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こんにちは。エンリケです。
「すぐそこにある国際情勢」を
味わえるドラマになりそうなものがたり。
「サムライ先生、日本語を教える」
きょうは4回目です。
登場人物が増え、賑やかになってきました。
とともに、、、
さっそくどうぞ。
エンリケ
ご意見・ご感想・ご要望はこちらからどうぞ。
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新シリーズ!
サムライ先生、日本語を教える(4)
支度──私は教務主任じゃありません
山下知緒(やました・ともお)(研武塾代表)
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□はじめに
月曜日に配信されている桜林美佐さんの「美佐日
記」にて、当連載のご感想をいただきました。誠に
ありがたく存じます。
桜林さんには、拙著『古式伝験流手裏剣術』の出
版トークライブでも、たいへんお世話になりました。
その折は、第一線で活躍するジャーナリストの好
奇心や洞察力の深さに舌を巻いたものですが、今回
は留学生に関する広い知識と問題意識の高さに感じ
入った次第です。
また、ご自身と留学生の交流エピソードも、お人
柄がしのばれる心なごむものでした。
私の手記では今後、留学生との衝突に触れていく
予定でして、その中で感じた教員としての苦汁や義
憤もつづっていこうと考えています。
より一層、読者の皆さまに楽しんでいただけるよ
うな記事を心がけて参ります。
桜林さんには、この場を借りて、重ねてお礼を申し
あげます。
▼専任教員と非常勤講師
事務長の金さんは、無類の掃除好きだった。事務
のデスクワークは田中さんに任せっ切りにして、自
分はもっぱら学生寮のモップがけやゴミ捨てに精を
出していた。目につくものは片っ端から捨てたくな
る性分だそうで、自宅ではよく奥さんに叱られてい
るという話だった。
入社1年未満ながら一番の古株となった田中さん
は、本部に呼び出されることが多く、相当に忙しそ
うだった。それでも、パソコンの使い方をはじめ、
私の質問には丁寧に答えてくれた。
私の仕事も軌道に乗り始め、最初に授業カリキュ
ラムと授業担当のシフト表が仕上がった。それをメ
ールやファックスで非常勤講師に送信したのだけれ
ど、驚いたことに、講師の中には、専任教員の一斉
退職をまったく知らない人たちが結構いた。
「いったいどうなっているんですか!」と、まるで
私の責任みたいに問いつめられ、その釈明にも四苦
八苦した。
「ちょっと大丈夫なんですか? 勉強会のフォロー
なんかは、どなたがなさるんです? 話が見えない
んですけど!」
「勉強会って何だ?」と、こちらもまったく話が見
えなかったが、とにかく低姿勢で対応した。非常勤
講師には、こづかい稼ぎで働いている中高年の主婦
が多いようで、気が向かないと簡単に辞めてしまう
と田中さんに聞いていたからだ。私は新任のあいさ
つもそこそこに、そんなマダムたちを必死でひき止
めた。さらなる人手不足は、一層の混乱を招くから
だった。
私と同時期に採用された非常勤講師の神田先生も、
西丘日本語学園での勤務に二の足を踏んでいた。
彼女は、くもん教室に長く勤めていた小柄な女性で、
日本語教員として教壇に立つのは初めてらしい。
おっとりとしゃべる人で、いかにも世話好きでお人
好しな印象を受けたけれど、新しい職場と、私への
不信感をあらわにしていた。
「日本語教師になるのが夢で、とても楽しみにして
いたんですよ。でもね、『専任教員が1人だけの学
校なんてヘンじゃない?』って、日本語教師をして
いる知り合いに言われたんです。教員経験のない人
が教務主任っていうのも、絶対にアヤしいって。夫
も『大丈夫か? 無理して働くことはないんだぞ』
って、心配しているんです。どうしましょう?」
知り合いやご主人の懸念は誠にもっともであった
が、それを認めて彼女に逃げられてはかなわない。
私は必死さを気取られまいと、言葉たくみに神田先
生を説きふせた。
「いや、勘違いされています。私は教務主任じゃあ
りません。それは間違いない。近く、ベテランの教
員が配属されるそうですから、ご安心ください。え
っ? あぁ……それがいつになるのかは調整中です。
でも、このままずっとってことはあり得ませんよ。
フレッシュマン同士、力を合わせてがんばりましょ
う! 当面はお目付けもなく、自由にやれるチャン
スです。ねっ?」
説得の甲斐あって、神田先生は、週2回の出勤に
同意してくれたのだった。
▼「またここへ戻ることになったんだ」
いうまでもなく、「先生」という言葉は目上に使
う敬称だ。しかし、教育現場で職員たちは、熟練の
教員のみならず、新米教員に向かっても「先生」づ
けで名前を呼び合う。事務員の場合は局長でも「○
○さん」と声をかけるので、ここでの先生という呼
称は、教員を意味する役名と考えるべきだろう。
が、私はこの慣習がシックリとこなかった。一般
企業と同じく、普通にさんづけで呼び合えばいい気
がしたのだ。
しかし、新学期直前にフラリとあらわれた中原先
生という70代の古参講師は、まさしく「先生」と
呼びたくなるような風格を漂わせていた。
ジーパンにこげ茶色のジャケットというラフな身
なりで、実年齢よりも10歳くらい若く見えた。少
し前まで西丘日本語学園に勤務していたのだが、そ
の後、三鷹市にあるグループ校に移ったとの話だっ
た。
「山下さん、よろしくね。この春、またここへ戻る
ことになったんだ。お手柔らかに」
中原先生は人懐っこい笑みを浮かべて、私の肩を
ポフッと叩いた。「先生」ではなく「さん」づけで
話す気さくな人柄にも、私は好感をいだいた。
「社長とオレは長いつき合いでね。書類なんかの都
合で、オレの名前を貸したりもしてるんだ。オレは
ね、非常勤だけどさ、名義上は三鷹校の教務主任と
校長になってるのよ。なっ、おもしろい業界だろ?」
と、何だかヤバそうな裏事情も、ひょうひょうと
語ってくれたりした。
「あの、新学期のカリキュラムを直したところなん
です。使う教材とか、授業進度はこんな感じでいい
ですかね?」
私がアドバイスを求めると、「うん。上等。最高
だよ」と言って、ほとんどスケジュールを見ずにう
なずいた。
「この学校は非漢字圏の学生が多いだろ? そうだ
ったよね、田中さん?」
自席にいた田中さんは、「えぇ、今はウズベキス
タン、ベトナム、スリランカの学生がいて、中国や
韓国の生徒はいません」と、間を置かずに答えた。
「そうね……だからさ、まずは文法よりも語彙に力
を入れるべきだと思うんだ。単語がわかりゃあ、お
およその内容は想像つくからね。だろ? それと授
業はさ、学生に『書かせる』ことが大事だよ。講義
を聞くばかりじゃあ、眠くなっちゃうもん。手を動
かさせるんだ。なっ?」
彼のさばけた授業論に、私は素直に感心していた。
「いや、本当に勉強になります」
「何をおっしゃいますやら。じゃあ、来週から新学
期だね。改めてよろしく」そう言って、中原先生は
席を立った。
マイカーで去っていく中原先生を見送って職員ブ
ースに戻ると、データ入力をしていた田中さんがふ
り返って、「どうです、中原先生は?」と言った。
「気さくな方ですね。一緒に仕事がしやすそうです」
その一言を聞いて、田中さんはニッコリと笑った。
「そうですか、よかったです。実をいうと、中原先
生が以前ここで働いていた時、他の先生がたから無
視されていたんですよ」
「えっ? 無視?」
「先生たちのイジメっていうのかな? まぁ、中原
先生にも問題はあったんですけどね」
「へぇ。何です、問題って?」
「いえ、詳しいことは知らないんですけど、授業カ
リキュラムを守らなかったり、学生に漢字を書かせ
てばかりで自分は居眠りしていたりって、まぁ、そ
んなことです。誰が注意しても反省しなかったんで、
結局、三鷹校に飛ばされちゃったんですよ。でも、
前にいた先生がたも、大人げないっていうか、意
地悪でした。中原先生の居眠りを撮影して、みんな
で回し見したり、中原先生の机だけポツンと離れ小
島みたいに隔離したり、ちょっとやり過ぎな気がし
ました。ルーズが許せない人は、中原先生と反りが
合わないみたいです。山下先生は大丈夫みたいです
ね」
しかし……残念ながら……全然大丈夫じゃなかっ
たのだ。中原先生の勤務態度は、本当にひどいもの
であった。
半年後、私は彼を罵倒することとなる。
(つづく)
(やました・ともお)
【筆者紹介】
山下知緒(やましたともお)
1971年9月9日生まれ。2018年4月以降、
日本語学校教師を務める。民弥流居合術、駒川改心
流剣術をはじめ、小太刀、十手、棒、柔術などを学
ぶ。現在は手裏剣術を表芸とする武術道場「研武塾
」を主宰。手裏剣製作の勉強会「武具学会」を併設
して、多面的な武術研究に取り組んでいる。妻のコ
ミックエッセイ『ある日突然ダンナが手裏剣マニア
になった。』<リーダーズノート>に描かれた私生
活をNHKドキュメント番組「熱中人」が密着取材
して2012年1月に放映。2012年11月、D
VD「山下知緒 手裏剣道 験流手裏剣術入門」<
クエスト>を刊行。2014年4月、『古式伝験流
手裏剣術』<並木書房>を上梓。
≪研武塾道場≫手裏剣術をはじめ、居合術や古流剣
術等を稽古する武術道場。稽古日は毎週土曜日の午
後4時から午後6時。月謝6千円。道場所在地は西
武池袋線「東久留米駅」から徒歩2分。道場の詳細
や問い合わせは、
古式伝験流手裏剣術
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