配信日時 2020/08/07 20:00

【加藤大尉の軍隊式英会話:兵器編】世界の秘密兵器(34)「米空軍のベテラン航空機3「A-10攻撃機」」


ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応
予備自衛官でもあります。
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加藤大尉の軍隊式英会話:兵器編     

世界の秘密兵器(34)
 「米空軍のベテラン航空機3「A-10攻撃機」」

Takashi Kato

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こんにちは。エンリケです。

加藤さんが翻訳した武器本シリーズ最新刊が
出ました。

今回は、
分隊支援火器といえばこれ!
ミニミ/M249です。

『ミニミ軽機関銃』
クリス マクナブ (著), 床井 雅美 (監修), 加藤 喬 (翻訳)
2020/7/10 発行
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※大好評発売中

武器オンチの日本人には
特におススメです。


今回の冒頭文も、
今の米の背景事情がよくつかめる
貴重な重要知識ですね。

日本国内の報道を浴びている限り、
「この種の的を射た海外事情」はつかめない。

改めてそう感じます。

こういう常識を持つと持たないとでは、
得られるインテリジェンスの質が全く変わってくる。

そう思います。

こんごも、加藤さんの米国発レポートは
手離せませんね。

さっそくどうぞ


エンリケ



□トランプツイッター7月24日付

 イギリスの古い諺に「家は城である」(A man's
home is his castle)があります。自宅を城に見た
て、「家庭と居住地への干渉や侵入を許さない」と
の考え方を指します。習慣法として定着していた
「自宅から他人を締め出す権利」は入植者と共に新
世界アメリカに渡り、西部開拓時代にキャッスル・
ドクトリン(城の原則)に発展。これは「違法に侵
入してきた者に対し、居住者が肉体的損傷や死の脅
威を感じた場合は殺傷能力のある武器を使うことが
できる」という法律です。

 仮に侵入者が死亡しても「正当殺人」と見なさ
れ、自衛した者が罪に問われることはありません。
州によってキャッスル・ドクトリンの発動条件に違
いはあるものの「自分の身は自分で守る伝統」は今
日のアメリカにも脈々と引き継がれています。

 銃器所持が極めて難しく、よしんば持っていたに
せよ自衛目的の使用が認められていない日本ではキ
ャッスル・ドクトリンの実感は湧きません。対照的
に、「平和な抗議活動」がいつなんどき暴動・略奪
に過激化するか分からず、しかも、警察廃止世論の
高まりで法執行官の手足が縛られているアメリカで
は、多くの武装市民が一抹の不安と共にキャッス
ル・ドクトリンを現実的に捉えています。

 そんな懸念を絵にかいたような出来事が、6月末、
ミズーリ州セントルイス市で発生しました。500
人からなる抗議集団がフェンスで囲まれた高級住宅
地域の門を破壊して侵入。ある住人夫婦は、太鼓を
打ち鳴らしシュプレヒコールをあげ近づいてくる一
団に武装した参加者を発見。身の危険を感じた2人
は銃を携(たずさ)えてデモ隊と対峙し「私有地か
ら退去せよ」と要求したのです。この顛末のビデオ
を見ましたが、夫婦の行為が正当なキャッスル・ド
クトリン発動であることは素人目にも明らかでした。

 数日後、セントルイス市の主任検察官は同夫婦を
「デモ隊の言論の自由を妨害し、銃を振りかざした
重罪容疑」で告訴。犯罪に対し手ぬるく、訴追を渋
ることで常々批判されてきた民主党検事の豹変は、
「政治的底意を持つリベラル検察官によって、法を
破ったデモ隊ではなくキャッスル・ドクトリンを行
使した被害者が犯罪者にされた」との批判を巻き起
こしました。

 共和党の同州知事は「仮に被告らが有罪になった
場合、州知事権限で赦免する」と発言。互いに独立
しているはずの司法と行政が、露骨な政治干渉を繰
り広げる事態になっています。国の箍(たが)が外
れるのではないかと危惧せざるを得ません。

 アメリカは一体どうなるのか? 政治アナリスト
でも占い師でもない身に明日の出来事は見通せませ
ん。単なる勘ですが、来たる11月、多くの有権者
はトランプ大統領の自我と特異性をあえて度外視し、
「強いアメリカ再建」を選択すると思います。なぜ
なら、民主党が掲げる「自由競争と資本主義の破
棄、アメリカの伝統と歴史の消却、国境廃止、警察
予算凍結」などが意味するところは実質的「アメリ
カ解体」と「米国の社会主義化」にほかならないか
らです。

 開拓時代からキャッスル・ドクトリンを受け継い
できた気骨ある米国人が、無政府主義や社会主義に
跪(ひざまず)くことはあり得ません。声なき大衆
は、内憂外患の現状打破と強いアメリカの再建を望
んでいます。

 今回のトランプツイッターは、保守派の論客バッ
ク・セックストン氏の投稿を大統領が再ツイートし
たものです。キーワードは kneel to。「~の前に
跪(ひざまず)く」は「負けを認め服従する」こと
を意味します。

The felony charges leveled against the armed
St. Louis homeowners who refused to kneel to
the protesters who broke onto their property
in June was a clear message from Democrat
prosecutors to all Americans.
 
「去る6月、不法侵入してきたデモ隊に跪(ひざま
ず)くことを拒否したセントルイス在住の武装市民
が重罪容疑で訴追された。これは民主党の息がかか
った検察官らが、全アメリカ市民に発した(銃によ
る自衛権否定という)あからさまなメッセージだ」

 

▼米空軍のベテラン航空機3「A-10攻撃機」


 兵器は人が生存をかけて使う道具。生き延びるた
めには相手より優れた武器を持たねばなりません。
兵器開発競争が文明の黎明から今日まで途切れなく
続いているのはこのためです。よく指摘される武器
の効用に「抑止力」(deterrence)があります。刀を
抜かずとも相手を委縮させ対峙を防ぐ「鞘の内の勝
ち」の如く、敵に攻撃を思いとどまらせる圧倒的な
破壊力のことです。「平和を望むがゆえに兵器を手
放せない」。人類が陥って久しいこのジレンマの裏
面が「抑止力」なのです。

「加藤大尉の軍隊式英会話:兵器編」では、それぞ
れの武器が持つ抑止力に着目。兵器と平和の関係を
考えていくことにします。米空軍で長らく現役任務
に就いてきた航空機を取り上げる「米空軍のベテラ
ン航空機」、最終回は対戦車・対地攻撃に特化した
A-10攻撃機です。

 ROTCの士官候補生時代、A-10パイロットの話を
聞いたことがあります。

「多くのパイロットは最新鋭の超音速戦闘機乗りを
目指すが、自分は歩兵の支援に密着した対地攻撃任
務が好きだ」。飛行服姿の空軍中尉はそう言った後、
「もっとも、A-10はお偉方に煙たがられている。
空軍は組織として、鈍足で直線翼のA-10を嫌っ
ていんだ」との言葉で講演を締めくくりました。

 ベトナム戦争中、米空軍は近接航空支援(Close
Air Support: CAS)に特化した機体を持っていませ
んでした。そこで、旧式になったF100スーパー・セ
ーバーを対地攻撃任務に回したものの、この超音速
戦闘機は戦場上空での滞空時間が短いうえ、速度が
速すぎ敵と味方が入り混じった前線では正確な歩兵
支援ができなかったのです。

この戦訓から、敵戦車や装甲車両、掩体壕などの攻
撃に特化して開発されたのがA-10。低空を長時間
自在に飛び回って地上部隊を支援するのが任務で、
敵の小火器や対空機関砲の攻撃にも耐えられる頑丈
な設計になっています。航空優勢を前提にした機体
ですから、空中戦用のレーダーは装備しておらず、
自衛には熱追尾式空対空ミサイルのみ使用します。

 戦車の上部装甲を撃ち抜く30ミリ機関砲を固定装
備し、その他7トンの対地攻撃兵装が搭載可能です。
この設計理念と運用方法が功を奏し、1991年の「砂
漠の嵐作戦」では約1500両のイラク軍戦車と装甲車
両を撃破、砲兵陣地900カ所以上を破壊するなどの武
勲をたてています。

 にもかかわらず、空軍上層部には先端技術を満載
した超音速ジェット戦闘機を優遇する風土が根強
く、レーダーもフライ・バイ・ワイア操縦システム
も備えていない「原始的攻撃機」A-10は早期退
役を迫られました。35年前、あの中尉が語ってくれ
たのは真実だった訳です。

 余命いくばくもないと思われていたA-10を救
ったのはアリゾナ州選出のマーサ・マクサリー上院
議員。政界に転ずる前、彼女は26年の軍歴を誇る空
軍大佐で、初の女性A-10パイロットとして325時
間に及ぶ戦闘を体験した強者(つわもの)でした。
現在、「実戦で30ミリ機関砲を撃った唯一人の政治
家」でしょう。

 マクサリー大佐は中東やアフガニスタンでの近接
航空支援や飛行中隊指揮官としての体験から、A-
10がいかに多くの米軍将兵の命を救ってきたかを
学びました。その確信に基づき、議員となってこれ
までに2度「空軍がA-10の機体数を削減したり、
退役させたりすることを禁じる法案」を可決させて
います。
お陰で近代化改修を経たA-10は、2030年代まで
継続配備されます。米陸軍や海兵隊そして同盟国軍
の歩兵にとって、これほどの朗報はありません。

教材ビデオ: https://www.youtube.com/watch?v=PU_OxwH1guM&list=PLk2kWhtlkeERNmHhjjwD0qbox5r9ZGvvh&index=116

(A-10のイントロダクションは8:55から始ま
ります)

基本語彙(カタカナ表記は大雑把なものです)
Steampunk(スチームパンク)19世紀に描かれた20
世紀の想像図のような「懐古趣味的な未来像」のこ
と。SF小説の一ジャンル
Battle-proven(バトル・プローブン)戦闘で性能
を証明された
If not(イフ ノット)?ではないにせよ

シナリオ(カウンターを9:13に合わせてください)

It (A-10) looks more steampunk than 21st
century but the A-10 is a battle-proven
veteran that has won the hearts of foot
soldiers at support if not Air Force generals
who have repeatedly tried to retire it.

(A-10は21世紀というよりスチームパンク風の航
空機に見える。しかし、A-10は実戦で性能が証明
され、歩兵の心を掴んだベテラン攻撃機だ。もっと
も、同機を何度も退役させようとしてきた空軍の将
官らはこの限りではないが)

(A-10のビデオは最後まで続きます)

英語一言アドバイス:
steampunkは1980年代に登場したSF小説の一ジャン
ルで、懐古趣味的な未来像をモチーフにしています。
映画には『ハウルの動く城』や『ワイルド・ワイル
ド・ウエスト』などがあります。

発音サイト:
 steampunkの発音 https://www.howtopronounce.com/steampunk

参考サイト: A-10攻撃機 https://en.wikipedia.org/wiki/Fairchild_Republic_A-10_Thunderbolt_II
(本サイトの日本語版に移行してください)

GAU-8ガトリング砲 https://en.wikipedia.org/wiki/GAU-8_Avenger
(本サイトの日本語版に移行してください)

A10パイロットのマーサ・マクサリー空軍大佐(現在はアリゾナ州選出の上院議員)
https://en.wikipedia.org/wiki/Martha_McSally
https://www.mcsallyforsenate.com/about/





(かとう・たかし)



●著者略歴
 
加藤喬(かとう・たかし)
元米陸軍大尉。都立新宿高校卒業後、1979年に渡米。
アラスカ州立大学フェアバンクス校他で学ぶ。88年
空挺学校を卒業。
91年湾岸戦争「砂漠の嵐」作戦に参加。米国防総省
外国語学校日本語学部准教授(2014年7月退官)。
著訳書に第3回開高健賞奨励賞受賞作の『LT―あ
る“日本製”米軍将校の青春』(TBSブリタニカ)、
『名誉除隊』『加藤大尉の英語ブートキャンプ』
『レックス 戦場をかける犬』『チューズデーに逢う
まで』『ガントリビア99─知られざる銃器と弾薬』
『M16ライフル』『AK―47ライフル』『MP5サブ
マシンガン』『ミニミ機関銃(近刊)』(いずれも
並木書房)がある。
 
 
追記
「MP5サブマシンガン」
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『チューズデーに逢うまで』関係の夕刊フジ
電子版記事(桜林美佐氏):
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20150617/plt1506170830002-n1.htm
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20150624/plt1506240830003-n1.htm
 
『レックス 戦場をかける犬』発売中
http://www.amazon.co.jp/dp/489063309X 
 
『レックス 戦場をかける犬』の書評です
http://honz.jp/33320

オランダの「介護犬」を扱ったテレビコマーシャル。
チューズデー同様、戦場で心の傷を負った兵士を助ける様子が
見事に描かれています。
ナレーションは「介護犬は目が見えない人々だけではなく、
見すぎてしまった兵士たちも助けているのです」
http://www.youtube.com/watch?v=cziqmGdN4n8&feature=share
 
 
 
きょうの記事への感想はこちらから
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ブックレビューの投稿はこちらから
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日本語でも英語でも、日常使う言葉の他に様々な専
門用語があります。
軍事用語もそのひとつ。例えば、軍事知識のない日
本人が自衛隊のブリーフィングに出たとしましょう。
「我が部隊は1300時に米軍と超越交代 (passage of
lines) を行う」とか「我がほう戦車部隊は射撃後、
超信地旋回 (pivot turn) を行って離脱する」と言
われても意味が判然としないでしょう。
 
 同様に軍隊英語では「もう一度言ってください」
は "Repeat" ではなく "Say again" です。な
ぜなら前者は砲兵隊に「再砲撃」を要請するときに
使う言葉だからです。
 
 兵科によっても言葉が変ってきます。陸軍や空軍
では建物の「階」は日常会話と同じく "floor"です
が、海軍では船にちなんで "deck"と呼びます。 
また軍隊で 「食堂」は "mess hall"、「トイレ」
は "latrine"、「野営・キャンプする」は "to bivouac" 
と表現します。
 
 『軍隊式英会話』ではこのような単語や表現を取
りあげ、軍事用語理解の一助になることを目指して
います。
 
加藤 喬
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