こんにちは、エンリケです。
藤井岳さんの、
「自衛隊・熱砂のイラク派遣90日」
の二十八回目です。
読んでいるだけでホッとしました。
さっそくどうぞ
ご意見・ご感想お待ちしてます。
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エンリケ
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自衛隊・熱砂のイラク派遣90日(28)
クールダウン
藤井岳(ふじい・がく)(元陸自2曹)
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□はじめに
先日、飲食店で軽い昼食をとっていた時のことで
す。
私は半円形のカウンター席に座りました。
カウンターの向こう側にはテーブル席があり、1
組、家族と思われる方々が座っていました。両親と
思われる男女と男の子です。私が座った席の先にそ
の人たちのテーブルがあったので、どうしても様子
が目に入ってしまうのです。父親と母親は無言でそ
れぞれ自分のスマートフォンをのぞき込み、男の子
は下を向いてつまらなそうにしていました。私の注
文したものが来て、食べ始めてもその親たちは変わ
らずスマホをいじり続け、やがてそそくさと店を出
て行きました。
とにかく男の子がかわいそうでした。家族で外食
して、食べ終わったら「おいしかった?」とか、何
かしら言葉をかけてあげるのが親なのではないでし
ょうか。
家族や親しい人から会話を奪う。これは携帯電話・
スマホの欠点の1つだと思います。また、子供を
気にかけず、放っておく親も悪い。
スマホが登場し、日進月歩で性能向上、便利にな
っていく反面、人は人として大事な部分を忘れてい
くような気がしてなりません。
▼私服でクウェート市内へ
クウェート市内への移動日を迎え、いよいよクー
ルダウン期間に入る。キャンプ・バージニアともお
別れである。
集合時には戦闘服ではなく私服で集まり、チャー
ターの観光バスに乗り込む。
バスに向かう途中、外国の兵士に声をかけられた。
「日本に帰るのか?」
「イラクでの任務が終わったからね。これからクウ
ェート市内のホテルに移動するんだ」
「そうか。俺たちはこれからイラクに展開だ」
「どこの部隊?」
「フィジーだ」
フィジー兵は終始柔和な表情で話した。
「そうか。頑張ってくれ。幸運を」握手をして別れ
る。
バスに乗り込む。仲間たちの表情は皆明るい。全
員乗車の確認が完了し、バスが走り出す。目指すは
クウェート市内だ。
クウェートの道路は綺麗に舗装されていて、日本
の道路と同様だった。また、走行している車の中に
は日本車が多く見られた。
大地はイラクの黄土色の土漠とは違い、赤みがか
った砂漠のようだった。そこに近代的な建物が並ん
でいる。初めて見る不思議な光景。時折、黒焦げの
建物や激しく損傷して横たわる送電用の鉄塔が目に
ついた。それも1つ2つではない。湾岸戦争の被害
の跡だろうか。
クウェート市内は近代的な都市景観で、日本の大
都市と変わらない印象だ。興味深かったのは、広い
幹線道路に信号がほとんどなく、進路の変更は交差
点ではなく立体交差になっている点である。そのた
め、交通の流れはほとんど滞ることがない。
クウェート市内ではちょっとした観光もあり、ク
ウェート・タワーとショッピングモールでの自由時
間が与えられた。
クウェート・タワーは東京でいうところの東京タ
ワーや東京スカイツリーのような、クウェート市の
シンボル的建造物である。塔は3基あり、針状の塔
が1基、球形の構造物をもつ塔が2基あり、このうち
球形の構造物をもつ塔は球が2つの塔と1つの塔があ
る。どちらも球を串刺しにしたような外見だ。
球状構造物の中は展望台とレストラン、そして貯水
槽になっており、塔は給水塔の役目もはたしている。
ここでは希望者がタワー内に入り見学をした。私
は特に興味も湧かなかったので、中には入らず、タ
ワーの周囲を散策したり、海岸で海を眺めたりして
時間を過ごした。見学を終えた同僚に感想を聞いた
が、あまり良い感想は聞かれなかった。
ショッピングモールは日本にあるモールとそれほ
ど変わらなかった。さまざまな店舗やレストラン、
フードコートなどがあった。モールの近くには市場
もあるそうだが、治安が良くないため、買い物や見
学はモールの中だけで、外に出ないよう指示された。
トラブルは避けたいということだろう。モール内
は特に珍しいものもなく、ある程度時間が経つと、
皆自然とフードコートに集まり、飲み物や軽食を摂
って時間を過ごした。
▼ホテルに缶詰?
クウェート市内での滞在先となったホテルは市内
でもグレードの高いホテルと聞いた。
部屋は2人部屋を割り当てられた。ホテルといえ
ば日本のビジネスホテルくらいしか宿泊したことの
ない私にはとても広く感じた。窓に近づいてカーテ
ンを開け、外の景色を眺める。高層ビルが立ち並ぶ
なか、所々にイスラム教の礼拝堂であるモスクがあ
り、礼拝の時間が近づくと「アザーン」と呼ばれる
礼拝開始の呼びかけが放送される。アザーンが近代
的な町並みに響き渡る光景は何とも幻想的であった。
窓際のテーブルにはウェルカムフルーツが置かれ
ていたが、何となく手を出す気にはなれず、そのま
まにしておいた。ふと気になって、ベッドの下をの
ぞくと、腐った果物がゴロゴロ転がっており、清掃
員のレベルが知れた。グレードが高いとはいえ、こ
んなものかと溜息が出た。
ホテル内にはプールや広いトレーニングルーム、
売店があった。しかし、ここで数日の缶詰状態に耐
えられるだろうかと不安がよぎる。
そう、クールダウン中はホテルから一歩も出られ
ないのである。
(つづく)
(ふじい・がく)
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【著者紹介】
藤井岳(ふじい・がく)ペンネーム
1979年岩手県一関市生まれ。1996年自衛隊生徒とし
て陸上自衛隊入隊。少年工科学校へ入校。卒業後機
甲生徒課程を経て第9戦車大隊(岩手)で戦車乗員
として勤務。2004年第3次イラク復興支援群に参加、
イラク・サマワにて任務に就く。2005年富士学校
(富士)に転属。機甲科部で助教として戦車教育に
従事。2008年退職。フリーランスフォトグラファー
として活動を開始。自衛隊航空部隊の撮影、取材に
取り組む。2015年から「PANZER」誌で執筆開始。そ
の後「丸」「JGROUNDEX」「JWings」などで写真
や戦車に関する記事を発表。現在に至る。
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