こんにちは、エンリケです。
292回目となる
「渡邉陽子のコラム」は、
「陸上自衛隊第4師団訓練検閲」
の4回目です。
きょうも面白いです
さっそくどうぞ
エンリケ
追伸
東京五輪は一年延期されました。
『オリンピックと自衛隊 1964-2020』
を読んで、来年に思いを馳せます。
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「ライター・渡邉陽子のコラム」バックナンバー
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『ライター・渡邉陽子のコラム (292)
―陸上自衛隊第4師団訓練検閲(4)―
渡邉陽子
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こんばんは。渡邉陽子です。
写真を撮るのは苦手ですが、撮られるのはもっと苦手です。けれど
どうしても顔写真を撮る必要が生じ、ついにスタジオに行くことに。
知り合いのカメラマンはたくさんいるし近くにスタジオを構えてい
る人もいるというのに、あまりの気恥ずかしさに耐えられそうもな
く、近所の写真館で撮ってもらうことにしました。撮られるのはも
ちろん、仕上がった写真を見るのも大変気が重いです…
記事掲載のお知らせです。
『PANZER』10月号に「神は賽子を振らない 第32代陸上幕僚長火箱
芳文の半生」第18回が掲載されました。今回は第10師団長時代のお
話前編です。「普通科の幹部ならばいずれは」と熱望した連隊長と
同様、作戦基本部隊たる師団の長もまた憧れていた役職でした。意
気揚々と着任したものの……理想の師団に近づけるべく、大忙しの
日々が始まります。
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『丸』9月号で陸上自衛隊中央輸送隊を紹介しています。輸送科の
総本山に当たる部隊ですが、なにをやっているか、どこにあるか、
陸自隊員でも知らない人のほうが多いようですが、「知らないうち
にお世話になっている」部隊なのです。
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月刊『正論』6月号に「自衛隊あってのオリンピック」
最終回が掲載されました。
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■陸上自衛隊第4師団訓練検閲(4)
前線の現場を後にして、今度は宮崎県と設定されている十文字原演
習場にいる第4高射大隊を訪ねました。
ちょうど天幕を張った仮の指揮所から地下への指揮所へと移転準備
中で、掩材と呼ばれる太い丸太を隊員たちが運んでいるところでし
た。
この上からさらに40cmの土をかぶせるのが決まりで、手抜きせずに
しっかり土を盛ったか、補助官が深さを測ったりするそうです。
「ここには4師団がいるという設定なので、敵の飛来する航空機に
対して高射で対抗し、師団の対空援護をするのが任務です。われわ
れは敵航空機に対して唯一射撃できる部隊なので、絶えず上空を警
戒しつつ、射撃できる体制を維持することが大事です」と、第4高
射大隊長。
鬱蒼とした林の中にある指揮所と相反し、空が広がる見晴らしのい
い場所には、短SAM、近SAMと呼ばれる地対空誘導弾が配備されてい
ました。いずれも山の稜線に添うように配置され、少しでも目立た
ないよう細心の注意が払われています。
「赤警報発令!」
突然、大きな声が響き、周囲が慌ただしくなりました。
これは今から5分以内に敵機が来るという対空警報で、これが発動
されると車両の走行も禁じられます。取材班も例外ではなく、警報
が解除されるまで、この見晴らしのいい場所で足止めを食らいまし
た。
警報が解除されてから、今度は第4戦車大隊の指揮所へ向かいまし
た。
指揮所内の壁は作戦図や状況図、統裁官と戦闘団長の要望事項や諸
連絡事項まで整然と貼られ、普通の屋内と何ら変わりません。ただ
し昔に比べて指揮所内のIT環境が整っているため、手書きの掲示物
は激減しています。
戦車大隊における訓練検閲での注意事項を、第4戦車大隊長に尋ね
ました。
「明日からの戦闘では、最初にわれわれ戦車大隊が前線に出ます。
その際の注意事項は、護るときは護る、引くときは一気に引くとメ
リハリをつけることですね。そうでないと退路を遮断されたり包囲
されたりしてしまいます。それをわれわれの言葉では『捲かれる』
と言うのですが、いかに捲かれることなく砲撃と離脱を歩兵と連携
しながらスムーズに進められるかが勝負です」
火力をもって敵に向かう部隊の後に行ったのは、化学兵器に立ち向
かう第4特殊武器防護隊。
今回の検閲では航空機による化学攻撃も想定されているため、化学
兵器が使用された際は迅速に防護、除染の処置を行ない被害の極限
に努めるのが役割です。
「化学剤、神経剤、びらん剤などに対応できるように準備していま
す。われわれの相手は目に見えないもの。それだけに支援する自分
たちも防護服に小さな穴が空いていないか常に気をつけ、防護マス
クは速やかに付けるよう心がけています」
そう教えてくれたのは第4特殊武器防護隊長。
化学攻撃が行なれると、まずは偵察班が化学防護車で現場に向かい、
対空監視しつつ化学剤の剤種を偵察に行きます。
汚染した車両や人は除染所で除染し、汚染の拡大を防ぎます。除染
所の隊員たちは防護服を身に付けているため、まるでサウナに入っ
ているような状態です。逆さにしたゴム手袋から、溜まった汗がじ
ゃばっと流れ落ちたのを見た隊長が言いました。
「防護服の着用は隊員の体の負担も大きいので、班長や小隊長が隊
員たちの目を気をつけて見るようにしています。防護マスクをつけ
ると見えるのはそこだけですし、目の充血はさまざまな不調のシグ
ナルですから」
除染所に到着した汚染者は誘導ロープで区切られた道を進み、防護
衣の上からの除染、防護衣を脱いだ状態での除染、衣類をすべて脱
いだ状態でのシャワーと手順を踏んでいきます。周到な準備が施さ
れた除染所を目にすると、いざ化学攻撃を受けた際にこれほど心強
く頼もしいところはないだろうと思います。
(つづく)
(わたなべ・ようこ)
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□著者略歴
渡邉陽子(わたなべ・ようこ)
神奈川県出身。大学卒業後、IT企業、編集プロダクション勤
務を経て2001年よりフリーランス。2003年から月刊
『セキュリタリアン』『MAMOR』などに寄稿。
現在は自衛隊関連の情報誌などで記事を発表。メルマガ「軍事
情報」で自衛隊関連の記事を配信中。
2016年6月、デビュー作
『オリンピックと自衛隊 1964-2020』を刊行。
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