こんにちは、エンリケです。
藤井岳さんの、
「自衛隊・熱砂のイラク派遣90日」
の十二回目です。
実に面白いです!
さっそくどうぞ
ご意見・ご感想お待ちしてます。
コチラからどうぞ
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エンリケ
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新シリーズ!
自衛隊・熱砂のイラク派遣90日(12)
外気温40度の中でランニング!
藤井岳(ふじい・がく)(元陸自2曹)
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□はじめに
東北はだいぶ寒くなってきました。まだ10月も
半ばですが、北国の人間にしてみれば、冬はもう目
の前です。
冬が好きな人はそう多くないと思います。寒さに
雪、そして連日の曇天に気分も鬱屈になり、ただひ
たすら春の訪れを待つのみといった感じでしょうか。
私も同じく思うのですが、時にふと冬の魅力とい
いますか、冬の景色や雰囲気の美しさに見入ってし
まう時もあります。張り詰めた空気や白とグレーだ
けに色取られた世界は冬だけの魅力でしょう。
「寒いのは嫌だ」と口にしながらも、冬だけが持つ
魅力を見たいがために、ほんの少しの期待も抱きな
がら日々を過ごしております。
▼サマーワの休日
言うまでもなく、支援群の隊員には休日が与えら
れる。1週間にまる1日の休日が1日、そして半日
休みが1日である。もちろん支援群全体で同じ日に
休日をとるわけではなく、各部隊、部署で勤務シフ
トがずらして設定されているため、宿営地警備や各
種勤務は常時継続・機能していた。
休日の過ごし方は皆それぞれ。体力練成、サッカ
ー場でサッカー、洗濯、散髪、福利厚生施設の利用、
コンテナハウスで昼寝、待機用天幕内で読書や雑
談……。大体このような過ごし方をしていたと思う
。
▼全周を土嚢で囲んだ「コンテナハウス」
宿営地内での生活の場は主にコンテナハウスだっ
た。これは船舶での輸送などに使用される大型のコ
ンテナを宿舎に改造したもので、エアコンと照明を
取り付け、ベッドが置かれたものだ。宿泊人数はコ
ンテナによって多少違いはあったようだが、私のコ
ンテナでは私を含めて5人が寝泊まりしていた。
そもそもコンテナ自体、人が内部で寝泊まりする
ように設計されていないだろう。まず熱が中にこも
るため、エアコンは常時作動していた。照明もあっ
たが、点灯させてもやはり薄暗く、一日中いるよう
な場所ではなかった。
また、コンテナハウスは上部を含めた全周を大量
の土嚢などで耐弾処置が施されており、迫撃砲弾や
ロケット弾の飛来に備えた。耐弾化は段階的に行な
われ、完成したときには巨大な土嚢を積み重ねた壁
が至る所に構築され、まるで要塞のような外見にな
っていた。
このような施設のため、毎日の就寝時と就寝前の
数時間、そして休日の日中に昼寝をする時以外は待
機用天幕や娯楽室で、厚生センターが完成してから
は厚生センターで読書をしたり同僚と談笑したりし
て過ごすことが多かった。
▼体力練成は欠かせない!
過酷な環境に耐え、またストレス解消などのため
にも運動は欠かせなかった。
宿営地を囲む形で、内部の秘匿や砲弾などの射撃、
不審者の侵入を防ぐために巨大な土塁が築かれて
いたが、そのすぐ内側には外周道路があり、望楼間
の移動や巡回に使われていたが、夕方は隊員のラン
ニングコースになり、課業を終えた多くの隊員たち
がランニングやウォーキングに汗を流した。
なお、夕方になって気温が下がるとはいえ、それ
でも外気温は40度を超えていた。その中での体力
練成である。私はほぼ毎日、体力練成をしていたが、
いま思えばよくあの気温で走ったなと思う。当初
はさすがに暑さに耐えられず、30分ほどしか走れ
なかったが、慣れると1時間ほど走った。さらには
1時間以上走っている隊員も散見された。
トレーニング天幕は「アラビア天幕」と呼ばれる
大型の天幕の中に、本格的なトレーニング機材が多
数設置された天幕である。エアコン完備のため、外
よりもこちらで体力練成する方を好む隊員もいた。
ランニングマシンも多数設置され、暑いなか走るの
が苦手な隊員はここのマシンで走っていた。ほかに
もトレーニングジムにあるものと同じか、それ以上
に立派な機材が並び、筋力トレーニングには絶好の
環境であった。
▼通称「メール天幕」
宿営地では隊員1人に1つずつUSBが貸与され
た。これはパソコンに挿すと自動で電子メール送受
信の画面が開くもので、通称「メール天幕」と呼ば
れる天幕で使用するものである。
天幕内にはメール送受信用のパソコンが数台設置
され、家族や友人へメールを送ったり、返信された
メールを読んだりした。ここを利用する隊員は多く、
常にパソコンは使用状態で、順番待ちもよくあっ
た。こちらは衛星携帯電話とは違い、使用時間の制
限はなかった。
しかし、順番待ちの隊員がいる時は用件を済ませ
たらすぐにパソコンを譲る配慮も大事だった。私は
ここに、ほぼ毎日顔を出していた。メールの返信が
来た時は喜んで画面に顔を近づける勢いで何度も繰
り返し読み、来ていなかった時に「なんだよ……」
と肩を落とすのは、ポストを何度も開けては手紙が
入っていないか確認するのと同様であった。
▼サマーワの散髪事情
休日にしかできないことの1つ、それは散髪であ
る。
私は電池で作動するバリカンを出国前に購入し、
サマーワに持ち込んだ。髪型は派遣間、短い坊主頭
で通した。涼しくて入浴時の洗髪も楽でいい。髪が
伸びてきたら同じ整備小隊の同僚にお願いしてバリ
カンで刈ってもらった。私も頼まれて同僚の髪を刈
ることもあった。
他部隊、他部署の散髪事情はわからないが、我が
整備小隊は多くの隊員が坊主頭で過ごした。坊主頭
にしない隊員も、ほとんどは短髪にしており、支援
群内でも目につくような長髪の隊員はまずいなかっ
た。
また、役務の一環として、イラク人の理容師が週
に1度くらいの頻度で宿営地を訪れ、散髪をしてい
たが、予約が必要なうえ、遠くの天幕まで移動しな
ければならず、周囲でこのサービスを利用する隊員
はあまりいなかった。
▼「サマーワ洗濯法」
休日は溜まった洗濯物を一気に洗ういい機会であ
る。
宿営地内に洗濯天幕があり、天幕内に洗濯機が6
台(8台だったような気もする)設置されていた。
すべてが全自動洗濯機ではなく、二層式洗濯機も1
台か2台あった。洗濯天幕は宿営地内に1カ所だけ
ではなかったと思うが、私はいつも同じ洗濯天幕を
利用していた。
宿営地内に全部で何台の洗濯機があったのか正確
な台数はわからないが、少数だったと思う。数百人
の隊員が洗濯をするのに、少数の洗濯機では常に混
雑するのではないかと思われるかもしれない。しか
し実際のところ、確かに順番待ちが発生したりする
こともあったが、極端な混雑はなく、大抵はさほど
待つこともなく洗濯機を使用できた。
このスムーズな洗濯機の利用に役立ったのが「サ
マーワ洗濯法」ともいうべき洗濯方法で、誰が考案
したのかは定かではないが、各洗濯機の上部、蓋に
短時間で効率よく洗濯できる方法の説明書が貼って
あり、皆この方法で洗濯するため、通常の洗濯時間
の半分ほどで洗濯できた。この「サマーワ洗濯法」
のおかげですべての洗濯機が使用中でも、少しの待
ち時間で洗濯機が空き、使用できたのである。
洗濯を終えた後は洗った衣類を抱えて居住地区に
戻り、至る所に張られたロープにピンチハンガーな
どの物干し器具をかけて衣類を吊るし、干す。前述
したが、日中の気温は50度後半から60度まで上がっ
た。この環境なので、洗濯物は20分から30分ほどで
完全に乾いてしまう。ただし、強烈な日光にさらさ
れるため、色褪せも早く、防暑戦闘服は帰国時には
新品と比べて別物のように迷彩色が褪せていた。
▼完全な闇の中で就寝
就寝前、コンテナハウス内の自分のベッドでゴロ
ゴロするのは平日も休日も変わりない。
私は大抵、手帳に簡単な内容の日記を記し、あと
はポータブルCDプレイヤーで好きな音楽を聴いて
いた。
消灯前に歯を磨いたり、トイレに行ったりするが、
この際は小型のライトが必携だった。夜間は宿営
地内は照明が極力消され、真っ暗になるのである。
これは警備上、不必要な照明で宿営地内の部隊活動
状況を外部に悟らせないためであろう。
消灯も日本での駐屯地の時間と同じく22時30分だ
ったと思うが、コンテナハウス内の照明を消すと完
全な闇に包まれるため、手の届く所にライトを常備
したり、暗闇でも時間がわかるバックライト付の時
計も便利だった。
余談ながら、いびきに悩まされた隊員はどこの部
隊・部署でも多かったようで、私もその1人なのだ
が、こればかりは生理現象であり、隙間がほとんど
ないコンテナハウス内でよく響くいびきには有効な
対策もなく、とにかく我慢するしかなかった。
(つづく)
(ふじい・がく)
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【著者紹介】
藤井岳(ふじい・がく)ペンネーム
1979年岩手県一関市生まれ。1996年自衛隊生徒とし
て陸上自衛隊入隊。少年工科学校へ入校。卒業後機
甲生徒課程を経て第9戦車大隊(岩手)で戦車乗員
として勤務。2004年第3次イラク復興支援群に参加、
イラク・サマワにて任務に就く。2005年富士学校
(富士)に転属。機甲科部で助教として戦車教育に
従事。2008年退職。フリーランスフォトグラファー
として活動を開始。自衛隊航空部隊の撮影、取材に
取り組む。2015年から「PANZER」誌で執筆開始。そ
の後「丸」「JGROUNDEX」「JWings」などで写真
や戦車に関する記事を発表。現在に至る。
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