こんにちは、エンリケです。
「戦略航空偵察」二十三回目です。
度肝を抜かれる
という言葉はよく聞きますが、
これまでの人生で経験したことありませんでした。
わたしにとって今回の記事は、
生まれて初めて度肝を抜かれた経験になりました、、、
この年で、こんな経験するとは
よもや思いませんでした。
情報史は、歴史の闇を照らし、
後世に生きるものが歴史から養分を得る核心になる。
改めてそう感じます。
きょうの内容は以下のとおりです
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□ご挨拶
▼1962年頃の中台関係と航空偵察
▼台湾空軍によるU-2運用の合意
▼黒猫飛行中隊の新設
▼偵察飛行が開始される
▼偵察活動が定着
▼U-2の飛行安全確保
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さっそくどうぞ
エンリケ
追伸
さきごろ、本連載の裏話をうかがう機会がありました。
こちらでも度肝を抜かれました、、、
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戦略航空偵察(23)
台湾空軍による中国核・ミサイル開発の偵察(その1)
西山邦夫(元空将補)
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□ご挨拶
私事にわたりますが、私は台湾で幼稚園時代を過
ごしましたので、台湾には思い入れがあります。幼
時、父に連れられ、台北の圓山公園へよく遊びに行
きました。高い丘があって、その頂上から麓まで長
い滑り台があり、尻の下に南京袋を敷いて滑るので
す。幼稚園児の私はその高さが怖くて、ついに滑る
ことができませんでした。
先年、圓山飯店に宿泊し、圓山公園を散策しまし
たが、戦前の面影は見出せませんでした。ただ、公
園のベンチに老人たちが朝から集い、緑陰でお茶と
おしゃべりを楽しんでいました。日本人か、と聞か
れましたので、そうだと答えると、茶を振舞われ歓
迎されました。彼らは本省人でした。隣のテーブル
の人たちは日本語を解せず、冷たい目で見られまし
た。彼らは外省人で、おそらく元軍人でしょう。
過日、台湾で総統選挙があり、台湾自立を唱える
民進党の蔡英文氏が大逆転で再選を果たしました。
中国に近しい国民党の主要な構成員は外省人、台湾
もまだまだ難しい舵取りが必要です。
▼1962年頃の中台関係と航空偵察
中国の短距離弾道ミサイル東風1号の初の打ち上げが
1960年11月5日に行なわれ成功し、次いで1962年3月
21日に準中距離弾道ミサイル東風2号を発射しました
が、失敗しました。この情報を得て、CIAは中国の核・
ミサイル開発の進展状況を確認するため、中国内陸
への偵察飛行が必要だとして検討を開始しました。
ここでCIAに協力したのが中華民国(国民党政府)で
した。中華民国は中国共産党軍により台湾へ追いや
られましたが、大陸への帰還を諦めず、CIAの協力
を得ながら航空機を利用したさまざまな対大陸工作
をやっていました。たとえば、大陸に残留した諜報
員の支援、工作・情報要員の潜入、宣伝ビラの投下
などです。国民党政府にとって大陸は自国の領土、
上空飛行に何の躊躇もありません。(以下国民党政
府を台湾政府又は単に台湾と書きます)
▼台湾空軍によるU-2運用の合意
スベルドルフスクにおけるU-2撃墜事件以降、他国上
空飛行を自粛してきた米国ですから、中国領内の飛
行も躊躇するところがありました。しかし、U-2を台
湾へ提供し、中国の核・ミサイル開発など貴重な情
報を収集できるなら、これに越したことはありませ
ん。
台湾への撤収以来、台湾政府とCIAの間には偵察飛行
で協力してきた経緯がありました。台湾は、米国か
ら供与された航空機、当初はPB4Y、B-17に、その後
はP-2V7、P-3A、RB-57にSIGINT収集機器を積んで、
大陸の偵察を実行してきました。これらの機種によ
る大陸上空飛行は399回に及び、8機が失われていま
した。高々度飛行が可能な高性能機U-2を運用できる
なら、台湾政府も歓迎だったのです。
運用の形態について、U-2は台湾の所有、パイロット
は台湾人、U-2に万一の事故(大陸内での墜落)があ
っても、米国は全く関与していないとすることで米
台両政府は合意しました。とは言え、偵察飛行はCIA
の厳しい管理の下で行なわれるのです。
1960年12月7日、U-2の輸出契約が結ばれ、同月14日
に台湾へ到着しました。パワーズ飛行士の事件から
わずか半年後のことでした。この契約はアイゼンハ
ワー大統領の承認があり、CIAのみならず、米政府の
中ソ両国の核・ミサイル開発に対する情報収集態勢
への焦りが感じられます。
▼黒猫飛行中隊の新設
1960年、台湾政府はCIAと協力して空軍内にU-2の
飛行隊、通称「黒猫中隊(ブラック・キャット中隊)」
を新設しました。正式には第35飛行戦隊です。根拠
基地を桃園飛行場に置き、26人のパイロットが米国
でU-2飛行の訓練を受けました。
▼偵察飛行が開始される
1961年前半は、もっぱら台湾パイロットの訓練で費
やされました。同年秋になると、中国の核・ミサイ
ル開発が進捗しているとの情報があり、これの確認
のための偵察飛行が実行されることになりました。
アイゼンハワー大統領の認可が得られ、台湾空軍に
よる最初の中国領内飛行が計画されました。撮影さ
れたフィルムは米本土で処理され、得られた情報は、
10日以内に台湾政府へ届けられる態勢が作られまし
た。
黒猫中隊によるU-2の最初の偵察飛行は、1962年1月
12日に内蒙古のミサイル・テスト・レンジを目標と
して実施されました。ところが、用意した地図も航
法も不正確で、目標と思われる地域の斜め写真しか
撮影できず、失敗に終わりました。途中の福建省と
浙江省には対空ミサイルが配備されているとの情報
がありましたが、発見できませんでした。
ソ連とは違って、中国内陸には顕著なランドマー
クがなく、U-2のパイロットは目標と推定される地域
上空を捜索のため2~3時間も飛行する場合があり、
これも無駄になることがありました。
2回目の飛行が2月23日に行なわれ、蘭州の核兵器
関連施設上空を飛行しました。その結果、核兵器が
運用可能になるまで少なくとも2年は必要だと分析で
きる成果を挙げました。
3月にさらに2回の飛行が行なわれ、中国南部から
昆明にかけての地域の多くの飛行場を撮影しました。
この地域は、衛星画像で飛行場の所在は分かってい
ましたが、U-2の写真は衛星より詳細を判読でき、さ
らに中国空軍の戦力組成(AOB Air Order of Battle)
の分析に役立ちました。
▼偵察活動が定着
これら1962年1月から3月までに4回の偵察活動が行
なわれ、上海の潜水艦建造施設の撮影に成功し、そ
の活動は緩慢であることが分かりました。その一方
で、南京、長沙の工場群が著しい発展を遂げている
のが確認されました。
6月に入ると台湾海峡をめぐり中台間に緊張が高ま
りました。中国側が地上軍と航空機を集結し、金門・
馬租の両島を攻撃する兆候が見えたのです。CIAは
同月25日から28日まで黒猫中隊のU-2による偵察を行
ない、撮影されたフィルムは直ちに横田基地へ運ば
れ、処理されました。その結果、中国軍は増強を中
断したことが判明し、危機は回避されました。
1962年夏、中国南部に2回の飛行が計画され、9月9日
に行なわれた2回目の江蘇省上空飛行の際、U-2のエ
ンジンがフレーム・アウトしたため飛行高度が下が
り、要撃戦闘機のロケット射撃で撃墜されました。
パイロットはパラシュートで降下し、捕らえられま
した。台湾空軍が保有するU-2の、最初の喪失でした。
ケネデイ大統領は、この時点で中国上空飛行を見直
すよう命じました。
中国は米国に対し、上空飛行を停止するよう要求し
ましたが、米国務省は、U-2の飛行には米国は関与
していないと答えました。
▼U-2の飛行安全確保
U-2の中国内陸部における飛行は、高度が概ね70,000
フィートで行なわれましたが、この高さは、当時の
ほとんどの在来型の武器や戦闘機では対処不可能で
した。中国軍は1958年に第1対空ミサイル大隊を新設
し、その後北京軍区に第2大隊を、南京軍区第3大隊
を配置していました。これらの大隊は、それぞれ
5セットの発射装置と62発のSA-2ミサイルを保有して
いました。このミサイルは、同年のRB-57Dの撃墜に
成功していましたが、命中率はわずかに2パーセント
でした。すなわち、1機を撃墜するのに50発のミサイ
ル発射が必要でした。
SA-2ミサイルの捜索レーダーには、ソ連製Spoon Rest
レーダーが使用され、最大探知距離は約270kmでした。
この性能により、中国空軍はU-2が台湾の桃園基地を
離陸すると間もなくそれを捕捉できていました。し
かし、SA-2ミサイルの有効な最大射程は、半径25km
に過ぎませんでしたから、U-2がその範囲内に侵入し、
ある程度の時間在空しないとミサイルの発射はでき
ません。広大な大陸の中で、ミサイル部隊が配置さ
れている半径25kmの範囲だけ注意すればU-2は安全
に飛行できたのです。
(つづく)
(にしやま・くにお)
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□著者略歴
西山邦夫(にしやま・くにお)
1936年生まれ。防衛大学校卒(4期・空)。
情報関係略歴:航空幕僚監部調査2課収集1班長、航
空総隊司令部情報課長、陸幕調査別室主任調整官、
航空自衛隊幹部学校主任教官。著書に『肥大化する
中国軍(空軍部分を執筆)』(晃洋書房、2012年)、
『中国をめぐる安全保障(空軍部分を執筆)』(ミ
ネルバ書房、2007年)。研究論文に『中国空軍の戦
力構成とドクトリン』『中国空軍のSu-30MKKとイン
ド空軍のSu-30MKI』『韓国空軍の増強と近代化』
『中露合同軍事演習』『中国の主要航空兵器の装備
化実績と将来予測』『中国空軍の戦力とドクトリン』
『チベットにおける中国の軍事態勢整備』など多数。
PS
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