こんにちは、エンリケです。
藤井岳さんの、
「自衛隊・熱砂のイラク派遣90日」
の二十六回目です。
軍種を超えた絆に感動しました。
さっそくどうぞ
ご意見・ご感想お待ちしてます。
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エンリケ
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自衛隊・熱砂のイラク派遣90日(26)
空自隊員たちの出迎え
藤井岳(ふじい・がく)(元陸自2曹)
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□はじめに
昨年末から変わらず猛威をふるっている新型コロ
ナウイルス感染症。毎日ニュースや新聞を観たり読
んだりしては、日ごとに変動のあるコロナ禍の話題、
記事に一喜一憂しています。ワクチンの開発、生
産も進んでいるようで、年内には我々一般の人間も
ワクチンの接種を受けられるような動きになってい
るようです。
私はコロナ関連の話には楽観視できない方ですが、
今年中にはある程度の収束の兆しが見えるように
なればな、と思います。
読者の皆様もやりたいこと、行きたい場所、会い
たい人、たくさん思い浮かぶでしょう。私も早く感
染の心配をせずにいろいろな所に行きたいです。
まだしばらくは耐える日々が続くでしょうが、以
前も綴ったように今できることは何かを常に考え、
再興の時を待ちたいと思います。
▼さらば、サマーワ
11月21日。朝4時起床。外はまだ暗い。
3か月間疲れを癒やしてくれた寝具を丁寧に整頓
し、戦闘服に着替えて荷物を私物バッグに詰め込む
。
準備を済ませ、最後にコンテナハウスの中を見渡
す。そして照明を消し、外に出て扉を閉じた。
集合地点で点呼を受け、乗車要領および移動要領
の説明を受ける。移動経路はサマーワ展開時と逆経
路で、サマーワ宿営地からタリル空軍基地まで陸路、
タリル空軍基地から航空自衛隊の輸送機に搭乗、
空路でクウェートに入り、アリ・アルサレム空軍基
地へ。そして再度乗車、陸路でキャンプ・バージニ
アを目指す。
乗車の指示が出た。1列で乗車位置まで進む。
その途中で、支援群長が隊員一人一人に声をかけ
て握手をし、記念メダルを渡している。
自分の番だ。群長の前に立つ。
「お疲れ様、ありがとう!」群長が笑顔で手を差し
出した。
「ありがとうございます!」群長の手を握る。渡さ
れたメダルは透明なケースに入っており、群長の直
筆で「お疲れ様!」と記されていた。
高機動車に乗車し、しばし待機する。東の空が明
るみはじめていた。見送りの隊員が多く詰めかけて
いたが、薄暗くてその表情まではわからない。
車長から出発の声がかかった。後部ドアを閉める
前にもう一度、見渡せる範囲の景色を目に焼き付け
る。
さらば、サマーワ。二度と訪れることのない地。
▼空自C-130輸送機に搭乗
見送りの隊員の歓声の中、車列がゆっくりと動き
出す。
高機動車はしばらくゲート間のカーブを進んでい
たが、そのうちに速度が上がり、安定した走りにな
った。サマーワ宿営地を出たのだ。
最後に宿営地全体をこの目で見たかったが、高機
動車の後部は装甲板で囲まれているため、それも叶
わない。タリルまではまだまだ時間がある。私は眠
気に任せて目を閉じた。
タリル空軍基地に到着する頃にはすでに太陽は頭
上に昇り、気温も高くなっていた。
輸送機の到着まで待機との指示。「なんだ、まだ
輸送機は来てないのか」誰かがつぶやいた。
私は荷物を降ろし、外に出て、ただ空を眺めてい
た。
今日も晴天だ。暑い。
「いつ来るかわからないのだから、少しでも涼しい
所にいろよ」と声をかけられたが、それでもなぜか
輸送機の到着をこの目で見たくて、空を見上げてい
た。
そして、ついに待ち焦がれた姿を見つけた。それ
は突然空に現れたようだった。
「来た!」
水色の塗装に身を包んだ航空自衛隊のC-130輸送
機は見事なほど、空に溶け込んでいた。
機体が次第に近づき、滑走路に滑り込む。機体に
描かれた鮮やかな日の丸が目に入った。
その後駐機場へ移動、輸送機のロードマスター
(空中輸送員)の指示で乗機する。
機内の簡易シートに腰を下ろす。開放されている
機体後部からしばらく外を眺めていたが、やがて、
貨物扉が閉じられ、機内は薄暗くなった。
ついにイラクを離れる時が来た。
我々を乗せた輸送機はタリル空軍基地を離陸、機
首をクウェートへ向けた。
3か月前、イラク入りする機上で感じたような緊
張感はそれほど感じない。ほかの隊員の表情も明る
い。だが、その中でも輸送機の搭乗員は半球形の風
防を通して周囲の警戒を怠らない。前回と変わらな
いその厳しい視線。感謝の念を抱かずにはいられな
かった。
やがて輸送機は高度を下げ、アリ・アルサレム空
軍基地に着陸。接地の軽い衝撃を感じて安堵する。
輸送機はしばらく駐機場までタキシングし、やがて
停止した。
機体後部の貨物扉が開き、外の光が機内を照らす。
扉の向こうに広がる駐機場に目をやった。
思わず息を飲む。
隊旗がはためいている。
旗の下、整然と並んでいるのはアリ・アルサレム
で活動している航空自衛隊の隊員たちだった。我々
のために出迎えに来てくれたのだ。支援群の隊員た
ちも皆、感嘆の声をあげている。支援群の隊員が輸
送機から降りると、航空自衛隊の隊員たちは一斉に
敬礼と拍手で迎えてくれた。
私は輸送機の機内前方に搭乗していたため、降機
は最後だった。
「お疲れさん!」「お疲れ様でした!」
部隊や部署の長と思われる幹部から若手の隊員ま
で、皆、敬礼しながら声をかけてくれた。私も一人
一人に感謝の答礼をしながら「ありがとうございま
す!」と答える。
列は長い。多くの隊員が駆けつけてくれたのだ。
陸上と航空、所属が違うとはいえ、ともに母国日本
を離れて酷暑のイラクそしてクウェートで汗を流し
任務に就いた。何より我々を安全にイラクまで輸送
し、そしてクウェートへ帰してくれた仲間たちであ
る。心からの感謝、そして心からの礼を伝えたいと
思った。
(つづく)
(ふじい・がく)
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【著者紹介】
藤井岳(ふじい・がく)ペンネーム
1979年岩手県一関市生まれ。1996年自衛隊生徒とし
て陸上自衛隊入隊。少年工科学校へ入校。卒業後機
甲生徒課程を経て第9戦車大隊(岩手)で戦車乗員
として勤務。2004年第3次イラク復興支援群に参加、
イラク・サマワにて任務に就く。2005年富士学校
(富士)に転属。機甲科部で助教として戦車教育に
従事。2008年退職。フリーランスフォトグラファー
として活動を開始。自衛隊航空部隊の撮影、取材に
取り組む。2015年から「PANZER」誌で執筆開始。そ
の後「丸」「JGROUNDEX」「JWings」などで写真
や戦車に関する記事を発表。現在に至る。
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