配信日時 2021/01/07 20:00

【ライター・渡邉陽子のコラム (308)】  海上自衛隊幹部候補生学校(4)

こんばんは、エンリケです。

「海上自衛隊幹部候補生学校」の四回目です。

さすが江田島。
トリビアがこんなにあります!

帽振れをめぐる話も必読ですよ。

さっそくどうぞ


エンリケ

追伸
東京五輪は一年延期されました。
『オリンピックと自衛隊 1964-2020』
を読んで、来年に思いを馳せます。
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『ライター・渡邉陽子のコラム (308)』

 海上自衛隊幹部候補生学校(4)

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あけましておめでとうございます。渡邉陽子です。
今年も自衛隊と国民をつなぐ一助となるべく精進しますので、どう
ぞよろしくお願いいたします。



記事掲載のお知らせです。

『丸』12月号の「世界の軍備」に「個人用防護装備防護マスク」が
掲載されました。今回は自衛隊の装備品である防護マスクだけでな
く、新型コロナで人々の生活に不可欠なアイテムとなったマスクに
ついてもご紹介しています。医療従事者が使うサージカルマスクと
自衛隊の防護マスクの製造メーカーは同じなのです。
マスクの正しい装着方法についても触れました。
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『PANZER』12月号に「神は賽子を振らない 第32代陸上幕僚長火箱
芳文の半生」第20回が掲載されました。
今回は防衛大学校幹事時代のお話前編です。幹事とは、一般の学校
でいう副校長。自身が学んだ防大に、今度は将官として戻ってきま
した。凱旋ともいえますが「演習場で状況中」が三度の飯より好物
の火箱氏、最初はあまり乗り気な人事ではありませんでした。しか
も当時の防大生は…… https://amzn.to/3ovGXOA

月刊『正論』6月号に「自衛隊あってのオリンピック」
最終回が掲載されました。https://amzn.to/3cOzOSQ



■海上自衛隊幹部候補生学校(4)

2021年最初のメルマガも、海上自衛隊幹部候補生学校の続きです。
旧帝国海軍の伝統を色濃く残す海上自衛隊幹部候補生学校には、ト
リビア的なネタが山ほどあります。ここではそのほんの一部をご紹
介しましょう。

●五省
至誠に悖るなかりしか (真心に反する点はなかったか)
言行に恥ずるなかりしか(言行不一致な点はなかったか)
気力に欠くるなかりしか(精神力は十分であったか)
努力に憾みなかりしか (十分に努力をしたか)
不精に亘るなかりしか (最後まで十分に取り組んだか)
五省は昭和7年に当時の海軍兵学校長、松下元少将が創始したもの。
松下校長は、兵学校生徒が日々の各自の行為を反省し明日の修養に
備えるよう、五か条の反省事項、いわゆる「五省」を考え出しまし
た。
毎晩自習終了時刻の5分前に、当番生徒が「五省」の5項目を問い
かけます。各生徒は姿勢を正し、瞑想しながら心の中でその問いに
答え、今日1日を自省自戒するというものでした。
海上自衛隊幹部候補生学校でも海軍時代の伝統を受け継ぎ、学生た
ちは兵学校時代と同じスタイルで毎晩自習終了後、五省により自分
を顧みて、日々の修養に励んでいます。
なお、敗戦後来日した米国海軍のウィリアム・マック海軍中将が
「五省」に感銘を受け、アナポリスの海軍兵学校に持ち帰り、翻訳
させて現在でも教育に利用しているといわれますが、真偽のほどは
定かではありません。

●幹事付制度
「幹事付」とは候補生の兄貴役。幹事付A、幹事付Bと、毎年2名の
幹事付が学生館の一室に机を構え、候補生たちの居住区全般と候補
生そのものに目を光らせます。
一般的には「兄貴」より「赤鬼」「青鬼」の名称のほうがはるかに
浸透しており、候補生からすれば、ただただひたすら怖くて恐ろし
い存在。候補生たちにとって「超絶怖い」を人の形にすると幹事付
になると言っても過言ではありません。幹事付は候補生とあれば年
上だろうが容赦しないため、自分の父親ほどの年の候補生が涙を流
すことすらあるといいます。候補生のプライドを粉々に打ち砕き、
心をえぐり、散々落としたと思ったところでさらに落とす。これは
きついです。家族ですら関係の希薄な家庭も珍しくない時代ですか
ら、幹事付のような濃い存在に出会うと、候補生たちは一様にカル
チャーショックを受けます。
幹事付制度は海軍時代からの伝統ですが、鬼教官役はあまりにハー
ドワークなため、その任期は1年。鬼になりきるのは1年が限度な
のです。罵倒しまくる方もつらいんですね。幹事付の罵声の裏には
海よりも深い愛情があふれているのです。

●巡検
各建物の清掃状況や設備、人員の確認のため、毎日行われる点検の
こと。このとき少しでも整理整頓に不備があれば、すかさずチェッ
ク&指導が入ります。コインが跳ね上がるほどシワひとつなくシー
ツが張られたベッドを作るため、候補生たちはシーツにアイロンを
かけることすらあります。

●幹部候補生学校の表玄関
守衛所のある道路に面した門が幹部候補生学校の表玄関と思いがち
ですが、実は正式な表玄関は江田島湾内に突き出した浮き桟橋。こ
ちらが「表桟橋」と呼ばれる、幹部候補生学校の正門です。卒業生
は音楽隊の演奏が響くなか、ここから遠洋練習航海へ旅立って行き
ます。

●帽振れ
いわば船乗りのお約束。別れを惜しむとき、一斉にかぶっていた帽
子を右手に持って左右に振ります。幹部候補生学校では職員が離任
するときや卒業生が遠洋航海に旅立つ際に行なわれます。特に卒業
生が表桟橋から遠洋航海に出発するとき、陸に残った幹事付の最後
の号令、「帽振れー!」で一斉に船上から帽振れをする光景は絵に
なります。
余談ながら知り合いの幹部海上自衛官は、「甲板からの帽振れが十
分でなかった場合、艦艇から引きずり降ろして江田島に残す」と言
われたそうで、「絶対に、絶対に、江田島には戻りたくなかったか
ら腕がちぎれんばかりに帽振れした」と言っていました。

●同期の桜
中庭中央西側にある桜は『同期の桜』のモデルになった桜との説も。
ほかの桜と同じ品種なのに、この桜だけはなぜか葉が一回り大きい
そうです。




(つづく)



(わたなべ・ようこ)


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□著者略歴

渡邉陽子(わたなべ・ようこ)
神奈川県出身。大学卒業後、IT企業、編集プロダクション勤
務を経て2001年よりフリーランス。2003年から月刊
『セキュリタリアン』『MAMOR』などに寄稿。
現在は自衛隊関連の情報誌などで記事を発表。メルマガ「軍事
情報」で自衛隊関連の記事を配信中。
 
2016年6月、デビュー作
『オリンピックと自衛隊 1964-2020』を刊行。


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