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エンリケ
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自衛隊警務官(26)
陸軍憲兵から自衛隊警務官に(26)
夜襲成功!
荒木 肇
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▼港内に突入
午後10時55分、第1駆逐隊司令浅井大佐は、
駆逐艦白雲の低い艦橋から北西に光を見た。港内
の戦艦レトウィザン、巡洋艦パルラーダのサーチ
ライトである。針路を確認し、コースをノース・
バイ・ウェスト(北微西)にして6ノット(約1
1キロ)の微速で前進する。艦首が切り分ける白波
と艦尾が流すウェーキ(艦尾波)の白さを目立させ
ないためである。
午後11時ころ、太平洋艦隊旗艦ペトロパウロフ
スク艦上での会議はようやく終わった。防御につい
てである。結論はアレクセーエフ総督の意見通り、
夜間の防雷網の設置は翌日の夜から、巡洋艦の哨戒
は翌々日(すなわち10日)から始めることになっ
た。
「これ以上の防御策は不要でしょう。おそらく戦
争にはなるまいし」と、ウィトゲフト参謀長は締め
くくった。いや、油断はできないとスタルク中将が
述べると、
「今夜こそが襲撃の最適時なのに、日本艦隊はやっ
て来ていません。このチャンスを逃すことこそ、彼
らが無能である証拠です。戦争をする意思がないの
でしょう」と語った。
会議は終わった。スタルク中将は自室に戻り、ウ
ィトゲフト少将と軍港司令官グリューヴェ少将は、
それぞれの汽艇で岸壁を目指した。そんな頃である。
午後11時10分、白雲のマストには「襲撃用意」
の旗?信号(きりゅう・しんごう)が掲げられた。後
続する朝潮、霞(かすみ)、暁(あかつき)のマス
トにも同じ信号旗がのぼっていった。
「敵情ヲ窺(うかが)ウニ、著(いちじる)シク警
戒ノ模様無ク碇泊灯ヲ点ズ」
泊地の中では、戦艦ポペーダ、巡洋艦ジアナも石
炭搭載中であり、サーチライトを点けているといっ
た無警戒ぶりだった。サーチライトも旋回し、とき
に日本駆逐隊をとらえても、動いていないように見
えては異状だとも感じなかったのだろうか。
「敵艦ハ重畳(ちょうじょう・おりかさなる様子)
シテ好目標タルノミナラズ、艦首西向スルガ故ニ正
シク其ノ艦側ヲ我ニ対セリ」
▼およそ600メートルに入りしを信じ
午後11時11分、浅井司令は「取舵(とりかじ・
左回頭)」を白雲駆逐艦長に命じた。取舵とは諸説
あるが、日本古来の水軍用語である。「とぉりかぁ
ぁじ」と発声し、北を子(ね)とする12方位制で
見てゆく。すると右回頭は「ね(北)・うし・とら・
う(東)」と数えて「卯の舵」である。この「うの
かじ」が聞き取りにくく「おもかじ・面舵」になり、
「酉(西)の舵」が「とりかじ・取舵」となったと
いう説がある。
後続の各艦も同じく左に回頭し、白雲は戦艦レト
ウィザンを目標にした。当時の測距儀では夜間の正
確な距離は測りにくく、おそらく600メートル余
りと考えて、午後11時33分に魚雷を発射した、
と戦闘詳報に記入されている。
前にも書いたように、当時の魚雷発射は後世のよ
うに圧搾空気ではない。黒色火薬で射ち出した。盛
大な火焔と音響が特徴である。巡洋艦アスコリドの
サーチライトが音と光に向けられた。白雲はその光
に捉えられる。戦艦レトウィザンのライトも、数隻
の駆逐艦を闇に浮かびあがらせた。
レトウィザンの当直将校は、ただちに「ラッパ卒
と鼓手、上甲板に!」と命令を出した。靴音とラッ
タルを駆け上がる響きが艦内にあふれたが、多くの
乗員は敵の襲撃とは思わなかった。おそらく不時の
検閲ではないかと受け止めたらしい。
旗艦ツェザレウイッチの艦橋でも、前方の巡洋艦
アスコリドのサーチライトで4隻の駆逐艦を視認し
た。舷灯を点けていないことに不審は感じたものの、
はっきりと艦形を識別できず、日本駆逐艦とは受け
止めなかった。
白雲はさらに1発の魚雷を発射、朝潮もほぼ同時
に2発を射出。2隻の駆逐艦はただちに左に転舵し、
全速力で避退する。
午後11時38分、戦艦ツェザレウイッチの左舷
全部に命中。朝潮の発した2発目である。朝潮駆逐
艦長の報告によると、敵戦艦の探照灯が激しく震動
し、水柱と火焔が激しく立ち上ったという。
レトウィザン、巡洋艦アストリド、戦艦ツェザレ
ウイッチが発砲する。他の艦もサーチライトを一斉
に灯して、警戒ラッパの音が海上に響き渡った。各
艦はやみくもにサーチライトを振りまわした。おか
げで砲手も艦橋も、味方のライトでめくらましを受
けてしまった。砲撃はますます困難になった。
混乱のさ中に、3番艦霞(かすみ)は巡洋艦アス
コリドと同パルラーダに魚雷を発射。午後11時4
0分、残る暁(あかつき)も砲火を受けながら2本
の魚雷を発射する。暁が魚雷を射出し避退する直後、
ツェザレウイッチの左舷後部に命中を示す火柱と水
の奔騰(ほんとう)が見られた。第1駆逐隊の襲撃
はそれで終わった。
ちょうどそのとき、第2駆逐隊の司令駆逐艦雷
(いかずち)が突入してきた。第1駆逐隊の後を追
ってきたものだ。雷は右回りで1000メートルの
距離から魚雷2発を発射して避退した。
午後11時42分、第3駆逐隊が戦場に着いた。
第2駆逐隊の電(いなづま)、朧(おぼろ)と出会
って、電を最後尾に、朧はさらに後方についていた。
44分、先頭艦薄雲(うすぐも)、2番艦東雲(し
ののめ)は巡洋艦パルラーダと同ジアナに目標を定
め、それぞれ2発の魚雷を射った。距離はいずれも
1500メートルだったという。48分、パルラー
ダの左舷後部に魚雷が命中した。
同時に薄雲と東雲の間から電が突撃する。ジアナ
に魚雷を発射、後方の戦艦レトウィザンにも1本を
射った。
ロシア側の記録はどうか、次回はそちらから見よ
う。
(以下次号)
(あらき・はじめ)
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●著者略歴
荒木 肇(あらき・はじめ)
1951年東京生まれ。横浜国立大学教育学部卒業、同
大学院修士課程修了。専攻は日本近代教育史。日露
戦後の社会と教育改革、大正期の学校教育と陸海軍
教育、主に陸軍と学校、社会との関係の研究を行な
う。
横浜市の小学校で勤務するかたわら、横浜市情報処
理教育センター研究員、同小学校理科研究会役員、
同研修センター委嘱役員等を歴任。1993年退職。
生涯学習研究センター常任理事、聖ヶ丘教育福祉専
門学校講師(教育原理)などをつとめる。1999年4月
から川崎市立学校に勤務。2000年から横浜市主任児
童委員にも委嘱される。2001年には陸上幕僚長感謝
状を受ける。
年間を通して、自衛隊部隊、機関、学校などで講演、
講話を行なっている。
著書に『教育改革Q&A(共著)』(パテント社)、
『静かに語れ歴史教育』『日本人はどのようにして
軍隊をつくったのか―安全保障と技術の近代史』
(出窓社)、『現代(いま)がわかる-学習版現代
用語の基礎知識(共著)』(自由国民社)、『自衛
隊という学校』『続自衛隊という学校』『子どもに
嫌われる先生』『指揮官は語る』『自衛隊就職ガイ
ド』『学校で教えない自衛隊』『学校で教えない日
本陸軍と自衛隊』『あなたの習った日本史はもう古
い!―昭和と平成の教科書読み比べ』『東日本大震
災と自衛隊―自衛隊は、なぜ頑張れたか?』『脚気
と軍隊─陸海軍医団の対立』『日本軍はこんな兵器
で戦った─国産小火器の開発と用兵思想』(並木書
房)がある。
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