こんにちは、エンリケです。
「戦略航空偵察」二十五回目です。
きょうから、
キューバ危機時の航空偵察の話です。
実に面白いです。
世界の動きは、インテリジェンスの動きなしに
作れないしつかめない。改めてそう思いました。
情報史は、歴史の闇を照らし、
後世に生きるものが歴史から養分を得る核心になる。
改めてそう感じます。
きょうの内容は以下のとおりです
----------------------
□ご挨拶
▼フルシチョフ書記の決断
▼米国の対応
▼U-2偵察活動開始
▼U-2による弾道ミサイル配備確認
▼ケネディ大統領、封鎖作戦を決定
-----------------------
さっそくどうぞ
エンリケ
、
ご意見・ご感想はコチラから
↓
https://okigunnji.com/url/7/
ブックレビューの投稿はこちらから
http://okigunnji.com/url/73/
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
戦略航空偵察(25)
キューバ危機(1)
西山邦夫(元空将補)
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
□ご挨拶
今回と次回は、キューバ危機に際しての偵察飛行
についてです。キューバ危機は1960年頃にその兆し
が見え、本格化したのが1962年夏、その年10月は危
機が最高潮に達しました。キューバ危機において、
U-2の活躍はソ連が搬入したミサイルの撮影に成功
したことで知られています。
この時期の中台関係を見ますと、キューバ危機が
続いている期間も、ブラックキャット飛行隊は盛ん
に中国内陸の偵察活動をしていました。中国はキュ
ーバ危機の翌年、1963年に最初の原爆実験を行ない
ましたから、U-2の偵察活動はスポンサーの米国に
とっても欠かすことができなかったのです。すな
わち、時を同じくしてU-2はキューバと中国で重要な
責務を負って活動していました。
▼フルシチョフ書記の決断
ソ連は、ピッグス湾事件(1961年に亡命キューバ人
たちがCIAの支援のもとに、カストロ政権を打倒する
試みが失敗した事件)の後にも遅かれ早かれ米国が
キューバに侵攻するのではないか、との懸念を抱い
ていました。米国はトルコに中距離弾道ミサイルを
すでに配備しており、ソ連の裏庭に脅威を与えてい
る状況もありました。フルシチョフ書記はこのよう
な戦略的に不利な状況を少しでも緩和しようと、キ
ューバに核ミサイルを配備し、米国に脅威を与える
ことを決断しました。
▼米国の対応
キューバに対するソ連の軍事支援を察知した米国は、
1961年になると対キューバ偵察活動を強化しました。
米戦略空軍(SAC)はキューバ島縁辺の偵察飛行を
RB-47偵察機で行ない、海軍は艦艇で周辺海域をパト
ロールし、国家安全保障局(NSA)は地上傍受サイト
でSIGINTの収集を開始しました。
その結果、1962年春までにキューバにおけるソ連の
活動が活発化している状況がある程度明らかにされ
ました。CIAは、より詳細な情報収集の必要性を痛感
して、1962年にU-2の偵察飛行を月2回実施すること
にしました。
ケネディ大統領は1962年7月に島内でソ連の異常な
動きがある情報を得て一時停止していた上空飛行の
再開を許可しました。米情報機関はソ連がキューバ
にミサイルの配備したのではないかとの情報を得た
のは、1962年8月のことで、キューバにいる協力者た
ちがSA-2対空ミサイル・サイトに似た施設の位置や
形状を通報してきたからでした。
▼U-2偵察活動開始
8月初めから10月25日までのキューバ危機が高まっ
た時期、U-2による16回の上空飛行が行なわれ、成功
しました。キューバ上空飛行は国際法に反する行為
なのですが、米国は実行するのに何の躊躇もありま
せんでした。写真解析の担当者は、撮影した写真を
一見しただけでSAM(地対空ミサイル)が存在するの
を識別できました。
9月5日、U-2はソ連の装備が新たに到着している状況
の撮影に成功しました。キューバに到着したのは、
SA-2対空ミサイル、コマ級ミサイル艇、MiG-21戦闘
機でした。新たにミサイル・サイトの建設も確認さ
れた。それはSA-2とは異なったミサイル・サイトと
推定されました。
ホワイトハウスは9月6日にキューバに関する情報収
集に関する会議を開き、空中写真判読のエキスパー
トであるラルフ・ステックリ大佐を招致して偵察飛
行の対策を練りました。空軍のRB-47とF3D、海軍の
EC-121がキューバ監視チームを構成し、キューバ周
辺を飛行し、収集活動を行ないました。その結果、
SA-2ガイドラインに関連する電子信号の存在が確認
されました。この情報に基づき、U-2やその他の偵
察機に対し、キューバ領内25マイル以内には入らな
いという新たな偵察飛行の規制が定められました。
この規制はSA-2ガイドラインの射程を考慮したもの
でした。
対空ミサイルの配備により、U-2が撃墜される可能性
が高まり、さらにはソ連軍との戦闘が起きることが
現実味を帯びてきました。U-2の飛行が単なる情報収
集飛行から、軍事作戦的な意味を持つことになり、
10月12日、SACのパワー将軍は空軍長官に招かれて、
U-2の任務を引き受ける意思があるか問われ、引き受
けると表明しました。この措置で、これまでのCIAに
よるU-2の運用はSACへ移管されました。
▼U-2による弾道ミサイル配備確認
SACの中でU-2のベテラン・パイロットである2人の
少佐が新型のU-2Fに搭乗し、キューバ上空を飛行す
る任務につきました。その1人であるリチャード・
S・ヘイサー少佐が10月14日に行なった飛行は、キュ
ーバ危機全般を通じて最も緊要な偵察飛行となりま
した。U-2は2巻のフィルムを持ち帰り、直ちに判読
されました。その写真は、中距離弾道ミサイルのサ
イトが、サン・クリストバル近くに建設されている
のを示していました。
中距離弾道ミサイルの発見により、キューバの状況
はまさに最高の危機に至りました。ケネディ大統領
と設置された国家安全保障会議執行委員会は、どの
ように事態に対処するべきか検討を重ねました。統
合参謀本部議長は会議の席上軍事作戦を主張しまし
た。まずミサイル・サイトを爆撃する、次いで必要
ならばミサイル・サイトに侵入してサイトを破壊す
る、との主張です。ル・メイ将軍は攻勢を主張する
中心人物の1人でした。
▼ケネディ大統領、封鎖作戦を決定
ケネディ大統領は危機を段階的に処理することにし、
まずキューバの周囲に海域封鎖エリアを設定しまし
た。ソ連に対する最初の対抗処置で、キューバに近
づくソ連の船舶は阻止され、引き返させられました。
SAC司令官のパワー将軍は、26日午後10時、デフコン
を3からデフコン2(米国防総省が定める最高度に準
じる防衛準備状態、キューバ危機以前も以降もこの
態勢まで上がったことはない)へ上げました。この
時点でSACが保有し、航空機とミサイルに搭載する核
兵器の数は2,952発でした。50機のB-52が常時在空し、
命令が発せられればいつでもソ連領内の攻撃目標へ
出撃可能な状態に置かれました。
パワー将軍は最初のアラートの命令をSACの部隊に
全世界通信システムを使い平文で送信しました。命
令をモニターしているであろうソ連に対する意味は
明白でした。すなわち、SACはいつでも出撃できる
態勢にあるということです。
(つづく)
(にしやま・くにお)
ご意見・ご感想はコチラから
↓
http://okigunnji.com/url/7/
□著者略歴
西山邦夫(にしやま・くにお)
1936年生まれ。防衛大学校卒(4期・空)。
情報関係略歴:航空幕僚監部調査2課収集1班長、航
空総隊司令部情報課長、陸幕調査別室主任調整官、
航空自衛隊幹部学校主任教官。著書に『肥大化する
中国軍(空軍部分を執筆)』(晃洋書房、2012年)、
『中国をめぐる安全保障(空軍部分を執筆)』(ミ
ネルバ書房、2007年)。研究論文に『中国空軍の戦
力構成とドクトリン』『中国空軍のSu-30MKKとイン
ド空軍のSu-30MKI』『韓国空軍の増強と近代化』
『中露合同軍事演習』『中国の主要航空兵器の装備
化実績と将来予測』『中国空軍の戦力とドクトリン』
『チベットにおける中国の軍事態勢整備』など多数。
近刊予定『知られざる戦略航空偵察(仮)』。
PS
弊マガジンへのご意見、投稿は、投稿者氏名等の個
人情報を伏せたうえで、メルマガ誌上及びメールマ
ガジン「軍事情報」が主催運営するインターネット
上のサービス(携帯サイトを含む)で紹介させて頂
くことがございます。あらかじめご了承ください。
最後まで読んでくださったあなたに、心から感謝し
ています。
マガジン作りにご協力いただいた各位に、心から感
謝しています。
そして、メルマガを作る機会を与えてくれた祖国に、
心から感謝しています。ありがとうございました。
----------------------------------------
メールマガジン「軍事情報」
発行:おきらく軍事研究会
(代表・エンリケ航海王子)
メインサイト:
https://okigunnji.com/
問い合わせはこちら:
http://okigunnji.com/url/7/
ブックレビューの投稿はこちらから
http://okigunnji.com/url/73/
メールアドレス:
okirakumagmag■■gmail.com(■■を@に
置き換えてください)
----------------------------------------
●配信停止はこちらから
https://1lejend.com/d.php?t=test&m=example%40example.com
<丸谷 元人の講演録&電子書籍>
謀略・洗脳・支配 世界的企業のテロ対策のプロが明かす…
知ってはいけない「世界の裏側」を見る
http://okigunnji.com/url/13/
---------------------
投稿文の著作権は各投稿者に帰属します。
その他すべての文章・記事の著作権は
メールマガジン「軍事情報」発行人に帰
属します。
Copyright(c) 2000-2020 Gunjijouhou.All rights reserved