配信日時 2020/08/10 08:00

【桜林美佐の「美佐日記」(88)】コロナ感染者を出せない危機管理組織

こんにちは、エンリケです。

ひじょうに大切な指摘です。

さっそくどうぞ。


エンリケ


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今年4月に刊行された『自衛官が語る災害派遣の記
録』に続く、第2弾『自衛官が語る海外活動の記録』
(桜林美佐監修・自衛隊家族会編)が発売されてい
ます。中東シーレーンの安全確保をめぐって新たな
自衛隊派遣が行われているこの時期にタイミングを
合わせたような出版です。現地で自衛官たちが何を
思い、どのような苦労をして、任務をこなしてきた
か、25人の自衛官のリアルな体験記です。

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桜林美佐の「美佐日記」(88)

コロナ感染者を出せない危機管理組織

桜林美佐(防衛問題研究家)
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おはようございます。桜林です。「男もすなる日記
といふものを、女もしてみむとてするなり」の『土
佐日記』ならぬ『美佐日記』は令和2年8月の今回
で88回目です。

 世の中は今週はお盆休みでしょうか。今年は帰省
も夏祭りも花火もなく、また自衛隊ではコロナの影
響で、この時期に転属になった人のための送別会、
歓迎会、退官パーティが軒並み中止になり、記念行
事も様々な式典もない状態が今後も続くことになり
そうです。

 たかが行事や式典、などと思う人は自衛隊を知る
人には誰一人いないでしょう。

1年365日の自衛隊生活においては結節が必要で
すし、部隊のイベントがない中で、どのように士気
を高め緩急をつけていくのか、新たな課題になると
思います。

 多くの部隊が現在、これまでのように関係者全員
で送り出すような送別会や離任式を行なっていない
ようで、特に退官者の、自衛官人生の最後の日に向
けて駆け抜けてきた、その思いを想像すると痛恨の
極みです。

 自衛隊において、こうした別れの儀式ができない
のは、一般の人にとっての結婚式や葬式をしないの
と同じ、いえ、昨今はこれらの価値観も変わってき
ていますから、もしかしたらそれ以上に大きなイン
パクトがあるものではないでしょうか。

 海上保安庁の巡視船からも感染者が出ています
が、警察、海保、そして自衛隊から感染が出ること
は、一般市民とは意味合いが違います。

濃厚接触者(保健所の定義によると発症2日前、ま
たは無症状の人は陽性が判明して2日前までに接触
した人。この人たちはPCR検査を受けることになる)
や、それに準ずる人たち(2週間以内に接触した
人)も自主隔離や健康観察の措置を取るはずですの
で、多くの関係者が動けなくなります。

最近のコロナ感染は以前のように重症化が少なく、
亡くなる人も減っているため、一般的にはやや安心
感優位になっているようではありますが、危機管理
組織においては症状そのものよりもむしろ、感染者
が出ることによって運用に与える影響が大です。

軽傷であれ症状ナシであれ、自衛隊の部隊からひと
りの感染者が出れば、その部隊が災害派遣に出るこ
とも難しくなるでしょうし、様々な活動が制限され
ます。

この観点から、やはり自衛隊などでは引き続き、普
段の行動を制限せざるを得ません。わが町にある自
衛隊でも、いつも週末に見られる若い隊員さんたち
が出かける姿、買い物袋を提げて買い出しに行く姿
が、今は全く見られません。

営内生活の隊員さんは、みんな部屋に閉じこもって
いるようです。

聞けば、海上保安庁の知人も、かなり抑制的な生活
をしているということでした。自衛隊、警察、海保
などの若い方にとっては唯一の楽しみと言っていい
外出ができない状態をいつまで続けられるか、これ
も大きな課題です。

安全に羽を伸ばせる場所の必要性を感じます。かつ
て衛生管理を徹底させた慰安所を設けたのは理解で
きることです。

警察機関や自衛隊の余暇時間や当たり前の日常を奪
い、隊員それぞれが弱められることが、超限戦の一
環だとしたら??

いずれにしても、コロナが以前のような重症化をし
なくなったとはいえ、やはり引き続き自衛隊などに
ついては、その家族も含め神経質な生活を続けるこ
とはやむを得ません。

周囲にできることは何でしょうか・・。

お友達に自衛官がいるという方は、宴会などへの誘
いではなく、オンラインで楽しめる会合などをぜひ
企画してあげて下さい(画期的なアイディアが浮か
ばずごめんなさい!)。



<おしらせ>
YouTubeチャンネルくららで毎週土曜にアップして
いる「国防ニュース最前線」、今週はお休みです。

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(さくらばやし・みさ)



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【著者紹介】
桜林美佐(さくらばやし・みさ)
昭和45年、東京生まれ。日本大学芸術学部卒。フリ
ーアナウンサー、ディレクターとしてテレビ番組を
制作。その後、国防問題などを中心に取材・執筆。
著書に『奇跡の船「宗谷」─昭和を走り続けた海の
守り神』『海をひらく─知られざる掃海部隊』『誰
も語らなかった防衛産業[改訂版]』『武器輸出だ
けでは防衛産業は守れない』『防衛産業と自衛隊』
(いずれも並木書房)、『終わらないラブレター─
祖父母たちが語る「もうひとつの戦争体験」』(PH
P研究所)、『日本に自衛隊がいてよかった』(産
経新聞出版)、『ありがとう、金剛丸─星になった
小さな自衛隊員』(ワニブックス)。月刊「テーミ
ス」に『自衛隊密着ルポ』を連載。


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