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荒木さんの最新刊
知られざる重要組織「自衛隊警務隊」にスポットを
当て、警務隊とは何か?の問いに応えるとともに、
警務隊で修練されている「逮捕術」を初めて明らか
にしたこの本は、小平学校の全面協力を受けて作ら
れました。
そのため、最高水準の逮捕術の技の連続写真が実に
多く載っています。それだけでなく、技のすべてを
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自衛隊関係者、自衛隊ファン、憲兵ファンはもちろん、
武術家、武道家、武術ファンにも目を通してほしい
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『自衛隊警務隊逮捕術』
荒木肇(著)
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こんにちは。エンリケです。
「陸軍工兵から施設科へ」の十一回目です。
ことしの配信は今号が最後です。
年明け最初の配信は6日になります。
さっそくどうぞ。
エンリケ
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陸軍工兵から施設科へ(11)
日露戦争の工兵の戦い(1)
荒木 肇
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□ご挨拶
皆さま、今年もいよいよ残すところ10日余りに
なりました今のところ、わたしの身の回りには罹患
された方も、その濃厚接触者とされる方もおりませ
ん。ただ、自衛隊の看護官の派出があったように、
医療機関の皆さんの体力も限界ではないでしょうか。
▼砲兵と工兵は大きかった
明治の中頃、歩兵は身長5尺2寸以上の甲種合格
者から選ばれた。約158センチメートルである。
今のように、男性成人の平均身長が170センチの
時代ではない。1897(明治30)年頃の男子成
人の平均身長が154センチの時代である。
現役の歩兵は世間の男性の中では、やはり堂々たる
偉丈夫(いじょうぶ)だった。砲兵や工兵は、それ
よりも大きかった。砲兵や工兵の現役兵になったの
は、5尺4寸以上の青年だった。それは最低でも1
64センチである。成人男性の平均よりも10セン
チも大きかったのだ。
「日本陸軍の工兵や砲兵は、歩兵と比べて明らかに
身長と体格が違った」というのが、西欧の観戦武官
(従軍した外国軍将校)の日記に残っている。最低
基準が6センチも違っていては、大きな砲兵・工兵
と小さな歩兵では、頭一つ違うと見えても仕方がな
い。
ついでに1888(明治21)年の検査の記録を
みてみよう。受検者の総人数は約30万3000人
で、身長が5尺以上(151.5センチ)あって、
他の面でも合格基準を満たしているのは全体の56
%だった。
これが1913(大正2)年だと受検者の平均身
長は158.2センチに伸び、1926(昭和元)
年にはさらに159.4センチとなっている。そこ
で、翌年施行の「兵役法」では、身長155センチ
以上を合格とした。
身長、体重、胸囲、視力(裸眼で0.6以上)、
色覚などを役所の係員や衛生下士官が測定し記録を
する。総合判定を下すのは徴兵医官といわれた軍医
官や、民間から委嘱された医師である。裸体にされ
て、肛門を調べ(慢性の痔などがないか)、性器を
しごいたという。性病などを軍隊に持ちこまれたら
大変だから、軍医もむきになるのである。同じよう
に、胸膜炎や結核も軍隊からは嫌われた。それこそ
「密」であるのが軍隊生活である。伝染病は、敵を
見もしないで戦力をそぐ大敵だった。
身体検査だけでは、兵科も役種(現役か補充兵か)
も決まらない。兵科ごとの必要新兵数は師管区ごと
に決まっている。大正時代や昭和戦前期では籤(く
じ)を引いて、甲種・乙種の中から現役兵や補充兵
を選ぶのがふつうだった。
▼前職が影響した兵科決定
さて、前職である。いまのように、97%近くも
の若者が高等学校、あるいは同等の学校に進み、働
いていない社会とは異なる。いま手元にある明治3
3年度「大阪府壮丁学力調査」によれば、全員で1
万2250人である。
そのうち中学卒業の者が31人でしかなかった。
0.25%である。中学卒業生と同等の学力がある
と認められた者が163人、1.3%で、合計して
も約1.6%。これが働いて家に金を入れなくても
いい階層にあたる。
「昔の貧しいけれど、頭のいい少年は軍学校に進ん
だ」などという定説を語る人がいるが、当時だって
中学を出ていなければ入学はなかなか難しかった。
だから、士官学校へ入ったのは確かに大金持ちでは
なかったにせよ、決して貧しい家の子ではなかった。
中等学校の5年間もの間、働かなくて済む家の子だ
ったことは確かである。
高等小学校(当時は尋常科4年だけが義務教育だっ
た)卒業と、同等の者は1739人、全体の14.
2%で、この人たちは入営すると多くが上等兵にな
った。しかも、「短期伍長」という制度があって、
現役の3年目には伍長になって勤務し予備役になる。
そうした下級幹部養成システムの花形だったのが、
当時の高等科卒業生である。
続いて尋常小学卒業生(2687人)と同等者(2
021人)がいて、全体の38.4%だった。さら
に「稍(やや)読書算術を為し得る者」が2738
人、22.4%である。そうして、「読書算術を知
らざる者」が2871人で全体に占める割合は
23.4%もいた。これが明治の社会の実態の一部
である。
兵隊検査を受ける若者の45%もが、「稍(やや)
」と「全く文字が読み書きできず、計算も出来ない
」のだ。これが、近代社会を建設して30年の実態
である。これもまた定説では、「日本人の識字率は
世界でもひどく高く、ほとんどが読み書きできた」
ということが言われてきた。どこからそうした認識
が出たのだろうか。少なくとも欧米との比較でいえ
ば、明治の日本人は決して先進国と肩を並べるとい
った程度ではない。
▼体格と甲乙丙丁戊種の実態
中学卒業、その同等者である194人のうち、甲
種は50人である。丙種は67人もいた。学歴があ
る者の4人に1人(25.8%)が甲種で、体格が
良かった。おそらくは近視眼による視力不足だった
だろう。高等小学校とその同等者は1739人で、
甲種は654人で37.6%だった。同じように尋
常科卒と同等者は、甲種の率は44.6%である。
学歴や学力が低い者は、甲種になる率が低い。甲
種は34.4%だった。丙種である率もとても高か
った。およそ35%にもなった。丙種全体が366
1人で、この階層はその53.6%も占めた。
こうしてみると、現役兵になった甲種合格出身の
兵士は、学校歴も学力も高く、また健康な者であっ
たことが分かる。
甲種が全体に占める比率は38.4%、補充兵に
充てられた乙種は21.8%、国民兵役に編入され
た丙種は29.9%、不合格の丁種は9.7%、翌
年の再受検を命じられた戊種は0.21%だった。
こうした中で工兵になる者は、読み書き算術がで
きて、腕力のある者とされた。市町村役場の兵事掛
によって作られ、聯隊区司令部に送られた「壮丁身
上書」などには細かく、小学校の成績や、卒業後の
動静などが書かれている。
多くの少年たちは10歳から12歳で親元を離れ
た。あるいは、農山漁村では、家族の中で労働をし
ていた。入営前の経歴が、鳶職、土工、木工、馬方
などと記載されていたら、工兵に指定されることが
多かった。また、学校の成績が良く、馬に慣れてい
る者は輜重兵や騎兵になることが当たり前だった。
騎兵は戦術的な知識がなくてはならないし、輜重兵
は多くの輸卒の指揮をする。砲兵や工兵も、理数的
な能力が高いことが要求される。
では、次回は平時の工兵と動員された後の工兵部
隊を調べてみよう。
(つづく)
(あらき・はじめ)
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●著者略歴
荒木 肇(あらき・はじめ)
1951年東京生まれ。横浜国立大学教育学部卒業、
同大学院修士課程修了。専攻は日本近代教育史。
日露戦後の社会と教育改革、大正期の学校教育と陸
海軍教育、主に陸軍と学校、社会との関係の研究を
行なう。
横浜市の小学校で勤務するかたわら、横浜市情報処
理教育センター研究員、同小学校理科研究会役員、
同研修センター委嘱役員等を歴任。1993年退職。
生涯学習研究センター常任理事、聖ヶ丘教育福祉専
門学校講師(教育原理)などをつとめる。1999年4月
から川崎市立学校に勤務。2000年から横浜市主任児
童委員にも委嘱される。2001年には陸上幕僚長感謝
状を受ける。
年間を通して、自衛隊部隊、機関、学校などで講演、
講話を行なっている。
著書に『教育改革Q&A(共著)』(パテント社)、
『静かに語れ歴史教育』『日本人はどのようにして
軍隊をつくったのか―安全保障と技術の近代史』
(出窓社)、『現代(いま)がわかる-学習版現代
用語の基礎知識(共著)』(自由国民社)、『自衛
隊という学校』『続自衛隊という学校』『子どもに
嫌われる先生』『指揮官は語る』『自衛隊就職ガイ
ド』『学校で教えない自衛隊』『学校で教えない日
本陸軍と自衛隊』『あなたの習った日本史はもう古
い!―昭和と平成の教科書読み比べ』『東日本大震
災と自衛隊―自衛隊は、なぜ頑張れたか?』『脚気
と軍隊─陸海軍医団の対立』『日本軍はこんな兵器
で戦った─国産小火器の開発と用兵思想』『自衛隊
警務隊逮捕術』(並木書房)がある。
『自衛隊の災害派遣、知られざる実態に迫る-訓練
された《兵隊》、お寒い自治体』 荒木肇
「中央公論」2020年3月号
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