こんにちは、エンリケです。
藤井岳さんの、
「自衛隊・熱砂のイラク派遣90日」
の二十三回目です。
えらいことが起きてしまいます。
さっそくどうぞ
ご意見・ご感想お待ちしてます。
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エンリケ
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自衛隊・熱砂のイラク派遣90日(23)
気のゆるみから断線事故
藤井岳(ふじい・がく)(元陸自2曹)
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□はじめに
読者の皆様、明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願い申し上げます。
2021年も年明けからあまり良いニュースがな
いように感じます。国内外の政情や新型コロナウイ
ルス感染症など、問題は山積みです。
実際のところ、私のような一般人にできることは
限られていて、結局は「できることをやる」。これ
しかないのだと思います。厳しい状況はまだ続くで
しょうが、気持ちだけでも明るく、そして強くもっ
て新しい年を精一杯生き抜く所存です。
▼慈雨か涙雨か
サマーワでの天候について聞かれたことがある。
「雨は降らないのか?」と。
私がサマーワ宿営地にいた約3か月の間、雨が降
ったのはたった2回、しかも両日とも10分足らず
のにわか雨で、非常に激しく降るのが印象的だった。
日記の記載によると、降雨は1回目が11月2日、2回
目が11月20日にあったようだ。
雨が降ると、地面は水浸しとなり、池のようにな
った。しばらくすると急に雨が上がり陽がさしてく
る。その後、一面池のようだった地面は雨水が吸収
され、雨など降らなかったかのように乾いた地面に
戻るのである。
また、9月~10月半ばまでは雲を見ない日が多
かったが、10月後半からは早朝あたりに空一面の
筋雲をよく見るようになった。灼熱のイラクとはい
え、やはり季節によって多少は気候に変化があるの
かなと空を見上げたものである。
▼「クレーンが上がったままだぞ!」
11月13日、この日も整備業務はなく、同じ小
隊の上級陸曹と共に宿営地内の耐弾化作業に従事し
た。クレーン装備の3トン半トラックを運転し、集
積場で耐弾ブロックをクレーンでトラックに積載、
示された位置にブロックを下ろしていく作業である。
午前の作業は順調に進み、昼の休憩後、午後の作
業に入る。要領は午前と同じなので、午後もスムー
ズに作業を進めていた。
本部管理中隊の本部天幕の前にブロックを下ろし、
再度積載のために集積場に向かおうとトラックの
運転席に座る。天幕から運動服装姿の本部管理中隊
長が出て来た。中隊長は眼前のトラックに乗ってい
る私を見つけ「お疲れさん!」と声をかけて下さっ
た。
私も「お疲れ様です!」と敬礼する。前に向き直り、
トラックのエンジンを始動。前進させる。ちらりと
中隊長を見たら目を見開いて私に何かを言おうとし
ているように見えた。
何だろうと思ったのとトラックに衝撃が走ったの
はほぼ同時だった。
「何だ?」
ブレーキを踏み、周りを見る。トラックの車長席
(助手席)のドアが開き、中隊長が顔を覗かせる。
「クレーンが上がったままだぞ!送電線に当たって
いるからゆっくり下がれ!」
「えっ……」
やってしまった!
一瞬で血の気が引いた。
トラックを後退させ、降車すると、送電線が垂れ
下がり、電柱も何本か傾いていた。
周囲の天幕から隊員たちが続々出てくる。
「すぐに通信小隊に連絡!」と誰かの声が聞こえた。
すでに異常を察知していたのか、通信小隊の隊員
が小隊長以下数名駆けつけてきた。
通信小隊長の許へ駆け寄り、深々と頭を下げる。
「申し訳ありません!」
小隊長は私に目もくれず、深刻な顔で現場を見つ
めていた。
そのうちに整備小隊長も駆けつけてきた。私の状
況説明を聞いた後「起こってしまったものは仕方な
い。ここにいても君たちにやれることはないから、
作業に戻れ。注意してな」と言われた。呆然としな
がら作業に戻る。
▼オランダ軍のヘリが私を慰めてくれた…
作業が終わると、関係部署を謝罪して回った。そ
して待機天幕に戻る。終礼までにはまだ時間があっ
た。
天幕に入ると、小隊の同僚の視線が一斉に自分に
向けられるのがわかった。顔が引きつるようだった。
「皆さん、ご迷惑をおかけしました!」頭を下げて
そそくさと自分の椅子に座る。
「仕方ねえよ、気にすんな」
皆から慰められたが、ショックで何も考えられず、
皆の声も遠くから聞こえるようだった。
終礼が終わると、即座に運動着に着替え、ランニ
ングに出る。とにかく走って気分を紛らわせたかっ
た。
ヘリポートから轟音が聞こえる。今日も多国籍軍
のヘリが所用で来ているようだ。しばらくヘリポー
トの方を見ていたが、ヘリが離陸する様子もないの
で、ヘリポートを背に走り出した。走り出してしば
らくすると、背後から轟音が迫ってくる。私の頭上
を低空で航過して行ったのはオランダ軍のヘリだっ
た。ヘリを見つめながら走る。すると、ヘリは右に
急旋回しながら火の玉を2、3吐き出して飛び去っ
た。
フレアだ。主に赤外線誘導ミサイルの撹乱に使用
される燃焼物だ。
挨拶代わりに撒いたのだろう。粋なパイロットだ。
航空機マニアの私にはたまらない瞬間。私は惚
(ほう)けたように立ち止まってヘリを見送った。
「凄い!」。思わず笑顔になる。
落ち込んでいた私を最も慰めてくれたのは、名も
知らぬオランダ軍のヘリコプターパイロットだった。
(つづく)
(ふじい・がく)
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【著者紹介】
藤井岳(ふじい・がく)ペンネーム
1979年岩手県一関市生まれ。1996年自衛隊生徒とし
て陸上自衛隊入隊。少年工科学校へ入校。卒業後機
甲生徒課程を経て第9戦車大隊(岩手)で戦車乗員
として勤務。2004年第3次イラク復興支援群に参加、
イラク・サマワにて任務に就く。2005年富士学校
(富士)に転属。機甲科部で助教として戦車教育に
従事。2008年退職。フリーランスフォトグラファー
として活動を開始。自衛隊航空部隊の撮影、取材に
取り組む。2015年から「PANZER」誌で執筆開始。そ
の後「丸」「JGROUNDEX」「JWings」などで写真
や戦車に関する記事を発表。現在に至る。
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