配信日時 2020/07/24 20:00

【加藤大尉の軍隊式英会話:兵器編】世界の秘密兵器(32)「米空軍のベテラン航空機1「F-15イーグル」」

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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応
予備自衛官でもあります。
お仕事の依頼など、問い合わせは以下よりお気軽に
どうぞ
 
E-mail hirafuji@mbr.nifty.com
WEB http://wos.cool.coocan.jp
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こんにちは。エンリケです。

【新】加藤さんが翻訳した武器本シリーズ最新刊が
出ました。

今回は、
分隊支援火器といえばこれ!
ミニミ/M249です。

『ミニミ軽機関銃』
クリス マクナブ (著), 床井 雅美 (監修), 加藤 喬 (翻訳)
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今回の冒頭文も読ませますね。

論理に過ぎれば破壊しかできなくなる。
情緒に過ぎれば妥協しかできなくなる。
とかくこの世はむつかしい。

そんな感じがします。

加藤さんのお言葉に共感します。

この連載は、
今の米の背景事情がよくつかめる
きわめて貴重な重要知識です。

日本国内の報道を浴びている限り、
「この種の的を射た海外事情」はつかめないなあ。

改めてそう感じています。

こんごも、加藤さんの米国発レポートは
手離せません。

さっそくどうぞ


エンリケ



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加藤大尉の軍隊式英会話:兵器編     

世界の秘密兵器(32)
 「米空軍のベテラン航空機1「F-15イーグル」」

Takashi Kato

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□トランプツイッター7月4日付

「ラシュモアー山は白人至上主義のシンボルだ」
 そう話す先住民男性のインタビューを交え、米主
流メディアMSNBCはラシュモアー山国立記念公園で
独立記念日の演説を行なったトランプ大統領を批判
しました。
 ラッシュモアー山はアメリカ中西部サウスダコタ
州にあり、名大統領として誉れ高いワシントン、ジ
ェファーソン、リンカーン、ルーズベルト(セオド
ア)の胸像が絶壁に彫られていることで有名です。
米国民主主義の聖地とされ、ケネディ、ニクソン、
レーガン、クリントン、オバマ、ブッシュ(子)を
含む16人の歴代大統領が在職中に同地を訪れ演説
しています。ちなみに、マスコミが「白人至上主義」
を前面に据えて否定的に報道したのは今回が初めて
です。
 
 なぜ民主主義のシンボルが白人至上主義と結びつ
けられるのか? この背景にあるのは、アメリカが
旧大陸からの入植者によって先住民の土地に建てら
れた「植民国家」だという史実です。
 
 17世紀以降、より豊かな生活と成功の機会を求
めた白人植民者たちは、北米大陸の西へ西へと開拓
を進めていきました。この西漸(せいぜん)運動に
伴い、不可避的に起きたのが開拓者と先住民の対立
抗争だったのです。武力に勝る白人は、多くの部族
を保留地へと追いやりアメリカの領土を広げていき
ました。
 
 ラシュモアー山を含む一帯はブラック・ヒルズと
呼ばれ、スー族をはじめとする平原先住民の居住が
米政府によって保証された保留地でした。19世紀後
半、この地で金鉱が発見されると米政府が違法にブ
ラックヒルズに武力侵攻。その結果インディアン戦
争が始まり、カスター中佐率いる米陸軍第7騎兵隊
がスー族やラコタ族連合軍の手で全滅すると、反イ
ンディアン世論が噴出。武装解除された数百人のス
ー族が騎兵隊に殺害される「ウーンデッド・ニーの
虐殺」が起きるなど、先住民武力掃討は民族浄化の
様相を帯びました。
 
 「わたしの視点から見れば、アメリカ建国は先住民
の組織的抹殺と表裏一体だ」ニューメキシコ州立大
学大学院の先輩で、インディアンとして初めて哲学
博士号を授与されたビオラ・コルドバは、生前こう
語っていました。本人に問いただしたことはありま
せんが、ブラックヒルズの聖なる山に彫られた米国
指導者の胸像は、おそらくアパッチ族女戦士の目に
も「白人至上主義の象徴」と映っていたことでしょ
う。
 
 しかし、ビオラは祖国を貶めたり米社会解体を叫
んだりする者ではありませんでした。ひとつには、
先住民と白人入植者の遭遇と抗争が17世紀において
避けえない歴史の潮流だったことを理解していたか
らです。また、インディアン戦争から1世紀以上を
経た今日、ビオラを含む全先住民族が「アメリカ市
民」であること、そして自身の夫が白人である現実
を受け入れていたこともあります。祖先を理不尽に
虐げた国とは言え、ビオラにとってすでに自分の一
部となっている米国を否定することは「載っている
木の枝を切り落とすような行為」、すなわちアイデ
ンティティの自己放棄だったのです。
 
 稀代の先住民哲学者はまた「相手が犯した過去の
過ちをことあるごとに蒸し返しても、怨念や敵意そ
して破壊衝動は明日を切り開くエネルギーにはなら
ない」ことを看破していました。我が盟友のアパッ
チ族女戦士は、日本人の美徳でもある「水に流す」
ことを心得ていたのでしょう。これこそが内憂に喘
ぐアメリカに求められている分別です。
 
 冒頭のMSNBC報道でも顕著ですが、差別など負の
遺産に執着するのみで、アメリカの偉大な貢献には
見向きもしないのが昨今流行(はや)りの「キャン
セル・カルチャー」。この米国版自虐史観に取りつ
かれた集団を突き動かしているのが、過去の過ちに
向けられた怨念、敵意、そして闇雲な破壊衝動なの
です。しかし・・・過ちを犯した者たちはすでに遠
い歴史の彼方。
 
わたしは祖国を貶(おとし)める行為に耽(ふけ)
る人々に言いたい。「キャンセル・カルチャーの的
外れで滑稽な独り相撲に気づき、『水に流す』こと
を学び、国のために何ができるかを問いたまえ」と。
 
 本日のトランプ・ツイッターはキャンセル・カル
チャーの向こうを張るトランプ氏の真骨頂です。キ
ーワードは set history's record straight。「歴
史を正す」には、米国版自虐史観を広める左派が、
ラシュモアー山に彫られたワシントン、ジェファー
ソン両大統領を「奴隷所有者」と貶めたことへの抗
議が込められているようです。
 
Today, we will set history and history's record
straight. Before these figures were immortalized
in stone, they were American giants in full
flesh and blood, gallant men whose intrepid
deeds unleashed the greatest leap of human
advancement the world has ever known.
 
「本日は(米国の)歴史を正すことにしよう。あそ
こに見える4人の大統領が石像として不滅の存在に
なる前、彼らは生身の偉大なアメリカ人だった。勇
敢な男たちの大胆不敵な行動は、世界史上に残る人
類の大躍進を可能にしたのだ」
 
(ビデオをご覧になる場合はカウンターを0:15
に合わせてください)
 
https://twitter.com/i/status/1279258187296899074
 
 

▼米空軍のベテラン航空機1「F-15イーグル」

 兵器は人が生存をかけて使う道具。生き延びるた
めには相手より優れた武器を持たねばなりません。
兵器開発競争が文明の黎明から今日まで途切れなく
続いているのはこのためです。よく指摘される武器
の効用に「抑止力」(deterrence)があります。刀を
抜かずとも相手を委縮させ対峙を防ぐ「鞘の内の勝
ち」の如く、敵に攻撃を思いとどまらせる圧倒的な
破壊力のことです。「平和を望むがゆえに兵器を手
放せない」。人類が陥って久しいこのジレンマの裏
面が「抑止力」なのです。

「加藤大尉の軍隊式英会話:兵器編」では、それぞ
れの武器が持つ抑止力に着目。兵器と平和の関係を
考えていくことにします。今回から3回にわたり、
米空軍で長らく現役任務に就いてきた航空機を取り
上げます。「米空軍のベテラン航空機」1回目は過
去40年以上世界最強の制空戦闘機として君臨してき
たF-15イーグルです。

 F-15はいまも航空自衛隊の主力機として活躍する
第4世代の制空戦闘機。マッハ2.5の俊足と空対空ミ
サイル8発、固定装備の20ミリ機関砲という重武装を
誇ります。初飛行は1972年ですからすでに半世紀近
く飛び続けていることになります。基本設計が堅実
なうえ、テクノロジーの進歩と共に能力を拡充させ
る余裕を持たせたデザインが功を奏し、F-22ラプタ
ーやF-35ライトニングIIなど第5世代のステルス機
が配備された現在でも第一線級の性能を維持してい
ます。実戦における空中戦では撃墜されたことがな
いと言われ、卓越した機動性と戦闘能力を持ってい
ることが分かります。

 F-15サイレント・イーグルは「沈黙の鷲」の名が
示す通り、ステルス性能を付与した機能向上型です。
胴体内に格納されるミサイル、垂直尾翼を外側に傾
斜させるデザイン変更、そしてレーダー波を吸収す
る塗装などにより第5世代機に準ずるレーダー反射
断面積減少を実現しています。

 一方、F-15アドバーンスト・イーグルは現用の複
座式戦闘爆撃機F-15ストライク・イーグルの派生型
です。超低空からの対地攻撃と高高度での要撃とい
う相反する任務をこなすため、機体構造が大幅に強
化されています。対空兵装をすべて装備したうえで
11トン近い対地攻撃兵器を積むことができるのは、
数ある戦闘爆撃機のなかでもF-15ストライク・イー
グルとF-15アドバーンスト・イーグルのみ。しかし
ステルス性能には劣るため、高い防空能力を有する
敵空域での運用は将来的に困難になると予想されて
います。その場合でも、航空優勢が確立されている
米国本土や、有効な防空能力を持たない敵の空域で
は使い続けられる見込みです。

 第5世代のステルス戦闘機は非常に高価なため、充
分な機数を揃えることが困難。ここに、ラプターや
ライトニングIIを性能向上型イーグルで補完する
「ハイ・ロー・ミックス」運用という考え方が出て
きます。サイレント・イーグルとアドバーンスト・
イーグルなどのニッチ(活かし処)と言えます。こ
のニッチ運用に徹すれば、F-15は今後も十分な抑止
力を発揮し続けるものと思います。

教材ビデオ: https://www.youtube.com/watch?v=PU_OxwH1guM&list=PLk2kWhtlkeERNmHhjjwD0qbox5r9ZGvvh&index=116

(F-15イーグルのイントロダクションは5:08か
ら始まります)

基本語彙(カタカナ表記は大雑把なものです)
Threaten to(スレットゥン)?すると脅す
Undercut(アンダーカット)効果をなくす 価値を
低める
Advantage(アドバンテージ)強み 優位

シナリオ(カウンターを5:58に合わせてください)

The basic design has proved so strong that even
40 years on, the Eagle continues to be
effective with the F-15SE Silent Eagle Stealth
variant and the F-15 EX Advanced Eagle
threatening to undercut the advantages of more
modern aircraft.

(基本設計が極めて堅実だったので、イーグルは配
備から40年経っても実働部隊で稼働している。ス
テルス性を高めたF-15SEサイレント・イーグ
ルとF-15EXアドバーンスト・イーグルは、よ
り先進的な航空機の優位性をおびやかす存在だ)
 
(F-15イーグルのビデオは6:16まで続きます)


英語一言アドバイス:
undercutは直訳すると「?の下部を切り落とす」です
が、転じて「効果をなくす」「価値を低める」「損
ねる」という意味でも使われます。本ビデオの文脈
では「優位性を低める」とも訳せます。

発音サイト:
undercutの発音 https://www.howtopronounce.com/undercut

参考サイト:F-15イーグル https://en.wikipedia.org/wiki/McDonnell_Douglas_F-15_Eagle
(本サイトの日本語版に移行してください)

F-15SE サイレント・イーグル https://en.wikipedia.org/wiki/Boeing_F-15SE_Silent_Eagle
(本サイトの日本語版に移行してください)

F-15EXアドバーンスト・イーグルhttps://en.wikipedia.org/wiki/McDonnell_Douglas_F-15E_Strike_Eagle
(本サイトの日本語版に移行してください)

F-15EX 動画 https://www.boeing.com/defense/f-15/#/video/advanced-f-15-survivability

F-15SE 動画 https://www.youtube.com/watch?v=9Xwjzu61IGk



(かとう・たかし)



●著者略歴
 
加藤喬(かとう・たかし)
元米陸軍大尉。都立新宿高校卒業後、1979年に渡米。
アラスカ州立大学フェアバンクス校他で学ぶ。88年
空挺学校を卒業。
91年湾岸戦争「砂漠の嵐」作戦に参加。米国防総省
外国語学校日本語学部准教授(2014年7月退官)。
著訳書に第3回開高健賞奨励賞受賞作の『LT―あ
る“日本製”米軍将校の青春』(TBSブリタニカ)、
『名誉除隊』『加藤大尉の英語ブートキャンプ』
『レックス 戦場をかける犬』『チューズデーに逢う
まで』『ガントリビア99─知られざる銃器と弾薬』
『M16ライフル』『AK―47ライフル』『MP5サブ
マシンガン』『ミニミ機関銃(近刊)』(いずれも
並木書房)がある。
 
 
追記
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『チューズデーに逢うまで』関係の夕刊フジ
電子版記事(桜林美佐氏):
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20150617/plt1506170830002-n1.htm
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20150624/plt1506240830003-n1.htm
 
『レックス 戦場をかける犬』発売中
http://www.amazon.co.jp/dp/489063309X 
 
『レックス 戦場をかける犬』の書評です
http://honz.jp/33320

オランダの「介護犬」を扱ったテレビコマーシャル。
チューズデー同様、戦場で心の傷を負った兵士を助ける様子が
見事に描かれています。
ナレーションは「介護犬は目が見えない人々だけではなく、
見すぎてしまった兵士たちも助けているのです」
http://www.youtube.com/watch?v=cziqmGdN4n8&feature=share
 
 
 
きょうの記事への感想はこちらから
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ブックレビューの投稿はこちらから
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日本語でも英語でも、日常使う言葉の他に様々な専
門用語があります。
軍事用語もそのひとつ。例えば、軍事知識のない日
本人が自衛隊のブリーフィングに出たとしましょう。
「我が部隊は1300時に米軍と超越交代 (passage of
lines) を行う」とか「我がほう戦車部隊は射撃後、
超信地旋回 (pivot turn) を行って離脱する」と言
われても意味が判然としないでしょう。
 
 同様に軍隊英語では「もう一度言ってください」
は "Repeat" ではなく "Say again" です。な
ぜなら前者は砲兵隊に「再砲撃」を要請するときに
使う言葉だからです。
 
 兵科によっても言葉が変ってきます。陸軍や空軍
では建物の「階」は日常会話と同じく "floor"です
が、海軍では船にちなんで "deck"と呼びます。 
また軍隊で 「食堂」は "mess hall"、「トイレ」
は "latrine"、「野営・キャンプする」は "to bivouac" 
と表現します。
 
 『軍隊式英会話』ではこのような単語や表現を取
りあげ、軍事用語理解の一助になることを目指して
います。
 
加藤 喬
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