配信日時 2020/08/03 08:00

【桜林美佐の「美佐日記」(87)】地域と自衛隊との距離が広がらないように

こんにちは、エンリケです。

クリニックの先生のことばが正鵠を射たものだ、
と私は感じます。

いま国内に漂う、うかつで間抜けな風潮には対情報
的姿勢で接し、決して乗せられない日本人であり続
けたいです。

さっそくどうぞ。


エンリケ


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今年4月に刊行された『自衛官が語る災害派遣の記
録』に続く、第2弾『自衛官が語る海外活動の記録』
(桜林美佐監修・自衛隊家族会編)が発売されてい
ます。中東シーレーンの安全確保をめぐって新たな
自衛隊派遣が行われているこの時期にタイミングを
合わせたような出版です。現地で自衛官たちが何を
思い、どのような苦労をして、任務をこなしてきた
か、25人の自衛官のリアルな体験記です。

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桜林美佐の「美佐日記」(87)

地域と自衛隊との距離が広がらないように

桜林美佐(防衛問題研究家)
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おはようございます。桜林です。「男もすなる日記
といふものを、女もしてみむとてするなり」の『土
佐日記』ならぬ『美佐日記』は令和2年8月の今回
で87回目です。

 前回、私が遭遇したトンデモナイ事故(初めて会
った女性に自衛隊は無くならないとダメでしょうと
泣かれた件)について書いたところ、「まぐまぐ軍
事情報」宛に、また個人的にも反響を頂き、大いに
元気づけられました。本当にありがとうございます!!

 F様からは「もっと言いたいことがあった段階
で、ぐっと発言を堪えられた桜林さんのご判断は正
解と私は思いますよ」のお言葉を頂きました。

 実は、ぐっと堪えたというより、瞬時に喋りたい
ことを整理できないので黙っていたというのが正直
なところ、だったりします・・。

 「アンガー・コントロール」というのが最近は一
般的な言葉になりつつあるようで「アンガー・コン
トロール」や「アンガー・マネージメント」の講座
などが多数あるようです。

 数か月の講座を修了すると、怒りを調整する資格
を取得でき、企業研修などで講師もできるようで、
数か月の学びで怒りっぽい性格が治るだけでなく、
それが仕事になるなら、これはすごいことですよね。

 いずれにしても、私の場合はアンガー・コントロ
ールやアンガー・マネージメントの能力があるわけ
でも何でもなく、単にその場では、それが怒るに値
するのかどうか素早く判断できないだけなのであり
ます(だいたい数日後に突然、怒り出し周囲を驚か
せます)。

 他にも、A様からは「それにしても嫌な女性です
ね。とはいえ、仰るとおりそういう人はけっこうい
るものです。また、自衛官の中には狭量で、幅の狭
い人もいることも事実」と、ありました。

 ごくたまに、ですが「今日は喋りすぎちゃった。
書かないで下さいよ」などと言われることがありま
す。

あるいは人づてに記事にしないでなどと伝えられる
ことも。さすがにそんな時は私の怒りも6日後を待
たず、すぐにやってきます。

 「だれが書くか!」

 自分が調子に乗って聞いてもいないことをペラペ
ラ喋ったあげくに、最後は上から目線でその言い草
ですか!と。

どうせ、自衛隊で飯を食ってる卑しい職業くらいに
思っているのでしょう。そんなに分別がない人間だ
と思われているのかと思うと、心底、心底、残念で
す。

 誰なの、そんなこと言ったのは!?と聞かれそう
ですが、これがあまり覚えていないのです。それく
らい、箸にも棒にもかからない奴なのでしょう。

 そういえば、親しくしていた自衛官の方が転勤に
なり、挨拶をしに行ったらちょうど官舎の点検をし
ていて、よくよく聞いてみると「〇〇がない」「△
△が足りない」と言われています。
 
 私は思わずそこに分け入って「ちょっとさあ、さ
っきから聞いてるとダメ出しばっかりで、よくここ
まで綺麗にしていましたねとか、掃除が大変だった
でしょうねとか、そういうのはないわけ??」と、
・・・言う・・勇気はありませんでしたが、心の中
で叫びました。

奥様はこの自衛隊的なやりとりを熟知されているよ
うで淡々と対応されていました。立派です!

私としては、そんなネガティブなことしか言わない
人たちに不満を募らせるのではなく(仕事なので仕
方ないのですが!みんな真面目にやっているだけ)、
日頃の拙い記事を読んで頂き、言葉をかけて下さる
方々に感謝することを大事にしよう!と、心に決め
たのでした。

 さて、そんな中、わが街でも数人のコロナ感染者
が出ました。そして同時にこのところ自衛隊でも徐
々に広がりをみせています。

 情報の出し方は自治体によって差があり、細部の
情報を公表する県もあれば全く言わない県もありま
す。

 しかし、防衛省・自衛隊では部内で感染者が出た
場合に発表していますので、その所在地の自治体が
他の感染者については全く情報公開していなくて
も、自衛隊だけははっきり分かってしまうため、近
隣の人々の不安はここにだけ集中します。

 東京にいる方はあまりピンとこないかもしれませ
んが、地方において、特に自衛隊が所在する場所に
おいては極めて深刻な問題です。

 つい数日前に災害派遣で感謝されたのに、1人の
感染者が出ることで坂を転げ落ちるように冷たい視
線を浴びせられるのです。

 佐世保では「自衛隊様の入店はお断りします」
(自衛隊様って・・丁寧なのか無礼なのか?)との
貼り紙する店もあるようで、じわじわと地域と自衛
隊との距離が広がるようなことになれば、創設以来、
築いてきた信頼関係がもろくも崩れ落ちることにな
るでしょう。

 一方、自衛隊においても、隊員さんたちがこの先
ずっと自粛を続けるというのは士気にも関わってき
ます。

 近くのクリニックの先生は言っていました。「こ
れが中国の作戦なんですよ」と。

 いずれにしても、これは国難です。自治体や保健
所の基準とは別に、自衛隊ではどのように情報を扱
うのか、検査についても一般の人々と同じ基準でい
いのか、そのあたりを整備していかないと、全く予
期しなかった形で力を弱められる可能性があると思
います。

このことを関係各位にしっかり認識して頂き、早急
な対策を求めたいものです。


<おしらせ>
YouTubeチャンネルくららで毎週土曜にアップして
いる「国防ニュース最前線」、今週も伊藤俊幸・元
海将に解説をして頂き、私はリモート出演です!

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(さくらばやし・みさ)



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【著者紹介】
桜林美佐(さくらばやし・みさ)
昭和45年、東京生まれ。日本大学芸術学部卒。フリ
ーアナウンサー、ディレクターとしてテレビ番組を
制作。その後、国防問題などを中心に取材・執筆。
著書に『奇跡の船「宗谷」─昭和を走り続けた海の
守り神』『海をひらく─知られざる掃海部隊』『誰
も語らなかった防衛産業[改訂版]』『武器輸出だ
けでは防衛産業は守れない』『防衛産業と自衛隊』
(いずれも並木書房)、『終わらないラブレター─
祖父母たちが語る「もうひとつの戦争体験」』(PH
P研究所)、『日本に自衛隊がいてよかった』(産
経新聞出版)、『ありがとう、金剛丸─星になった
小さな自衛隊員』(ワニブックス)。月刊「テーミ
ス」に『自衛隊密着ルポ』を連載。


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