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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応
予備自衛官でもあります。お仕事の依頼など、問い
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こんにちは、エンリケです。
「我が国の歴史を振り返る
―日本史と世界史に“横串”を入れる―」
はきょうで106回目です。
いよいよ本連載も大団円にはいりました。
たとえようのないさみしさを覚え始めています。
歴史、史実をめぐるご提言に、
心の底から同意、共感します。
最後まで。
さっそくどうぞ
エンリケ
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我が国の歴史を振り返る
─日本史と世界史に“横串”を入れる─(106)
「大東亜戦争」の総括(その8)
宗像久男(元陸将)
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□はじめに
最近、東南アジアなど海外でパワフルに支援活動を
実施している池間哲郎氏が「歴史は人格教育だ」と
話しているのを聞き、長い間、我が国の歴史を学び、
自分自身が変わったことを実感している我が身を
振り返り、妙に納得したことを覚えております。
世の中に「反面教師」という言葉あります。改めて
個人的な体験を蘇らせれば、高校時代の日本史の教
師は日教組の幹部の端くれだったらしく、偏向した
内容の日本史を毎回のように教育していました。
「何かおかしい」と本能的に気づいた私は、どうし
ても日本史が好きになれないまま最小限の歴史を学
ぶだけに終わってしまいました。
日本史のみならず当時の母校は、いわゆる左翼教師
たちの巣窟だったらしく、職員室の壁には「○○打
倒」とか「△△粉砕」などと書かれた短冊があちこ
ちに貼られ、今にして思えば、文系は不思議な教育
のオンパレードでした。それらが「反面教師」とな
って、私は、思想が入り込む余地の少ない理科系を
選び、防衛大学校に進学、自衛官の道を歩むことを
決心しました。
そして卒業間際にまた邪魔が入りました。防衛大学
校に合格し、入学する際に必要な成績証明書を受領
するために担任の教師のもとに赴いた所、担任もま
た日教組の戦士のような人で「人殺しを教える防大
になぜ行くのか」と強硬に反対するのです。
ムッときた私は、「自分の人生は自分で決める。先
生の指図は受けない」と反論し、成績証明書を担任
からむしり取るように奪い、職員室を後にしました。
その後、二度と担任と会うことも交流することも
ありませんでした。
それもあって、「若い時の忘れ物」のような思い
で、人生の後半、日本史を学ぶことに情熱を燃やし
ました。そして、当時は理解できなかった「先生方
はなぜ、皆、偏向しているのか」についての答え、
つまり、終戦直後に青春を迎えた世代に共通した
“上滑り”だったことを理解できるようになりました。
気が付けば(自分で言うのはおこがましいですが)、
まさに池間氏の言われるごとく「歴史によって人格
教育」されている自分自身を再発見したのです。
▼精神的破壊によって植え付けられた歴史観
さて前回の続きです。国を挙げて精神的破壊を受け
た戦後、「大東亜戦争(太平洋戦争)」に関する一
般的な見解は、「大東亜戦争は、日本の侵略戦争で
あり、天皇を中心とする万世一系的大家族という後
進的・封建的社会構造をもった軍国主義国家と自由
と民主主義を原則とする文明国の対決だった」「日
本は道義的あるいは文明的に誤った戦争を仕掛けた
がゆえに敗北した」であり、いわゆる「東京裁判史
観」あるいは「自虐史観」といわれる「贖罪意識」
に満ちた歴史観が定着します。
まさに母校の教師たちのごとく、GHQのお先棒を
担いだ日教組などによって「戦前の日本は、帝国主
義、軍国主義、植民地主義をひた走り、アジア各国
を侵略した恥ずべき国だった」「長く暗い時代を経
た後、戦後になってやっと日本は自由平等と民主主
義の明るい社会を築くことが出来た」との教育が今
現在も続いているのでしょう。
その影響がさまざまな面に現れていることは言うま
でもありません。最近話題の日本学術会議の任命問
題もその典型と考えます。ところで、読者の皆様は
「世界価値観調査」を知っているでしょうか。「世
界価値観調査」とは、世界数十カ国の大学・研究機
関の研究グループが参加し、共通の調査票で各国国
民の意識を調べ相互に比較している国際調査をいい、
5年ごとの周回で行なわれています。
そこに「自国民としての誇り」という設問がありま
す。日本の調査結果は、「非常に感じる」が28%
弱、「かなり感じる」が44%、合わせて72%ほ
どです。調査対象の58カ国のほとんどの国々が「
かなり感じる」以上が90%前後を占める中にあっ
て、日本は毎回、下から3番目か4番目にランクさ
れます。日本より下位にはウクライナ、台湾などが
あるのみです。
そして、「もし、戦争が起こったら国のために戦
うか」という設問もあり、日本は、「はい」が15
%、「いいえ」が39%。「わからない」が46%
です。他国に比して「わからない」が多いのが日本
の特徴でもあるのですが、「『はい』が少ない」と
いう意味では、調査対象国の間では、毎回断トツの
最下位です。当分、どの国も届かない数字です。
日本の上位には、スペイン(28%)、イタリア
(37%)、ブルガリア(39%)などが続き、3
分の2以上の国は、「はい」が50%以上を占め、
ベトナムやカタールなどは90%を超えています。
最近の世論調査では「自衛隊に対する好印象」が
90%を超えていますが、元自衛官の私は、これら
の数字を比較してとても憂鬱になります。うがった
見方かもしれませんが、暗に「俺たちは戦わないが、
自衛隊は頑張れ」といっているように見えるのです。
将来戦の様相は不透明ですが、わずかに23万人足
らずの自衛官だけで我が国の国防を全うできるとは
とても思えません。あまり語らないことにしていま
すが、陸上幕僚監部防衛部長の職にあった時、「イ
ラク復興支援活動」の計画・準備とオペレーション
を担当しました。派遣当初、本支援活動に関して国
民の理解と支持が十分得られず、その対策にとても
苦労したことを覚えています。
自衛隊員が命を賭して任務を達成しようとする時、
その力の根源となるのは、(直接の参加はなくとも)
“国を守る強い意志”にバックアップされた大方の国
民の支持(共感)にあることを知っていただきたい
と思うのです。
いずれにしましても、毎回、「世界価値観調査」
のデータは、日本人が精神的破壊を受け、今なお「
自虐史観」に陥ったまま立ち直れていないことを示
す証拠として注目しています。
▼周辺国の精神的破壊
実は、日本人の精神的破壊だけを注目しても、問題
の本質を発見することはできません。我が国の周辺
国にも、先の大戦などの後遺症から精神的破壊を受
け、今なお立ち直っていない国が存在していること
をしっかり認識する必要があります。
中国の習近平主席は、就任するや「中華民族の偉大
な復興」を掲げ、「中国は屈辱の歴史を歩まされた。
貶めたのは日本だ」として日本も標的にしていま
す。韓国も日本の植民地時代の清算をめざし、公然
と「反日無罪」を掲げます。北朝鮮に至っては、国
交もないことから彼らの本意を知る手段がありませ
んが、依然として、我が国に敵対心を持っているこ
とは明らかです。
ロシアも同様です。終戦間際の対日侵攻は、伝統的
な南下政策、共産主義の拡大、そして日露戦争の復
讐の“合わせ技”だったと考えますが、ロシア帝国
からソ連に国の体制が変わっても、トインビー的な
視点である日露戦争の「復讐」的要素は変わりませ
んでした。
だからこそ、1945年9月2日、我が国が「休戦
協定」を調印した日、スターリンは、「日露戦争の
敗北の汚点を一掃する日が来た」とする、有名な
「ソ連国民に対する呼びかけ」を実施したのでした。
注目すべきは、これらの国に共通している精神的破
壊は、“戦意そのものを失った”我が国の精神的破
壊とは次元が違うことです。つまり、トインビーが
いう「無慈悲と敵意に満ちた精神状態」を再び作り
出すレベルにとどまっているのです。
現に、上記の価値観調査の「自国のために戦う意識」
では、ロシアが56%、韓国が63%、中国に至っ
ては74%を超えています。作為的数字とも推測さ
れますが、14億人もの人口を抱える中国の場合、
74%は約10億人に相当します。
また、これらの国々は、自国に有利なように“歴史
を歪曲している”点でも共通しています。歴史はヒ
ストリーでなく、中国ではプロパガンダ、韓国では
ファンタジーなどと揶揄されるゆえんです。
中でも、“現状変更路線”によって、周辺国との緊
張感を増大させ続けている中国の習近平政権は、共
産主義体制の維持を最優先に政策を推進しているよ
うに見えます。それでも、人類の歴史が教える“国
際社会で孤立化した国家の末路”も少しは学んでい
るのでしょう。いわゆる“超限戦”を駆使し、周辺
国などに対して様々な“巻き込み工作”を展開中で
す。
最近、韓国において『反日種族主義』がベストセラ
ーになって叩かれ、現在、その闘いの歴史を記した
続編も注目されています。この著者たちは、まさに
「無慈悲と敵意に満ちた精神状態」を振りかざすと
「再び(悪夢の)歴史を繰り返すぞ」と警鐘してい
ると考えますが、大方の韓国人に届かないようです。
これらの周辺諸国は、日本人の多くがすでに自国へ
の誇りを失い、自国防衛のために戦う意欲を失った
精神状態にある“隙”につけ入ることを「国是」と
しているように見受けられます。
説明するまでもないでしょうが、中国との尖閣諸島
や沖縄の問題、韓国との竹島や歴史問題、北朝鮮と
の拉致問題、そしてロシアとの北方領土問題にはこ
のような共通の背景があります。残念ながら、これ
ら共通の背景を解決せずして個々の問題の解決は困
難と私は思います。
▼精神的破壊からいかに復活するか
「我が国の歴史から何を学ぶか」については、本メ
ルマガの「あとがき」に改めて整理したいと考えま
すが、我が国は、「大東亜戦争」の敗戦から、吉田
ドクトリンによって経済復興優先、つまり物質的な
破壊の再興を目指した結果、みごとに立ち直り、一
度は世界第2位のGDPを誇るところまで復活しま
した。
だいぶ前から「もはや戦後は終わった」という言
葉がもてはやされてきました。しかし、これはあく
まで1度目の敗戦、つまり物理的破壊の回復に過ぎ
ないと考えます。この言葉を発すること自体に、
「敗戦の意味が分かっていない」と言わざるを得ない
のです。
問題なのは、2度目の敗戦、つまり精神的破壊の
復活です。当然ながら、「無慈悲と敵意に満ちた精
神状態を作り出す」レベルまで国民の精神が再び蘇
ることは将来、まずないでしょうし、その必要もな
いでしょう。それこそが、「自国の歴史を失った民
族は、先人から学ばないのでまた同じ失敗を繰り返
す」状態になるからです。
一方、「自らの意思で、二度と戦争を起こさない」
と宣言しても、それが「“受動的な戦争”を回避す
る手段となるわけではない」ことを理解する必要が
あります。
周辺国(対象国)がみな、「自らの意志で戦争を
起こさない」ことを誓い、その意思を共有し、実行
し続けない限り、戦争を完全に回避するのは不可能
です。
戦争は、国益と国益、国家の意志と意志とのぶつ
かり合いです。こちら側に戦う意志がない限り、い
わゆる“不戦敗”を宣言すれば、戦争は回避できま
す。しかし、その結果として、国家の独立、国民の
生命・財産を失う、あるいは、自由と民主主義、基
本的人権、法の支配などの基本的価値観、さらには
国家としての尊厳を失う可能性があるのは必定です。
日本人の中には、後先を考えずにただ「戦争を避
けるべき」と唱える人たちがたくさんおります。そ
の人たちは、“その先に何があるのか”をイメージ
しているのか、いつも疑問を持っています。
無益な戦争など避けて国と国が仲良くすることは理
想であり、これに対して全く異論はありません。よ
って外交などあらゆる手段を尽くして平和を維持す
る重要性について声を大にして訴えるところです。
他方、国と国の関係は、これまでの人類の歴史が示
すように“争い”の繰り返しでしたし、今後も“争
い”がなくなることはまずないでしょう。
核兵器の出現によって、かつての「総力戦」が発生
する可能性は皆無といえるかも知れませんが、核に
よる恫喝、核戦争に至らない限定戦や局地戦が発生
する可能性は依然として低くないと考える必要があ
ります。
「自らの意志で戦争を起こさない」と宣言した上、
平和主義を掲げ、必要な抑止力の整備を怠ると、か
つて清の軍事力が西欧列国の軍事力に全く歯が立た
なかったように、軍事的空白を作る(相対的な戦力
格差を放置する)結果となり、侵略(戦争)を生む
要因となる可能性があることを歴史は教えてくれて
います。
日本人は、マッカーサー率いるGHQに徹底的に精
神的破壊を受けました。しかし、その後70年あま
り、それを“良し”として放置していることはマッ
カーサーの責任でも何でもなく、日本人つまり私た
ちの責任であり、私たちの“怠慢”にこそ問題があ
ると私は考えます。その“怠慢”にそろそろ気がつ
かなければなりません。
残念ながら、戦争を防ぐには、「戦争に訴えても戦
争を防ぐ」との強固な意思をもって、盤石な抑止体
制を整備するしか有効な手段はありません。少なく
とも、このパラドックスを理解するレベルまで、大
方の国民の「精神的破壊」が復活することが求めら
れていると私は断言します。あとに続く世代のため
に、そして手遅れになる前に、です。
▼「大東亜戦争」総括のまとめ
2015年8月、安倍前総理が「戦後70年談話」
を発表しました。その内容、つまり我が国の歴史の
見方について、個人的には違和感を持たないわけで
はありませんが、「次の世代に謝罪を続ける宿命を
負わせてはならない」とする決意表明は、我が国政
府の立場から精一杯の政策転換だったと理解してい
ます。
あれから5年余りになりますが、この発言は単なる
発言に終わってしまいました。(1)この談話が何を意
味するのかを真剣に分析し、(2)歴史の解釈を再検討
するとともに、(3)その結果をいかに内外に発信し国
民を教育するか、などについて、伝わってくる限りに
おいては、与党である自民党内でさえ議論したよう
な形跡はありません。
最近、再び安倍前総理が新聞紙上で「70年談話が
『戦後』を終わらせた」と総括しておりましたが、
その発言の趣旨が元総理のみの認識にとどまり、広
く国民に浸透しない限り歴史問題は終わっていない
と私は思います。
一挙に我が国(国民)の精神的破壊を復活させるの
は今の国情から無理なのでしょうが、そのきっかけ
こそが、歴史、なかでも歪曲された歴史でなく“史
実”を知ることにあると考えます。
米英両国がソ連と連合し、ナチスドイツを撃破した
ような“戦略眼”や“したたかさ”が、島国日本に
も求められています。私たちは、多大な犠牲を払っ
た「大東亜戦争」から改めて敗因や教訓を学び、未
来に活かす知恵を生み出すことが重要なのです。
同時に、押し付けられた価値観や判断基準で歴史を
さばき、先人たちを侮蔑することを止め、我が国が
人類史上で果たした偉業に誇りを持つべきです。
その上で、改めて、二度と失敗しないために、国の
統治制度など改めるべきところは改める勇気を持つ
重要性を歴史は教えてくれていると思います。
これをもって、「大東亜戦争」の総括を終わり、次
回以降、本メルマガの「あとがき」として「歴史か
ら何を学ぶか」を主にまとめてみたいと思います。
(以下次号)
(むなかた・ひさお)
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【著者紹介】
宗像久男(むなかた ひさお)
1951年、福島県生まれ。1974年、防衛大学
校卒業後、陸上自衛隊入隊。1978年、米国コロ
ラド大学航空宇宙工学修士課程卒。
陸上自衛隊の第8高射特科群長、北部方面総監部幕
僚副長、第1高射特科団長、陸上幕僚監部防衛部長、
第6師団長、陸上幕僚副長、東北方面総監等を経て
2009年、陸上自衛隊を退職(陸将)。
2018年4月より至誠館大学非常勤講師。『正論』
などに投稿多数。
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最後まで読んでくださったあなたに、心から感謝し
ています。
マガジン作りにご協力いただいた各位に、心から感
謝しています。
そして、メルマガを作る機会を与えてくれた祖国に、
心から感謝しています。ありがとうございました。
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おきらく軍事研究会
(代表・エンリケ航海王子)
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