配信日時 2020/09/07 08:00

【桜林美佐の「美佐日記」(91)】防衛省初のオークションと「2兆円」の呪縛

こんにちは、エンリケです。

いい記事です。

さっそくどうぞ。


エンリケ


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今年4月に刊行された『自衛官が語る災害派遣の記
録』に続く、第2弾『自衛官が語る海外活動の記録』
(桜林美佐監修・自衛隊家族会編)が発売されてい
ます。中東シーレーンの安全確保をめぐって新たな
自衛隊派遣が行われているこの時期にタイミングを
合わせたような出版です。現地で自衛官たちが何を
思い、どのような苦労をして、任務をこなしてきた
か、25人の自衛官のリアルな体験記です。

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桜林美佐の「美佐日記」(91)

防衛省初のオークションと「2兆円」の呪縛

桜林美佐(防衛問題研究家)

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おはようございます。桜林です。「男もすなる日記
といふものを、女もしてみむとてするなり」の『土
佐日記』ならぬ『美佐日記』は令和2年8月の今回
で91回目です。
 
 私は実は埼玉通ということで、得意になって昔住
んでいた場所に行ってみたところ、全く様子が変わ
っていましたし、アウトレットに行こうとしたら
10年前に閉鎖されていたり・・・、やはり20年
も経つと状況は変わっているものですね。というか、
20年前の記憶だけを頼りに出かけようとしてはい
けないということが分かりました・・。
 
 さて、この日記でついつい書きそびれてしまいま
したが、最近「防衛省で実施したオークションって
どうなんですか?」と聞かれましたので、ちょっと
旧聞になりましたが触れておきたいと思います。
 
 防衛省初のオークションは7月26日に行なわれ
ました。市ヶ谷の防衛省で176人が参加し(コロ
ナの影響で東京都民に限定)、売り上げ上げは581
万8000円という成果を上げました。
 
 この計画が発表された当初「将来的にはF35戦
闘機1機分くらいの収入を」と大臣が発言していた
ことから、あたかも売上げが防衛費に入るかのよう
に勘違いした方も多いようですが、枠が決まった予
算の中でそのようなことができるはずはなく、売上
げ分は全て国庫に納入されます。
 
つまり、このオークション開催のために多くの関係
者が相当な労力を割いたと思いますが、その努力は
1円たりとも防衛予算に入りません。
 
河野大臣は今回の売上げ分を予算要求の際に財務省
に考慮してもらう方針なのでしょう。その成果を期
待するしかありません。
 
このことについて報道では、予算要求で「自衛隊の
隊員の生活環境、勤務環境の改善等に役立てる」と
いう大臣の発言の一部だけを切り取って報じていま
したが、会見ではもっと具体的なことを言っていま
す。
 
曰く「隊舎の冷房を使える時間が限られている・・」
と。だからこその環境改善だという趣旨です。
 
 九州から関東に来て思いましたが、私のいたとこ
ろが福岡の中でも盆地で、また建物も少なく日陰が
少ないこともあるのか、体感的にはとても厳しい夏
の暑さでした。冬はまた寒い。
 
 営内生活をする隊員さんたちは夜間にエアコンが
止められますので、夏は寝不足という話は常に聞き
ます。同じ気温でも湿度や地形などにより想像より
も大変な状況にある人がいることでしょう。
 
 今回のオークションによって、自衛隊の冷房がも
っと使えるようになるのかどうか分かりませんが、
大臣がこのような実態をあえて記者会見で伝えてい
るのですから、そこをもっと取り上げてくれてもよ
かったのではないかと思います。
 
そして、最も重要なのは、オークションをしなくて
はいけないと大臣に思わせた要因です。
 
オークション開催に至った背景は、防衛装備庁・自
衛隊が作成した「参加の手引き」の冒頭にその答え
があります。
 
「防衛省・自衛隊は中期防衛力整備計画に定められ
た『収入の確保』に資する取組として、防衛力整備
のための実質的な財源の確保を目的とし、『せり売
り』(いわゆるオークション)の方法により、物品
の売払いを行います」と。
 
当メルマガを読んでいる皆さんはもうご承知のとお
り、中期防は5年間の計画で、最新のものは27兆
4700億円が必要になる内容になっています。し
かし、よく見ると、コストの抑制や収入の確保など
を実施し「予算では25 兆5,000億円ほどにする」と
書かれているのです。
 
つまり、実際には発表された額より約2兆円マイナ
スされた金額にしなければならないわけです。
 
防衛省・自衛隊はオークションだけでなく、あらゆ
る方策で2兆円をはじき出さなければなりません。
 
傍らで軍事圧力を強めている国があるにもかかわら
ず、です。防衛省・自衛隊は中国だけではなく「2
兆円」の呪縛にも追いかけられているのです!
 
オークションの報道を面白おかしく伝えても、日本
の防衛にとって何の得にもなりません。伝えるべき
本丸はまず中期防の実態であり、加えて隊舎の生活
実態は依然として厳しいということでしょう。
 
<おしらせ>
YouTubeチャンネルくららで毎週土曜にアップしてい
る「国防ニュース最前線」、今週も伊藤俊幸・元海
将に解説をして頂き、私はリモート出演です!

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(さくらばやし・みさ)



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【著者紹介】
桜林美佐(さくらばやし・みさ)
昭和45年、東京生まれ。日本大学芸術学部卒。フリ
ーアナウンサー、ディレクターとしてテレビ番組を
制作。その後、国防問題などを中心に取材・執筆。
著書に『奇跡の船「宗谷」─昭和を走り続けた海の
守り神』『海をひらく─知られざる掃海部隊』『誰
も語らなかった防衛産業[改訂版]』『武器輸出だ
けでは防衛産業は守れない』『防衛産業と自衛隊』
(いずれも並木書房)、『終わらないラブレター─
祖父母たちが語る「もうひとつの戦争体験」』(PH
P研究所)、『日本に自衛隊がいてよかった』(産
経新聞出版)、『ありがとう、金剛丸─星になった
小さな自衛隊員』(ワニブックス)。月刊「テーミ
ス」に『自衛隊密着ルポ』を連載。


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おきらく軍事研究会
(代表・エンリケ航海王子)
 
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