こんにちは、エンリケです。
「戦略航空偵察」二十九回目です。
トランプならこういう対応はしないだろう
という米の対応が描かれています。
北朝鮮なるものが持つ恐ろしさがよく
伝わる内容です。色々考えさせられます。
きょうの内容は以下のとおりです
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□ご挨拶
▼EC-121発進
▼ルーチン化していた偵察飛行
▼北朝鮮の要撃準備
▼EC-121飛行開始
▼撃墜
▼米軍の対応
▼救難・捜索活動
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さっそくどうぞ
エンリケ
、
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戦略航空偵察(29)
日本海におけるEC-121の撃墜事件(1)
西山邦夫(元空将補)
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□ご挨拶
今回と次回、米海軍のEC-121が日本海で北朝鮮戦
闘機に撃墜された事件について書きます。この事件
は、米朝関係の歴史において特別な意味を持ってい
ます。乗員全員が死亡したEC-121の撃墜は、朝鮮戦
争終結後に北朝鮮が米国に対して実行した最も暴力
的な行動であり、未だ多くの謎が残されています。
撃墜が意図的に行なわれたのか、偶発的に起こっ
てしまったのか、攻撃の目的が単に米軍機の偵察活
動の阻止のためなのか、米国への何らかの戦略的な
意思を示したものなのか……等々です。
また、この事件は北朝鮮が挑発行為で危機を高め
てもなぜ平気でいられるのかについて、その理由の
一端を示しているように思えます。この事件以後も
北朝鮮が次々と起こす軍事的な挑発、たとえば延坪
島砲撃、哨戒艦撃沈、ミサイル発射実験などに対し、
米国も韓国も生ぬるい対応しかできずにいます。そ
れを見据えた北朝鮮の論理です。
▼EC-121発進
1969年4月15日午前7時、厚木海軍飛行場から、米海
軍所属のEC-121M (コールサイン:Deep Sea 129)
が離陸しました。8人の士官と23人の技術員が搭乗
し、うち1人は海兵隊員でした。技術員のうち9人
は、ロシア語と朝鮮語の通信傍受を担当していまし
た。
Deep Sea129に与えられた任務は、日本海上に設
定された「ムス・ポイント(Musu point)」と呼ば
れる舞水端里沖合のポイントを飛行し、ソ連と北朝
鮮の間のCOMINTの収集活動を行なうことでした。こ
の任務は、ムス・ポイントを起点に長さ120マイルの
楕円状の周回コースを飛行しながら電波を傍受する
もので、その延長方向はウラジオストクでした。
EC-121は、名目上アメリカ太平洋軍第7艦隊の指揮
下にありましたが、実際の運用はNSA(国家安全保
障局)が行なっていました。
▼ルーチン化していた偵察飛行
この北朝鮮沖合における活動は過去2年間続けられて
おり、ソ連・北朝鮮間の通信傍受は両国間の関係を
知るための重要な収集手段でした。傍受活動の安全
と安定化を図るため、北朝鮮の海岸から50マイルよ
りも接近することは禁止されており、それまで北朝
鮮から攻撃されることはありませんでした。
▼北朝鮮の要撃準備
EC-121が厚木を離陸する以前には、Deep Sea129の
指揮官オーバーストリート中佐と乗員たちは、北朝
鮮東岸の空軍基地が異常な動きをしていることを知
らされていませんでした。漁郞飛行場は北朝鮮空軍
の訓練基地で、通常通りMiG15/17が所在していまし
たが、3月28日に空軍第1師団のMiG-21が2機飛来し、
留まっていました。
沖縄トリイ・ステーション(米軍通信傍受基地)
は、傍受した情報に基づき、3月30日に極東のすべ
ての米軍司令部とSIGINTサイトに、漁郞に移動し
たMiGはおそらく移動訓練の一端であろうというメ
ッセージを送信しました。しかし、このMiGは4月15
日においても漁郞に留まったままでした。
▼EC-121飛行開始
厚木を0700に離陸したEC-121は、日本海に出て、
北朝鮮東岸の清津沖から南西方向に120マイルを往
復する2時間半の飛行を実施し、その後韓国のオサ
ン基地に15時30分に着陸する予定であり、日本海
上の飛行はすべて国際空域を飛行する計画でした。
12時34分、在韓米軍群山基地のレーダーがEC-121
を捉え、EC-121は計画通りのポイントに到着し往復
飛行を開始しました。
EC-121は13時に定期的な活動報告を行ない、特に異
常な状況の報告はありませんでした。
13時30分にEC-121が往復飛行の北端に達した時、漁
郞から2機のMiG-21がスクランブルし、1機は海上で
防御的なパトロールを行ない、もう1機は最短距離
でEC-121に向かいました。レーダー上で13時44分に
EC-121と航跡が合流し、13時47分が撃墜の時刻と推
定されています。
▼撃墜
撃墜の直前、EC-121はMiG-21が近づいていることを
探知して作戦中止を通報し、東へ向きを変えました
が 、その後地上レーダーから航跡が消えました。
EC-121が撃墜されたのは、北朝鮮の清津から90マイ
ル沖の日本海(北緯41度28分00秒 東経131度35分00
秒)で、乗員31人全員が死亡しました。
▼米軍の対応
撃墜時刻とされる13時47分の17分後、韓国内の基地
から米空軍のF-102 2機が離陸し、韓国上空で哨戒
飛行を開始し、各所のSIGINTサイトはEC-121の行方
の捜索を行ないました。14時44分、EC-121の被撃墜
の可能性があるとの緊急報告がNSA長官へ発出され、
NSAは大統領とワシントンの主要政府メンバーへ報
告しました。
オサン基地に所在する米空軍第314師団は、状況の
通知を受けた17分後に戦闘機が空中哨戒のためスク
ランブルしましたが、撃墜時刻から1時間以上も捜
索救難活動は開始されませんでした。
EC-121を運用している米海軍厚木基地所在の偵察部
隊VQ-1は上瀬谷の海軍通信所から状況の通知を受け、
府中の第5空軍司令部へ捜索・救難活動の開始を要
請しました。第5空軍は15時44分に立川からHC-130
(海洋捜索救難、哨戒を行なうC-130輸送機の多目
的型)を発進させ、韓国の基地からF-106を発進さ
せて護衛すると回答しました。
HC-130は夕刻に現場へ到着しましたが、すでに夕闇
が迫っており、成果を挙げることはできませんでし
た。
▼救難・捜索活動
翌日、海軍のP-3が撃墜地点の2マイル北西で救命艇
の破片を発見しました。付近に遊弋していたソ連の
艦艇が捜索・救難に加わり、米軍機とコンタクトし
ました。ソ連の艦艇は、DD429とDD580の2隻の駆逐艦
で、浮遊物を回収しました。
米空軍はオサン基地を発進したHC-130にロシア語を
話す兵員を搭乗させ、ソ連艦との通信を行なったと
ころ、ソ連艦は回収物を低空飛行する米機に写真撮
影させ、協力しました。しかし、生存者は発見され
ず、2人の遺体が収容されました。機体の破片、おそ
らく遺体も海流に流され、沈むか、北朝鮮沿岸へ漂
着したと推測されました。
4月18日、米駆逐艦がソ連駆逐艦と接触し、回収され
た浮遊物の引き渡しを受けましたが、その中には秘
密に属するものはありませんでした。米海軍の調査
チームは、EC-121は1~2発の赤外線追尾アトール
空対空ミサイルによって撃墜されたと結論しました。
(つづく)
(にしやま・くにお)
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□著者略歴
西山邦夫(にしやま・くにお)
1936年生まれ。防衛大学校卒(4期・空)。
情報関係略歴:航空幕僚監部調査2課収集1班長、航
空総隊司令部情報課長、陸幕調査別室主任調整官、
航空自衛隊幹部学校主任教官。著書に『肥大化する
中国軍(空軍部分を執筆)』(晃洋書房、2012年)、
『中国をめぐる安全保障(空軍部分を執筆)』(ミ
ネルバ書房、2007年)。研究論文に『中国空軍の戦
力構成とドクトリン』『中国空軍のSu-30MKKとイン
ド空軍のSu-30MKI』『韓国空軍の増強と近代化』
『中露合同軍事演習』『中国の主要航空兵器の装備
化実績と将来予測』『中国空軍の戦力とドクトリン』
『チベットにおける中国の軍事態勢整備』など多数。
近刊予定『知られざる戦略航空偵察(仮)』。
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