--------------------------
荒木さんの最新刊
知られざる重要組織「自衛隊警務隊」にスポットを
当て、警務隊とは何か?の問いに応えるとともに、
警務隊で修練されている「逮捕術」を初めて明らか
にしたこの本は、小平学校の全面協力を受けて作ら
れました。
そのため、最高水準の逮捕術の技の連続写真が実に
多く載っています。それだけでなく、技のすべてを
QRコードを通して実際の動画をスマホで確認できる
のです!
自衛隊関係者、自衛隊ファン、憲兵ファンはもちろん、
武術家、武道家、武術ファンにも目を通してほしい
本です。
『自衛隊警務隊逮捕術』
荒木肇(著)
https://amzn.to/34szs2W
-----------------------------------------
こんにちは。エンリケです。
きょうは、
「防衛省の秘蔵映像」の解説 2回目です。
軍の歴史は国家の歴史
と聞いたことがありますが、この記事を
読むと納得できます。
軍事抜きの国史はやっぱり駄目ですね。
さっそくどうぞ。
エンリケ
メルマガバックナンバー
https://heitansen.okigunnji.com/
ご意見・ご感想はコチラから
↓
https://okigunnji.com/url/7/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
特別紹介
防衛省の秘蔵映像(2)
─昭和33年防衛庁記録─
荒木 肇
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
□ご挨拶
前回はいかがでしたか。自衛隊の草創期の貴重な
姿の数々には驚くばかりです。今回は昭和33(1
958)年のご紹介をします。
30年代はようやく戦後の混乱から立ち直った時
代です。昭和30(1955)年には経済白書に「
前進への道」という言葉が使われます。翌年には、
先にもお話したように「もはや戦後ではない」とい
う記述が現われました。
政治の世界を見ると、1955年には社会主義社
会の建設をいう社会党の左派と右派が統一し、保守
政党の自由党と民主党が保守合同し自由民主党(じ
みんとう)になりました。保守政権与党と、対抗す
る大きな野党、これ以後を55年体制というのも当
然です。
さて、自衛隊はどのように進化していったのでし
ょうか。警察予備隊、保安隊、そして陸・海・空自
衛隊と発展してきた自衛隊の姿が、この1958(
昭和33)年の映像にしっかりつまっています。
誰を相手に、どんな装備をもち、どんな教育訓練
をし、どんな組織を育てるか、それが明らかにされ
たのが1957(昭和32)年5月20日の「国防
の基本方針」です。そして、防衛力(つまり戦力で
すが)整備目標が立てられます。これが第1次防衛
力整備計画、「いちじぼう」といわれたものでした
。
昭和33年度から35年度までの3カ年計画です。
当時は、アメリカ地上軍が次々と縮小・撤収し、陸
上防衛力には大きな危機感がありました。また、海
上や航空の防衛力についても、いちおうの体制を整
えようとしていたのです。これを当時は「骨幹(こ
っかん)防衛力の創設」と言っています。
1次防の目標は、陸自隊員定数が18万人、予備
自衛官1万5000人というものです。部隊規模の
主力は6個管区隊(のちに師団)と4個混成団(ミ
ニ師団)でした。海上自衛隊は米海軍から供与され
た艦艇から、国産のそれへと変貌をとげていきます。
航空自衛隊もまた、朝鮮戦争で活躍したF86F
セイバージェット戦闘機の整備を進めました。あわ
せて映像の中にも出る全天候型対応のF86D型戦
闘機を導入し、対空警戒システムも整備しようとし
ていることが観られます。それらはすべてこの計画
にそったものでした。
https://www.youtube.com/watch?v=4Rxhy2zDSJs
▼天・人災と災害派遣
30年代(1955~65年)は大きな災害が起
きた時代です。この映像の1958年は6月に九州
の阿蘇山が大爆発、観光客12人が死亡するといっ
た事故もありました。また、8月には静岡県下田沖
で全日本空輸(ANA)のダグラスDC3旅客機が
墜落し、映像にもあるように自衛隊が出動していま
す。
天変地異といいますが、この年の夏は大干ばつが
起きました。東京都の水がめの奥多摩にある小河内
ダムが渇水して、都内に自衛隊が給水を行ないます。
映像にも当時の夏の庶民の服装がよく映っている
ので興味深い。
また、九州では海上自衛隊の対潜水艦哨戒機P2V
ネプチューンが雲の中にドライアイスを撒くために
出動しました。雨雲を作るためです。また、日本海
側の浜田市にも救援物資を運ぶために空自のC46
コマンド輸送機が出動しました。
この年はアジア大会(アジア地域のオリンピック)
が行なわれ、その聖火の輸送もネプチューンが行な
っています。フィリピンのマニラから空輸していま
す。
ところが・・・、7月25日には台風11号が京
浜地帯を襲います。豪雨のために中川の堤防が決壊
し、江東(こうとう)地区が「あっと言う間に水が
来た」と証言されるような洪水の被害です。自衛隊
はただちに出動し、救援、復旧に努め、多くの感謝
を受けました。「やっぱり兵隊さんがいなくちゃい
けないね」と、近所のおばさんたちが話していたこ
とを今も覚えています。
また、9月26日、これまた超大型の台風22号
が静岡県伊豆半島に大被害をもたらします。死者・
行方不明1189人を出しました。狩野川(かのが
わ)台風と今も記憶されるもので、伊豆の修善寺(
しゅぜんじ)、長岡などを中心に救援活動を3自衛
隊は献身的に行います。台風で1000人以上の人
が亡くなる。社会資本が整備された現在からは想像
もできないことでしょうが、60年ほど前の日本で
は、あっても不思議ではないことでした。
明るい話題では、8月に日清食品が初めてのイン
スタントラーメンである、「チキンラーメン」が発
売されました。お湯を入れれば食べられるという画
期的なものでした。即席(そくせき)という言葉が
流行りました。
5月には富士重工(昔の中島飛行機)から軽乗用車
(排気量360CC)スバル・セダンが発売され、
値段は42万5000円でした。そして10月には、
富士精密(のちのプリンス自動車、そして日産自
動車と合併)から「グロリア」の開発が発表されま
す。これ以後、わが国にも本格的な自動車時代が訪
れたとされる人もいます。
▼新造される海自の護衛艦
国産艦「なみ」の名前がついた対潜水艦戦闘に備
えた護衛艦が公開され、映像にもその雄姿が紹介さ
れています。艦番号105なので「うらなみ」です。
この年の2月に神戸市の川崎重工で竣工しました。
同型艦は「まきなみ・DD112」までの7隻で
す。初の国産護衛艦「はるかぜ」型の実績をもとに
建造されました。
基準排水量は1700トン、蒸気タービン2基から
3万5000馬力を発揮、速力は32ノット、76
ミリ連装速射砲が3基(計6門)、533ミリ4連
装魚雷発射管1基(対水上艦船用)、短魚雷落射機
2基(対潜水艦ホーミング魚雷を撃つ)、Y砲(対
潜水艦用砲弾発射機)2基、爆雷投下軌条2基とい
うものです。対決するのは当時のソ連海軍潜水艦で
した。
同時に「あめ」の名前がついた対水上戦闘用の護衛
艦「ゆうだち」の進水の様子が観られます。これは
重武装の対空護衛に重点を置いていて、強力な砲熕
(ほうこう・火砲をいう)兵装が特徴です。3隻あ
りました。映像の「むらさめ」は艦番号DD107、
この映像の翌年(34年)2月に三菱長崎造船所で
竣工します。排水量は1800トン、127ミリ
単装砲3基、76ミリ連装速射砲2基、短魚雷落射
機2基、ヘッジホッグ1基(対潜水艦用爆雷投射機
)、爆雷投下軌条1基ということから、対空戦闘を
重視しています。
さて、これらの艦艇のDDなどというのは艦種記号
です。Dはもちろん、デストロイヤー(駆逐艦)を
指す略号になります。陸上自衛隊も軍隊という批判
を避けるために、歩兵を普通科、砲兵を特科、戦車
を特車などという奇妙な言い換えがありました。
同じように、駆逐艦は警備艦という予算対策の名称
を発明し、さらには護衛艦という奇妙な言い方がさ
れて70年にもなりました。ところが、海外に対し
ては堂々とDD(駆逐艦の中でも攻撃力が高い戦闘
艦)やDE(エスコート・護衛駆逐艦)といいます。
面白いのはマスコミ人や政治活動の好きな学者さん
には、海上自衛隊が海外で「ジャパン・ネービー(
日本海軍)」ということが許せないという人がいま
す。ジブチの海賊対処の哨戒機が「ディス イズ
ジャパン ネービー」ということも問題にしていま
した。
しかし、現場の隊員にしてみれば、「ジャパン マ
リタイム セルフ ディフェンス フォースって言
ったって、海賊には分かりません」という。どちら
がまともな感覚か簡単に分かる理屈です。
▼空自のセイバードック
愛知県小牧基地の第3航空団の映像があります。
鼻先の黒いレーダードームに特徴があるF86Dセ
イバードックの力強い姿が観られました。
1955(昭和30)年から空自はF86Fセイ
バー戦闘機を供与されました。180機が引き渡さ
れ、国内でも新三菱重工(現在は三菱重工)で30
0機がライセンス生産。翌年8月には初飛行に成功
し、浜松、築城両基地で飛行隊を編成します。最後
を迎えたのは1979(昭和54)年のことでした。
F86Dセイバードックはアメリカ空軍でも戦後
初の全天候能力をもつ要撃戦闘機です。ただし、F
86とはいうものの、軽快な対戦闘機戦闘を得意と
するFセイバーと異なって、運用重量では5トン対
6トン、エンジン推力も2700キログラムに対し
てアフターバーナー付きで3700キログラムと力
強いものでした。
武装は機関砲の装備はなく、胴体下から2.75
インチ(約70ミリ)のロケット弾24発が装填さ
れたポッドを降ろすものです。翼下にも対空ミサイ
ルを2発抱えられますが、時代が機関砲からロケッ
ト弾、ミサイルに移行した時期でした。ただし搭載
された火器管制装置は優秀だったといわれます。
この年から122機が順次に供与されますが、い
わゆる在日米軍からの中古機であり、複雑な電子装
備の整備も大変だったようです。また、国産化もし
ておらず、部品供給もうまくいかなかったとも言わ
れています。そこで後継であるF104が採用され
ると、運用期間が10年と短かったのです。愛知県
小牧基地に3個飛行隊、北海道千歳基地に2個飛行
隊がありました。
レーダーサイトの移管も始まります。ナレーショ
ンの中にしばしば「自主防衛」という言葉が使われ
るのもこの時期の特徴です。
▼陸自の北方機動大演習と広報
10月14日には、北海道で人員2万名、車輌4
000にものぼる機動大演習が行なわれます。北海
道の分水嶺である大雪山を踏破し、戦車、火砲など
の大勢力が演習を展開しました。空挺団の降下、戦
車群の射撃、普通科部隊の火力戦闘などが観られま
す。
国産の火砲も小火器もなく、空挺団のOBが教え
て下さった3分割した小銃などをもって落下傘兵が
降ります。105ミリ榴弾砲、155ミリ同の射撃
シーンもあり、何より米式装備の7.62ミリのM
1919A6(水冷機関銃)、同A4(空冷軽機関
銃)などの射撃シーンが壮観です。M4特車群の横
一線に並んだ射撃もマニア必見。
最後に、婦人自衛官(ナース・看護官)、少年工
科学校(現高等工科学校)の受験風景を観ることが
できます。あわせて「平和のための防衛博覧会」な
どの努力も観られます。
(つづく)
(あらき・はじめ)
☆バックナンバー
⇒
https://heitansen.okigunnji.com/
荒木さんへのメッセージ、ご意見・ご感想は、
このURLからお知らせください。
↓
https://okigunnji.com/url/7/
●著者略歴
荒木 肇(あらき・はじめ)
1951年東京生まれ。横浜国立大学教育学部卒業、
同大学院修士課程修了。専攻は日本近代教育史。
日露戦後の社会と教育改革、大正期の学校教育と陸
海軍教育、主に陸軍と学校、社会との関係の研究を
行なう。
横浜市の小学校で勤務するかたわら、横浜市情報処
理教育センター研究員、同小学校理科研究会役員、
同研修センター委嘱役員等を歴任。1993年退職。
生涯学習研究センター常任理事、聖ヶ丘教育福祉専
門学校講師(教育原理)などをつとめる。1999年4月
から川崎市立学校に勤務。2000年から横浜市主任児
童委員にも委嘱される。2001年には陸上幕僚長感謝
状を受ける。
年間を通して、自衛隊部隊、機関、学校などで講演、
講話を行なっている。
著書に『教育改革Q&A(共著)』(パテント社)、
『静かに語れ歴史教育』『日本人はどのようにして
軍隊をつくったのか―安全保障と技術の近代史』
(出窓社)、『現代(いま)がわかる-学習版現代
用語の基礎知識(共著)』(自由国民社)、『自衛
隊という学校』『続自衛隊という学校』『子どもに
嫌われる先生』『指揮官は語る』『自衛隊就職ガイ
ド』『学校で教えない自衛隊』『学校で教えない日
本陸軍と自衛隊』『あなたの習った日本史はもう古
い!―昭和と平成の教科書読み比べ』『東日本大震
災と自衛隊―自衛隊は、なぜ頑張れたか?』『脚気
と軍隊─陸海軍医団の対立』『日本軍はこんな兵器
で戦った─国産小火器の開発と用兵思想』『自衛隊
警務隊逮捕術』(並木書房)がある。
『自衛隊の災害派遣、知られざる実態に迫る-訓練
された《兵隊》、お寒い自治体』 荒木肇
「中央公論」2020年3月号
https://amzn.to/31jKcxe
PS
弊マガジンへのご意見、投稿は、投稿者氏名等の個
人情報を伏せたうえで、メルマガ誌上及びメールマ
ガジン「軍事情報」が主催運営するインターネット
上のサービス(携帯サイトを含む)で紹介させて頂
くことがございます。あらかじめご了承ください。
最後まで読んでくださったあなたに、心から感謝し
ています。
マガジン作りにご協力いただいた各位に、心から感
謝しています。
そして、メルマガを作る機会を与えてくれた祖国に、
心から感謝しています。ありがとうございました。
----------------------------------------------
-
メールマガジン「軍事情報」
発行:おきらく軍事研究会
(代表・エンリケ航海王子)
メインサイト:
https://okigunnji.com/
問い合わせはこちら:
https://okigunnji.com/url/7/
メールアドレス:okirakumagmag■■gmail.com
(■■を@に置き換えてください)
----------------------------------------------
配信停止はこちらから
https://1lejend.com/d.php?t=test&m=example%40example.com
投稿文の著作権は各投稿者に帰属します。
その他すべての文章・記事の著作権は
メールマガジン「軍事情報」発行人に帰
属します。
Copyright(c) 2000-2021 Gunjijouhou.All rights reserved.