配信日時 2021/02/25 20:00

【ライター・渡邉陽子のコラム (314)】  海上自衛隊幹部候補生学校(10)

こんばんは、エンリケです。

「海上自衛隊幹部候補生学校」の10回目です。

きょうは、幹部候補生学校長へのインタビューです。

非常に読み応えあることばがつづきます。

さっそくどうぞ


エンリケ

追伸
東京五輪は一年延期されました。
『オリンピックと自衛隊 1964-2020』
を読んで思いを馳せます。
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『ライター・渡邉陽子のコラム (314)』

 海上自衛隊幹部候補生学校(10)

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こんばんは。渡邉陽子です。
訓練検閲の取材で、久しぶりに北海道に行ってきました。冬の北海
道の取材は自衛隊取材の中でいちばん好きなので、心身ともに充電
できました。想定外だったのは、帰りのフライトが荒天で欠航にな
り帰宅が1日遅れてしまったこと。往路も目的地の旭川空港が雪の
影響でなかなか着陸できず、30分ほど上空で待機しました。久しぶ
りの体験に、海外の取材が多かった頃は機材故障やハリケーンなど
で帰国できなくなったことや、「車輪が格納できない」と成田に引
き返したこともあったことを思い出しました。


記事掲載のお知らせです。

『PANZER』3月号に「神は賽子を振らない 第32代陸上幕僚長火箱
芳文の半生」第23回が掲載されました。中部方面総監が自衛官人生
の集大成と考えていたところ、折木陸幕長からかかってきた1本の
電話。第32代陸幕長の内々示を受けてからの火箱氏の心の揺れは、
とりわけ丁寧に書き進めました。https://amzn.to/2NCeQ2g

『丸』3月号の特集で「自衛隊無人機事情」、「世界の軍備」で第
12ヘリコプター隊の記事が掲載されました。https://amzn.to/3oky4pL

新連載のお知らせです。
2月1日発売の『正論』3月号より、巻頭グラビアページにて「わ
れらの女性自衛官」がスタートします。あいにく年始早々発令され
た緊急事態宣言のため取材がストップ、4月号は休載ですが、今の
ところ5月号からは毎月の連載となります。お楽しみいただければ
幸いです。https://amzn.to/39f5ulp


月刊『正論』2020/6月号に「自衛隊あってのオリンピック」最終回
が掲載されました。https://amzn.to/3cOzOSQ



■海上自衛隊幹部候補生学校(10)

今週は取材時の海上自衛隊幹部候補生学校長へのインタビューをご
紹介します。学校長の階級は海将補です。

「幹部候補生学校は海上自衛隊において幹部となる者すべてが通ら
なければいけない道です。ここを通らない限り、幹部にはなりえま
せん。本校の教育目的は、幹部自衛官としての資質を養うとともに、
初級幹部自衛官として必要な基礎的知識および技能を習得すること
にあります。その教育にはさまざまな要素がありますが、いちばん
の目標はリーダーシップ、いわば強い指揮官・幹部の育成にあると
言えるでしょう。候補生が将来幹部になるためのリーダーシップの
基礎を、ここで固めていくわけです」

――学力や体力というのは日々の指導と個人の努力によって向上し
ていくでしょうが、リーダーシップ、いわゆる統率力については、
ひとりひとりの資質によるところも少なくないのは?

「仕事の成果は、考え方×熱意×能力と言われます。このうち能力
や熱意については、学生それぞれが持っているもので、あまりわれ
われ教官の立ち入るところはないと考えます。しかし、根本的な物
事の考え方については、将来幹部自衛官として海上自衛隊を背負っ
て立つ彼らに対し、ここでしっかり教えて身に付けさせなければな
りません。ものの考え方が間違っていると進むべき道を誤り違う方
向へ行ってしまうので、リーダーシップを育てるための考え方とい
うのはしっかり教える必要があると思っています。そのあとは学生
のモチベーション次第ですね」

「幹部候補生学校は名前こそ“学校”ですが、実際は“修練道場”
という言葉が適当だと思っています。単に机に向かって教務を受け
るだけではなく、人格を磨き、気力・体力を練成し、初級幹部自衛
官として必要な基礎的知識を身に付ける場なのです」

「また、われわれの勤務のベースは海にありますから、海のことも
知らなくてはいけません。海はやさしくわれわれにロマンを与えて
くれ、大自然と直に接することができる場である半面、人間のいか
なる抗いも受け付けず、自然の厳しさを教えてくれる場でもありま
す。そのように千変万化する海を活動の場とするわれわれは、海を
道場とし、海のやさしさと厳しさを知ることによって、変化に適応
し得る柔軟性を兼ね備えることができるのです。この精神が“シー
マンシップ”とも言われるものだと思います。ですから、ここで実
施している遠泳訓練やカッター訓練などの海をベースとした訓練も、
いずれ海上部隊指揮官となる者の“シーマンシップの基礎”になっ
ているのです」

――海上自衛隊の任務・役割は増大する一方です。このような時代
に部隊の中核として、また原動力として活躍しなければならない幹
部候補生に対する期待は大きく、求められるものも多いでしょう。

「いかに装備が新しくなろうがその根本にいるのは人であり、教育
の必要性は変わりません。それだけに、本校の教育がきわめて重要
であると考えています。そこで私は、いかなる困難に遭遇しようと
も最後まで自己の職責を誠実にやり抜く強い意志、物事の本質を見
極めるために私心やうぬぼれ、不健全な要素を自ら排除し得る自制
心、そして何よりも、手抜きせずに正道を貫き通す勇気を兼ね備え
た幹部自衛官の育成に努めたいと思っています」

次週に続きます。



(つづく)



(わたなべ・ようこ)


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□著者略歴

渡邉陽子(わたなべ・ようこ)
神奈川県出身。大学卒業後、IT企業、編集プロダクション勤
務を経て2001年よりフリーランス。2003年から月刊
『セキュリタリアン』『MAMOR』などに寄稿。
現在は自衛隊関連の情報誌などで記事を発表。メルマガ「軍事
情報」で自衛隊関連の記事を配信中。
 
2016年6月、デビュー作
『オリンピックと自衛隊 1964-2020』を刊行。


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