こんにちは、エンリケです。
103回目の美佐日記。
おっしゃる
違和感と無念さ、残念さに、
完全同意します。
さっそくどうぞ。
エンリケ
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今年4月に刊行された『自衛官が語る災害派遣の記
録』に続く、第2弾『自衛官が語る海外活動の記録』
(桜林美佐監修・自衛隊家族会編)が発売されてい
ます。中東シーレーンの安全確保をめぐって新たな
自衛隊派遣が行われているこの時期にタイミングを
合わせたような出版です。現地で自衛官たちが何を
思い、どのような苦労をして、任務をこなしてきた
か、25人の自衛官のリアルな体験記です。
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桜林美佐の「美佐日記」(103)
もう1つの50年──「朝霞事件」を語り継ぐ
桜林美佐(防衛問題研究家)
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おはようございます。桜林です。「男もすなる日記
といふものを、女もしてみむとてするなり」の『土
佐日記』ならぬ『美佐日記』は令和2年11月の今
回で103回目です。
11月も終ります。今年も新嘗祭、そして『憂国
忌』が過ぎました。この月は穀物への感謝の思いを
強め、皇統の尊さを感じる時となります。
今年はとりわけ三島由紀夫没後50年ということで、
いわゆる「三島事件」をメディアでも多く取り上
げられていたように思います。
事件発生の年に生まれた私としては、もう年の数を
数えるだけでも「何してきたんだ」感があるもので
すが(冷や汗)、気を取り直して、今回は「もう一
つの50年」というお話を書きたいと思います。
「三島事件」の翌年である昭和46年8月21日に
発生した、いわゆる「朝霞事件」のことです。
これは当時、東部方面武器隊・第311装輪車野整
備隊に所属していた一場(いちば)哲雄・2曹(当
時、陸士長)が警衛勤務中に左翼の2人組に襲われ
殺害された事件です。一場2曹は前年の3月に入隊
したばかりでした。
その日、2040時に「異常なし」の報告をした一
場2曹は直後に侵入者を発見、すぐさま報告しよう
と送話器を手にするも、短刀で襲われ阻まれます。
しかし、一場2曹は果敢に立ち向かいました。
格闘の末、右の胸は2か所も肺を貫通するほど刺
され、右手には5か所、左手の傷は骨まで至ってい
たといいます。後頭部は12か所も挫傷していたと
いい、最後まで戦い、責務を果たそうとしたことが
分かっています。
犯行の目的は自衛隊の武器を強奪することでした。
しかし、一場2曹の必死の反撃により犯人たち断
念し、そのまま逃走したのです。
一場2曹は力をふり絞り、警衛司令に報告するため
警衛所に向かいましたが、現場から100m進んだ
場所で力尽き、出血多量で息を引き取ったのです。
前途有望な自衛官が殺害された、しかも駐屯地の中
で、というショッキングな事件が今、自衛隊でも知
る人が少なく、風化していると言わざるを得ません。
「時代の産物」で片付けていい話ではないはずです。
また、世の中の多くの人は戦前や戦時中の日本につ
いて贖罪意識を持ったり、当時の人々に厳しいわり
には、昭和という時代、わけても70年代という過
去については、なぜか「あの頃はそんな時代だった」
と、ノスタルジックな物語に美化しがちに見える
のはなぜなのでしょう。
私たち日本人がこのような後ろめたい過去を持って
いることを、しっかり自覚し顧みる必要があると感
じます。
そのためにも、読者の皆さんには改めて当時の空気
について記したいと思います。
昭和40年代(つまり70年代)は「もはや戦後で
はない」と言われた昭和30年代からの高度経済成
長がピークを迎えていた頃で、GNPは数年の間に
倍増を繰り返すような急成長ぶりをみせていました。
急激な進歩は大きな反動も生み、公害や物価の上昇
などの生活を脅かすものは「経済成長が悪い」とい
う発想が登場します。そしてそれが「反企業」「反
政府」「反米」という考え方になって拡大していく
ことになります。
こうした、戦後に誕生した左翼集団は、既存の共産
党や社会党が暴力を否定しているのに対し「新左翼」
と呼ばれました。ご存じの通り直接行動や実力闘
争で「暴力革命」を目指した集団です。
この暴力路線が学生運動、安保闘争などに広がり、
そのうちに内ゲバや爆弾テロ事件も起こすようにな
っていったことはご存じの通りだと思います。
連合赤軍による「あさま山荘事件」では2人の機動
隊員が殉職するなど、多くの現場で警察は多くの死
傷者をしています。警察はこれら「極左暴力集団」
との闘いの歴史を決して忘れることはないでしょう。
特に機動隊は、極左暴力集団の武器がエスカレート
していったのを受けて体制を整備するようになった
と言われ、そうした意味では、現在は装備の更新な
どが難しいのではないかなどと余計なことも考えて
しまいます。それはともかく、しばしば機動隊の車
両に見送る警官たちが拍手を送るのを目にしますが、
過去の過酷な経験にもとづく伝統なのかな、と思い
ながら見ています。
朝霞駐屯地における殺人は「赤衛軍」を名乗る日本
大学と駒澤大学の大学生2人の実行犯が逮捕された
だけでなく「朝日ジャーナル」と「週刊プレイボー
イ」の記者が犯行の手助けをしたとして逮捕されて
います。犯人に金を渡すなど便宜を図り、その見返
りにスクープ報道につながる情報提供を受けていた
のです。
そして、若者たちを煽った事実上の事件の首謀者は、
京都大学の助手でした。この人物は10年以上の
逃亡の末に逮捕されましたが、これらの人たちは懲
役15年の実行犯を筆頭にいずれも刑期を終えてい
ます。
この事件から様々な教訓が残りました。
まず、犯人が幹部自衛官の制服を盗んで駐屯地に堂
々と入ったというチェックのゆるさ、単独で警衛に
あたっていた体制などです。
制服を盗まれるという、あってはならないことを許
してしまったことは悔やみきれません。
遺族は、一場2曹が「襲ったのは仲間である自衛官」
だと思って死んでいったことが悲しいと後に語っ
ています。あまりにも残念です。
朝霞駐屯地には一場2曹の慰霊碑があり、今年の8
月には東部方面後方支援隊が五十回忌を実施しまし
た。また後支隊では9月から一場2曹が所属してい
た第104全般支援大隊が警衛に上番するにあたっ
ては「一場隊」と呼ぶことにしたそうです。関係者
の間では風化させない努力をしています。
しかし、最も残念なのは、ご遺族にとって自衛隊は
「語り継いでいない組織」だとして、自衛隊に対し
てあまり良い印象を持っていない様子だと人づてに
知ったことです。
かつて私が掃海部隊の本を書いた時は「この歴史を
残さなければ」という海上自衛隊の有志の方々の力
添えがあり、また防衛産業について執筆した際も「
防衛産業を失ってはならない」という熱意ある皆さ
んに支えられ、全てはその方々があってこその成果
でした。
自衛隊が、組織全体としては過去の継承にはあまり
熱心ではないようなので(将来のことで精一杯でし
ょう)、いつか熱意ある人が現れることを期待した
いですし、その際は私も力を尽くしたいと思ってい
ます。
さて、嬉しい読者の皆様からの感想メッセージです。
おひとり目は技能公募予備自衛官の方から。前々回
に、技能予備自の方の才能を活かせず、みすみす失
ってしまっているということを書きましたが、それ
に対しこんな反響を頂きました。
「予備自衛官になったことで心がけが変わりました」
ということなのです。駅で倒れていた人を見た時に、
ちょっと躊躇したものの「いや俺予備自衛官だし」
と奮起し救助に進み出たそうです。衛生訓練が活
かされ「世の中の役に立っているかなと実感しまし
た」といいます。
予備3曹 さん、教えて頂きありがとうございます。
お話を伺ってとても嬉しいです!ぜひ、引き続き
どうぞよろしくお願いいたします!
また、前回の「ハイパー・メリトクラシー」とい
う話について、こんな感想も頂きました。
「よくぞ言ってくださった。僕らは貴女の指摘した
ことを『ハビトゥス』と言っています。育ちや、家
の資産、文化などに裏づけされた振る舞いや、感性、
趣味、言葉などもろもろの学校教育や学問・知識
を得てもなかなか身につかないものを言います」
こうしたものによるすみ分けが、ある社会の中で
は今も生き残っていて、それが堂々と言われるよう
になったのはいいことではないと指摘して下さいま
した。勉強になりました。ありがとうございます!
<おしらせ>
YouTubeチャンネルくららで毎週土曜にアッ
プしている「国防ニュース最前線」、今週も伊藤俊
幸・元海将に解説をして頂きます。
http://okigunnji.com/url/42/
(さくらばやし・みさ)
桜林さんへのメッセージ、ご意見・ご感想は、
このURLからお知らせください。
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【著者紹介】
桜林美佐(さくらばやし・みさ)
昭和45年、東京生まれ。日本大学芸術学部卒。フ
リーアナウンサー、ディレクターとしてテレビ番組を
制作。その後、国防問題などを中心に取材・執筆。
著書に『奇跡の船「宗谷」─昭和を走り続けた海の
守り神』『海をひらく─知られざる掃海部隊』『誰
も語らなかった防衛産業[改訂版]』『武器輸出だ
けでは防衛産業は守れない』『防衛産業と自衛隊』
(いずれも並木書房)、『終わらないラブレター─
祖父母たちが語る「もうひとつの戦争体験」』(P
HP研究所)、『日本に自衛隊がいてよかった』(産
経新聞出版)、『ありがとう、金剛丸─星になった
小さな自衛隊員』(ワニブックス)。月刊「テーミ
ス」に『自衛隊密着ルポ』を連載中。
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(代表・エンリケ航海王子)
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