配信日時 2020/11/19 20:00

【ライター・渡邉陽子のコラム (302)】  ― 陸上自衛隊高射学校&87式自走高射機関砲(7)―

こんばんは、エンリケです。

「陸上自衛隊高射学校&87式自走高射機関砲」
の七回目です。

生の言葉って伝わるものが何か多いですよね。
音楽と同じなのかもしれませんね。

さっそくどうぞ


エンリケ

追伸
東京五輪は一年延期されました。
『オリンピックと自衛隊 1964-2020』
を読んで、来年に思いを馳せます。
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「ライター・渡邉陽子のコラム」バックナンバー
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『ライター・渡邉陽子のコラム (302)』
 ―陸上自衛隊高射学校&87式自走高射機関砲(7)―

         渡邉陽子
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こんばんは。渡邉陽子です。
先日、8か月ぶりにコンサートに行ってきました。座席はひとりお
き、ステージに近い前列は数列目まで人を入れず、協奏曲のソリス
トは来日できず日本人ソリストに変更、交響曲も編成が大掛かりな
ショスタコーヴィチからチャイコフスキーへと変更になりましたが、
久しぶりの生音は五臓六腑に沁みました。本当に沁みました。オケ
のみなさんからも、演奏する喜びが伝わってきました。どれほど
動画配信が普及しても、やはり生音の持つ生命力のようなものは、
その場でしか体感できませんね。



記事掲載のお知らせです。

『丸』12月号の「世界の軍備」に「個人用防護装備防護マスク」が
掲載されました。今回は自衛隊の装備品である防護マスクだけでな
く、新型コロナで人々の生活に不可欠なアイテムとなったマスクに
ついてもご紹介しています。医療従事者が使うサージカルマスクと
自衛隊の防護マスクの製造メーカーは同じなのです。
マスクの正しい装着方法についても触れました。
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『PANZER』12月号に「神は賽子を振らない 第32代陸上幕僚長火箱
芳文の半生」第20回が掲載されました。
今回は防衛大学校幹事時代のお話前編です。幹事とは、一般の学校
でいう副校長。自身が学んだ防大に、今度は将官として戻ってきま
した。凱旋ともいえますが「演習場で状況中」が三度の飯より好物
の火箱氏、最初はあまり乗り気な人事ではありませんでした。しか
も当時の防大生は…… https://amzn.to/3ovGXOA

月刊『正論』6月号に「自衛隊あってのオリンピック」
最終回が掲載されました。https://amzn.to/3cOzOSQ



■陸上自衛隊高射学校&87式自走高射機関砲(7)

M陸士長(取材時)は高等工科学校出身。卒業後、陸曹教育隊、高
射教導隊付配置を経て高射学校に入校しました。
高等工科学校については4年前にこのメルマガでもご紹介していま
すので、以下に当時の記事の一部を抜粋し、簡単におさらいしてお
きます。

======
陸上自衛隊では近代化する装備を取り扱う人材の育成を目的として、
昭和30年に生徒制度が発足しました。昭和38年度には少年工科学校
を開校、少年自衛官に対する教育を行なってきました。
その後、平成22年度からの自衛隊生徒制度の変更に伴い、少年工科
学校は高等工科学校となり、これまでの伝統を継承しつつ任務の多
様化や高等学校教育の趨勢など、時代の変化に対応した教育を行な
うこととなりました。
少年工科学校時代の生徒は「3等陸士」だったため月額約15万円
の俸給がありましたが、現在の生徒は特別職国家公務員で自衛隊員
の身分になるため(現在の生徒は自衛隊員ではありますが自衛官で
はありません。3士だった生徒は自衛隊員かつ自衛官です【自衛隊
員というくくりの中に自衛官も含まれます】)、「生徒手当」とい
う名称で、額面で約10万円が支給されます(ほかに「期末手当」
もあります)。自衛官ではないので制服も装いを新たに、かつての
陸上自衛隊の制服とほぼ同じスタイルから、防衛大学校の制服と似
た詰襟となりました。全員が駐屯地で生活し、衣食住は無料です。
ここでの3年間の教育は普通科高校と同様の教育を行なう「一般教
育」、工業高校に準ずる電子機械工学や情報工学などの門的技術の
教育を行なう「専門教育」、陸上自衛官(陸曹候補者)として必要
な防衛教養や各種訓練を行なう「防衛基礎学」からなります。学校
の教育体系は、これらにクラブ活動を加えた4本柱となっています。
卒業後は士長に任官、生徒陸曹候補生課程に進み、約1年間の教育
を受けたのち3等陸曹に昇任します。あるいは防大、航空学生の道
へ進みます。3曹就任後は、衛生科を除く各職種の技術分野におけ
る陸曹として勤務します。ほか、選抜試験を経て陸曹操縦学生(ヘ
リ)や部内幹部など、幹部として勤務する道も開けています。
======

M士長は現在生徒陸曹候補課程の最終段階にあり、19歳という若
さでまもなく3曹に昇任することになります。
「高等工科学校3年時の区隊の班長が高射特科で、いろいろ話を聞
いているうちに『戦いとはまず空を守れたうえで陸の部隊が受ける
のだから、防空を担う高射部隊はなくてはならない存在でかっこい
いな』と思うようになりました。自分たちの代は高射職種がいちば
ん人気だったのですが厳しい競争を勝ち抜き(笑)、晴れて高射特
科となりました」
区隊の班長は中SAMだったのでそれに影響され、最初は中SAM
に行きたかったそうです。
「だから87AWと聞いたとき、最初は正直ちょっと落胆しました。
けれど入校して学ぶうちに、87AWがどんどん面白くなりました。
レーダーと機関砲をぎゅっと詰め込んだ器材を扱えるなんて、もと
もと装備品が好きな自分にはぴったりだったんです」

独特の構造機能は面白さにつながる一方、それだけ覚えなければい
けない事項が多いということでもあります。
「しかもY3曹たちのように部隊で87AWを扱った経験がない状
態で入校したので、毎日学ぶことが山のようにある大変な4か月間
でした。けれど高等工科学校時代から培ってきた学ぶ姿勢をここで
も実践でき、実りの多い時間を過ごすことができました。それは
『受け身の教育はだめ』ということです。自ら教官に質問していく
姿勢がなければ、教官は自分の持ち味を引き出してはくれないし、
こちらからも教官の引き出しを引くことができません。どれほどの
ことを学び自分の知識にできるかは自分次第です」

M士長にも87AW以外に興味のある装備品を聞いたみたところ、
「FV(89式装甲戦闘車)」という答えが返ってきました。87
AWと同じ機関砲を積んでいるからだそうです。
この後は高射教導隊第3中隊で87AWの射手を務めることになり
ます。
「ドライバーの経験もないまま射手になることや、部隊経験がほと
んどない状態で3曹になることにプレッシャーはあります。自分よ
り経験のある、けれど階級的には部下に当たる先輩もいますし。高
射学校で学んだことをフルに発揮して、1日も早く『こいつはこの
中隊でやっていけそうだな』と認めてもらえるように努めます」


(つづく)



(わたなべ・ようこ)


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□著者略歴

渡邉陽子(わたなべ・ようこ)
神奈川県出身。大学卒業後、IT企業、編集プロダクション勤
務を経て2001年よりフリーランス。2003年から月刊
『セキュリタリアン』『MAMOR』などに寄稿。
現在は自衛隊関連の情報誌などで記事を発表。メルマガ「軍事
情報」で自衛隊関連の記事を配信中。
 
2016年6月、デビュー作
『オリンピックと自衛隊 1964-2020』を刊行。


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