こんにちは、エンリケです。
「ハイブリッド戦争の時代」の第24回です。
中共海軍の
第一艦隊
第二艦隊
第三艦隊
わかりますか?
さっそくどうぞ。
エンリケ
ご意見・ご感想はコチラから
↓
https://okigunnji.com/url/7/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ハイブリッド戦争の時代(24)
中国のハイブリッド戦争遂行能力
志田淳二郎(国際政治学者)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
□はじめに
皆さん、こんばんは。本日のメルマガ原稿執筆時
(2月10日)では、国際情勢をゆるがすような大
きなニュースは報道されていません。
こんなときこそ、要注意です。というのも、国際
情勢というのは、大洋の波のように、一定のトレン
ドというものがあります。中国共産党との対決姿勢
を鮮明にしたトランプ政権が終わったため、米中対
立が、表立ってニュースになっていませんが、現在
でもグローバルな米中の覇権競争は続いています。
メルマガ読者のKさんから、「日本のメディアで
はヨーロッパ諸国と中国(中共)との深い関係など
全くと言ってよいほど報道されていません。しかし
これらは中国(中共)の将来だけでなく全世界の覇
権争いにも関係する重要な要素を含んでいるため、
もっと発信していただきたいものです」とコメント
をいただきました。
ホント、おっしゃる通りだと思います。地政学的
にはヨーロッパは「半島」なんですよね。NATOとい
う軍事同盟は中国発のハイブリッド脅威に備えてい
ますが、ほとんどの政治家、外交官、学者、メディ
アは、「中国のお友達工作」の餌食になっています。
ユーラシア大陸の「半島」が中国に飲み込まれてし
まったら、世界の勢力図は一気に変わってしまいま
す。
こういう視点を持って、微力ではありますが、今
後も国際政治研究をし、広く国民や社会に発信して
いきたいと思います。
Kさん、コメントどうもありがとうございます。
さて、今回のメルマガは、皆さんお待ちかね(?)
の中国のハイブリッド戦争遂行能力についてです。
今年2月に入り、中国が海警法を採択したことで、
尖閣諸島情勢が緊迫するのではないかと報道があり
ましたが、このニュースとも深く関係します。
▼戦略支援部隊
習近平国家主席は、着実に中国人民解放軍の改革
を行なっています。2015年12月31日、中国人民解放
軍は、ミサイル戦力を扱う「第二砲兵」を「ロケッ
ト軍」に変更し、陸・海・空軍と同格の軍種に昇格
させました。
また、「戦略支援部隊」も新設しました。戦略支
援部隊とは、「参謀部」、「政治工作部」、「兵站
部」、「装備部」、「宇宙システム部」を基本編制
とする部隊で、細かく見てみると、情報戦、宇宙戦、
サイバー戦、電子戦を担当する部隊です。
習近平肝いりで創設された戦略支援部隊は、ロシ
ア軍をモデルにしたものと考えられており、たとえ
ば、台湾併合を目的としたハイブリッド戦争の際に、
直接的に関与する部隊と考えられています。
▼「第二艦隊」──中国海警
海洋において、すでに中国はハイブリッド戦争遂
行能力を確立しています。
中国人民解放軍は、海軍種を有していますが、海
軍を「第一軍」、「第一艦隊」とすれば、このほか
に、「第二軍」、「第二艦隊」と呼ばれる「中国海
警」、そして「第三軍」、「第三艦隊」と呼ばれる
「海上民兵」が存在します。
中国の海上法執行機関が再編される2013年以
前は、「中国海監」、「中国漁政」を名乗る船舶は、
国土資源部国家海洋局や農業部漁政局などの行政
部門に所属していました。2013年にこれらが、
「中国海警」として再編され、5年後には、「武警
海警総隊」に改編されます。
「武警」は「軍」に該当します。
中国武警法によれば、平時における任務に「非戦
争的軍事行動」が明記され、同時に「海上維持執法
(権益保護と法執行)」も加えられました。2021年
2月に施行された「海警法」では、中国海警の命令
に従わない外国の軍用船舶や非商業目的の政府船舶
に対する「強制措置」の権利も明記されました。
防衛研究所の山本勝也・教育部長は、「海警」の
船舶を「公船」ではなく「軍艦」と正しく認識する
必要があり、「海警」の船舶を「公船」と呼ぶこと
を中国が否定しないのは、「海警」のあいまい性を
装う意味で中国にとって好ましい状態であるからで
はないかと、と分析しています。
▼「第三艦隊」──海上民兵
米海軍大学中国海事研究所は、「海上民兵」につ
いて、「一つの海上民兵組織が存在するのではなく、
国防を支える地方政府と省政府の間に存在する部隊
の集合体」との見方を示しています。「迷彩服を着
れば兵士としての資格があり、迷彩服を脱げば法を
守る漁師」というように、中国は意図的に「海上民
兵」の地位をあいまいにしているのです。
地位のあいまいな「海上民兵」は、クリミア併合
で「活躍」したロシアの「リトル・グリーン・メン
」をもじって、「リトル・ブルー・フィッシャーメ
ン」と呼ばれることもあります。
アメリカの軍事専門家モーガン・クレメンスとマ
イケル・ウェーバーによれば、戦時から平時まで人
民解放軍を支援するものとみられる「海上民兵」を
中国政府が積極的に駆使することで、何らかの現状
変更を行なう帰属をあいまいにし、危機や対立が起
きた際に、敵対者がエスカレーション・ラダー(は
しご)を越える可能性を減らすことができると指摘
しています。
要するに、怪しげな「海上民兵」が、海洋の島し
ょ部を占拠し、現状を変更したとして、こちら側が、
「こいつら怪しいけど、軍隊ではないな。そうなる
と、まずは警察権を行使して、強制排除して…」と
いう具合になっていまします。このように、すぐさ
ま軍を動員する自衛権発動というラダー(はしご)
を、こちら側に上らせないまま、現状変更を達成す
るために、「第三艦隊」たる「海上民兵」が、ハイ
ブリッド戦争で駆使される可能性が、大いにあるの
です。
実際、2010年前後から、「中国海警」と「海上民
兵」は、中国海軍と連携しながら、南シナ海のファ
イアリークロス、スビ、ミスチーフの3つの礁の埋
め立て、人工島建設、軍事拠点化や尖閣諸島周辺の
東シナ海への海洋進出に、一役も二役もかっている
のです。
脅威は、「意図と能力」で規定されると言われま
すが、結論から言うと、中国は領域拡張の「意図」
を持ち、上記のような「能力」を有しているハイブ
リッド脅威なのです。
今回のメルマガで紹介した「戦略支援部隊」は台
湾有事、「第二艦隊」と「第三艦隊」は尖閣有事で
積極的に関与してくると、わたしは分析しています
。
□次回予告
お隣の国、中国が、すでにハイブリッド戦争遂行
能力を確立しているいま、日本は、どうしたらよい
のでしょうか。次回から2回にかけて、ハイブリッ
ド戦争時代の『日本の針路』について、提言をまと
めていきたいと思います。
(つづく)
(しだ・じゅんじろう)
志田さんへのメッセージ、ご意見・ご感想は、
このURLからお知らせください。
↓
https://okigunnji.com/url/7/
【著者紹介】
志田淳二郎(しだ・じゅんじろう)
国際政治学者。中央ヨーロッパ大学(ハンガリー・
ブダペスト)政治学部修士課程修了、M.A. in Political
Science with Merit、中央大学大学院法学研究科博
士後期課程修了、博士(政治学)。中央大学法学部
助教、笹川平和財団米国(ワシントンD.C.)客員準
研究員等を経て、現在、東京福祉大学留学生教育セ
ンター特任講師、拓殖大学大学院国際協力学研究科
非常勤講師。主著に『米国の冷戦終結外交―ジョー
ジ・H・W・ブッシュ政権とドイツ統一』(有信堂、
2020年)。研究論文に「クリミア併合後の『ハイブ
リッド戦争』の展開―モンテネグロ、マケドニア、
ハンガリーの諸事例を手がかりに」『国際安全保障』
第47巻、第4号(2020年3月)21-35頁。「アメリカの
ウクライナ政策史―底流する『ロシア要因』」『海
外事情』第67巻、第1号(2019年1月)144-158頁ほか
多数。
▼きょうの記事への、あなたの感想や疑問・質問、
ご意見は、ここからお知らせください。
⇒
https://okigunnji.com/url/7/
PS
弊マガジンへのご意見、投稿は、投稿者氏名等の個
人情報を伏せたうえで、メルマガ誌上及びメールマ
ガジン「軍事情報」が主催運営するインターネット
上のサービス(携帯サイトを含む)で紹介させて頂
くことがございます。あらかじめご了承ください。
PPS
投稿文の著作権は各投稿者に帰属します。
その他すべての文章・記事の著作権はメールマガジ
ン「軍事情報」発行人に帰属します。
最後まで読んでくださったあなたに、心から感謝し
ています。
マガジン作りにご協力いただいた各位に、心から感
謝しています。
そして、メルマガを作る機会を与えてくれた祖国に、
心から感謝しています。ありがとうございました。
●配信停止はこちらから
https://1lejend.com/d.php?t=test&m=example%40example.com
-----------------------
発行:
おきらく軍事研究会
(代表・エンリケ航海王子)
メインサイト
https://okigunnji.com/
問い合わせはこちら
https://okigunnji.com/url/7/
-----------------------
Copyright(c) 2000-2021 Gunjijouhou.All rights reserved