こんにちは、エンリケです。
105回目の美佐日記。
とりあえず、
とにかく、
まあ読んでみてください。
エンリケ
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今年4月に刊行された『自衛官が語る災害派遣の記
録』に続く、第2弾『自衛官が語る海外活動の記録』
(桜林美佐監修・自衛隊家族会編)が発売されてい
ます。中東シーレーンの安全確保をめぐって新たな
自衛隊派遣が行われているこの時期にタイミングを
合わせたような出版です。現地で自衛官たちが何を
思い、どのような苦労をして、任務をこなしてきた
か、25人の自衛官のリアルな体験記です。
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桜林美佐の「美佐日記」(105)
「残念なお役所仕事」
桜林美佐(防衛問題研究家)
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おはようございます。桜林です。「男もすなる日記
といふものを、女もしてみむとてするなり」の『土
佐日記』ならぬ『美佐日記』は令和2年12月の今
回で105回目です。
サムライ先生、お返事ありがとうございました(こ
の場を借りて)!
それにしても、最近、いえ前からかもしれませんが、
口をあんぐり開けて「はあ?」と言ってしまうこ
とが多くないですか?
旭川の病院に自衛隊の看護官を派遣することになり、
インタビューに答えていた旭川保健所の部長のコ
メントには驚きました。
「自衛隊の皆さんにできることを、まず頑張ってい
ただきたい」
なぜ?上から目線なの?「お願いします」という気
持ちがないから、このような言葉が出てくるのでし
ょう。
もしかしたら前後に違うコメントがあったのかもし
れませんが、そもそも非代替性に疑問が多い災害派
遣が多くなっている中で、まさに「はあ?」としか
言いようがありません。
いつも書いているように、自衛隊医療は自衛隊の自
己完結機能の一つです。派遣されることで国民に安
心を与えるという意義は私も認めますし、政治的要
求に応じざるを得ないことも理解していますが、少
なくとも安易に派遣要請していないか、内容は適切
か、については検証すべきだと思います。
鳥インフルも自衛隊に頼むのが当たり前のようにな
っているとしたら悪しき風潮です。
河野防衛大臣の時に、コロナに関わる派遣を自治体
職員などに対する「教育支援」とし、期間も区切っ
て、教育終了後はしっかり引き継いでもらうことを
強く前面に出していましたので、あのような押しの
強さは自衛隊トップに必要ではないかと感じます。
とにかく、自衛隊の誇りが傷つけられることが多い
ですが、一方で、ここで書いてきたように自衛隊側
も人に優しくしているか問われる事案が次々に報告
されているのも事実です。
なぜか最近、予備自衛官や知り合いが予備自という
方からの苦情を聞くことが多くなっているのですが、
いや、もうこの際ですから、どんどん言ってくだ
さいというかんじです。
コロナの影響で様々な混乱が起きているようです。
例えば、ある人は「招集訓練中にコロナ感染が分か
ったら2週間その場に留め置かれます」と言われ、
さらにその間の食事など諸経費は自腹であるとされ、
会社の人もそんなことは納得できないと憤ってし
まい、板挟みになったり、前にも書きましたが、訓
練の中止で会社への手当もなくなるという人がいた
り、なくならないという人がいたり・・。
なかなか関係者の間で認識が共通になっていない混
乱がまずはありますが、それとさらに問題なのは、
相手の置かれた状況を慮ることのない伝え方ではな
いでしょうか。
ある医師の予備自の方は訓練のために代わりのお医
者さんを手配したり、諸々の抜けた穴を埋める準備
には100万円ほどの経費がかかるといいます。そ
れでも国の役に立つためにという一心で準備を整え
たところで、直前になって訓練の中止をアッサリと
告げられたということで、さすがに落胆していまし
た。
どんなに良い予備自衛官募集の広報動画を作っても、
これでは虚しいですよね・・。隊員募集で奔走し
ても自らどんどんハシゴを外してしまっているよう
に見えてしまいます。
前述の旭川の保健所だとて職員にはギリギリのとこ
ろで頑張っている人もいるのでしょうけど、無神経
なおじさんの言葉遣いのせいで、組織の評判はあっ
という間に台無しになります。細心の注意をする必
要があるのです。
丁寧な説明や相手の立場を想像しての会話という、
こうした事々は法律を作ったり制度や予算を必要と
するわけではないので、本当はそんなに難しいこと
ではないはずです。
他方、現場ではどうにもできなさそうな、これまた
「残念なお役所仕事」事案もあるようです。
神戸新聞によれば、コロナの影響で医療用ガウンが
不足したため、兵庫県のカバンメーカー3社が県か
らの依頼でこれまでのカバン製造技術を活用してガ
ウンを製造し、納入したそうです。
ガウンは、ポリ袋を使ってなんとかしのいでいた医
療現場で大変感謝され、各社は頑張った甲斐があっ
たと感じていたそうですが、そのうちに、緊急事態
宣言が解除されると安い中国製が入ってきて、当初
は3社と随意契約した県も競争入札に切り替えたの
だそうです。
3社の在庫は積み上がり、行き場がなくなっている
といいます。そのうちの1社である「服部」の社長
はコメントしています。
「国内産確保の必要性が言われるが、有事にだけ頑
張るのは難しい。コストを下げるためにも、普段か
ら最低限でも安定した注文がほしい」
ああ・・・、聞いたことがある話ではないですか。
防衛産業でも同様の事例あります、たくさん。
困った時だけすがりつき、のど元過ぎたらアッサリ
と切る。いえ、そのような冷酷なことをしている自
覚は関係者にはないでしょう。そもそもは競争入札
で少しでも税のムダ遣いをなくさねばならないわけ
ですから。あるべき体制に戻すだけ。
中国製よりも値段が高いのは、安定受注できるよう
になれば解消につながるのにそれができないという
悪循環・・。国内産業重視なんて大嘘ではないです
か。
結論としては、あれほど中国製マスクの不足で国内
調達の重要性を思い知ったわけですから、国として
地方に確たる国産調達の方針を示すべきでしょう。
ただし、随契には厳しい管理も必要になります。福
岡県の朝倉市では2017年の九州北部豪雨の復旧
工事を随意契約で発注しましたが、その担当者が収
賄容疑で逮捕されました。
こうした災害直後の土砂撤去作業などは担い手を探
すのが大変で、公募しても入札不調も多いため、緊
急的に随意契約がとられるのですが、同市ではその
後も契約が継続され、担当者に現金や旅行券が渡さ
れていたということでした。
このような前例から、役所側から随契を率先して進
めるのは緊急的措置以外は難しいのでしょう。しか
し、だからと言って安かろう悪かろうで終わらせる
のではなく、入札できなかった企業に対しても救済
策を取る仕組みを作らないと国内中小企業は維持で
きないのではないでしょうか。
「残念なお役所仕事」は、今日も全国のどこかで全
く悪気なく行われているのだろうと思います。そし
て、それによって傷つき、悩み、涙を流す人がいて、
もしかしたら命を投げ出す人だっているかもしれ
ません。
そう考えると、核兵器や銃といった恐ろしがられる
兵器よりも「残念なお役所仕事」は、よほど恐ろし
いものと言えるかもしれません。
暗い話ばかりになってしまいましたが、でも、救わ
れるのは、そんな中でも「なんとかしなければ」と
試行錯誤している方もいて、この拙い日記を見て感
想を下さったりします。そういう心意気に触れるこ
とで私自身も絶望的な制度・仕組みに嘆くばかりで
なく救いを見いだせます。ありがたいです!
<おしらせ>
YouTubeチャンネルくららで毎週土曜にアッ
プしている「国防ニュース最前線」、今週も伊藤俊
幸・元海将に解説をして頂きます。
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(さくらばやし・みさ)
桜林さんへのメッセージ、ご意見・ご感想は、
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【著者紹介】
桜林美佐(さくらばやし・みさ)
昭和45年、東京生まれ。日本大学芸術学部卒。フ
リーアナウンサー、ディレクターとしてテレビ番組を
制作。その後、国防問題などを中心に取材・執筆。
著書に『奇跡の船「宗谷」─昭和を走り続けた海の
守り神』『海をひらく─知られざる掃海部隊』『誰
も語らなかった防衛産業[改訂版]』『武器輸出だ
けでは防衛産業は守れない』『防衛産業と自衛隊』
(いずれも並木書房)、『終わらないラブレター─
祖父母たちが語る「もうひとつの戦争体験」』(P
HP研究所)、『日本に自衛隊がいてよかった』(産
経新聞出版)、『ありがとう、金剛丸─星になった
小さな自衛隊員』(ワニブックス)。月刊「テーミ
ス」に『自衛隊密着ルポ』を連載中。
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