配信日時 2020/11/23 08:00

【桜林美佐の「美佐日記」(102)】人を許し、許容できるおおらかさを……

こんにちは、エンリケです。

102回目の美佐日記。

きょうは、
噛めば噛むほど味わいが出てくる
スルメみたいな記事です。

一読だけではもったいないですよw



さっそくどうぞ。


エンリケ



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今年4月に刊行された『自衛官が語る災害派遣の記
録』に続く、第2弾『自衛官が語る海外活動の記録』
(桜林美佐監修・自衛隊家族会編)が発売されてい
ます。中東シーレーンの安全確保をめぐって新たな
自衛隊派遣が行われているこの時期にタイミングを
合わせたような出版です。現地で自衛官たちが何を
思い、どのような苦労をして、任務をこなしてきた
か、25人の自衛官のリアルな体験記です。

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桜林美佐の「美佐日記」(102)

人を許し、許容できるおおらかさを……

桜林美佐(防衛問題研究家)

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おはようございます。桜林です。「男もすなる日記
といふものを、女もしてみむとてするなり」の『土
佐日記』ならぬ『美佐日記』は令和2年11月の今
回で102回目です。

福岡にいる頃は毎日、夜7時のNHKニュースの前
に「好いとっと」という歌が流れ、私は近所迷惑も
かえりみず熱唱していましたが、この曲を作り、歌
っているのはMISIAさんでした。

そのMISIAさんがテレビ番組の取材で乗馬をし
ている際に、落馬して背骨を骨折し全治6週間との
こと、驚きました。

私は大学時代、キャンパスにいる時間よりはるかに
多く乗馬クラブで働いていた経験をしていますので、
このニュースは本当に残念です。

現在、住んでいる所の近くには乗馬クラブや自衛隊
体育学校の馬場などもあり、付近を通ることがある
と、私はかなり神経を使っています。

例えば、誰かが乗っている時に思いがけず大きな音
を出してしまったり、あるいは車のドアを閉める音
などは馬が驚いてとても危険だからです。

強い風が吹く、枯れ葉が舞い上がる、そんな時も要
注意です。なぜそんなに神経を使うのかというと、
私自身が調教に関わっていた馬が、「ガサッ」と誰
かがジャンバーを脱いだ音に驚き、跳ねて暴れて走
り出し落馬したことがあるからです。

そういうことがあると、乗っている人は「誰だ音を
立てたのはっ!気を付けろ!」などと激高するのが
常でした。私たちは馬よりもむしろ怒られるのが怖
くて、とにかく一つ一つの動きに神経を使っていま
した。

乗馬クラブでお客さんが乗るような調教の行き届い
た馬はそんなに心配はないのですが、そこにテレビ
クルーがいたり、特殊な状況になれば平素の何倍も
の注意を払わなくてはならないのです。

実際、かつて女性リポーターさんが馬車に乗るとこ
ろを撮影していた際に馬が何かに驚いて暴走し、彼
女は足を切断する大けがを負ってしまったこともあ
りました。

そういうこともあるので、観光客を乗せているよう
なおとなしい馬でも、そこに無神経な人が来たり、
慣れていない人が集まったりすると、思いもよらな
いことが起こると思ったほうがいいのです。

私は経験者なんだからちょっと乗ったらどう?と言
われることもありますが、今は怖くて乗れません。
「調教されているから大丈夫」などというのは人間
の慢心で、達人であるほど馬の傍(かたわら)はそ
ーっと通るなど非常に神経を使います。まずはその
感覚から思い出さないと無理なのです。安全管理の
重要性を改めて思い知らされる出来事でした。

さて、もう一つ最近、とても考えさせられた話に触
れました。ニッポン放送の「飯田浩司のOK! Cozy up!」
に出演したジャーナリストの佐々木俊尚さんが大学
生の就職内定率について語っていたのですが、印象
的だったのはその中で出てきた「ハイパー・メリト
クラシー」という言葉です。

米国では民主党のようなリベラル系の人たちが、黒
人でも頑張ればアメリカンドリームのように偉くな
れるといい、これはこれで素晴らしいことなのです
が、一方で「頑張れない人には平等を与えられない
のか」という問題が常に残るというのです。

かつての日本では、学歴相応の就職先がある程度約
束されていて、まあ平凡でもそれなりに暮らせたが、
今は「過剰な実力主義」が求められてきていると
いいます。これを「ハイパー・メリトクラシー」と
いうそうです。何かスポーツをやっていたとか、勉
強以外の評価基準が出てきたのです。

そういえば、就職活動をしていた大学生が私に「僕
は硬式野球部じゃなくて、軟式野球部だったので、
やっぱりこれってかなり不利ですか?」と大真面目
に聞いてきたことを思い出します。

こんな質問を私にする時点でかなり人選を誤ってい
ると思いましたが、まあとにかく、人生の岐路では
そんなことにも振り回されてしまうということなの
でしょう。

佐々木さんは言います。「貧困の家に生まれて、ミ
カン箱で勉強していい大学に入った人には、そうい
うものがありません。文化的な豊かさが実家にない
と、学歴以外の部分は手に入らないので不平等です。
これがハイパー・メリトクラシーの問題点だと言
われています」

学歴偏重から、文化的豊かさを求められるようにな
ったのは悪いことじゃないですが、欧米ではこれが
議論になっていて「合法的、社会的に許された最後
の差別ではないか」とも言われるそうです。

「頑張らない人が悪い」

というのは、当たり前のようではありますが、何ら
かの理由で頑張れない境遇や精神状態にある人には
辛い風潮です。私の親族にも「私はできないのよ!」
と逆ギレする人がごく身近にいましたからよく分
かります、はい。

「パチンコばかりやっていてけしからんと言う人が
いますが、パチンコばかりしかできないような精神
状態に追いやられているから貧困なのです。それを
否定したら人生救われません」

という佐々木さんの言葉にはハッとさせられました。
「多様性」というのは、人種や国籍だけを指すの
ではなく、人の能力(個性)もその内なのだなと。

そういえば、日本では昔は風来坊とか、与太郎とか、
ぐーたらな人とか、そういうキャラクターが主人
公になったりしていましたが、最近は寅さん的な物
語って目にしないような気がしますね。

怠け者は許容できないという社会になると、パワハ
ラなどエスカレートするばかりになってしまうかも
しれません。

ルールは守る必要があるけれど、人を許し、許容す
るおおらかさも私たちには必要なのかなと感じてい
ます。

<おしらせ>
YouTubeチャンネルくららで毎週土曜にアッ
プしている「国防ニュース最前線」、今週も伊藤俊
幸・元海将に解説をして頂きます。
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(さくらばやし・みさ)



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【著者紹介】
桜林美佐(さくらばやし・みさ)
昭和45年、東京生まれ。日本大学芸術学部卒。フ
リーアナウンサー、ディレクターとしてテレビ番組を
制作。その後、国防問題などを中心に取材・執筆。
著書に『奇跡の船「宗谷」─昭和を走り続けた海の
守り神』『海をひらく─知られざる掃海部隊』『誰
も語らなかった防衛産業[改訂版]』『武器輸出だ
けでは防衛産業は守れない』『防衛産業と自衛隊』
(いずれも並木書房)、『終わらないラブレター─
祖父母たちが語る「もうひとつの戦争体験」』(P
HP研究所)、『日本に自衛隊がいてよかった』(産
経新聞出版)、『ありがとう、金剛丸─星になった
小さな自衛隊員』(ワニブックス)。月刊「テーミ
ス」に『自衛隊密着ルポ』を連載中。


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