こんにちは、エンリケです。
藤井岳さんの、
「自衛隊・熱砂のイラク派遣90日」
の十回目です。
糧食の大切さを肌で感じることって、
日常生活に埋もれていると、なかなか
ないですよね。
この記事で、
間接的にでも、そういう経験を味わえる
って貴重なことと思いませんか?
さっそくどうぞ
ご意見・ご感想お待ちしてます。
コチラからどうぞ
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エンリケ
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新シリーズ!
自衛隊・熱砂のイラク派遣90日(10)
サマーワ宿営地の食事事情
藤井岳(ふじい・がく)(元陸自2曹)
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□はじめに
すっかり秋めいてきました。わたしの家は田んぼ
に囲まれていますが、1日ごとに稲を束ねたものを
木の棒に組んで積み上げていく「ほんにょ(穂仁王)」
が起ち、この光景を見ると秋の到来を感じます。
米どころならではの光景です。
▼朝食は必ず白米と味噌汁
宿営地での生活はおおむね快適だった。隊員が任
務で緊張を強いられ、ストレスを溜める分、休憩や
休日は適切に確保されていたと思う。隊員が休む時
は精神的にも肉体的にもリラックスできるよう、さ
まざまな配慮がなされていた。
1日3食、食堂で食事した。われわれ第3次群が
サマーワ宿営地に到着した時は、すでにプレハブの
立派な食堂が完成し、内部も日本国内の駐屯地隊員
食堂と作りや雰囲気がさほど変わりなく、大型のテ
レビも設置され、衛星放送で日本のニュースを観る
ことができた。日本の情報を比較的タイムリーに知
ることができるのは便利であった。
朝食には必ず白米と味噌汁が出たので、これは本
当に嬉しかった。ほかにもふりかけやお茶漬けなど
もテーブルに常備され、食が進んだ。とくに朝食は
もりもり食べた覚えがある。
昼には1人1個アイスクリームを食べることがで
き、冷凍ケースから好きなアイスを取って食べた。
夕食はボリュームのあるメニューが多く出た。やは
り肉料理が多かったように思う。
糧食班も隊員が飽きないよう、工夫を凝らしたメ
ニューを提供してくれた。もちろん彼らが厳しい環
境下で汗水流して作った食事が、支援群の隊員の士
気の元であったのは決して過言ではない。
過去の戦史からみても、戦場における「食」が将
兵の心を安堵させ、そして戦意を高める存在であっ
たのは疑いようがない事実である。日本での演習や
訓練においても、後方で補給部隊が調理してくれる
「温食」がいちばんありがたい。最近は戦闘糧食・
携行食も味も良く、加熱剤を使用し温めて食べられ
るものも出てきている。
任務で宿営地を出て、夕方や夜に戻る場合は戦闘
糧食が支給された。時に食べずに持って帰って来る
こともある。米のパックはすぐに固くなってしまう
が、これを日中、野外に放置しておくと、高温でだ
いたい30分くらいで柔らかくなって食べられるよ
うになり、小腹が空いた時などはよくこの方法で食
べた。
▼いつでも必要な時に水が飲める
任務に就く際に重要なのは水分補給。休日、体を
休めている時でも水分補給は必要だ。水分補給には
スポーツドリンクなどが良いとされ、売店でも販売
していたが、水分補給が1日2リットル前後になる
ことを考えると、毎回スポーツドリンクを買ってば
かりもいられない。
支援群ではミネラルウォーターを無償で隊員に提
供していた。これは誰かが配るのではなく、宿営地
内にある「ウォーターポイント」から必要な分だけ
ミネラルウォーターを持っていくのである。
ウォーターポイントには1.5リットルのペット
ボトルのミネラルウォーターが箱ごと積み上げられ、
常に十分な量が確保されていた。車輌整備班を含
むほとんどの部署では箱ごと天幕に持ってきて、冷
蔵庫などに保管し、いつでも誰でも必要な時に水が
飲めるようにしてあった。
▼イラク人の「差し入れ」
役務で宿営地にやってくるイラク人の中には「差
し入れ」や「お土産」として彼らがふだん食べてい
る物を持参してくることがあった。私が食べたのは
ナツメヤシの実とスイカである。ナツメヤシの実は
クウェートの「キャンプ・バージニア」でもカフェ
の店員に食べさせてもらったが、サマーワで食べた
ナツメヤシの実はビニール袋に入っていて、見た目
がネバネバしていてどうも手が伸びない。これを食
べたら腹を壊すんじゃないか……。
結局、上官の「みんな食べたぞ」「せっかくサマ
ーワの人たちが持ってきたくれたんだ」という言葉
で覚悟を決めた。味はクウェートで食べたのと同じ
レーズンのようで、腹を壊すこともなかった。
スイカはほかの部署の野外作業の支援に行った際
にご馳走になった。興味深かったのはその形で、日
本のスイカは球状なのに対し、イラクのスイカは楕
円形、ラグビーやアメフトで使うボールのような形
だった。甘みが少なく感じたが、味そのものは日本
のスイカと全く同じで、日本から遠く離れた外国で
夏の風物詩を味わえたことが何やら嬉しかった。
▼室温70度!いちばん過酷な「糧食班員」
ある日の昼食、食堂に向かう途中、日本で同じ部
隊に所属する隊員と会い、話をした。彼は糧食班で
勤務しており、勤務を終えて自分の寝床に戻る途中
なのだと言った。
驚いたのは彼の相貌で、頬がこけており、顎や口
の周りは無精髭が伸びていた。
「お前、何か細くなったな。頬がこけてるぞ。大丈
夫なの?」
「いやー……、キツいですよ。厨房の中、毎日70
度以上まで上がりますからね」
「はぁ? 70度以上?」
「はい……」
「大丈夫なのか? 倒れないように気をつけてな?」
70度? 絶句とはまさにこのことである。真夏
にサマーワに展開したわが第3次復興支援群は気温
約60度前後という厳しい環境下で任務を開始した
が、それは野外での話で、ハエなどが入らないよう
に密閉した厨房で調理機器を使えば厨房内の温度は
確かに70度以上になるだろう。
クーラーもなく、申し訳程度の扇風機があるだけ
の厨房での勤務。朝は誰よりも早く起床し、隊員達
の朝食を作り、夜は皆が休んでいるなか、次の日の
準備と片付けを済まして1日の業務を終わらせる。
前述したように、支援群の隊員のいちばんの楽し
みは食事である。最も過酷な部署で毎日、隊員たち
の力と元気の源となる美味しい食事を作り続けた糧
食班員。隊員はそれぞれ厳しい仕事をかかえて毎日
の業務に就いており、どの部隊、部署がいちばんキ
ツいと比べるのは野暮だが、それでもあえていちば
ん過酷な部署をあげるとしたら、私は迷わず糧食班
だと思う。今さらではあるが、彼らにはただただ感
謝の念しかない。
▼宿営地の嫌われ者
「ハエ」は日本でも夏場は鬱陶しい存在だが、サマ
ーワのハエは日本の比ではなかった。とにかく、ど
こにでも現われ、追い払っても、追い払っても減ら
ないのである。
そのため、宿営地内では至る所に天井から「ハエ
取りリボン」がぶら下がっていた。これが効果抜群
で、新しいリボンをぶら下げすると、まるでハエが
リボンに吸い寄せられるようにどんどんくっついて
いくのである。効果がありすぎて頻繁に交換しなけ
ればならなないほどだった。
そのほか宿営地にはネズミやサソリが出没した。
とくにネズミは頻繁に現われ、増加食のカップラー
メンや菓子を天幕内の低い位置に置いておくと、ほ
ぼ確実に被害にあった。カップラーメンはカップを
かじって穴をあけ、そこから中の乾燥麺を食べるの
である。
日本から持ち込んだネズミ捕りシート(ネズミホ
イホイ)を天幕内に仕掛けておくと、数日で何匹も
かかるほどであった。シートを廃棄する際、まだ鳴
き声を出しているネズミもおり、憎たらしい存在な
のに、この時は何だか可哀想であった。
(つづく)
(ふじい・がく)
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【著者紹介】
藤井岳(ふじい・がく)ペンネーム
1979年岩手県一関市生まれ。1996年自衛隊生徒とし
て陸上自衛隊入隊。少年工科学校へ入校。卒業後機
甲生徒課程を経て第9戦車大隊(岩手)で戦車乗員
として勤務。2004年第3次イラク復興支援群に参加、
イラク・サマワにて任務に就く。2005年富士学校
(富士)に転属。機甲科部で助教として戦車教育に
従事。2008年退職。フリーランスフォトグラファー
として活動を開始。自衛隊航空部隊の撮影、取材に
取り組む。2015年から「PANZER」誌で執筆開始。そ
の後「丸」「JGROUNDEX」「JWings」などで写真
や戦車に関する記事を発表。現在に至る。
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