配信日時 2020/12/25 20:00

【加藤大尉の軍隊式英会話:兵器編】イスラエル軍事力(4)「イスラエルの核戦略」

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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応
予備自衛官でもあります。
お仕事の依頼など、問い合わせは以下よりお気軽に
どうぞ
 
E-mail hirafuji@mbr.nifty.com
WEB http://wos.cool.coocan.jp

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こんにちは。エンリケです。

加藤さんが翻訳した武器本シリーズ最新刊が
出ました。

今回は、
分隊支援火器といえばこれ!
ミニミ/M249です。

『ミニミ軽機関銃』
クリス マクナブ (著), 床井 雅美 (監修), 加藤 喬 (翻訳)
2020/7/10 発行
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武器オンチの日本人には
特におススメです。

きょうも面白いです。

冒頭文にうなづきっぱなしでした。

ことしの配信は今号が最後です。
新年最初の配信は8日の予定です。

さっそくどうぞ


エンリケ

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加藤大尉の軍隊式英会話:兵器編     

イスラエル軍事力(4)「イスラエルの核戦略」


Takashi Kato

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□年末のご挨拶

 本年も『加藤大尉の軍隊式英会話』をご愛読いた
だき感謝しています。

 2020年はさまざまな意味でヒトの能力が試さ
れる年となりました。その過程で気づかされたのは、
「生情報を分析して自分なりの結論を下す」力が今
ほど求められている時代はないということでした。

 武漢ウイルスの起源や米大統領選における組織的
不正疑惑にしろ、あるいは憲法改正の是非にしろ、
主流メディアの見解だけでなく他の視点も突き合わ
せて判断する必要があります。その際、当事者への
先入観や好悪の情に左右されたり、陰謀説に絡めと
られたりしない慎重さも不可欠です。

 2021年も、引き続きこの執筆方針で連載を続
けていきます。どうかよろしくお願いします。

 来年は、皆さんの日常に「昔の生活」が戻ってき
ますように。

アリゾナ州ハーフォードにて
加藤 喬

□トランプツイッター番外編
 

 アメリカ市民として選挙権を得て以来、欠かさず
投票してきました。米国では州や投票区によって投
票機材が異なりますが、私の場合はずっと投票用紙
に穴をあけるパンチカード式か、ペンで記入するマ
ークシート式でした。どちらも「紙の記録」が残る
ので、自分のようなアナログ人間でも安心して一票
を投じることができました。

これに対し、有権者がタッチスクリーンで入力する
デジタル投票システムでは、どの候補に投じたかの
記録は電子媒介に保存されるだけです。万が一、改
ざんや消去が行なわれてもバックアップする証拠が
生じないわけです。選挙制度を蝕みかねない欠陥で
しょう。

 共和党のトランプ氏が民主党のヒラリー・クリン
トン元国務長官に勝利した2016年の大統領選挙
では、ロシアによる選挙介入疑惑が取りざたされま
した。サイバー攻撃に対するデジタル投票機の脆弱
性が指摘され、クリントン元大統領は2018年、
英国放送協会(BBC)とのインタビューで、

「2016年の大統領選挙で、サイバー攻撃によっ
てどの程度の不正が行なわれたのかはまだ不明だが、
アメリカの全有権者はペンと紙による投票に戻るべ
きだ」

 と述べています。当時、多くのサイバーセキュリ
ティ専門家と主流メディアがクリントン氏の主張に
賛同しました。しかし、各州の選挙管理者らはこれ
らの警鐘を無視してデジタル投票機購入を継続。そ
の結果、今回の大統領選挙では実に1400万人の
有権者が電子投票システムを使用したのです。

主流マスコミは完璧に無視していますが、ハッキン
グ不正を主張するトランプ陣営の法廷闘争は、選挙
人団投票が終わったいまも続いています。

個人的に腑に落ちないのは、あれほどサイバー攻撃
の危険を警告していたマスコミと専門家が、手のひ
らを返したように「本選挙では、組織的不正やサイ
バー攻撃が行なわれた形跡はない」とトランプ陣営
のハッキング不正主張を否定したことです。もとよ
り、一介の市民に疑惑の真相は分かりかねます。し
かし・・・米有権者の約半分が「選挙不正があった」
と考えている現状では、電子投票システムへの信
頼は地に堕ちたと見るべきでしょう。

ちなみに、来年早々ジョージア州で行なわれる上院
決選投票には、共和あるいは民主いずれの政党が過
半数を獲得するかがかかっています。アメリカを
「夢と希望の国」と見る保守層と、「人種差別と搾取
の国」と蔑む左派との戦いです。アメリカの命運を
左右する重大選挙を現状のまま行なえば、来たる決
選投票も2020年大統領選の二の舞を演じるのは
必至。私はクリントン氏の提言「ペンと紙による投
票」に、党派を超えた1票を投じます。
 
 今後、日本でも経費節減を名目に電子投票の意見
が出てくることでしょう。アメリカの現状を鑑みる
と、私は反対です。公正な選挙制度の維持にはコス
トがかかるもの。「民主主義」と「お金」を天秤に
かけてはいけません。

 
▼イスラエルの核戦略

 兵器は人が生存をかけて使う道具。生き延びるた
めには相手より優れた武器を持たねばなりません。
兵器開発競争が文明の黎明から今日まで途切れなく
続いているのはこのためです。よく指摘される武器
の効用に「抑止力」(deterrence)があります。刀を
抜かずとも相手を委縮させ対峙を防ぐ「鞘の内の勝
ち」の如く、敵に攻撃を思いとどまらせる圧倒的な
破壊力のことです。「平和を望むがゆえに兵器を手
放せない」。人類が陥って久しいこのジレンマの裏
面が「抑止力」なのです。
「加藤大尉の軍隊式英会話:兵器編」では、それぞ
れの武器が持つ抑止力に着目。兵器と平和の関係を
考えていくことにします。

 イスラエルの国防4回目は同国の核戦略を採りあ
げます。
 
 イスラエルは自国の核兵器に関し「曖昧政策」を
とっています。核配備を肯定も否定もしないことで
得られるメリットとは何か? ひとつには、通常兵
器しか持たない敵国を「疑心暗鬼の状態」に置くこ
とで抑止効果を高めることができるからです。

 また、最大にして最強の盟邦アメリカに対する政
治的配慮との見方もあります。アメリカは台湾、イ
ンド、パキスタン、北朝鮮、イランなどの核兵器開
発に反対してきており、イスラエルの核保有だけを
認めれば「二重基準」だと批判されます。つまり、
米国を核拡散防止に関する揉め事に巻き込まないた
めの方便だという解釈です。

 熱核爆弾(水素爆弾)も含め、イスラエルは80
発から400発の核弾頭を実戦配備していると推定
されています。運搬手段にはアメリカから導入した
F-15とF-16戦闘機、国産のエリコ(ジェリコ)弾道
ミサイル、そして、ドイツから購入したドルフィン
型通常潜水艦があります。

イスラエル版核三本柱と呼ばれる戦略には、核兵器
を陸海空に分散させることで奇襲を生き延び、報復
能力を確保する目的があります。ことに6隻あるド
ルフィン型潜水艦は交代で外洋パトロールを行なっ
ているといわれ、極めて高い生存性を有しています。
同艦は魚雷発射管から打ち出せる巡航ミサイルを
4発搭載しており、弾頭の威力は広島型原爆の13
倍近い200キロトン。「イスラエルを地図上から
抹殺する」が国是のイランも、これでは迂闊にちょ
っかいは出せません。

 日本人が核兵器に抱く「相反する感情」はもっと
もです。しかし日本が直面している現実は無慈悲。
中国とロシアの核に囲まれており、北朝鮮が核実戦
配備を完了するのも時間の問題でしょう。アメリカ
がかざす核の傘でこれまでは平和独立が保たれてき
ましたが、米国の変質が始まりつつある今、他力本
願の核抑止力がいつまで持つのかは不透明です

 他を頼らず国防努力を貫徹してきたイスラエルの
姿に、19世紀の英国首相が語った言葉が蘇ります。
両者に共通するのは、自国の強さに対するしたた
かな自信と自負。日本が学ぶべき主権国家の矜持が
ここにあります。


「永遠の敵も永劫の盟邦も存在しない。あるのは永
久の国益のみ」(パーマストン子爵)

教材ビデオ:
 WHY NO ENEMIES OF ISRAEL DARES TO TOUCH IT? - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=tdGMUhTkdDE&list=PLk2kWhtlkeERNmHhjjwD0qbox5r9ZGvvh&index=168

(イスラエルの核戦力ビデオは4:20から始まり
ます)

基本語彙(カタカナ表記は大雑把なものです)
Deploy(ディプロイ)軍隊を展開する
Nuclear triad(ニュークリア―・トライアッド)
核戦力の三本柱
Launch(ラーンチ)発射する

シナリオ(カウンターを5:00に合わせてくださ
い)

Israel’s weapons are supposed to be deployed o
nto Israel version of Nuclear Triad.

(イスラエルの核兵器は、イスラエル版核戦力三本
柱を通じて展開されることになっている)

Nuclear Triad is the ability to launch nukes f
rom land, air and sea assets.

(核戦力三本柱とは、核兵器を陸海空の運用手段を
用いて発射する能力である)


(イスラエル空軍のビデオは4:20まで続きます)


英語一言アドバイス:
launchにはいくつか異なる意味があり、軍事用語で
は「ロケットやミサイルを発射する」または「船を
進水させる」ことを指します。ロケットの発射台は
 launch padと言います。

発音サイト:
launchの発音 
How to pronounce launch | HowToPronounce.com
https://www.howtopronounce.com/launch

参考サイト:
イスラエルの核戦略 イスラエルの大量破壊兵器- Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%82%A8%E3%83%AB%E3%81%AE%E5%A4%A7%E9%87%8F%E7%A0%B4%E5%A3%8A%E5%85%B5%E5%99%A8

イスラエル空軍のF-15 F-15E (航空機) - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/F-15E_(%E8%88%AA%E7%A9%BA%E6%A9%9F)#%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%82%A8%E3%83%AB

エリコ・ミサイル エリコ (ミサイル) - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%AA%E3%82%B3_(%E3%83%9F%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%AB)

ドルフィン級潜水艦 ドルフィン級潜水艦 - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%89%E3%83%AB%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%B3%E7%B4%9A%E6%BD%9C%E6%B0%B4%E8%89%A6




(かとう・たかし)



●著者略歴
 
加藤喬(かとう・たかし)
元米陸軍大尉。都立新宿高校卒業後、1979年に渡米。
アラスカ州立大学フェアバンクス校他で学ぶ。88年
空挺学校を卒業。
91年湾岸戦争「砂漠の嵐」作戦に参加。米国防総省
外国語学校日本語学部准教授(2014年7月退官)。
著訳書に第3回開高健賞奨励賞受賞作の『LT―あ
る“日本製”米軍将校の青春』(TBSブリタニカ)、
『名誉除隊』『加藤大尉の英語ブートキャンプ』
『レックス 戦場をかける犬』『チューズデーに逢う
まで』『ガントリビア99─知られざる銃器と弾薬』
『M16ライフル』『AK―47ライフル』『MP5サブ
マシンガン』『ミニミ機関銃』『MP38/40
サブマシンガン(近刊)』(いずれも並木書房)
がある。
 
 
追記

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『チューズデーに逢うまで』関係の夕刊フジ
電子版記事(桜林美佐氏):
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20150617/plt1506170830002-n1.htm
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20150624/plt1506240830003-n1.htm
 
『レックス 戦場をかける犬』発売中
http://www.amazon.co.jp/dp/489063309X 
 
『レックス 戦場をかける犬』の書評です
http://honz.jp/33320

オランダの「介護犬」を扱ったテレビコマーシャル。
チューズデー同様、戦場で心の傷を負った兵士を助ける様子が
見事に描かれています。
ナレーションは「介護犬は目が見えない人々だけではなく、
見すぎてしまった兵士たちも助けているのです」
http://www.youtube.com/watch?v=cziqmGdN4n8&feature=share
 
 
 
きょうの記事への感想はこちらから
 ⇒ https://okigunnji.com/url/7/
 
ブックレビューの投稿はこちらから
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日本語でも英語でも、日常使う言葉の他に様々な専
門用語があります。
軍事用語もそのひとつ。例えば、軍事知識のない日
本人が自衛隊のブリーフィングに出たとしましょう。
「我が部隊は1300時に米軍と超越交代 (passage of
lines) を行う」とか「我がほう戦車部隊は射撃後、
超信地旋回 (pivot turn) を行って離脱する」と言
われても意味が判然としないでしょう。
 
 同様に軍隊英語では「もう一度言ってください」
は "Repeat" ではなく "Say again" です。な
ぜなら前者は砲兵隊に「再砲撃」を要請するときに
使う言葉だからです。
 
 兵科によっても言葉が変ってきます。陸軍や空軍
では建物の「階」は日常会話と同じく "floor"です
が、海軍では船にちなんで "deck"と呼びます。 
また軍隊で 「食堂」は "mess hall"、「トイレ」
は "latrine"、「野営・キャンプする」は "to bivouac" 
と表現します。
 
 『軍隊式英会話』ではこのような単語や表現を取
りあげ、軍事用語理解の一助になることを目指して
います。
 
加藤 喬
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PS
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