配信日時 2020/09/11 08:00

【自衛隊・熱砂のイラク派遣90日(7)】「砂や熱が原因の故障はほとんどなかった…」 藤井岳

こんにちは、エンリケです。

藤井岳さんの、
「自衛隊・熱砂のイラク派遣90日」
の七回目です。

実に興味深い内容です。

びっくりするほど意外な話もバンバンあります。

ちなみにもしわたしが群長だったら、
モトリー・クルーの
「Too Young to Fall in Love」
だったかもしれません。

そのあたりの話も詳しくは本文で・・・

さっそくどうぞ


ご意見・ご感想お待ちしてます。
コチラからどうぞ
 ↓ ↓ ↓ ↓
https://okigunnji.com/url/7/



エンリケ


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新シリーズ!

自衛隊・熱砂のイラク派遣90日(7)

「砂や熱が原因の故障はほとんどなかった…」

藤井岳(ふじい・がく)(元陸自2曹)

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□はじめに

 最近「懐かしの~」といった題の本をよく手に取
ります。子供の頃に遊んだ玩具や駄菓子屋でよく食
べた菓子がたくさん載っていて、そうそう、こうい
うのあったよね! と自然と笑顔になってしまいま
す。

 この手の本が多数出ているということは、やはり
昭和時代や平成時代前期を懐かしむ人が多いという
ことでしょうか。「後ろ(過去)ばかり見ていては
いけない」といった言葉がある反面「過去の自分を
知ることは今の自分を知ることだ」といった台詞が、
ある漫画の中にもあります。

 この時代に何かを忘れた現代人、たまには昔を思
い出すのも悪くない、ということなのかもしれませ
んね。


イカロス出版『JグランドEX No.9』(*)の
74式戦車特集で「74式戦車 戦闘術基礎講座」
と称して74式戦車の戦術の紹介、解説を寄稿させ
ていただきました。現役時代に愛車として苦楽を共
にした74式戦車。ファンも多く、性能的にも日本
の国土にマッチした戦車であり、まさに「名車」だ
と思います。こちらの方もどうぞよろしくお願い致
します。

(*)『JグランドEX No.9』
   https://amzn.to/32rHXZW
 
 
▼起床から就寝まで。宿営地での基本的な流れ

 サマーワ宿営地での1日の基本的な流れを簡単に
説明しよう。

 まず起床。サマーワ滞在中は3か月間ほとんど晴
天で、ほぼ毎日美しい朝日を拝むことができた。

 各支援群にはテーマソング(各群長の好きな曲?)
があったようで、わが第3次支援群のテーマソング
はJOURNEYの「OPEN ARMS」。多くの人が一度は耳に
したことがあると思われる名曲である。これが毎朝、
起床と同時に宿営地内に放送された。広い青空に朝
日が昇るのを眺めながら聴くこの曲は「今日もやる
ぞ」と意気を高めてくれた。思い出深い曲である。

 起床後は食堂で朝食の喫食や洗顔などをする。宿
営地内には数か所の手洗い場があり、水道の蛇口が
6口ほど、下には流し台が備えられていた。水道の
元は大型の給水タンクで、給水隊が1日に数回水の
補充をしていた。その手洗い場で歯磨きや洗顔、ひ
げ剃りをするのである。ちなみに、水の使用量が多
い時は、タンクが空になり、夜や朝に水が出ないこ
ともしばしばであった。また、タンク自体が熱を持
ち、蛇口から温水が出てくることもあった。
 
 その後、戦闘服に着替えて身なりを整え、宿営地
のおおむね中央に位置する朝礼場へ向かう。そこで
支援群全体で行なわれる「群朝礼」に参加。自衛隊
体操と支援群長訓示、そして、国旗掲揚。国旗は日
本とイラクの国旗が同時に掲揚される。その後、中
隊ごとに分かれて中隊朝礼。整備天幕地区に移動し、
整備小隊事務室前で小隊・班朝礼となり、ここで各
チームのその日の整備内容が伝達される。解散後、
待機用天幕で官給品の整備服に着替える。
 
 待機用天幕はその名の通り、勤務中の待機や休
憩、着替えのための天幕である。個人で棚や収納ス
ペースを作り、そこに私物を置いていた。もちろん
エアコン完備で冷蔵庫もあった。

 着替えた後は主に整備用天幕およびその周辺で各
チームごと、割り当てられた整備作業を行なう。整
備用天幕内にはエアコンが設置されていたが、作業
中は2つある入口幕を両方開放することが多く、そ
のため熱風が吹き込み、天幕内の温度は高く、日光
を遮るだけまだよかった。全チームが整備天幕を使
用できるわけではなく、野外で整備するチームは日
光に耐えながら整備しなければならなかった。
 
 このような状況なので、休憩はこまめにとられ、
それぞれミネラルウォーターなどのペットボトルを
常に手の届く所に置き、水分補給も十分にしながら
の作業であった。熱中症に対する注意、対策は支援
群全体に徹底されており、絶対に無理はするなとの
達しが出ていた。それが功を奏し、熱中症で体調を
崩す隊員はほぼいなかったと記憶している。

 昼、作業を中断。食堂で昼食を喫食し休憩。休憩
後、午後の業務を開始。

 夕方、時間と作業進度をみて16時過ぎから片付
けや撤収、次の日の準備を行ない、中隊での終礼。

 終礼、国旗降下後は基本的に消灯まで自由な時間
となる。夕食、体力練成(ランニングやトレーニン
グ天幕でのトレーニングなど)、売店での買い物、
入浴など過ごし方はさまざまだ。
 
 そして消灯。次の日の業務に備え、就寝する。

 夜間の望楼勤務にあたっている日は、指定された
勤務時間に合わせて起床。上番(じょうばん)前に
フル武装で集合し、ブリーフィングを受けた後、割
り当てられた位置で任務につく。私は寝過ごしを防
ぐために目覚まし時計をセットしていたが、たいて
い鳴る前に目が覚めてしまった。

▼役に立たなかった小型扇風機

 私が担当した車輌整備は実際のところ、各種車輌
の定期整備が主要業務だった。時には不具合が出た
車輌の修理もあったが、意外にも砂や熱が原因の重
大な故障はほとんどなく、支援群の装備車輌の稼働
率は非常に高かった。定期整備でエアクリーナーエ
レメントの交換を実施した際、砂がドッサリ詰まっ
ているのではという私の予想は外れ、木の台の上で
コトコトと衝撃を与えても、少量の砂が落ちるだけ
であった。

 派遣前、各種メディアなどで日本国内での運用を
主として生産された陸上自衛隊の装備が、イラクの
厳しい環境下で問題なく稼動するだろうかという疑
問が呈されていたが、私の見た限り、武器、車輌、
個人装備など、大きなトラブルを出した装備はなか
った。むしろ良好な装備の稼働状況に驚かされたの
は我々派遣隊員の方である。
 
 ほかにも整備作業の中にはこんなこともあった。

 ある日、車輌整備班に大きな段ボールが数個届き
「これをLAV(軽装甲機動車)全車に取り付けよ」と
指示された。皆で段ボールを開き、中を見ると小型
の扇風機が多数詰まっていた。市販のカー用品、非
常に簡素な造りのもので「これ、オモチャだろう……」
と皆、口を揃えて首を傾げたが、指示は指示。扇風
機は定期整備に入ってくるLAVに順次取り付けていっ
た。

 ところが数週間後、今度は「LAVの扇風機をすべ
て外せ」との指示。LAVを主に運用する警備中隊か
ら苦情が入ったのだという。曰く「涼しくない」
「邪魔」ということらしい。それを聞いた同僚たち
は皆、それ見たことかとばかりに苦笑と文句のな
か、扇風機を取り外した。
 
 支援群の隊員数はそれほど多くもなかったので、
少しでも手が空くと、他部署の作業の手伝いなどに
呼ばれることもしばしばだった。整備小隊の隊員は
その技能から、何でも直せて力持ちで作業にはもっ
てこい、といったイメージが支援群内で定着していた
のだろう(実際そうなのだが)。自隊の作業のほか
に他部署の作業にも呼ばれ、多忙な時もあったが、
宿営地で共に暮らす「家族」の頼みをないがしろに
するわけにもいかない。整備小隊の隊員は工具をも
ってどこへでも修理や手伝いに出かけた。
 
 支援群の各中隊や大きな部署にはおおむね1両ず
つ「レンジャー」と呼ばれる小型バギーが配備され
ており、宿営地内の移動や荷物などの輸送に活躍し
た。わが整備小隊も「出張整備」の際はよく利用し
た。ほかにも宿営地内での移動手段として自転車も
何台か持ち込まれたが、宿営地内の主要な通路は粗
い砂利敷きの通路であり、自転車はパンクしやすく、
ほとんど使い物にならなかった。


(つづく)



(ふじい・がく)


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【著者紹介】

藤井岳(ふじい・がく)ペンネーム
1979年岩手県一関市生まれ。1996年自衛隊生徒とし
て陸上自衛隊入隊。少年工科学校へ入校。卒業後機
甲生徒課程を経て第9戦車大隊(岩手)で戦車乗員
として勤務。2004年第3次イラク復興支援群に参加、
イラク・サマワにて任務に就く。2005年富士学校
(富士)に転属。機甲科部で助教として戦車教育に
従事。2008年退職。フリーランスフォトグラファー
として活動を開始。自衛隊航空部隊の撮影、取材に
取り組む。2015年から「PANZER」誌で執筆開始。そ
の後「丸」「JGROUNDEX」「JWings」などで写真や戦
車に関する記事を発表。現在に至る。



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