配信日時 2020/10/09 08:00

【自衛隊・熱砂のイラク派遣90日(11)】課業後の楽しみ──衛星携帯電話で家族に近況報告 藤井岳

こんにちは、エンリケです。

藤井岳さんの、
「自衛隊・熱砂のイラク派遣90日」
の十一回目です。

読んでいてなぜか涙が出ました。

さっそくどうぞ


ご意見・ご感想お待ちしてます。
コチラからどうぞ
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エンリケ


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新シリーズ!

自衛隊・熱砂のイラク派遣90日(11)

課業後の楽しみ──衛星携帯電話で家族に近況報告

藤井岳(ふじい・がく)(元陸自2曹)

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□はじめに

 最近は執筆や取材に費やす時間が多くなり、友人
と喫茶店で話をしたり、映画鑑賞や書店めぐり、ド
ライブなどに行く機会もずいぶん減った気がします。
しかし、自分が長年「こうなりたい」と思い描い
ていた生活や自分の姿はまさに今の状態なんですよ
ね。黙々と原稿に向かっている間、外の世界との交
流が恋しくなることも多々ありますが、今は自分の
やるべきことに集中し、さらに忙しくなれるよう努
力していく所存です!


▼宿営地内の福利施設

 宿営地での課業は日本と同様、17時の国旗降下
をもって終了する。17時以降も作業や業務が続く
ことも時にはあったが……。

 課業終了後から消灯までの過ごし方は基本的に各
隊員の自由である。皆、日本での駐屯地生活とほぼ
同様の過ごし方をしていたと思う。ある者は食堂で
夕食をとりながら雑談し、またある者は運動着に着
替え、ランニングや本格的なトレーニング器材が揃
っているトレーニング天幕で体力練成に励む。
 
 福利厚生施設は数種類設けられていたが、最も隊
員が足を運んだのは売店であろう。

 当初はプレハブで、並んでいる商品も少なめであ
ったが、滞在期間後半に立派な厚生センターが完成
した。売店も広くなり、ソファーセットや大型テレ
ビ、テレビゲームコーナー、図書室、多目的ルーム
やカウンセリング室など、それまで別々のプレハブ
や天幕にあった各種の福利厚生施設が厚生センター
1カ所にまとめられた。

 売店での買い物の際の支払いは個人に支給された
カードで決済し、使った金額が給与から天引きされ
るシステムであった。そのため、宿営地内では現金
を持ち歩く必要がなく、非常に便利であった。
 
 ほかには本・雑誌やCD・DVDを貸し出すコー
ナーや天幕もあり、こういった所でもよく本やCD
を借りた。これらの品は日本から送られてくるもの
のほか、第1次群、第2次群の隊員たちが帰国の際、
置いていったものも多数あった。

 また、この天幕では衛星携帯電話も貸し出してい
た。衛星携帯電話には使用規則があり、使用は各人
週1回、通話は10分であったと記憶している。時
差(日本時間からマイナス6時間)や電話の利用可
能時間を考慮して、18時前後に実家にかけること
が多かった。

 両親とは近況報告と愛犬のことをよく会話した。
10分はあっという間に過ぎる。電話の数もそれほ
ど多くなく、日によっては次の使用者が待っている
ので、長々と話すのも憚(はばか)られる。衛星携
帯電話は非常時に備えて各小隊長など、部隊・部署
の長にも渡されており、ある部署では小隊長が隊員
に自由に使わせていたりして「○○小隊の奴ら、い
つも電話してるけど、あれ小隊長の電話だろ!」と
腹を立てたこともあった。後日この天幕も厚生セン
ター完成をもってセンター内に移動した。

 娯楽室(天幕)も数カ所あり、多くの本が本棚に
置かれ、エアコン完備で涼しいなか、読書をしたり
休んだりできたが、こちらはなぜかあまり利用者が
なく、覗いても無人の時が多かった。

▼入浴後はノンアルビールで乾杯!

 食事と並んで隊員たちの楽しみは入浴だった。

 浴場は野外入浴セットが2張り設営された。私の
自衛隊生活の中で、野外入浴セットを利用したのは
サマーワ宿営地での入浴だけだった。災害派遣では
大活躍の野外入浴セットだが、隊内の演習や訓練で
入浴する機会はなく、そのような話も聞いたことは
ない。貴重な機会だったわけだ。

 野外入浴セットは「ミニ銭湯」ともいうべき資機
材であった。まず脱衣場があり、奥に浴槽が2つあ
る。浴槽を囲むようにシャワーとカランがあり、こ
こで身体を洗ってから浴槽に入った。毎日気温60
度近くの中で任務につき、汗まみれになってはすぐ
汗も乾き、肌には塩が付いて戦闘服も塩を吹くよう
な状態である。しっかり身体を洗い、湯に浸かるこ
とができるのは本当にありがたかった。

 楽しみは入浴後にも待っていた。浴場の入口付近
にはベンチが設置され、ここで冷えたノンアルコー
ルビールが飲めるのだ。ノンアルビールはベンチの
近くに置かれたシンクの中に、大きな氷と一緒に冷
やされた状態で入っており、一日一人一本飲んで良
しとされた。

 また、ノンアルビール以外にジュースも一緒に冷
やされていたが、ほとんどの隊員はノンアルビール
を飲んでいたように思う。私も元々ビール好きとい
うこともあり、迷うことなくノンアルビールを飲ん
だ。

 満天の星の下、さっぱりした身体でキンキンに冷
えたノンアルビールをぐいと飲むのは最高だった。
仲間たちと談笑しながら飲んでいると、何だかほろ
酔い感覚になるのも不思議だった。

 ちなみに私は2004年の誕生日をサマーワで迎
えたのだが、誕生日の数日前に一日ビールを飲むの
を我慢して冷蔵庫に保存しておき、誕生日の当日の
夜にその日の分と合わせて2本飲み、一人で自分に
対するささやかなお祝いをした。

 聞いたところによると、このノンアルビールの支
給は第1次復興支援群長の番匠幸一郎1佐(当時)
のアイデアだという。毎日の食事に入浴、そしてノ
ンアルビール。これらが隊員たちの士気向上・維持
に絶大な効果をもたらしたことは間違いない。


(つづく)




(ふじい・がく)


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【著者紹介】

藤井岳(ふじい・がく)ペンネーム
1979年岩手県一関市生まれ。1996年自衛隊生徒とし
て陸上自衛隊入隊。少年工科学校へ入校。卒業後機
甲生徒課程を経て第9戦車大隊(岩手)で戦車乗員
として勤務。2004年第3次イラク復興支援群に参加、
イラク・サマワにて任務に就く。2005年富士学校
(富士)に転属。機甲科部で助教として戦車教育に
従事。2008年退職。フリーランスフォトグラファー
として活動を開始。自衛隊航空部隊の撮影、取材に
取り組む。2015年から「PANZER」誌で執筆開始。そ
の後「丸」「JGROUNDEX」「JWings」などで写真
や戦車に関する記事を発表。現在に至る。



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