配信日時 2020/06/19 20:00

【加藤大尉の軍隊式英会話:兵器編】世界の秘密兵器(27) 「米軍最強の古参兵器2「B52爆撃機」」

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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応
予備自衛官でもあります。
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WEB http://wos.cool.coocan.jp
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こんにちは。エンリケです。

加藤さんが翻訳した武器本シリーズ最新刊が出まし
た。今回はMP5です。

「MP5サブマシンガン」
L.トンプソン (著), 床井雅美 (監訳), 加藤喬 (翻訳)
発売日: 2019/2/5
http://okigunnji.com/url/14/
※大好評発売中


冒頭で書かれてますが、
米の軍には
「正規軍(連邦軍)」「予備役軍」「州軍」があり、
それぞれ軍服を着て任務にあたってます。

こういう最低レベルの軍事常識を持たないと、
冒頭文に取り上げられているような
「愚かな世論誘導」に苦もなくひっかけられますね。


国民一人一人が、戦後日本的なくびきから
心身共に自らを解き放ち、
戦後日本的でない発想で、
わが国を導く感覚が、いま必要です。

現実的=戦後日本的なもの・ことの枠内

な発想では、わが国はもう持たない感を持ちます。

そのために役立つ情報源として、
本連載は他で類を見ない貴重さがあります。

今後も、加藤さんの米国発レポートは
手離せません。

さっそくどうぞ


エンリケ



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加藤大尉の軍隊式英会話:兵器編     

世界の秘密兵器(27)
 「米軍最強の古参兵器2「B52爆撃機」」

Takashi Kato

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□トランプツイッター6月5日付

新米少尉の頃、正規陸軍(連邦陸軍)で武器科士官
の基礎とリーダーシップを叩き込まれました。数年
後の「砂漠の嵐作戦」では、動員された陸軍予備役
部隊で中隊長代理を務め、帰還後は陸軍州兵部隊の
情報部に転属しました。各時期に異なる軍組織に所
属していたわけですが、従軍体験のないアメリカ人
の目には違いが分からなかったでしょう。それもそ
のはず。わたしの軍服、階級章、装備品はすべて同
一だったからです。正規軍(連邦軍)、予備役軍、
州兵部隊を分けるのは、指揮系統とフルタイムかパ
ートタイムかの違いなのです。

 黒人男性暴行死事件が引き金となり、アンティファ
など極左暴力集団が扇動した一連の騒乱事件に絡み、
主流メディアが「連邦軍が首都ワシントンで治安維
持にあたった」と報道。民主党の知事らはトランプ
大統領の動員判断を違憲と批判し「連邦軍撤退」を
主張しました。しかし・・・首都に派遣されたのは
大統領が指揮権を持つワシントンDC陸軍州兵部隊。
正規軍(連邦軍)と州兵部隊の違いを知らない記者
や政治家の勉強不足とも考えられますが、穿(うが)
った見方をすれば「トランプ憎し」のフェイクニュ
ースだった可能性もあります。

 軍服も装備もほぼ同一なのに、なぜ州兵部隊なら
よくて正規軍(連邦軍)だと問題になるのか。これ
は新生国家アメリカが、元宗主国イギリスの国軍、
すなわち正規軍によって独立を失いかけた苦い記憶
がもとになっています。この教訓から、米国は人々
の信任を持たない政府が正規軍で市民の自由と権利
を侵害することを深く憂慮するようになったのです。

 いまを去る31年前、天安門事件で民主化を求め
る学生や市民に銃や戦車を向け、多くの無辜(むこ)
を殺傷した人民解放軍も中国の国軍であり正規軍・・・
人々の信任を持たない政府がなした国軍乱用の典型
です。

 この点、アメリカの州兵部隊は市民が緊急時に銃
をとって植民地防衛の任についた民兵部隊が母胎。
現在の州兵部隊もパートタイムの市民兵という位置
づけで、平時は各州の知事(ワシントンDCでは大統
領)が最高司令官を務める軍組織です。こういった
歴史的背景もあり、州兵部隊は、正規軍の国内治安
出動を原則禁止した民警団法に抵触することなく、
暴動略奪の防止や鎮圧を行なうことができます。

 ところが、人種差別反対デモが極左のアンティファ
らに乗っ取られ暴動略奪に変容しても、いやそれど
ころか、デモ隊が警察署周辺を占拠し「自治区」を
宣する暴挙に出ても、民主党の州知事らは州兵部隊
動員を拒み続けました。なぜか? 11月の大統領選
挙を控え、民主党も一枚岩ではないからです。

 指名争いから撤退した左派の大物バーニー・サン
ダース、エリザベス・ウォーレン両上院議員の支持
者らを失うわけにはいかない・・・民主党に充満す
る「空気」は、若手急進左派のアレキサンドリア・
オカシオ・コルテス議員が中道穏健派バイデン選挙
チームの大役に抜擢されていることからも窺えます。

 左傾化する党内空気を読んだ知事らは、一連の騒
乱事件にも傍観を決め込みデモに賛同するリベラル
派の離反を避ける一方、トランプ氏の経済再起動に
横槍を入れることで党中央に恭順をアピールしたか
ったのかも知れません。
 
 今回のツイッターでやり玉に上がっているのは、
首都ワシントンDCの市長ムリエル・バウザー氏。リ
ベラルな民主党員かつ不法移民にも福祉サービスを
提供する聖域都市の擁護者で、憲法で認められた銃
所持・携帯の権利を頭から否定する銃規制派ですか
ら、トランプ氏とはただでさえ犬猿の仲。そのうえ
大統領が合法的に動員したワシントンDC州兵部隊に
対し、「黒人の命を奪う、差別的で破綻した米警察
機構の改革を訴えるデモ隊を激高させている」と、
警察と軍を目の敵にする発言を行ないました。

 これに対しトランプ氏は「州兵部隊の素晴らしい
男性・女性兵士らの援助がなかったら、バウザー市
長は(暴動を放置した)同じ民主党のミネアポリス
市長と大差ない失態を冒すことになっただろう」と
反論。

「ムリエル・バウザー市長には手腕がない。市財政
は収拾がつかない状態だから、いつも連邦政府に
『施し』を乞いにやって来る。その彼女がいま州兵
部隊にケンカを売っている。この数夜、市長が(暴
動で)面目を失わずに済んだのは州兵部隊のお陰だ
というのに。市長が州兵部隊の男性・女性将兵に適
切な処遇をしないなら、その時は、異なる部隊の男
性・女性兵士を動員する!」

とも述べています。文末の「異なる部隊の男性・女
性兵士」が暗に正規軍を指していることから、主流
メディアはここぞとばかり、コリン・パウエル元国
務長官の「大統領は憲法軽視」発言を伝えています。
しかし、大統領には正規軍を治安出動させる権限が
与えられています。姑息な計算から無秩序状態を放
置黙認する民主党州知事らに対する「牽制」は、違
憲でも憲法軽視でもありません。

 本日のトランプツイッター、キーワードは incompetent。
「有能な」「仕事ができる」を意味する competent
の否定形で「無能な」「手腕のない」「なにもでき
ない」と訳します。
 
The incompetent Mayor of Washington, D.C., who’s
budget is totally out of control and is constantly
coming back to us for “handouts”, is now
fighting with the National Guard, who saved her
from great embarrassment......over the last
number of nights. If she doesn’t treat these
men and women well, then we’ll bring in a
different group of men and women!

(訳文前述)


▼米軍最強の古参兵器2「B52爆撃機」

 兵器は人が生存をかけて使う道具。生き延びるた
めには相手より優れた武器を持たねばなりません。
兵器開発競争が文明の黎明から今日まで途切れなく
続いているのはこのためです。よく指摘される武器
の効用に「抑止力」(deterrence)があります。刀を
抜かずとも相手を委縮させ対峙を防ぐ「鞘の内の勝
ち」の如く、敵に攻撃を思いとどまらせる圧倒的な
破壊力のことです。「平和を望むがゆえに兵器を手
放せない」。人類が陥って久しいこのジレンマの裏
面が「抑止力」なのです。

「加藤大尉の軍隊式英会話:兵器編」では、それぞ
れの武器が持つ抑止力に着目。兵器と平和の関係を
考えていくことにします。今回は米軍で長年使われ
続けている古参兵器の3回目。B52爆撃機です。

わたしの少年時代は冷戦まっただなか。そのせいか、
B52というと『博士の異常な愛情』(1964年)や
『未知への飛行:フェイルセーフ』(1964年)など
のSF映画を想起します。どちらも偶発核戦争をテー
マにした秀作で、B52がソ連に核爆弾を投下する場
面が描かれています。いまでこそ荒唐無稽に思える
シナリオは理由のないことではなく、当時は実際に、
核爆弾を積んだB52がソ連周辺を24時間体制で遊弋
していました。米ソの軍事対決が不可避になった場
合に備え、先制攻撃や報復攻撃を行なうためだった
のです。この戦略パトロール任務中に墜落事故が複
数回発生。核爆発だけは避けられたものの核汚染が
生じたことから、同任務は1968年に中止されていま
す。

これらの史実からも分かるように、B52は共産圏諸
国に核爆弾を投下する目的で設計開発され戦略爆撃
機です。運用開始は1955年と言いますから、すでに
65年間継続して使われていることになります。エン
ジンなどの近代化改修で2050年代までの運用が計画
されており、仮に実現すれば、100年を超える実戦配
備となります。新旧交代が激しい軍用機の世界では
異例の長寿機となります。

これほど長く第一線機として活躍してきた理由はな
にか。簡単に言えば、長大な航続距離と積載量、維
持管理のしやすさ、そして新任務に適合できる柔軟
性が挙げられます。核攻撃任務を解かれたB52は、
大量の無誘導爆弾を積めるよう改造されベトナム戦
争に参戦。1965年から1972年にかけ北ベトナムに対
する絨毯爆撃(北爆)を敢行し、ハノイなどの主要
都市に壊滅的打撃を与えました。この戦果は、黎明
期の重くかさばる水爆を積んで米ソ間を往復できる
よう設計された機体が通常爆撃でも功を奏したから
です。

反面、レーダーに捕捉されにくい最新鋭機に比べる
と、B52のレーダー反射断面積は1000倍強というデ
ータがあります。したがって、高性能迎撃ミサイル
を持つ敵国への侵攻は自殺行為です。しかし、そう
いう任務はB2やF35といったステルス機に任せてお
けばよく、B52は防空システムを持たない疑似国家
やテロ組織に対する精密爆撃で威力を発揮できます。
また、巡航ミサイルの母機として運用すれば、敵の
ミサイルや戦闘機の脅威に晒されない空域から攻撃
することも可能です。

ちなみに、DLI時代の教え子にB52のパイロットが
いました。彼は習いたての日本語で「B52のあだ名
はバフです」と教えてくれました。「バフって何だ?」
「BUFFはBad,Ugly,Fat,Fellowです」(手に負えない、
醜く、太ったヤツ)との返事でした。

空軍パイロット直伝のトリビア、読者も覚えておい
たらどうでしょう。

教材ビデオ: https://www.youtube.com/watch?v=tdMlzXDgtag&list=PLk2kWhtlkeERNmHhjjwD0qbox5r9ZGvvh&index=87&t=73s

 (B52爆撃機のイントロダクションは4:14か
ら始まります)


基本語彙 (カタカナ発音表示はおおざっぱなものです)
Versatile(ヴァーサタイル)多用途の 用途の広い
Platform(プラットフォーム)この文脈では特定の
目的に使用される航空機
Precision bomb(プリシジョン ボム)精密誘導爆弾
The Islamic State(ザ イスラミック ステート)
イスラム国

シナリオ (4:59から始まります)

The B52H currently provides a versatile platform
that can drop precision bombs on enemies without
advanced air defenses such as the Islamic State.

(今日、B52H型はイスラム国など先進防空システム
を持たない敵に対し、精密誘導爆弾を投下するうえ
で使い勝手のいい機体になっている)

(B52および他の古参兵器のビデオは最後まで続き
ます)


英語一言アドバイス:
versatileは「用途の広い」「多目的の」「多芸な」
という意味です。たとえばスイス・アーミー・ナイ
フのような使い勝手のいい道具や、スポーツから料
理、楽器演奏もこなす器用な人を描写するのに適当
な表現です。

発音サイト: versatileの発音 https://www.youtube.com/watch?v=IlC23ciD_bw

参考サイト: B52爆撃機 https://en.wikipedia.org/wiki/Boeing_B-52_Stratofortress(本サイトの日本語版に移行してください)



(かとう・たかし)



●著者略歴
 
加藤喬(かとう・たかし)
元米陸軍大尉。都立新宿高校卒業後、1979年に渡米。
アラスカ州立大学フェアバンクス校他で学ぶ。88年
空挺学校を卒業。
91年湾岸戦争「砂漠の嵐」作戦に参加。米国防総省
外国語学校日本語学部准教授(2014年7月退官)。
著訳書に第3回開高健賞奨励賞受賞作の『LT―あ
る“日本製”米軍将校の青春』(TBSブリタニカ)、
『名誉除隊』『加藤大尉の英語ブートキャンプ』
『レックス 戦場をかける犬』『チューズデーに逢う
まで』『ガントリビア99─知られざる銃器と弾薬』
『M16ライフル』『AK―47ライフル』『MP5サブ
マシンガン』『ミニミ機関銃(近刊)』(いずれも
並木書房)がある。
 
 
追記
「MP5サブマシンガン」
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『チューズデーに逢うまで』関係の夕刊フジ
電子版記事(桜林美佐氏):
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20150617/plt1506170830002-n1.htm
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20150624/plt1506240830003-n1.htm
 
『レックス 戦場をかける犬』発売中
http://www.amazon.co.jp/dp/489063309X 
 
『レックス 戦場をかける犬』の書評です
http://honz.jp/33320

オランダの「介護犬」を扱ったテレビコマーシャル。
チューズデー同様、戦場で心の傷を負った兵士を助ける様子が
見事に描かれています。
ナレーションは「介護犬は目が見えない人々だけではなく、
見すぎてしまった兵士たちも助けているのです」
http://www.youtube.com/watch?v=cziqmGdN4n8&feature=share
 
 
 
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日本語でも英語でも、日常使う言葉の他に様々な専
門用語があります。
軍事用語もそのひとつ。例えば、軍事知識のない日
本人が自衛隊のブリーフィングに出たとしましょう。
「我が部隊は1300時に米軍と超越交代 (passage of
lines) を行う」とか「我がほう戦車部隊は射撃後、
超信地旋回 (pivot turn) を行って離脱する」と言
われても意味が判然としないでしょう。
 
 同様に軍隊英語では「もう一度言ってください」
は "Repeat" ではなく "Say again" です。な
ぜなら前者は砲兵隊に「再砲撃」を要請するときに
使う言葉だからです。
 
 兵科によっても言葉が変ってきます。陸軍や空軍
では建物の「階」は日常会話と同じく "floor"です
が、海軍では船にちなんで "deck"と呼びます。 
また軍隊で 「食堂」は "mess hall"、「トイレ」
は "latrine"、「野営・キャンプする」は "to bivouac" 
と表現します。
 
 『軍隊式英会話』ではこのような単語や表現を取
りあげ、軍事用語理解の一助になることを目指して
います。
 
加藤 喬
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マガジン作りにご協力いただいた各位に、心から感
謝しています。
そして、メルマガを作る機会を与えてくれた祖国に、
心から感謝しています。ありがとうございました。

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