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荒木さんの最新刊
知られざる重要組織「自衛隊警務隊」にスポットを
当て、警務隊とは何か?の問いに応えるとともに、
警務隊で修練されている「逮捕術」を初めて明らか
にしたこの本は、小平学校の全面協力を受けて作ら
れました。
そのため、最高水準の逮捕術の技の連続写真が実に
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荒木肇(著)
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こんにちは。エンリケです。
「陸軍工兵から施設科へ」の六回目です。
鍬兵って何でしょう??
さっそくどうぞ。
エンリケ
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陸軍工兵から施設科へ(6)
歩兵の中の鍬兵(しゅうへい)のこと
荒木 肇
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□ご挨拶
トランプ氏はどうなるのでしょう。バイデン氏が
大統領に正式になるのは来年のことでありましょう
が、それまで何が起こるのか予断を許さないでしょ
う。わたしは、共和党も民主党も詳しくはありませ
んが、結局は他国の大統領のこと・・・あれこれ騒
いでもどうにもならないと思うことがあります。
以前、オバマ大統領が「有色人種初めての大統領」
になったと大騒ぎをしました。山陰のある市など
は、同じ名前だと大喜びをしているような報道を見
た記憶もあります。それで、オバマ民主党政権は何
をしたでしょうか。それも他国の都合、どうこう思
わぬではありませんが、何よりわが国はどうするの
か。どうしてゆくのかが大切ですね。
コロナ禍も第3波かと心配されています。気がゆ
るむ頃なのでしょう。感染者が増えているのが心配
です。
▼陸自の施設作業小隊
陸自の普通科(歩兵)連隊の訓練展示などを見に
行くと、小さなシャベルカーやクローラーをつけた
車輌が走る。災害派遣の現場で土砂を排除したり、
穴を掘ったりもしている。あれは施設科ではないの
かと不思議に思うのは、なかなかの自衛隊通だ。な
ぜなら普通科は歩兵である。隊員がふだんかぶる識
別帽というキャップにも、INFANTORY REGIMENT
と誇らしげに書かれている。
施設科ならENGINNERであり、普通科連隊には所
属するはずもない。だが、よく考えれば、施設科と
いう専門家に任せずにもすむ簡単な土工作業はある
はずだ。施設科、工兵部隊の主任務は、架橋や大規
模な陣地構築である。それこそささやかな機関銃用
の簡単な掩体造りや短い鉄条網張りなどは歩兵がす
る方が望ましい。連隊長にとっても、直に指揮でき
る施設作業部隊をもつことは便利なのだろう。
陸自普通科連隊には必ず本部管理中隊(隊員はホ
ンカン中隊と略す)という中隊がある。他のナンバ
ー中隊とは異なり、戦うことより支援をする中隊と
いっていい。通信小隊、衛生小隊、輸送小隊、情報
小隊、そして施設作業小隊という編制になっている。
こうした仕組みがいかにも歩兵らしい。通信科、
衛生科、輸送科、施設科などの専門職種の機能まで
もしっかりもっているのだ。いかにも歩兵らしい自
己完結性があるところが興味深い。
▼明治陸軍の鍬兵(しゅうへい)
明治の陸軍の歩兵聯隊にも鍬兵といわれた施設作
業隊がいた。小銃ばかりが兵器だったが、当時の歩
兵聯隊は3個大隊、各大隊は4個中隊で構成され合
計12個中隊だった。1700名あまりが平時の定
員である。
このうち、上等卒(まだ兵ではない)が長になる
鍬兵という集団がおよそ100名ばかりいた。各中
隊の編制表の中に鍬兵という8名が載っている。長
は上等卒、1・2等卒が7名とある。装備について
は上等卒が手斧(ておの)、手鋸(ハンド・ソー)、
螺錐(らすい・回転ドリル)を携帯する。
第1と第5鍬卒は伐木斧(ばつぼくふ・大型斧)と
螺錐、第2と第6同は円頭匙鍬(えんとうししゅ
う・スコップ、のちに円匙=えんぴといわれるよう
になる)、綱、鎹(かすがい)、第3と第7同は鵶
嘴鍬(あししゅう・カラスのくちばしのような形状
の鍬)、綱、鎹を背嚢につける。軍服の上に膝下ま
でおおう長い前掛けをかけて行進する。
どうやらこれは英仏両軍の制度を真似たもののよ
うだ。英語ではSAPPER、辞書を引くと工兵、土木
作業兵とある。あるいはフランス軍ではSAPEUR、
これも辞書には工兵、あるいは土工兵と書いてあ
る。ただし、1887(明治20)年の軍制改革で
この鍬兵は存在が消えた。これを前線で、聯隊長が
集めて使えば、8人×12であり合計96人にもの
ぼる。
▼上等卒のこと
昔から兵卒という。ただし、建軍の初めの頃、卒
の階級は2種類しかなかった。1等卒と2等卒であ
る。卒という言葉の元の意味は「下級の兵士」であ
って、戦国時代から「軍兵士卒(ぐんぴょう・しそ
つ)」などという言葉があり、「士」すなわち指揮
官の下にいる兵のことをいった。
上等卒が初めて出てくるのは、1876(明治9)
年12月6日の陸軍省達で「陸軍武官官等表」の
改訂として出された中である。歩兵科と騎兵科にだ
け置かれた。翌77年には「歩騎兵編制表」改正で、
編制上の定員として初めて規定される。
備考欄によれば、歩兵の場合、各中隊に上等卒9
人、一等卒36人、二等卒115人となっている。
上等卒8人は分隊長の職務に従事し、あと1人は鍬
兵長となるとある。給与も給与概則(1878年)
によれば鎮台歩兵上等卒は、日額7銭8厘(りん)
とあり、一等卒の日額5銭に対して、およそ6割増
しとなっている。
さらに詳しく見ると、一等卒の内訳は銃卒(今の
小銃手)32、鍬卒2、喇叭卒2となる。二等卒は
銃卒104、鍬卒5、喇叭卒6で、上等卒9とで合
計一個中隊160とある。
上等卒が「兵」となるのは1885(明治18)
年のことである。歩兵・騎兵・砲兵上等卒は七月か
ら上等兵と呼び変えることという。つづいて工兵と
輜重兵にもその改正が及んだ。同時に軍楽隊に「楽
手補(がくしゅほ)」を置いて、これを上等兵と同
等としたという。
今回はあまり知られていない鍬兵のことを書いた。
(つづく)
(あらき・はじめ)
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●著者略歴
荒木 肇(あらき・はじめ)
1951年東京生まれ。横浜国立大学教育学部卒業、
同大学院修士課程修了。専攻は日本近代教育史。
日露戦後の社会と教育改革、大正期の学校教育と陸
海軍教育、主に陸軍と学校、社会との関係の研究を
行なう。
横浜市の小学校で勤務するかたわら、横浜市情報処
理教育センター研究員、同小学校理科研究会役員、
同研修センター委嘱役員等を歴任。1993年退職。
生涯学習研究センター常任理事、聖ヶ丘教育福祉専
門学校講師(教育原理)などをつとめる。1999年4月
から川崎市立学校に勤務。2000年から横浜市主任児
童委員にも委嘱される。2001年には陸上幕僚長感謝
状を受ける。
年間を通して、自衛隊部隊、機関、学校などで講演、
講話を行なっている。
著書に『教育改革Q&A(共著)』(パテント社)、
『静かに語れ歴史教育』『日本人はどのようにして
軍隊をつくったのか―安全保障と技術の近代史』
(出窓社)、『現代(いま)がわかる-学習版現代
用語の基礎知識(共著)』(自由国民社)、『自衛
隊という学校』『続自衛隊という学校』『子どもに
嫌われる先生』『指揮官は語る』『自衛隊就職ガイ
ド』『学校で教えない自衛隊』『学校で教えない日
本陸軍と自衛隊』『あなたの習った日本史はもう古
い!―昭和と平成の教科書読み比べ』『東日本大震
災と自衛隊―自衛隊は、なぜ頑張れたか?』『脚気
と軍隊─陸海軍医団の対立』『日本軍はこんな兵器
で戦った─国産小火器の開発と用兵思想』『自衛隊
警務隊逮捕術』(並木書房)がある。
『自衛隊の災害派遣、知られざる実態に迫る-訓練
された《兵隊》、お寒い自治体』 荒木肇
「中央公論」2020年3月号
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