こんにちは、エンリケです。
「戦略航空偵察」三十四回目です。
きょうも、実に興味深い話です。
嘉手納の重さがよくわかりますね。
内容は以下のとおりです
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□ご挨拶
▼OXCART計画の終焉とSR-71への移行
▼SR-71の開発経緯
▼SR-71運用開始
▼SR-71のムルマンスク偵察
▼地対空ミサイルSA-5偵察
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さっそくどうぞ
エンリケ
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戦略航空偵察(34)
戦略偵察機SR-71(1)
西山邦夫(元空将補)
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□ご挨拶
今回と次回、SR-71について書きたいと思い
ます。A-12が短い活動期間しか保てなかったの
に対し、SR-71は約30年間運用され、顕著な
成果を挙げた偵察機でした。A-12とほぼ同様な
飛行性能を持っていましたが、A-12にない電子
情報収集能力があったことが、より長期にわたって
運用される要因ではなかったかと思います。
SR-71は沖縄嘉手納基地が主要な活動拠点で、
他の海外基地は英国のミルデンホール基地だけで
した。この2つの基地におけるSR-71の運用実績
は嘉手納がはるかに上でしたから、日本とも密接
な関係があった機体でした。
▼OXCART計画の終焉とSR-71への移行
1962年から1968年までの間、13機のA-
12 がCIAに所属して飛行しましたが、短期間
でOXCART計画は終了となりました。空軍はO
XCART計画に協力的で、財政的な支援のみなら
ず、A-12への空中給油の支援も行なってきまし
たが、その一方で1962年12月、飛行性能がほ
ぼ同等の偵察機、SR-71ブラックバードを6機
発注しました。次いで、1963年8月に25機を
追加発注し、最初のSR-71は1964年12月
22日に初飛行しました。
A-12計画の終了にともない、CIAは超音速
航空機による偵察機能を失うことになりましたが、
空軍とSR-71の運用をシェアすることで合意し
ていました。
U-2の後継を目指したA-12はその高性能を誇
りましたが、短期間で運用期間を終了せざるを得ま
せんでした。U-2は海外に容易に展開し、迅速に
運用を開始できた。A-12は膨大な後方支援を必
要とし、展開可能基地は制限され、かつ運用には柔
軟性が欠けていました。必要な時に、必要な場所で
運用するのが困難だったのです。
米空軍が所管するSR-71も同様な特性を持って
いましたが、ほかに代替えのない機能は貴重であり
、米情報機関もそれを認識して同機の維持に努めま
した。しかし、SR-71も主として財政的な理由
で1990年に退役に追い込まれました。
▼SR-71の開発経緯
A-12(OXCART)の開発と並行し、ロッ
キード社はCIAと空軍の要求性能を共に満たす偵
察機の設計を開始することを考えました。主任設計
者のケリー・ジョンソンンはこの航空機をR-12
と呼び、偵察だけでなく攻撃、要撃にも使える機体
とすることを企図しました。
1963年の初め、空軍とCIAはこの案に合意
し、R-12の開発経費を分担することにしました
。R-12の経費は24機が認められた。R-12
の3つの目的(偵察、攻撃、要撃)を検討するなか
、それが複座のYF-12(超音速の要撃機、A-12を戦
闘機に発展させた型)と似た機体になってきました。
高速に耐えるため、機体前部の幅を広げたので、
武装はできなくなり、偵察専用の機体となりました。
1964年、ジョンソン大統領はR-12の存在
を公表しましたが、その時読み上げたペーパーで、
R-12をSR-71と誤読したためその後はSR
-71と呼ばれるようになったという話が流布され
ています。
戦略的な偵察活動のため、SR-71は写真、赤外
線写真および電子的なセンサーを搭載し、さらに広
範な任務に適合するよう、広範な戦域の捜索システ
ムから高度な機能を持つ偵察器材をオプションで搭
載できるようにしました。搭載器材には、パノラミ
ック・長距離・斜方向カメラ、サイドルッキング・
レーダー、赤外線スキャンおよびELINT器材が
ありました。かつて筆者が嘉手納基地でSR-71
を見学した時、これらの偵察器材は、偵察目的によ
ってカセットを入れ換えるように変更が可能だとい
うことでした。
▼SR-71運用開始
1966年7月、SR-71はカリフォルニアのビール基地
で第9戦略偵察航空団に所属し、運用を開始しまし
た。1960年代を通じて、SR-71は北朝鮮、北ベト
ナム、東南アジア、スエズ運河、中東、北アフリ
カ地域およびキューバを偵察しました。その後、
1970年にはスエズ運河地域を、1971年まで中国を、
第4次中東戦争時には中東地域を飛行しました。
これらの飛行に対し、合計約千発のSA-2ミサイル
が発射されましたが、SR-71は1機も撃墜されませ
んでした
SR-71のパイロットは、飛行任務の2回に1
回は広域監視やワシントンからの直接の指令で行な
う任務に従事しました。また、パイロットは基地か
ら常時30マイル以内にいる必要がありました。こ
れに違反すると罰を科せられたということです。
1980年代は、紛争の発生地域が北アフリカと中東
ペルシャ湾へとシフトしたため、ミルデンホール基
地のSR-71は当該地域への飛行を強化し、偵察飛行
に450時間を費やしました。
▼SR-71のムルマンスク偵察
1977年5月20日、英国のミルデンホール基
地へSR-71が着陸しました。目的は、ムルマン
スクのソ連海軍基地の潜水艦の情報を写真とELI
NTによる収集でした。これにRC-135リベット・
ジョイント偵察機が協力する手はずになっています。
この飛行は、SR-71が欧州方面で行なう初めて
のミッションで、ムルマンスク地区の偵察でした。
この地区には新しい地対空ミサイルS-200(NATO名
SA-5ガモン)が初めて配備され、米情報機関の関心
が集まっており、このミサイルの情報収集もミッシ
ョンに含まれていました。
ソ連は5月19日にSAMのテストを行なうので、
高度10万フィートまで危険とのNOTAM(no
tice to airmen 航空機を運航するための情報)を
出していました。米情報機関は、ソ連の情報機関
が米偵察機の飛行予定を詳細に掌握していると推
測しており、このNOTAMをSR-71の飛行予定の前
日に恣意的に発したらしいと考えました。
飛行予定の情報が漏れたことへの対処のため、関係
部署間で行なった事前の電話ミーティングを行ない、
このNOTAMが出されたことを理由に飛行を中止す
るかを検討しました。
計画する飛行経路は国際空域でソ連領空には入らな
い、しかし、ミッションの目的は潜水艦と防空に関
する可能な限り大量の情報を収集することです。計
画の中でSR-71がムルマンスクの潜水艦基地へ向か
って真っすぐ飛行する部分があり、海岸線に直角に
マッハ3・15であたかも内陸へ侵入するように飛行
する。そこはNOTAMが示す危険エリアの真ん中で
す。その後、急旋回して海岸線に平行に戻ります。
SR-71の安全について、戦略空軍(SAC)の関心は、
SR-71に対しSA-5が発射されるかどうかにあり、
さらに新しいSA-5ミサイルが発する電波の周波数
などの諸元の収集にありました。
▼地対空ミサイルSA-5偵察
SA-5ガモン地対空ミサイルは、B-58超音速
爆撃機、U2偵察機、SR-71偵察機などに対処
するために開発された射程40~300Km、射高
30,000~40,000mの能力を持ち、SA-2ミサイ
ルを後継する位置にあると見られており、性
能の掌握は喫緊の問題でした。
その後の某日、SR-71、RC-135、空中給
油機が計画通り離陸しました。SR-71は上昇を
開始し、目的のエリアに入る前に計画通りのマッハ
数まで加速し、水平飛行に入りました。2つの目標
地域を通過し、SAMの危険範囲を抜け、最後の空
中給油を終えてミルデンホールへ無事帰投しました。
SR-71と共同で収集作業を行なったRC-13
5は、目標地域を短時間飛行した時、ソ連管制官が
要撃機に対しSR-71を迎撃するよう指令する無
線通信を傍受しました。要撃機のパイロットは「航
跡雲が前方上空に見えるが、高速で上昇し続けてお
り、捕まえられない」と言っていました。
また、目標の1つであったSA-5が発する電波の
周波数は、SR-71とRC-135の双方が捉え
ており、偵察目的は達成されました。SA-5ミサ
イルの発射はありませんでした。
(つづく)
(にしやま・くにお)
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□著者略歴
西山邦夫(にしやま・くにお)
1936年生まれ。防衛大学校卒(4期・空)。
情報関係略歴:航空幕僚監部調査2課収集1班長、航
空総隊司令部情報課長、陸幕調査別室主任調整官、
航空自衛隊幹部学校主任教官。著書に『肥大化する
中国軍(空軍部分を執筆)』(晃洋書房、2012年)、
『中国をめぐる安全保障(空軍部分を執筆)』(ミ
ネルバ書房、2007年)。研究論文に『中国空軍の戦
力構成とドクトリン』『中国空軍のSu-30MKKとイン
ド空軍のSu-30MKI』『韓国空軍の増強と近代化』
『中露合同軍事演習』『中国の主要航空兵器の装備
化実績と将来予測』『中国空軍の戦力とドクトリン』
『チベットにおける中国の軍事態勢整備』など多数。
近刊として『戦略航空偵察(仮題)』。
。
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