こんにちは、エンリケです。
じつに示唆に富んだ内容です。
わが防衛産業を深く知る桜林さんならではの
視点です。
さっそくどうぞ。
エンリケ
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今年4月に刊行された『自衛官が語る災害派遣の記
録』に続く、第2弾『自衛官が語る海外活動の記録』
(桜林美佐監修・自衛隊家族会編)が発売されてい
ます。中東シーレーンの安全確保をめぐって新たな
自衛隊派遣が行われているこの時期にタイミングを
合わせたような出版です。現地で自衛官たちが何を
思い、どのような苦労をして、任務をこなしてきた
か、25人の自衛官のリアルな体験記です。
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桜林美佐の「美佐日記」(95)
企業の支援なしでは戦えない……
桜林美佐(防衛問題研究家)
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おはようございます。桜林です。「男もすなる日記
といふものを、女もしてみむとてするなり」の『土
佐日記』ならぬ『美佐日記』は令和2年10月の今
回で95回目です。
東京証券取引所がシステムダウンし、丸一日取引
きができなかったという驚くべきことが起きました
。
といっても、私には何の影響もないので動揺はし
なかったのですが、これが空港で起こったら病院で
起こったらなどと考えると落ち着かない気持ちにな
りますよね。
今回、印象的だったのは、同日夕方に記者会見し
た東証の宮原幸一郎社長が開発ベンダー企業の富士
通を責めるような発言をしなかったことです。
宮原社長は富士通と原因究明を進めているとした
上で、「市場運営の責任の所在は私どもにあり、(
富士通への)損害賠償は現時点で考えていない」と
コメントしました。
現時点ではと前置きはしているものの、こうした
潔い姿勢に感銘を受けた日本人は多いのではないで
しょうか。
頭をよぎるのは、もし自衛隊において何らかの作
戦中に何らかの原因でシステムダウンという事態に
なったら?ということです。
もちろん私が心配するまでもなく、対策は用意さ
れているのでしょうが、現状の法制度の範囲内でど
の程度まで可能なのか気になります。
メンテナンスを民間企業に頼る状況は自衛隊も同
様でありながら、米軍などのようにいわば軍民一体
化というものではありません。
しばしば書いてきていますが、日本においては官
民を厳格に分けていて、自衛官でもたまに防衛関連
企業を「出入りの業者」のような言い方をする人が
います。
しかし、今の時代、自衛隊が戦うためには企業の
支援なしでは考えられないということを、今回の東
証事案では示唆していないでしょうか。
北朝鮮のミサイル対応で各地にPAC3が展開し
た時、三菱重工など関連企業関係者も万が一のトラ
ブルに備え、自衛隊のすぐ近くに張り付いていたと
いいますが、「すぐ近く」というのは、現場には入
れないという意味でもあります。
民間企業は自衛隊ではない。あくまで部外者です
ので近くで見守るしかない。同社の技術者の人たち
は怪しまれないように!?取り急ぎ社名の入った作
業着を作って着ていたということでした。
労働組合の反発も大きいこうした動きを、なんと
か可能にしているのは政治でも自衛隊でもない、結
局は当該企業の判断になるのです。
現代において最大の有事になり得るシステムダウ
ンに、軍民がいかにして一体となり立ち向かうかは
大きな課題でしょう。
当然、現場では一心同体の如くになっていると想像
しますが、制度上の問題は速やかに解決すべきで、
特に有事やそれに準ずる事態において、民間の技術
担当者の立場をどのようにするのか(例えば予備自
衛官に位置付けるなど)は定めておく必要があると
考えられます。
まして、企業を呼んで叱りつけ徹夜で復旧作業に
当たらせる、などという行為はあり得ない時代とな
るでしょう。
官民の「癒着」は「悪」という風潮もある中で、軍
事においては両者の関係を一層「密」にしていかな
くてはならないという、逆説的な課題もここにあり
ます。
また、装備品は複数の企業が関係しているものが
ほとんどで、その企業間の連携や情報共有も自衛隊
のイニシアチブが求められます。自衛隊と各社人員
との訓練も必要になるでしょう。
現在、競争入札制度によってライバル関係になる
企業間が協力することは困難になっています。
官側は民間企業に「競争せよ」と言いながら「連
携せよ」とも言うことになります。矛盾に満ちてい
ます。
国としては早くこの自家撞着から自らを解き放ち
「一丸となって国と国民を守る」態勢を整えるべき
ではないでしょうか。それが本当のサイバー・ディ
フェンスなのでは?と思ってしまいますが、どうな
んでしょうか。通信関係の皆さまのご意見ご感想を
お待ちしています!
<おしらせ>
YouTubeチャンネルくららで毎週土曜にアッ
プしている「国防ニュース最前線」、今週も伊藤俊
幸・元海将に解説をして頂きます。
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(さくらばやし・みさ)
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【著者紹介】
桜林美佐(さくらばやし・みさ)
昭和45年、東京生まれ。日本大学芸術学部卒。フ
リーアナウンサー、ディレクターとしてテレビ番組を
制作。その後、国防問題などを中心に取材・執筆。
著書に『奇跡の船「宗谷」─昭和を走り続けた海の
守り神』『海をひらく─知られざる掃海部隊』『誰
も語らなかった防衛産業[改訂版]』『武器輸出だ
けでは防衛産業は守れない』『防衛産業と自衛隊』
(いずれも並木書房)、『終わらないラブレター─
祖父母たちが語る「もうひとつの戦争体験」』(P
HP研究所)、『日本に自衛隊がいてよかった』(産
経新聞出版)、『ありがとう、金剛丸─星になった
小さな自衛隊員』(ワニブックス)。月刊「テーミ
ス」に『自衛隊密着ルポ』を連載中。
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(代表・エンリケ航海王子)
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