配信日時 2020/10/22 20:00

【ライター・渡邉陽子のコラム (298)】  ― 陸上自衛隊高射学校&87式自走高射機関砲(3)―

こんばんは、エンリケです。

「陸上自衛隊高射学校&87式自走高射機関砲」
の三回目です。

「セキュリタリアン」なつかしいですね!

特集記事を、図書館で手で写していた日々を
思い出しましたw

さっそくどうぞ


エンリケ

追伸
東京五輪は一年延期されました。
『オリンピックと自衛隊 1964-2020』
を読んで、来年に思いを馳せます。
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『ライター・渡邉陽子のコラム (298))
 ―陸上自衛隊高射学校&87式自走高射機関砲(3)―

         渡邉陽子
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こんばんは。渡邉陽子です。
自衛隊を紹介する『MAMOR』という雑誌がありますが、その前
身は『セキュリタリアン』という広報誌でした。私が初めて仕事で
自衛隊に関わったのが『セキュリタリアン』で、内局広報の自衛官
と北海道から沖縄まであちこち取材に行きました。ともに汗を流し
た自衛官から先日久しぶりに連絡があり、楽しいやりとりに時間を
忘れるほどでした。一緒に仕事していた頃はお互い30代だったの
で、当時はまあ飲んだ飲んだ(笑)
共有できる思い出があるお世話になった方には、仕事でご恩を返し
たいものです。



記事掲載のお知らせです。

『PANZER』10月号に「神は賽子を振らない 第32代陸上幕僚長火箱
芳文の半生」第18回が掲載されました。今回は第10師団長時代のお
話前編です。「普通科の幹部ならばいずれは」と熱望した連隊長と
同様、作戦基本部隊たる師団の長もまた憧れていた役職でした。意
気揚々と着任したものの……理想の師団に近づけるべく、大忙しの
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『丸』9月号で陸上自衛隊中央輸送隊を紹介しています。輸送科の
総本山に当たる部隊ですが、なにをやっているか、どこにあるか、
陸自隊員でも知らない人のほうが多いようですが、「知らないうち
にお世話になっている」部隊なのです。https://amzn.to/3jQ1F9E

月刊『正論』6月号に「自衛隊あってのオリンピック」
最終回が掲載されました。https://amzn.to/3cOzOSQ



■陸上自衛隊高射学校&87式自走高射機関砲(3)

先週は87AWの構造についてご紹介しましたが、今回は87AW
の抱える課題についてご紹介します。
大別すると、課題は2点あります。

1点目は高価なことです。
87AWは1両ですべての対空攻撃を行なうだけの装備が詰め込ま
れています。そこに高度なエレクトロニクスを満載された結果、1
両の調達価格が約15億円と非常に高額になってしまいました。
90式戦車は約8億円、10式は約9.5億円です。戦車と比較し
てもずば抜けて高額であることがわかります。
それもあって調達は52両に留まり、機甲部隊の重要性が高い北海
道以外には配備されずに調達を終了しました。つまり、今後も北海
道以外の実動部隊に87AWが配備されることはありません。
高価すぎるから数を作れず、数を作れないから価格も下がらず……
悩ましいところですが、結果として開発時に予定、期待していたよ
うな数は製造できなかったのは事実です。

2点目は、隊員の命に直結している話なので、高額であるという以
上に深刻な課題であるともいえます。
二門の35mm対空機関砲の性能は優れているものの、87AWに
とって大きな脅威である戦闘ヘリコプターの放つ対戦車誘導ミサイ
ルの長射程化により、射程外から攻撃する「アウトレンジ戦法」に
より攻撃されてしまうという深刻な問題を抱えているのです。

では、これら2点の課題について「いやいや、だからといって87
AWの強みがなくなるわけじゃないから」という観点で見てみまし
ょう。

まず高価ゆえに車両数が限られ、北海道の部隊にしか装備されなか
ったという点です。
確かにもっとたくさん製造できれば、本州や九州の特科部隊も装備
することができたでしょう。
しかし、北海道だけでなく全国の高射特科部隊に87AWが装備さ
れるのが望ましかったのかといえば、一概にそうとは言えないので
す。なぜなら87AWは現在、守るべき部隊の特性に応じて配備さ
れているからです。
たとえば現在、87AWの部隊が所在する北海道には、今や本州に
はない戦車部隊が所在しています。戦車に随伴行動することが多い
87AWが北海道に集中しているのは理にかなっています。戦車部
隊のない本州に87AWがあっても、その特性を存分には生かしき
れません。つまり数があればいいというわけではないのです。
第7師団のような機甲師団に集中して装備されているのは、適材適
所といえます。7師団に配備されているからこそ、87AWはその
性能をフルに発揮できるというわけです。

次に、戦闘ヘリの対戦車誘導ミサイルでアウトレンジされるという
深刻な脅威についてですが、その脅威に直接さらされる87AWを
扱う乗員からは意外な声があります。
それは「本当にいやな敵や装備は、戦闘ヘリではなく地上部隊」と
いうものです。
というのも、敵にとっては「高射部隊がいる=航空部隊による攻撃
ができない」なので、地上部隊は最初に高射部隊を叩いて制空権を
確保しようとします。つまり87AWが真っ先に狙われやすいので
す。87AWにも対地攻撃能力はあるものの副次的な位置付けのた
め、なおさら地上から攻められるのは厄介なのでしょう。

来週は87AWの存在意義についても考えます。





(つづく)



(わたなべ・ようこ)


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□著者略歴

渡邉陽子(わたなべ・ようこ)
神奈川県出身。大学卒業後、IT企業、編集プロダクション勤
務を経て2001年よりフリーランス。2003年から月刊
『セキュリタリアン』『MAMOR』などに寄稿。
現在は自衛隊関連の情報誌などで記事を発表。メルマガ「軍事
情報」で自衛隊関連の記事を配信中。
 
2016年6月、デビュー作
『オリンピックと自衛隊 1964-2020』を刊行。


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