こんにちは、エンリケです。
110回目の美佐日記。
言葉の真意をきちんとつかもうとする
姿勢はほんとうに大切、と痛感させられます。
さっそくご覧ください。
エンリケ
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今年4月に刊行された『自衛官が語る災害派遣の記
録』に続く、第2弾『自衛官が語る海外活動の記録』
(桜林美佐監修・自衛隊家族会編)が発売されてい
ます。中東シーレーンの安全確保をめぐって新たな
自衛隊派遣が行われているこの時期にタイミングを
合わせたような出版です。現地で自衛官たちが何を
思い、どのような苦労をして、任務をこなしてきた
か、25人の自衛官のリアルな体験記です。
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桜林美佐の「美佐日記」(110)
安全保障と動物福祉と子ども食堂……異なる価値観
を許容する
桜林美佐(防衛問題研究家)
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おはようございます。桜林です。「男もすなる日
記といふものを、女もしてみむとてするなり」の
『土佐日記』ならぬ『美佐日記』、令和3年1月の
今回は110回目となります。
子ども食堂や、ひとり親家庭に自衛隊で残った食
べ物を寄付できたらいいのではないかとずっと考え
ていて、ツイッターに投稿して反応を見てみようと
したのですが、案の定、ネガティブなコメントの総
攻撃に遭いました。
最初に「フードロス」という言葉を使ってしまっ
たせいか、どうも大量の食材を自衛隊が運搬するか
のようなイメージになってしまったようで「誰が輸
送するのか?」「食中毒が出たら自衛隊が責任を取
るのか?」「そもそも物品の放出はできない」「フ
ードロスを出さないことが先決だろう。自衛隊では
ちゃんとやっている!」「余っていることが分かれ
ば糧食予算を減らされる!」「もっと法律の勉強を
してから提案しろ。軽々しく言うな」(会ったこと
もない自衛隊OBからのコメント)・・・などなど。
自衛隊にいると、こういう発想になってしまうん
ですよね。いずれの意見も、まあ想定内です。マイ
ナス面を見ればやらないほうがいいに決まっている
のです。余計な仕事はしたくない。リスクも抱えた
くない。生活困窮家庭が増えても自衛官のお給料が
貰えなくなるわけではありませんから。
ただでさえ任務に追われる自衛隊、そのことを普
段から書いている私が余計なことさせると思います?
ただ、私がイメージしたのは「その日に何か余った
ものがあれば、あげる」くらいのイージー、easy!
なもので、なければやらなくていい。そして、やり
たくない人はやらないでいい。
誰かしら有志が、どこかに余り物を持って行きた
い時に、その行為そのものが「禁止だ!」と言われ
ないよう、政府や大臣のお墨付きがあればそれでい
い。それか、何人かが自分の家から持って来れば何
も問題はない。これが余計な仕事を増やすことです
か?
後ろ向きな反応が多い中でも、賛同して下さった
り、前向きで素敵なご意見を頂いたことは救いでし
た。
たとえば、毎日、誰かしら子供を「フードモニター」
に選んで、夕方、自衛隊の食堂に来てもらう。ご飯
の後、少しの時間そこで宿題をしていいことにすれ
ば、日本一安全な託児所になりますという発案もあ
りました。
そうなんです。この募集難の時代、子供自身や、
生活に苦しんでいる親御さんに自衛隊を知ってもら
うことが将来につながると思い発想したわけです。
分かってもらい嬉しかったです。
その意味では、食中毒リスクのある食べ物ではな
くて「自衛隊クッキー」(みたいなものを作って)
の売り上げの一部を寄付、とかでもいいと思います
(理解ある業者さんがいれば)。今、コロナの影響
を受けている医療従事者などへの支援型お菓子の販
売は盛んに行われています。
ちなみに、沖縄では米海兵隊が子ども食堂への支
援を続けていたようです。米軍ではボランティアが
根付いているので、いちいち「そんなことをすると
反対勢力に子供を利用していると批判される!」な
どと気にせず、まずは行動します。貧困をなくした
い気持ちは左翼の専売特許ではないのです。
自衛隊でもボランティアを呼びかければいいので
しょうが、下手をすると強制のように捉える人がい
るので、話の持って行き方が難しいですよね。それ
なので、ツイッターで提案すれば、誰かが見て、も
っといいアイディアを考えてくれたり、自発的に実
行してくれるかもしれない!と思ったのでした。
子ども食堂など「子どもの居場所づくり」は、政
府が各省庁や自治体と連携し推進している事業にな
っています。
厚労省によれば、昭和63年から平成23年にかけ母子
家庭は1・5倍の123.8万世帯、父子家庭は1.3倍
の22.3万世帯に増加しているといいます。
コロナの影響で日々の食事に困っている人たちはま
すます増えることが考えられます。自衛隊という仕
事があることをこうした人たちに知ってもらいたい
ですし、そのことは政府の支援方針とも合致するの
ではないでしょうか。
子どもは将来の安全保障。日本を好きな子どもをひ
とりでも増やしたいと切に思います。私はこれも
「防衛基盤維持」の一環だと思っています。
さて、今回は本当は違うことを書きたかったのです。
それは、吉川・元農水大臣が鶏卵業者から現金数百
万円を受領し在宅起訴されたという一件。
このニュースでは「鶏卵業者が吉川氏に動物福祉(
アニマル・ウェルフェア)に反対するように働きか
けた」と報じられています。
「アニマル・ウェルフェアって何??」
と思われた方も多いのではないでしょうか。これは
世界の動物衛生の向上を目指している国際獣疫事務
局(OIE)という組織が打ち出している概念で、
加盟国に、この「アニマル・ウェルフェア(AW=
快適性に配慮した家畜の飼養管理)の基準に従うよ
うに促しているものです。
この基準が採択されると、ニワトリのための「巣箱」
や「止まり木」を設置する必要が出てきます。
ところが「国内の95%以上の養鶏場はケージ飼育
なので、巣箱や止まり木の設置は現実的に不可能」
「日本の鶏卵生産者に大きな打撃を与えることにな
る」として、大手企業の「アキタフーズ」が、吉川
氏に反対して欲しいと要望していたといいます。
確かに、日本は国土が狭く、欧米の基準に合わせた
らどれだけ土地が必要なんだ、どれだけお金がかか
るんだということになると思います。
しかし一方で、日本は今「クアッド」の枠組みをよ
り強化しようとしていますよね。
クアッドとは、日米豪印4か国による安全保障の連
携で「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP:
Free and Open Indo-Pacific)構想の下で構築されて
いることはご存知の通りです。
クアッドは「価値観外交」の一環とされます。
もちろん、これは中国の「価値観」と差別化するた
めの言葉かもしれませんが、今後、わが国がますま
すこうした国々と緊密な関係を望むにあたり、他の
「価値観」が浮上することも考えられます。
家畜を狭い所で飼育したり、残酷な殺処分をする
国とは連携できないという世論が高まったら、どう
でしょうか? 現実に、オーストラリアにはクジラ
を捕る日本人は野蛮だという人が少なからずいます。
安全保障と動物福祉、あるいは環境問題は、非常
に関係が深くなってくる可能性を秘めています。
中国や韓国は、動物を何でも食べる野蛮な国とい
うイメージがありますが、その日本では深夜でもペ
ットショップが営業していたり、ペットの殺処分は
関係団体などの努力で減少はしているもののまだま
だ世界的にかなり多いレベルです。
外から見れば、中国や韓国と大差ない国です。日
本だけは違う、日本は「価値観外交」をするんだと
息巻いても、私たちが思い描くイメージとかけ離れ
たことで「ダメ出し」されるかもしれないと心得て
おく必要はあると思います。
色々なこれまでの常識を変え、異なる価値観を許
容することがやむを得ない時代になっているかもし
れません。「動物福祉」の問題が浮上したのは象徴
的だと思います。
さらに、業界団体との切っても切れない関係など、
そうした「自民党的な」政治に対し国民が「ダメ
出し」することもまた起きるかもしれませんね・・。
前回の日記に反響を頂きました。
Iさんから「自衛隊は便利屋ではない!! 自衛官
からはナカナカ言えない事ですが、まさしくその通
り!!です。これからもガンガン、お願いします」
またNさんから「メルマガを読んで、いつもながら、
自衛隊の職務に対する認識不足が国民や地方自治
体の首長に横溢しているのを情けなく思います」と
頂きました。
ありがとうございます!!
<おしらせ>
月刊誌『丸』2月号から連載が始まりました。「誰
も知らないニッポンの防衛産業」です。コツコツ書
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2,YouTubeチャンネルくららで毎週土曜に
アップしている「国防ニュース最前線」、今週も伊
藤俊幸・元海将に解説をして頂きます。
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(さくらばやし・みさ)
桜林さんへのメッセージ、ご意見・ご感想は、
このURLからお知らせください。
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【著者紹介】
桜林美佐(さくらばやし・みさ)
昭和45年、東京生まれ。日本大学芸術学部卒。フ
リーアナウンサー、ディレクターとしてテレビ番組を
制作。その後、国防問題などを中心に取材・執筆。
著書に『奇跡の船「宗谷」─昭和を走り続けた海の
守り神』『海をひらく─知られざる掃海部隊』『誰
も語らなかった防衛産業[改訂版]』『武器輸出だ
けでは防衛産業は守れない』『防衛産業と自衛隊』
(いずれも並木書房)、『終わらないラブレター─
祖父母たちが語る「もうひとつの戦争体験」』(P
HP研究所)、『日本に自衛隊がいてよかった』(産
経新聞出版)、『ありがとう、金剛丸─星になった
小さな自衛隊員』(ワニブックス)。月刊「テーミ
ス」に『自衛隊密着ルポ』を連載中。
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マガジン作りにご協力いただいた各位に、心から感
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に、心から感謝しています。
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