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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応
予備自衛官でもあります。
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防衛予算から読み解く日本の防衛力(特別編)
イージスアショア配備計画停止の裏側を推測する
市川文一(元武器学校長・陸将補)
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□はじめに
先週の15日(月)に、防衛省は「イージスアショ
アの配備計画を停止する」と発表しました。今後、
安全保障会議を経て、閣議決定により計画が中止さ
れる予定です。導入時も突然でしたが、中止も突然
です。
筆者は、昨年「週刊新潮」でイージスアショア導入
に関しての問題を提起しましたが、正直、今回の防
衛省の判断は賢明であると確信しています。自民党
をはじめ言論界からは、今回の決定に対しての批判
が多く聞かれますが、今のまま計画を進めていけば、
「普天間、辺野古問題」以上の大問題になることが
予測されます。
「迎撃ミサイルのブースターの落下が演習場内に収
まらない」というのが配備計画停止の理由とされて
いますが、これは、計画を中止せざるを得ない理由
の一つ、氷山の一角であり、水面下には多くの問題
が隠されています。
そこで、今回は連載を中断して、筆者が知りうる情
報と現役時代の経験をもとに、今回の決定に至った
さまざまな理由を推測したいと思います。なお、以
後の内容に関しては、防衛省の関係者から聞き取っ
たことでなく、あくまでも筆者の推測であることを
ご承知ください。
▼日本が導入するイージスアショアは世界に2個セ
ットだけの特注品
安全保障に関心がある人でも意外と知らないのが、
日本が導入を予定しているイージスアショア(以下、
アショア)がどのようなものであるかです。アショ
アはイージス艦のイージスシステムを地上配置した
ものであり、現在、日本が運用しているイージス艦
のシステムを地上配置するものだと理解している人
が多いと思われます。
アショアがイージス艦のイージスシステムを地上
配置したものというのは間違いありませんが、日本
が導入予定のアショアは現在運用されているイージ
ス艦のイージスシステムとは別物です。ヨーロッパ
で配備されているアショアは現在運用されているイ
ージス艦のイージスシステムと同じもので、日本も
当初は同じものを配備する予定でした。ところが、
理由は不明ですが、突然、より高性能なレーダーを
装備したシステムとするという決定がなされたので
す。
高性能なレーダーを装備したシステムというと現
在米国で開発中のスパイ6レーダーを搭載したイー
ジスシステムを連想します。ところが、日本が導入
するアショアに装備するのはレイセオン社製のスパ
イ6ではなく、ロッキード・マーティン社製のスパ
イ7なのです。現在のイージス艦に搭載されている
のはロッキード・マーティン社製のスパイ1レーダ
ーで、スパイ7はスパイ1の後継としてロッキード・
マーティン社が米海軍に提案したものですが、米海
軍はレイセオン社製のスパイ6を採用しました。
つまり、日本が導入予定のアショアは、米海軍が
開発中のイージスシステムとは別物で、世界の他国
も採用予定のない日本独自のイージスシステムなの
です。秋田と山口に配置を予定していますから、世
界に2個セットだけの非常にレアなシステムとなり
ます。しかも、システムは完成していないため、海
外メーカーに開発を委託するという日本としては初
めての装備導入の方式となります。
装備品を輸入(FMSを含む)する場合、今まで
は、海外で実績があるか、FMSのように米国政府
が性能を保証している兵器を選定してきました。当
然、完成品です。今後は、日本も共同開発に参加し
たイージスシステム搭載のSM3ブロック2Aミサ
イルのように共同開発が増えてくると思われますが、
日本が海外メーカーに開発を委託する形をとるとい
うのは最初で最後ではないかと思われます。今回の
日本のアショア導入は過去に例のないことばかりな
のです。
▼今までの装備品導入のプロセスを全て省略したア
ショア配備の決定
通常、装備品の導入を決定するまでに、実際に部
隊が装備品を運用することを基準として、部隊編制、
格納庫や付帯設備の建設、維持管理、要員の養成、
地元調整などの装備品導入に必要な事項を検討し、
必要な経費を積み上げます。新たに開発する装備品
であれば、試験と試作品の製造時程を調整して開発
に必要な期間と経費を積み上げます。
航空機や高出力レーダーの導入のように地元から
の反対が予想されるものについては、十分な事前調
整が必要です。長射程のミサイルについては日本国
内での試験ができないため、海外の射場を借用しな
ければならず、十分なリードタイムが必要です。拳
銃や小銃のような小型の装備品を除き、これらの検
討や調整のために最低でも1年、地元調整や海外で
の試験が必要な装備品であれば2~3年の期間は必
要です。
ところが、今回のアショア導入は突然の決定であ
り、これらの検討や調整をする時間はほとんどあり
ませんでした。当然、アショア導入に必要な経費を
積み上げる時間もなく、とりあえずどんぶり勘定で
積算されたものと思われます。そして、導入が決定
された後に、本来、事前に行なうべき検討、調整を
行なっているなかで多くの問題が噴き出してきたと
いうのが実際のところだと思われます。
その象徴的なものが地元との調整です。装備品の
導入決定前に十分な調整を行なっていれば、すんな
りと受け入れられていたかもしれません。地元住民
の不安をくみ取り、不安解消のための方策の検討や
説明も、順を追って時間をかけてできたはずです。
秋田県での不手際があった後で、山口県に対しても
地元に対する事前説明が間違っていたというのは致
命的です。配備予定地が決まらなければ、装備品を
導入しても運用できません。
そして、今回は発表されていない、世界に2セッ
トだけの特注品アショアの開発に関わる問題です。
防衛省に弾道ミサイル防衛に関する技術的な知見は
皆無です。開発に関してはロッキード・マーティン
社に全てお任せするしかありません。現在、積み上
げている経費は開発がスムーズにいった場合のもの
でしょう。もし、試験が失敗したら、修正のために
どの程度の経費が必要なのかは、メーカーの言いな
りです。最悪は、不具合が修正できない場合です。
弾道ミサイル防衛に知見のある米軍も日本が導入予
定のアショアの開発には関与していません。
そして、試験そのものに関しても、ハワイにある
米軍の試験施設が日本の要望どおりに借用できるか
どうかの問題があります。以前、読売新聞に、アシ
ョアの試験施設の建設を米国から求められていると
いう記事が掲載されましたが、多分、真実ではない
かと思われます。実際に、現在、陸自が装備してい
る「中SAM」の試験のため、米国の射場にミサイ
ル発射のための施設を日本が建設しました。
試験がスムーズに行かなかった場合の予備経費や、
試験施設の建設を含めたな開発経費を積み上げると、
当初予定していた導入経費をはるかに上回ってしま
う可能性は高いでしょう。過去の開発品の場合、日
本政府と日本企業という関係もあり、装備庁が開発
経費にも厳しく目を光らせてきましたが、今回のア
ショアではロッキード・マーティン社のほぼ言いな
りにならざるを得ないことは過去の例(陸自のML
RS)からでも明らかです。
アショア導入だけはとりあえず決めたものの、アシ
ョア配置までのプロセスを検討してみると、問題が
山積みで実際に配備し運用する目処が立たないとい
うのが、今回の計画停止に至った真相ではないかと
思われます。その中でも、安倍総理の地元でもある
山口県での不手際が決定的な要因となったのでしょ
う。
(つづく)
(いちかわ・ふみかず)
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【著者紹介】
市川文一(いちかわ・ふみかず)
1961年生まれ。長野県出身。防衛大学校27期生。
1983年、陸上自衛隊に入隊。
2002年に1等陸佐に昇任後、第13後方支援隊長、統合
幕僚監部人事室長、装備施設本部武器課長、陸上幕
僚監部武器・化学課長、東北方面後方支援隊長、愛
知地方協力本部長として勤務、
2015年陸将補に昇任後、陸上自衛隊武器学校長の勤
務を最後に2017年8月に退官。退官後の9月には
YouTube「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演。
2019年9月に新刊『不思議で面白い陸戦兵器』を刊
行。
2017/9 YouTube「桜林美佐の国防ニュース最前線」
に出演。
https://youtu.be/6hPY3vgpidw
2017/10/21「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出
演
https://youtu.be/jESYh1lIeSE
2018/2/10「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/D_md0ZSJNds
2018/6/9「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/eHnT9jvqQjk
2018/10/6「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/aEOhNJ3twN0
著書に、
『猫でもわかる防衛論』(大陽出版)
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