配信日時 2021/02/01 08:00

【桜林美佐の「美佐日記」(111)】「当たり前」を見直す時になっている──農薬大国 の日本

こんにちは、エンリケです。

111回目、きょうは、そろい数字の美佐日記。

さっそくご覧ください。

エンリケ


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今年4月に刊行された『自衛官が語る災害派遣の記
録』に続く、第2弾『自衛官が語る海外活動の記録』
(桜林美佐監修・自衛隊家族会編)が発売されてい
ます。中東シーレーンの安全確保をめぐって新たな
自衛隊派遣が行われているこの時期にタイミングを
合わせたような出版です。現地で自衛官たちが何を
思い、どのような苦労をして、任務をこなしてきた
か、25人の自衛官のリアルな体験記です。

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桜林美佐の「美佐日記」(111)

「当たり前」を見直す時になっている──農薬大国
の日本

桜林美佐(防衛問題研究家)

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おはようございます。桜林です。「男もすなる日記
といふものを、女もしてみむとてするなり」の『土
佐日記』ならぬ『美佐日記』、令和3年2月の今回
は111回目となります。

 前回お話した子ども食堂などへの支援に関して、
反発に落胆もしましたが、数々の嬉しい情報提供も
あり、元気を頂きました。

「Stars and Stripes (星条旗新聞)Okinawa」に
よりますと、航空自衛隊のフクハラ コタロウ
Staff Sergeant 、陸上自衛隊の仲神政志1曹、海上
自衛隊のイノウエ マサユキ Petty Officer Third
ClassがUSO(米国慰問協会)から表彰を受けたとの
こと。

 USOは米軍の福利厚生などを行なう組織で、社会
奉仕や地域支援活動も行なっていて、優れた活動を
した人には米軍人のみならず自衛官も表彰している
のです。

 このうち、那覇駐屯地に所属する仲神1曹は子ど
も食堂で自ら作った食事を提供していたそうです。

コロナの影響でこうした活動が困難になっていると
思われますが、実に心強いです。一国民として感謝
するばかりです。

また、米海兵隊キャンプ・ハンセンの独身隊員の会
はつい先日、食料を金武(きん)町のフードバンク
(金武町社会福祉協議会)に寄付したそうです。

年末年始にかけて、基地内の隊員たちに食料の寄付
を呼びかけ、その呼びかけに応じた50人以上の隊
員から寄付が集まったのだそうです。

 自衛隊にはまだ、何か目立ったことをすると非難
されるという気持ちが根強く存在します。

 災害派遣でさえ「お前たちの飯が食えるか!」と
言われた経験をしたとか、自衛隊というだけで理不
尽な扱いを受けてきたために、多くの関係者がこう
した活動に気おくれしてしまうのは仕方がないのか
もしれません。

 私たちの誰もが恐れずに正しい行動ができますよ
うに、と祈っています。

 ところで、最近スーパーに買い物に行くと、テレ
ワークをしているのか平日の昼でもお父さんらしき
人の姿を多くみかけます。そして奥さんらしき人と
商品を手に取ってじーっと表示をみつめ「これ中国
産じゃない?」などと話しているようです。

 そんな時、私は思います。「ああ、この人たちは
週刊新潮を読んでないな」と。

かくいう私も今まで食品は「国産」と書いてあるも
のを極力買っていたのですが、この頃はちょっと変
わりました。

 週刊新潮の連載で話題になったノンフィクション
作家の奥野修司氏による「『本当は危ない国産食品
』~食が病を引き起こす~」を購入し読みましたが
、これを読む人が増えると、日本人の感覚は一変す
るかもしれません。

 日本が諸外国と比べて添加物の基準がゆるく「添
加物大国」だということはつとに有名でしたが、私
自身、関心を持っていなかったというか、そういう
ものを食べざるを得なかったので関心を持たないよ
うにしていました。

 しかし、実際は添加物だけでなく、実は農薬につ
いても使用量は中国と大差なく、世界有数の「農薬
大国」なのだといいます。米国の4倍以上、ヨーロ
ッパの3~20倍の農薬を使っているのだとか。

 もちろん「単純比較はできない」とか「日本の農
薬は安全」などの意見もありますので、捉え方は私
たち次第ですが、すぐに癌などの病気になるわけで
はなくても、長期間の摂取による脳への影響などが
指摘し始めていることや、大なり小なり化学肥料が
土壌を汚染することは否定できません。

 バイデン大統領が環境問題を前面に出しているこ
とについて「安全保障がおろそかにされる」と嘆き
の声も聞こえますが、まさに米国でも指摘されてい
るように気候変動が米軍に多大なダメージを与え始
めていることも確かで、これらは決して対立する取
り組みではないと言えます。

 環境問題を解決するためには中国に妥協せざるを
得ないという懸念を私も持ちます、しかし、逆に
「環境」名目で強く関与していくという見方もあり、
悲観的になるばかりでなく日本としてはそちらに導
いていく役割を担うべきなのかもしれません。

 とはいえ、日本自身が胸を張れるような環境じゃ
ないと説得力が、かなり無いですよね・・・。前回
も書きましたが、これまでの「当たり前」を見直す
時になっているのかもしれません。

 この件についてもう一つ驚かされたのは、学生時
代の友人から「危ない除草剤をアメリカに買わされ
てるみたいね。やっぱり支配されてるのね」という
メールがきたことです。

確かに占領政策の影響を今も受けているという意味
では「支配」はあると言えるでしょうし、欧米で発
売禁止になったものを日本では買っているという事
実もありますが、何もかもこうした陰謀論に結び付
けるのはいただけません。この手の話にはそのよう
な意図的情報発信が混在していて、そうなるとイデ
オロギーも絡むため、ややこしくなります。

 日本の農家が農薬をたくさん使うのは、日本の消
費者に「みためがきれい」「甘い」などの嗜好が強
いからと言われています。米国の陰謀ではありませ
ん。不揃いのものは売れないのです。

 また、自然農法や有機栽培は非常に労力と手間が
かかる上に、収穫量も減ってしまうので、なかなか
踏み出せないといいます。そもそも消費者が好みま
せんし。

 今のところ、有機にこだわる日本の消費者は極め
て少数派ですが、業界では日本人が欧米並みの食へ
の意識を持ち始めることを恐れているといいます。
そんなことを言わずに、できれば一緒に考えていき
たいものです。

 消費者が「みため」や「甘み」という物差しを改
め、安全性に目を向けるようになれば、作る側も合
わせることになるでしょう。その際に多大な負担や
打撃を受けないよう国がしっかりサポートする、そ
れが日本人の食の将来を開くのでは・・・。最近ス
ーパーに行くたびにそんなことを考えてしまいます。


<おしらせ>
月刊誌『丸』2月号から連載が始まりました。「誰
も知らないニッポンの防衛産業」です。コツコツ書
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藤俊幸・元海将に解説をして頂きます。
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(さくらばやし・みさ)



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【著者紹介】
桜林美佐(さくらばやし・みさ)
昭和45年、東京生まれ。日本大学芸術学部卒。フ
リーアナウンサー、ディレクターとしてテレビ番組を
制作。その後、国防問題などを中心に取材・執筆。
著書に『奇跡の船「宗谷」─昭和を走り続けた海の
守り神』『海をひらく─知られざる掃海部隊』『誰
も語らなかった防衛産業[改訂版]』『武器輸出だ
けでは防衛産業は守れない』『防衛産業と自衛隊』
(いずれも並木書房)、『終わらないラブレター─
祖父母たちが語る「もうひとつの戦争体験」』(P
HP研究所)、『日本に自衛隊がいてよかった』(産
経新聞出版)、『ありがとう、金剛丸─星になった
小さな自衛隊員』(ワニブックス)。月刊「テーミ
ス」に『自衛隊密着ルポ』を連載中。


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