配信日時 2021/02/08 08:00

【桜林美佐の「美佐日記」(112)】良かれと思ったら悪くなってしまうこと

こんにちは、エンリケです。

112回目の美佐日記。

考えさせられるところ多い記事ですね。

さっそくご覧ください。

エンリケ


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今年4月に刊行された『自衛官が語る災害派遣の記
録』に続く、第2弾『自衛官が語る海外活動の記録』
(桜林美佐監修・自衛隊家族会編)が発売されてい
ます。中東シーレーンの安全確保をめぐって新たな
自衛隊派遣が行われているこの時期にタイミングを
合わせたような出版です。現地で自衛官たちが何を
思い、どのような苦労をして、任務をこなしてきた
か、25人の自衛官のリアルな体験記です。

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桜林美佐の「美佐日記」(112)

良かれと思ったら悪くなってしまうこと

桜林美佐(防衛問題研究家)

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おはようございます。桜林です。「男もすなる日記
といふものを、女もしてみむとてするなり」の『土
佐日記』ならぬ『美佐日記』、令和3年2月の今回
は112回目となります。

前回の拙日記に対し、嬉しい反響を頂戴しました。

「おっしゃるとおりです。環境問題や気候変動問題
は安全保障とも関係が深いものです」と、学術界で
活躍されているIさんから頂きました!

すでに10年も前に、国際安全保障学会で「気候変
動と安全保障」の部会が開催されているということ
で、Iさんご自身も大学で「気候変動と安全保障」
について教鞭をとられています。

「決して対立する問題ではなく、安全保障の射程が
広がる、あるいは伝統的安全保障分野にも影響する
問題として捉える必要があります。またその中では
中国やロシアとの意見交換や協調可能性も出てきま
す。協調的安全保障の枠組みに活用できることもあ
る」と指摘して下さいました。ありがとうございま
す!

 環境利権、過激な環境運動家・・・など様々な要
素が入り混じるため、対立構図になったりする複雑
さがありますが、本来「環境」という観点で見れば、
どんな国もみんな同じ船に乗り合わせている乗客
だと私は思っております。
 
 さらにNさんからも頂きました。
「今日の問題提起、凄く良かった」←ありがとうご
ざいます!

「専業農家が減っている中、農協は農家に対して、
様々な制約を課して、効率よく生産することを推進
している。一方、スーパーなどの小売業は、見た目
だけが良い野菜などを店頭に並べている。味や生産
過程などは関係ない。曲がったキュウリなど見た目
が悪いだけで、味は関係ないのに販売されない。消
費者もそれに慣らされて、買い物をしている。なん
だかんだという割には、消費者は何もわかっていな
いのでは?」

 本当に、おっしゃる通りだと思います。「消費者
意識を高める」ということが、今後は大きなテーマ
になっていくのではないかと思いますし、そうなら
なければいけないと感じます。

 それにしても、世の中には「良いと思ってしてい
たことが実は良くない」ということがけっこうあり
ます。

たとえば環境に関するものでも、最近見つけた英誌
「エコノミスト」の記事によると、風力発電の羽の
部分に使われている木材の80%はエクアドル製で、
その伐採のためにエクアドルの環境破壊が猛烈な
勢いで進んでいるのだとか。地政学者の奥山真司さ
んが「環境対策のダークサイド」と指摘されていま
した。

 きっと脱炭素のための風力発電が同国の輸出産業
を活性化しているのだと思いますが、それが別の環
境破壊を作り出しているという・・・。この手の話
は他にもよく聞きます。

 良かれと思ったことが良くないことだったという
話を最近、身近でも聞きました。

今やどこにでもある「アルコール消毒」、私の友人
はエタノールで手荒れがひどくなり、指に痛みも感
じるようになってしまったといいます。

 彼女が色々と調べてみたところ、スーパーなどに
置いてあるエタノールは血液まで入っていくし、次
亜塩素酸だと塩素の毒性で、呼吸器系や循環器系に
良くないことが分かったとのこと。良かれと思って
せっせと消毒してきたが、それはそれで必ずしも体
に良いことではないというジレンマに陥っていまし
た。

 似たような経験と言いますか、私もかつて可愛が
っていた猫たちにノミ取り薬をつけたりしていたの
ですが、どうも元気がなくなるということが何度か
ありました。

 後で知ったのは、これらにはフィプロニルという
殺虫剤が使われていて、これはミツバチへの毒性が
強いためにEUなどでは禁止されているようです
(ミツバチが死んでしまうと種子植物が受粉できな
いので)。

 それが日本ではペットに使うことがOKになって
いて、しかも、直接ノミが死ぬのではなく、垂らし
た皮膚からフィプロニルが血中に入って全身をめぐ
りノミやダニがその血を吸って死ぬのだそうです。

 うっかり一滴以上垂らしてしまい、ペットの様子
がおかしくなる、あるいは死んでしまうなどの事故
があるということを知り、私もそのミスをしてしま
ったのではないか、いえ使ったことそのものが悪か
ったのではないかと、非常にショックを受けました。

 同じように、良いと思ったら悪くなってしまうこ
との一つに「運動」もあると思います。

先日、思いがけず聞いたのは「自衛官はメンテナン
スができてない人が多い」という話です。
 
アスリートともなれば運動の後にプロの指導の下で
整理体操をしたり、マッサージや鍼灸などの施術を
受けたりしますが、自衛官はそのあたり無頓着な人
が多いと。

 私の知る限りでも、駆け足の後にラーメンを食べ
たり、ビールをぷしゅっと開ける人はたくさん知っ
ていますが、その後にトレーナーに揉んでもらうな
んて話は聞いたことがありません。

 しかし、数多くのオリンピック選手の調整をして
きた方はおっしゃいます。

「自衛官こそ実行すべきだ」と。

 確かに、いつ何が起こるか分からない人たちです
から、常に最高のコンディションでいなければなら
ないのは、アスリート以上にその必要性があるわけ
です。

 どんな屈強な体力を誇っていても、40代、50
代と歳を重ねれば多かれ少なかれ腰が痛くなったり
膝が弱くなったりするもの。

 あんなに自信があったのに、若い頃のような無理
ができない、そんなことが積み重なることが発端で
メンタルダウンしてしまう方も少なくないと聞いて
います。

「トレーニングしっ放しはかえって身体に悪い」

 そう言う私の知人は50代で毎週、柔術のジムに
行っていますが、トレーニング後は必ずマッサージ
を受けているとのこと。どうりで、だから日常生活
にダメージを残すことがないんですね、と納得。

 自衛隊にも身体のメンテナンスをする要員が必要
かもしれません。実際、退官後に資格を取って整体
や鍼灸院を開くケースもありますが、基地や駐屯地
専属になってもらうのが理想的です。

自衛隊の生活を熟知しているOBの方であれば、よ
り話が通じやすいと思います。米軍基地のジムのよ
うに、気軽に立ち寄れる環境ができれば、皆さん利
用するのではないでしょうか。


<おしらせ>
月刊誌『丸』にて「誰も知らないニッポンの防衛産
業」連載中です。コツコツ書いてまいります!
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会員制月刊誌『テーミス』でも自衛隊ルポを連載中
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藤俊幸・元海将に解説をして頂きます。
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(さくらばやし・みさ)



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【著者紹介】
桜林美佐(さくらばやし・みさ)
昭和45年、東京生まれ。日本大学芸術学部卒。フ
リーアナウンサー、ディレクターとしてテレビ番組を
制作。その後、国防問題などを中心に取材・執筆。
著書に『奇跡の船「宗谷」─昭和を走り続けた海の
守り神』『海をひらく─知られざる掃海部隊』『誰
も語らなかった防衛産業[改訂版]』『武器輸出だ
けでは防衛産業は守れない』『防衛産業と自衛隊』
(いずれも並木書房)、『終わらないラブレター─
祖父母たちが語る「もうひとつの戦争体験」』(P
HP研究所)、『日本に自衛隊がいてよかった』(産
経新聞出版)、『ありがとう、金剛丸─星になった
小さな自衛隊員』(ワニブックス)。月刊「テーミ
ス」に『自衛隊密着ルポ』を連載中。


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