配信日時 2020/10/25 11:50

【本の紹介】『シリア原子炉を破壊せよ』(その2)

こんにちは。エンリケです。

秘密のベールに包まれた「シリア原子炉攻撃の真実」
が、ついに明らかになりました!

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ソフト・メロディー作戦

2007年9月6日深夜にイスラエル空軍(IAF)が
実施した、シリア・アルキバール原子炉破壊の軍事
作戦名
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イスラエルはなぜシリア原子炉を空爆したのか?
の軌跡を丹念にたどることを通じ、いまの中東情勢、
これからの中東情勢への正鵠を射た見方を得られる
だけでなく、イランとともに、中東・世界不安定化
の要因であり、わが脅威の一つでもある北鮮の動き
を正確につかむうえで欠かせない素材を提供してく
れる本です。

この本が伝えるのは、単なる「シリア原子炉攻撃」
だけにとどまりません。

現代の中東情勢をつかむうえで重大な意味を持つこ
の事件を知ることを通じ、いまの世界に潜む「重大
なリスク(危険)」をあなたは目の当たりにするで
しょう。


『シリア原子炉を破壊せよ
  ─イスラエル極秘作戦の内幕』
ヤーコブ カッツ (著), 茂木 作太郎 (翻訳)
発売日 : 2020/4/16
単行本(ソフトカバー) : 288ページ
出版社 : 並木書房 
https://amzn.to/37HiuA3



■著者のこと

著者のヤーコブ・カッツさんは、イスラエルのジャ
ーナリストです。

ヤーコブ・カッツ(Yaakov Katz)
日刊英字新聞『エルサレム・ポスト』紙編集主幹。
シカゴ出身。イスラエル経済相とディアスポラ(海
外在住ユダヤ人)担当相の上席政策顧問、ハーバー
ド大学の講師を務める。2013年ハーバード大学
ニーマン・ジャーナリズム財団で研究。現在エルサ
レムで妻のハヤと4人の子供と暮らす。共著書に『
Weapon Wizards(兵器の天才)』と
『Israel vs. Iran』がある。

イスラエルとアメリカの政策コミュニティに広いネ
ットワークを持つ方ということです。
優れた取材力を通して明らかになった情報を、優れ
たサスペンスよみもののごとく描写し、「アルキバ
ール空爆」の実相を明らかにした著者の力は高く評
価されていいでしょう。
そのためか、米アマゾンでの評価も非常に高いです。

訳者は、おなじみの茂木さんです。
「正確で」「こなれた」「スッと入ってくる」「ち
ょっと垢ぬけた」文体が好きです。

茂木作太郎(もぎ・さくたろう)
1970年東京都生まれ、千葉県育ち。17歳で渡
米し、サウスカロライナ州立シタデル大学を卒業。
海上自衛隊、スターバックスコーヒー、アップルコ
ンピュータ勤務などを経て翻訳者。
訳書に『F-14トップガンデイズ』『スペツナズ』
『米陸軍レンジャー』『欧州対テロ部隊』『SAS英
特殊部隊』(並木書房)がある。


この本は、
2019年5月にセント・マーチンズ・プレス社か
ら刊行された
『シャドー・ストライク(Shadow Strike)』の邦訳です。

核拡散という危機に直面し、それに立ち向かった指
導者がいかなる対処をとったか? の記録であります。

当時、ブッシュ大統領の米は「軍事作戦ではイスラ
エルを支援せず、情報面でのみ協力する。ただしイ
スラエルの行動を邪魔しない」との結論に達しまし
た。米の攻撃を望んでいたイスラエルでしたが、こ
の結論を受けて単独行動に舵を切ったのです。

2007年9月6日深夜に行われたシリア原子炉空
爆のすべてを、イスラエルと米、2つの目から初め
て明らかにした、軍事作戦の解説というよりは、政
策決定の内幕を描いたインテリジェンスノンフィク
ションです。

中東地域で次に何が起こるのか?の概略、ものがた
りが描かれた本でもあります。


●当時、イラク戦で批判を浴びていた米ブッシュ大
統領がシリアの核に対し強硬な手段が取れず、イス
ラエルが単独で空爆するに至った経緯、

●イスラエルが、米との同盟関係、主要諸国との外
交関係をいかに維持しながら攻撃を実施したか?

を余すところなく描いている点が特に注目されます。

また、
ある国家が、実在する脅威をいかに無力化したか?
の台本としての価値があるだけでなく、いまのイ
スラエルにとって最大の脅威がイランであり、中
東状況の軸はここにあること、中東状況への米の
影響力は大きいが、イスラエルは「米の消極的な態
度はイランでも変わらない」と見ているフシがある
ことに気づく本です。

さてここで、
全編の通奏低音として流れている
「ベギン・ドクトリン」を紹介しましょう。

「イスラエルは敵が大量破壊兵器を開発し、それ
を自分たちに向けることを許さない。その時は先制
攻撃で脅威を排除する」

オシラク原子炉空爆(1981年6月7日)当時
の首相、メナヘム・ベギンのことばです。

もしこれがいまも生きているなら、
イスラエルはイランの核開発が、「あるレベル」に
達した段階で、イラン核施設への攻撃を真剣に検討
せざるを得なくなります。
その際は、核攻撃をする可能性が高いと思われます。


その他読みどころとしては、

・イスラエルのモサドやアマンの関係者が多数登場
する
・軍人出身者がほとんどのイスラエル首相や政治家
の話が面白い
・ホワイトハウスやエルサレムの「中の声」が多数
出てくる
・北鮮をめぐるヤバい情報がたくさん出てくるので、
北鮮への危険認識レベルが改まり、わが安保状況を
見るうえで、これまでとは違った視座が生まれる。
・核拡散の舞台となっているイランと北鮮とシリア
のかかわりが細かに描かれている。

などがあげられるでしょう。


イスラエルが置かれている戦略環境は我が国と同じ
ではありませんが、
かの国を取り巻く脅威状況は我が国と似ている。

と強く感じました。


きょうご紹介した本は

『シリア原子炉を破壊せよ─イスラエル極秘作戦の
内幕』
ヤーコブ カッツ (著), 茂木 作太郎 (翻訳)
発売日 : 2020/4/16
単行本(ソフトカバー) : 288ページ
出版社 : 並木書房 
https://amzn.to/37HiuA3


でした。


明日もつづきます。



エンリケ


追伸
イスラエルが行った「もうひとつの原子炉攻撃」を
描いたノンフィクション。
これを機会に是非読みましょう! シリアのケース
と比較しながら。

『イラク原子炉攻撃!―イスラエル空軍秘密作戦の
全貌―』
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