━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応
予備自衛官でもあります。
お仕事の依頼など、問い合わせは以下よりお気軽に
どうぞ
 
E-ｍａｉｌ hirafuji@mbr.nifty.com
WEB http://wos.cool.coocan.jp

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

こんにちは。エンリケです。

加藤さんが翻訳した武器本シリーズ最新刊が
出ました。

今回は、
分隊支援火器といえばこれ！
ミニミ/M249です。

『ミニミ軽機関銃』
クリス マクナブ (著), 床井 雅美 (監修), 加藤 喬 (翻訳)
2020/7/10 発行
https://amzn.to/3gGpNcq
※大好評発売中

武器オンチの日本人には
特におススメです。


加藤さんの「トランプツイッター」を
毎号楽しみにしています。

日本国内には聞こえてこない
「米国民の本音」が垣間見れる
ほぼ唯一の情報源だからです。

これからも楽しみです。

きょうの「トランプツイッター」の最後
の言葉は、想像以上に重要です。


さっそくどうぞ


エンリケ

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

加藤大尉の軍隊式英会話：兵器編　　　　　

イスラエル軍事力（６）Ｍ270多連装ロケットシ
ステム「スマッシャー」

Takashi Kato

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

□トランプツイッター番外編

　ウィリアム・カリー米陸軍中尉はベトナム戦争中、
ソンミ村で女子供や老人を含む非戦闘員を大量虐
殺した戦争犯罪人です。彼は「中隊長である大尉の
命令に、一介の中尉である自分は逆らえなかった」
と弁明しましたが、軍法会議で有罪判決を受けまし
た。なぜか？人間には命令の是非、ひいては物事の
善悪を判断する力と義務があるからです。カリー中
尉は違法な命令を拒否せず、誤った行動をとったこ
との責任を問われたのです。

　「良心に恥じない振る舞い」こそ「自由」と対
（つい）をなす民主主義の根幹。武士道が諭す「廉
恥（れんち）」にも通じる判断能力と責任感を、
我々は皆、生まれながらに持っています。

　１月６日に起きた連邦議事堂占拠事件に関し、民
主党議員と主流メディアはここぞとばかり「大統領
が騒乱を扇動した」として弾劾裁判による罷免を要
求しています。しかし前述の通り、議会に乱入した
者たちは理由の如何と教唆の有無にかかわらず、善
悪の判断を誤った挙句、自らの意思で言語道断の愚
行に及んだのです。熱狂的トランプ支持者であれ、
陰謀論集団Qアノンであれ、急進左派であれ、その
見苦しい破廉恥と不徳はひとえに乱入者らにあり、
トランプ大統領を含め他人に責任転嫁できるもので
はありません。

昨年、極左勢力に扇動された暴徒が各地でワシント
ン像を引き倒したり、警察署や裁判所を襲撃・占拠
したり、民間店舗の略奪を行ったりした際、民主党
知事や議員らはこれを看過。逮捕者を訴追する素振
りすら見せませんでした。ところが今回の議事堂侵
入事件では、その同じ民主党重鎮らが２度目のトラ
ンプ弾劾に血道を上げています。４年後、トランプ
氏が再び大統領に返り咲く可能性を排除するため、
氏の政治生命を今ここで断ち切りたいのでしょう。

「トランプ大統領は精神錯乱をきたしており、核の
ボタンへのアクセスを制限する必要がある」と主張
したペロシ下院議長に至っては、三文役者の拙いパ
フォーマンスを感じさせます。

　一方、同占拠事件を口実にトランプ政権の閣僚や
スタッフが相次いで辞任。トランプ氏と馬が合うと
言われてきた英国首相まで「大統領は民主主義の破
壊者だ」と糾弾しています。この報道に、船の沈没
を本能的に察し大挙して海に飛び込むネズミの話を
思い出しました。辞めたり批判したりする機会なら
ずっと以前からあったはず。これまでワイルドカー
ド大統領の機嫌を損ねまいと黙っていたのが、ドナ
ルド・トランプの終焉近しと見て距離をおきはじめ
たのでしょう。政界とは風見鶏のホームグランドで
あるようです。

　民主党寄りのツイッターとフェイスブックなどビ
ッグ・テック各社も大攻勢に出ています。トランプ
大統領の公式ツイッターが「暴力行為の教唆」を理
由に永久閉鎖され、保守系メディアがフェイスブッ
クにあげた選挙関連動画に対しても警告や削除が相
次いでいます。また、トランプ大統領の元国家安全
保障担当補佐官マイケル・フリン中将やシドニー・
パウエル弁護士のツイッターも「陰謀説を拡散した」
として閲覧不能になっています。

しかし、ネット情報の内容が有害か、あるいは荒唐
無稽な仮説かは我々使用者が決めること。これらテ
クノロジー関連大手が見せる「ネット・ユーザーに
は投稿内容の善悪や真偽の判断ができないから、我
々が代行する」との態度は高慢で、ユーザーの「判
断力」を見下すものです。いやそれどころか「自分
たちの価値観と意図に合わない主張は検閲する」の
は中国共産党の十八番（おはこ）。情報操作と思想
統制が米国の私企業によって公然と行なわれ、ネッ
ト空間を支配し始めている事実には慄然とします。
ハクスリーの『素晴らしい新世界』やオーウェルの
『１９８４』に描かれた全体主義社会が現実になろ
うとしています。

　２０２０年大統領選挙で一挙に表面化した米社会
の分裂と混沌は、「トランプ対バイデン」という表
層的なものではないようです。私なりに要約すれば、
「機会均等」と「自由競争」を通じ「個人の社会
的上昇」を目指す国柄、すなわち「アメリカンドリ
ーム」を維持せんとする保守層と、「奴隷制度の上
に建立された人種差別国家アメリカ」を否定し、よ
り社会主義的な国に変換しようというキャンセルカ
ルチャー勢力との全面対決です。

　この構図で見落とせないのは「保守層は一枚岩で
はない」という事実。トランプ支持派の多くは、伝
統的価値観や宗教観を持つごく普通の市民でしょう。
しかし、なかには、リベラル派が推し進めてきた
差別是正運動「ポリティカル・コレクトネス」や性
的少数派の権利拡大、不法移民に対する社会福祉な
どを「逆差別」と感じ、白人優越主義や移民排斥運
動、そして、左派を宗教上の邪悪集団と断じるQア
ノンなどの陰謀論に染まり、過激化する者も少なか
らず存在します。

　前述の議会占拠事件では、彼ら彼女らがトランプ
支持者の名を借りて騒乱を煽ったものと考えられま
す。この憂慮すべき暴力のうねりは、バイデン氏の
大統領就任式に合わせ、首都ワシントンや全米の都
市で再演される恐れがあります。トランプ大統領は
すでにワシントンに緊急事態を宣していますが、ア
メリカ全土が無法状態に陥ることを防ぐため、ここ
は持ち前の強い態度と言葉で「保守派の衣を借りた
暴力集団」の説得に乗り出すべきでしょう。

最後に一言。日本の政治家がこのアメリカ分裂裏事
情を見落とすと、バイデン政権下での日米関係の扱
いや、ひいては、日本の独立と平和維持に向けた舵
取りを誤ることになりかねません。逆に言えば、ア
メリカの弱体化は日本が占領政策の呪縛から抜け出
し、小国イスラエルが成し遂げた強大な国防力を身
に着けるチャンスにもなり得ます。


▼Ｍ270多連装ロケットシステム「スマッシャー」

　兵器は人が生存をかけて使う道具。生き延びるた
めには相手より優れた武器を持たねばなりません。
兵器開発競争が文明の黎明から今日まで途切れなく
続いているのはこのためです。よく指摘される武器
の効用に「抑止力」(deterrence)があります。刀を
抜かずとも相手を委縮させ対峙を防ぐ「鞘の内の勝
ち」の如く、敵に攻撃を思いとどまらせる圧倒的な
破壊力のことです。「平和を望むがゆえに兵器を手
放せない」。人類が陥って久しいこのジレンマの裏
面が「抑止力」なのです。

「加藤大尉の軍隊式英会話：兵器編」では、それぞ
れの武器が持つ抑止力に着目。兵器と平和の関係を
考えていくことにします。

　昨年末はイスラエルの国防を採りあげました。四
面楚歌の小国が生き延びて来られたのは、多くの市
民が徴集兵として国防に貢献する体制と愛国心、そ
して先制攻撃および敵国を壊滅させる報復を厭わな
い戦力を維持しているからでした。

　新年第一弾はその続編として、イスラエルが実戦
配備している主要兵器の抑止力を具体的に見ていき
ます。２回目はアメリカから購入したＭ270多連装
ロケットシステム、イスラエル名「スマッシャー」
です。

「ロケット弾」と聞いて、旧ソ連が第二次世界大戦
中に開発・使用したカチューシャ砲や、ベトナム戦
争で米軍武装ヘリが地上攻撃に使ったハイドラ７０
などを思い起こす読者もいるでしょう。ロケット弾
は無誘導なので正確な着弾が望めず、したがって命
中精度の低さを量で補う必要があります。畏怖の念
を起こさせるロケット弾の一斉発射は、敵部隊を絨
毯爆撃で粉砕するためなのです。（参考サイトにカ
チューシャ砲の発射動画があります）

　この特性を最大限に高めたのが米陸軍のM270
自走多連装ロケットシステム（MultipleLaunch Rocket
System: MLRS）。１９８０年代から配備が始まり、
現在までに陸上自衛隊を含む十数か国の軍隊で制式
化されています。M2ブラッドリー歩兵戦闘車の車体
を流用し、後部にロケットを収納したコンテナ兼発
射機２基を搭載。小火器や核・生物・化学兵器に対
する防御力を持ち、また、機動性に優れています。

　M270に搭載されるロケット弾にはいくつか種類が
ありますが、いずれも目標上空１０００メートルぐ
らいで弾頭部が分解し、内蔵されている多数の子爆
弾が地上に向けて放出され着弾と同時に爆発します。
これによって２００メートル×１００メートル四方
の人員や軽装甲車両を一挙に殲滅することが可能で
す。湾岸戦争で使用された際は、イラク軍兵士らが
「鋼鉄の雨」と呼んで恐れたといいます。ちなみに、
M270のイスラエル名「スマッシャー」は「粉砕する
人」とか「粉砕機」を意味します。同兵器の抑止力
を的確に言い当てた命名でしょう。

　上空で放たれた子爆弾は、敵車両の装甲が最も薄
い車体上部に降り注ぎます。戦車や歩兵戦闘車の乗
員は殺傷できなくても、エンジンの熱を逃がす格子
部分を撃ち抜いて内部機関を破損し行動不能にする
ことは可能です。この意味で陸自のM270は、沿岸部
に殺到する敵の上陸用舟艇などを水際で一挙制圧す
るのに理想的な武器でした。しかし、日本は不発と
なった子爆弾が後年引き起こす民間被害を恐れ、ク
ラスター爆弾禁止条約（オスロ条約）に署名しまし
た。この結果、クラスター弾頭装備のロケット弾は
すでに廃棄されています。

　対照的に、国家存立を最優先するイスラエルはク
ラスター弾頭装備のスマッシャーを配備し続けてい
ます。両国の国防に対する本気度の差がこんなとこ
ろにも垣間見えます。

教材ビデオ:
 5 WEAPONS BECAUSE OF WHICH NO MIDDLE-EASTERN
COUNTRY WANTS TO GO TO WAR WITH ISRAEL - YouTu
be
https://www.youtube.com/watch?v=kBOZWrvDMf4

（スマッシャー多連装ロケットシステムのビデオは
２：３２から始まります）


基本語彙（カタカナ表記は大雑把なものです）
Battery（バッテリー）砲兵隊
Munition（ミュニション）弾薬
Downrange（ダウンレインジ）銃弾、砲弾の射程圏内
Saturate（サチュレイト）集中砲火を浴びせる
Smasher（スマッシャー）粉砕する人　粉砕機

シナリオ（カウンターを３：１１に合わせてくださ
い）

A three-vehicle battery can send 23184 cluster
 munitions downrange in one minute, saturating
 at one-kilometer by one-kilometer area.  Isra
el has 48 “Smasher” system.

（３車両からなるスマッシャー砲兵隊は、１分間で
２３１８４発のクラスター爆弾を敵陣に向け発射で
きる。これによって1キロ四方の地域が絨毯爆撃に
さらされる。イスラエルは同兵器を４８基保有して
いる）

（スパイク・ミサイルのビデオは３：４１まで続き
ます）


英語一言アドバイス：
saturateは「満たす」「一杯にする」「飽
和状態にする」という意味です。軍事用語の場合は
「銃弾や砲弾で敵陣を満たす」すなわち「集中砲火
を浴びせる」になります。絨毯（カーペット）爆撃
の別名はsaturation bombing（サチュレーション・ボ
ミング）です。

発音サイト：
saturationの発音
　How to pronounce saturation | HowToPronounce.com
https://www.howtopronounce.com/saturation

参考サイト：
 M270多連装ロケット・システム　
MLS - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/MLRS

カチューシャ砲の発射動画　
Katyusha rocket artillery - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=0bWt81vhIyY&feature=emb_logo







（かとう・たかし）



●著者略歴
 
加藤喬（かとう・たかし）
元米陸軍大尉。都立新宿高校卒業後、1979年に渡米。
アラスカ州立大学フェアバンクス校他で学ぶ。88年
空挺学校を卒業。
91年湾岸戦争「砂漠の嵐」作戦に参加。米国防総省
外国語学校日本語学部准教授（2014年7月退官）。
著訳書に第３回開高健賞奨励賞受賞作の『ＬＴ―あ
る“日本製”米軍将校の青春』（TBSブリタニカ）、
『名誉除隊』『加藤大尉の英語ブートキャンプ』
『レックス 戦場をかける犬』『チューズデーに逢う
まで』『ガントリビア99─知られざる銃器と弾薬』
『Ｍ16ライフル』『ＡＫ―47ライフル』『MP5サブ
マシンガン』『ミニミ機関銃』『ＭＰ３８／４０
サブマシンガン（近刊）』（いずれも並木書房）
がある。
 
 
追記

『ミニミ軽機関銃』
https://amzn.to/3gGpNcq
※大好評発売中

「MP5サブマシンガン」
http://okigunnji.com/url/14/
※大人気継続中

『AK-47ライフル』
http://amzn.to/2FVniAr
※根強い人気

『Ｍ16ライフル』発売中♪
http://amzn.to/2yrzEfW

『ガントリビア９９』発売中！
https://www.amazon.co.jp/dp/4890633456/
 
『アメリカンポリス４００の真実！』発売中
https://www.amazon.co.jp/dp/4890633405
 
『チューズデーに逢うまで』発売中
http://www.amazon.co.jp/dp/489063326X
 
『チューズデーに逢うまで』関係の夕刊フジ
電子版記事（桜林美佐氏）：
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20150617/plt1506170830002-n1.htm
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20150624/plt1506240830003-n1.htm
 
『レックス　戦場をかける犬』発売中
http://www.amazon.co.jp/dp/489063309X　
 
『レックス　戦場をかける犬』の書評です
http://honz.jp/33320

オランダの「介護犬」を扱ったテレビコマーシャル。
チューズデー同様、戦場で心の傷を負った兵士を助ける様子が
見事に描かれています。
ナレーションは「介護犬は目が見えない人々だけではなく、
見すぎてしまった兵士たちも助けているのです」
http://www.youtube.com/watch?v=cziqmGdN4n8&feature=share
 
 
 
きょうの記事への感想はこちらから
　⇒ https://okigunnji.com/url/7/
 
ブックレビューの投稿はこちらから
http://okigunnji.com/url/73/
 
---------------------------------------
 
日本語でも英語でも、日常使う言葉の他に様々な専
門用語があります。
軍事用語もそのひとつ。例えば、軍事知識のない日
本人が自衛隊のブリーフィングに出たとしましょう。
「我が部隊は1300時に米軍と超越交代　(passage of
lines)　を行う」とか「我がほう戦車部隊は射撃後、
超信地旋回 (pivot turn) を行って離脱する」と言
われても意味が判然としないでしょう。
 
　同様に軍隊英語では「もう一度言ってください」
は　"Repeat"　ではなく　"Say again"　です。な
ぜなら前者は砲兵隊に「再砲撃」を要請するときに
使う言葉だからです。
 
　兵科によっても言葉が変ってきます。陸軍や空軍
では建物の「階」は日常会話と同じく "floor"です
が、海軍では船にちなんで "deck"と呼びます。　
また軍隊で 「食堂」は "mess hall"、「トイレ」
は "latrine"、「野営・キャンプする」は "to bivouac"　
と表現します。
 
　『軍隊式英会話』ではこのような単語や表現を取
りあげ、軍事用語理解の一助になることを目指して
います。
 
加藤　喬
----------------------------------------
 
 
PS
弊マガジンへのご意見、投稿は、投稿者氏名等の個
人情報を伏せたうえで、メルマガ誌上及びメールマ
ガジン「軍事情報」が主催運営するインターネット
上のサービス（携帯サイトを含む）で紹介させて頂
くことがございます。あらかじめご了承ください。


最後まで読んでくださったあなたに、心から感謝し
ています。
マガジン作りにご協力いただいた各位に、心から感
謝しています。
そして、メルマガを作る機会を与えてくれた祖国に、
心から感謝しています。ありがとうございました。

-----------------------------------------
メールマガジン「軍事情報」
発行：おきらく軍事研究会
（代表・エンリケ航海王子）

メインサイト：
https://okigunnji.com/

問い合わせはこちら：
https://okigunnji.com/url/7/

メールアドレス：
okirakumagmag■■gmail.com(■■を@に置
き換えてください)
------------------------------------------
 


配信停止はコチラから
https://1lejend.com/d.php?t=test&m=example%40example.com
 
----------------------------------
投稿文の著作権は各投稿者に帰属します。
その他すべての文章・記事の著作権はメー
ルマガジン「軍事情報」発行人に帰属し
ます。

Copyright (C) 2000-2020　GUNJIJOHO All rights reserved.