に大学に入っていたわ
たしは、その判決の主旨を読んで、とてもがっかり
した覚えがあります。いくら浮世離れした裁判官で
も、こうまでひどいとは思っていませんでした。国
の防衛は戦力をもつばかりが道ではない、一般人が
「群民蜂起」して戦うという手段がある、そのよう
に判決文にはありました。それはあんまりだろうと
思ったのです。
戦車や武装したソ連軍に満洲の日本人はどんな目に
あわされたのか。丸腰で、いざとなったら非暴力、
不服従で立ち向かえ。大衆が蜂起すれば軍隊に勝て
る・・・、この裁判官は、この判決に眼を輝かして
いる人たちは、ほんとうの事は何も知らないのだと
思いました。
北海道の防空が不十分であったら、誰が、どんな
時に都合が良いか、よく考えたら分かることです。
でも、憲法9条が大好きな人は、決してそうは考え
ません。ある札幌在住の弁護士は、この判決を聞い
て、自分もいつか憲法違反だという判決を書きたい
と思って法曹を志したと今も公言しています。
国が控訴した第2審では、保安林の解除による水
害防止には防衛施設庁がダムを建設することで対応
できる、自衛隊が違憲か合憲かのような統治行為に
関わる判断を裁判所はしないという至極まっとうな
判決が出されました(76年8月)。また、訴えの
利益がないということから、これ以上の裁判はしな
いという結論となったのです。
▼掃海母艦「はやせ」
戦後日本の海運の守護神。海上自衛隊掃海隊の偉
勲をどれほど語っても語りつくせません。掃海艇と
掃海艦も排水量1000トンを境に分類します。掃
海隊は掃海艇が複数隻で構成され、それを束ねるの
が掃海隊群です。その掃海隊群の司令が掃海母艦に
坐乗(ざじょう・海軍の指揮官が乗艦していること)
します。
映像には戦後初の掃海母艦「はやせ(MST46
2)」が出てきます。先代の母艦は「はやとも(M
ST461)」と言いました。アメリカ海軍が戦車
揚陸艦(LST)の通信能力を増して、小型ヘリコ
プターの発着甲板を設け、極東で使っていたものを
1960(昭和35)年に購入したものです。「は
やせ」は戦後の国産艦の始まりでした。
排水量は2000トン、中型掃海艇への補給支援
もできました。後甲板にはV107ヘリコプターが
発着できる飛行甲板もあります。武装も76ミリ連
装速射砲1基、20ミリ単装機銃2基、3連装短魚
雷発射装置2基、訓練機雷敷設装置一式も備えてい
ました。
▼3次防から4次防へ、海自の様子
映像には海上での展示訓練が見られます。そこで
は最新の兵器などがよく出てきて、懐かしい思い出
があります。
3次防では2次防でスタートした「やまぐも」型
護衛艦6~8番艦、および新しい「ちくご」型7隻
の建造もありました。新しい艦も建造されます。ヘ
リコプター搭載護衛艦、ミサイル護衛艦、涙滴型(
るいてきがた)潜水艦という新しい艦が現われまし
た。
海外の主要海軍では、駆逐艦クラスの小型艦にヘ
リをのせて、ヘリと艦船の一体化した対潜水艦作戦
を行なうようになりました。わが自衛隊も大型対潜
水艦ヘリHSS-2/2Aを3機搭載して運用する
といった計画を立てたのです。昭和43年度艦「は
るな」、45年度艦「ひえい」がそれでした。また、
ミサイル護衛艦は46年度に「たちかぜ」が計画
されました。
涙滴型というのはティア・ドロップという艦形の
水中速力を重視します。最初の艦は「うずしお」型
でした。42年度から毎年1隻ずつ就役します。
▼展示訓練で見られる装備
相模湾沖の訓練の様子が出ています。空には対潜
水艦哨戒機グラマン・S2Fトラッカーが飛んでい
ました。戦後、米海軍が初めて本格的に開発した対
潜哨戒機です。それまでは単発の攻撃機(アベンジ
ャーなど)にレーダー等を搭載した捜索機と、対潜
用攻撃兵器を搭載した機が2機1組でハンター・キ
ラー・チームを編成していたのを、本機は1機で両
方できることを目標に設計されました。海自が購入
したのは最初の量産型で昭和32年以降に60機を
保有します。
もともとが空母に搭載される艦上機なので機体は
コンパクトな中にぎっしりと機器類がつまっていま
した。胴体中央下部の引き込み式レドームの中には
海面を捜索するレーダーがあり、胴体後半には磁気
探知機が同じく引き込み式で備わっています。その
他、相手のレーダー波を見つける方向探知装置、音
響ソーナー、ソノブイなどの探知機、ドップラーレ
ーダー、各種航法装置も完備していました。
攻撃兵器は爆弾倉内に音響ホーミング魚雷2発、
または大型爆雷2発、173キログラム爆雷4発を
積めました。その他、主翼の下には魚雷、爆弾、爆
雷、5インチ・ロケット弾などを吊り下げられます。
乗員は4名であり、ネプチューン哨戒機の12人
に比べるとずいぶん負担は大きくなったことでしょ
う。
▼対潜ロケット・ボフォース
護衛艦の前甲板、砲塔の後ろに4つの筒のような
発射機があります。71式(昭和46年制式化)対
潜ロケットです。大きな発射煙をひいて艦の前方に
飛んで行くのがロケット弾で電気油圧自動操縦、装
填は揚弾機によって、直接に弾庫からされました。
ロケット弾量は約250キログラム、弾体の直径は
約37.5センチ、最大射程は2200メートル。
次回はいよいよ第4次防衛力整備計画に入ります。
(つづく)
(あらき・はじめ)
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●著者略歴
荒木 肇(あらき・はじめ)
1951年東京生まれ。横浜国立大学教育学部卒業、
同大学院修士課程修了。専攻は日本近代教育史。
日露戦後の社会と教育改革、大正期の学校教育と陸
海軍教育、主に陸軍と学校、社会との関係の研究を
行なう。
横浜市の小学校で勤務するかたわら、横浜市情報処
理教育センター研究員、同小学校理科研究会役員、
同研修センター委嘱役員等を歴任。1993年退職。
生涯学習研究センター常任理事、聖ヶ丘教育福祉専
門学校講師(教育原理)などをつとめる。1999年4月
から川崎市立学校に勤務。2000年から横浜市主任児
童委員にも委嘱される。2001年には陸上幕僚長感謝
状を受ける。
年間を通して、自衛隊部隊、機関、学校などで講演、
講話を行なっている。
著書に『教育改革Q&A(共著)』(パテント社)、
『静かに語れ歴史教育』『日本人はどのようにして
軍隊をつくったのか―安全保障と技術の近代史』
(出窓社)、『現代(いま)がわかる-学習版現代
用語の基礎知識(共著)』(自由国民社)、『自衛
隊という学校』『続自衛隊という学校』『子どもに
嫌われる先生』『指揮官は語る』『自衛隊就職ガイ
ド』『学校で教えない自衛隊』『学校で教えない日
本陸軍と自衛隊』『あなたの習った日本史はもう古
い!―昭和と平成の教科書読み比べ』『東日本大震
災と自衛隊―自衛隊は、なぜ頑張れたか?』『脚気
と軍隊─陸海軍医団の対立』『日本軍はこんな兵器
で戦った─国産小火器の開発と用兵思想』『自衛隊
警務隊逮捕術』(並木書房)がある。
『自衛隊の災害派遣、知られざる実態に迫る-訓練
された《兵隊》、お寒い自治体』 荒木肇
「中央公論」2020年3月号
https://amzn.to/31jKcxe
PS
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