配信日時 2020/10/14 04:54

【本の紹介】『海洋戦略入門』(その2)

おはようございます、エンリケです。

『海洋戦略入門』のつづきです。

著者のジェームス・ホームスは海軍士官で、
どちらかといえば「うるさ型」の人のようです。

略歴は次のとおり。

ジェームズ・ホームズ
1965年生まれ。米海軍大学J.C.ワイリー海
洋戦略講座教授。
バンダービルト大学の予備役将校訓練課程(ROT
C)卒業後海軍士官に任官。戦艦ウィスコンシンに砲
術士兼応急士として乗り込み湾岸戦争に従軍。
復員後、海軍の勤務と並行して国際関係論の修士号
(MA)、国際安全保障及び戦略研究の学位(Diplomat)、
数学の修士号(MA)、法と外交の修士号(MA)、
国際関係論の博士号(Ph.D.)を取得。2002年からジ
ョージア大学で教鞭をとり、2007年から米海軍大学
の准教授、2017年から教授。25冊以上の著書があり、
本書のほかに『太平洋の赤い星』(バジリコ 2014
年)が邦訳されている。


前米国防長官のマティス海兵大将は「うるさいやつ」、
元米海軍作戦部長のハワード海軍大将は「波風を立
てる男」と氏を評しているそうですw

インド太平洋地域に強い関心を持っており、
とくに中共への関心が強い方ということです。

本著ではマハンの言葉を多く引用されてますが、
けっして無批判なマハン信奉者ではありません。


翻訳を担当されたのは、平山茂敏さんです。
略歴は次のとおり。

平山茂敏(ひらやま・しげとし)
1965年生まれ。防衛大学校防衛額教育学群教授
(戦略教育室)。防衛大学校卒業後、海上自衛隊で
勤務。英国統合指揮幕僚大学(上級指揮幕僚過程)
卒業。ロンドン大学キングスカレッジで修士号(M
A)を取得。
防衛学修士。護衛艦ゆうばり艦長、在ロシア防衛駐
在官、海上自衛隊幹部学校防衛戦略教育研究部戦略
研究室長などを経て現職。訳書に『アメリカの対中
軍事戦略』(監訳、A.フリードバーグ著、芙蓉書房
出版)、『現代の軍事戦略入門』(共訳、E.スロー
ン著、芙蓉書房出版)がある。


訳書の前2著はいずれもご紹介したはずです。

正直言うと、肌が合う訳者さんです。
担当された本はすべて面白く興味深く、再読すれば
再発見があり、ためになっています。
今回もそうで、これからもそうなる予感がします。
注目の訳者さんです。



ご紹介している『海洋戦略入門』は、
まさに海洋戦略の入門書です。

海洋国家にとって好ましい循環とは何か?
を解説する本です

海洋国家にとって好ましい循環について、
「シーパワーの作り方」「好循環を維持する方法」
「海軍はなにをするのか」の三章で解説しています。

では中身を見ていきましょう。


■目次

第1章  シーパワーの作り方
 海とは何か/シーパワーとは何か/誰が正しい素
質を有しているかを測定する:マハンの「シーパワ
ーの要素」

この章では、「海とは何か?」「海洋における協力
・競合の相互作用」「シーパワーとは何か?」につ
いて書かれています。


第2章  好循環を維持する方法
 本国と海外の商業海港/本国と海外の軍港/軍港
の候補者を評価する:君たちの地図を見よ/船舶:
商船隊/艦艇:海軍/海に対する戦略的意志

この章では、シーパワーの循環(作って、運んで、
売る)をいかに回し続けるか?について書かれてい
ます。
「軍港の問題」「シーパワーを支える商船」「海軍
について」「艦隊に命を吹き込む戦略的意志」など
への言及があり、最も重要な章といえます。


第3章  海軍はなにをするのか
 戦略の不変性/外交的役割/警察的役割/グレー
ゾーンにおける警察的役割と軍事的役割の協力/軍
事的役割/特別な例:「累積」作戦/トラブルメー
カー戦略:分遣隊による戦争/新しくつくられた古
いアイディア:接近拒否と領域拒否/マキャベリの
警告:文化に気を配れ

この章では、シーパワーの要素の中で最も目立つ
「海軍」について「海軍が何をなすべきか?」
という視点から論考されています。おそらくあなた
が一番興味をひかれる章でしょう。
キッシンジャーの核抑止理論からはじまり、わが国
もなじみ深い、ケン・ブースの「海軍の3つの役割
(外交的役割・警察的役割・防衛的役割)」の解説
もあります。著者はここで軍艦が発するメッセージ
を活用する外交的役割が最も重要としています。海
洋サプライチェーンの流通の輪を「守り奉仕する」
ことが警察的役割としています。

軍艦は存在そのもので意図と決意を意味します。
海軍力の展開や兵器は目に見える戦闘能力です。

平時の武力誇示が印象的であればあるほど「敵に投
げかける影」は長く暗くなるのです。
わが武力誇示が敵に投げかける影が長くなればなる
ほど我が国は安全になり、逆になると我が国は危険
になります。


またわが国にとって身近な、同盟に潜む「見捨てら
れ」「巻き込まれ」の問題、グレーゾーン問題に関
する考察も興味深いです。グレーゾーン問題につい
ては中共・ロシアの手法、軍事的役割の本質とは何
か?という観点から考察されています。



今日ご紹介している本は、


『海洋戦略入門』

著者 :ジェームズ・ホームズ 平山茂敏 訳
出版年月日:2020/09/10
ISBN  9784829507971
判型・ページ数  四六判268ページ
定価  本体2,500円+税

http://okigunnji.com/url/97/



でした。

明日も続きます。


エンリケ


追伸

石原さんの「漫画 マハンと海軍戦略」と合わせて
読むと面白いです。
http://okigunnji.com/url/98/




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