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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応
予備自衛官でもあります。
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「国産製品が割高・低性能の誤解を解く!
『日本が弾薬を国産する理由』」という市川さんの
記事が掲載されました。不良弾や欠品が許されない
国内事情、継戦能力の確保だけではない弾薬を国産
する理由が解説されています。
ご一読をおススメします。
『軍事研究』
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「防衛予算から読み解く日本の防衛力」第二部の
十七回目です。
思うのは、
なぜこういう話を
市川さん以外から耳にしないのか?
という点です。
不可思議です。
では今日の記事、
さっそくどうぞ
エンリケ
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防衛予算から読み解く日本の防衛力(38)
第2部 危機的状況にある日本の安全保障体制(17)
最新装備品の導入が防衛基盤を脆弱化している
市川文一(元武器学校長・陸将補)
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□はじめに
今般のコロナ騒動を契機として、「新しい生活様
式」ということが話題となっています。仕事はテレ
ワークやオンライン会議、飲み会は必要最小限にし
てオンライン飲み会、買い物は宅配を活用といった
ように、人と人とが距離をとる、直接会わないとい
う様式に移行するということです。
新型コロナの感染が世界的にも落ちつくまではや
むを得ないこととは思いますが、この生活様式が今
後の主流になると考えると自分のような年代のもの
にとっては寂しいところです。確かに、ネット社会
という時代の流れが急激に進むということだけかも
しれませんが、人と人とが相対する場が減ることで
人生の潤いのようなものがなくなっていくような気
がします。
仕事の調整でも、メールでは上手く意志や意図が
伝わらず齟齬が多くなるというのは筆者の経験から
も確かなことです。直接、人と調整するのはストレ
スが多いことで、メールですませたいという気持ち
もよくわかりますが、人と人とが直接会って話しを
するというのは、時代が変わっても、意思の疎通を
図るのに最も確実な手段です。国家の首脳会談が行
なわれるのも、形式的な意味合いがあるにしても、
直接の会話というものの重要性を示しています。
ネット、パソコン、スマホなどの電子機器は全て
道具(ツール)、手段です。何かの目的、たとえば
売り上げを上げるための営業のツールとして、これ
らをいかに上手く使うかが大事なことです。ところ
が最近、ツールを使うことそのものが重要で、手段
が目的化してきている気がしてなりません。
仕事でも、ディスプレイに向かいキーボードを叩
いるだけでは成果が上がらないことがよくあります。
それは、自分の目で見て、人と会話をし、現場の空
気を感じないと実体はつかめないからです。
▼兵站がなければ先端戦力だけでは戦えない
以前、「人が少ない。古い装備品が更新されない。
装備品が壊れたら長期間直らない。建物が古い。射
撃訓練のための弾薬が少ない」という声が現場の隊
員からよく聞かれるといった話を紹介しました。筆
者が現役の時にも、同様の状況が常態化していたの
は確かですが、深刻さが確実に増しています。特に
F35やオスプレイといった最新鋭の装備品が導入され
始めてからは、状況が急激に悪化しているように思
われます。
予算が変わらない中で「所要防衛力」を整備しよう
とすれば、最新鋭の装備品調達のための経費を優先
せざるをえず、その結果、最新鋭の装備品調達以外
の経費は削減せざるをえなくなります。削減される
経費は、既存装備品を損耗更新するための装備品の
購入費、装備品の修理に必要な部品の購入費、古い
建物の立て替えや修繕に必要な経費、教育訓練のた
めに必要な経費、装備品を動かすための燃料等、現
場部隊が、今、活動するために必要な経費です。
本連載の「補正予算頼みの防衛予算」でも紹介しま
したが、陸自の予算を例にすると、機動戦闘車や水
陸両用車、オスプレイなどの主要な装備品以外の車
両、通信器材、施設器材等を取得するための経費は
26年度から30年度まで、540億円、340億円、310億
円、221億円、194億円と典型的な右肩下がりとなっ
ています。
これに、各年度で編成される災害対策(対応)の補
正予算がプラスされますが、10年前に比べると大幅
に減額されています。補正予算額は、細部が公表さ
れていない年度があるため毎年度の比較はできませ
んが、直近の30年度の災害対策(対応)関連補正予
算678億円のうち345億円が、令和元年度は40億円が、
車両、通信器材、施設器材等の損耗更新用予算とな
っています。防衛予算にプラスすると30年度で548
億円、令和元年度で384億円です。
同じ経費が、10年前の21年度予算では779億円、
15年前の16年度予算では694億円ですから、2/3~
1/2に削減されているということになります。筆者
の経験では10年前でも十分といえる予算ではなく、
それが元年度では半分の予算になっていますから、
部隊の古い装備品が更新されずに、稼動できない状
態が増えてきているのが予測されます。
つまり、最新の装備品を導入することで、表面上
は日本の防衛力が向上しているように思われますが、
防衛力の基盤となる部分が脆弱化しトータルとして
は実質的に防衛力の機能低下を招いているというこ
とです。兵站がなければ先端戦力だけでは戦えない
のと同じことです。
防衛産業の衰退や現場部隊の基盤となる防衛力の
低下は、大綱と中期防の矛盾した関係に根本的な問
題があります。大綱と中期防は車の両輪ですが、大
綱は中期防の上位計画です。防衛関係者は大綱で示
された防衛力を整備するために最大限に努力します。
中期防で示される予算が少なければ、既存の経費を
削ずることも厭わないこととなります。それは、計
画の上下関係が規定していることです。
大綱や中期防の策定は防衛省だけの問題ではあり
ません。官邸にある国家安全保障局は当然のこと、
予算を所掌する財務省や災害対策を所掌する国土交
通省、防衛産業や武器輸出を所掌する経済産業省等
の多くの省庁が関係してきます。
細かな事業や専門的な事項は行政分野、つまりは各
省庁が担当するとしても、大綱と中期防の整合性に
ついては政治分野、つまりは政治家リードして相互
調整しないと解決されません。高い防衛力を求める
が(防衛サイド)、予算が少なく(財務サイド)、
FMS契約が増える中で防衛生産・技術基盤の強化
(経産再度)を謳うという、各省庁の意見を全体の
整合性なく取り入れた結果が現在の大綱と中期防の
矛盾した関係です。
大綱と中期防の矛盾した関係は、今ある防衛力の機
能低下を拡大させるとともに、国として必要不可欠
な防衛生産・技術基盤の衰退を招いています。特に、
防衛生産・技術基盤の衰退は深刻な問題です。機能
低下している防衛力は、今の状態ならば防衛予算を
倍増させることにより急速な回復が期待できますが、
失われてしまった防衛生産・技術基盤を復活させる
には10年単位の年数が必要となります。
このためにも、安全保障に詳しい自衛官出身の佐藤
正久議員のような政治家が主導的に調整できる政治
体制が必要ですが、自民党執行部の主要ポストや各
省庁の大臣ポストは相変わらず政局が主体で決めら
れています。安全保障に詳しい政治家が少なければ、
当選回数や知名度にかかわらず、詳しい政治家が連
続して防衛大臣を務めなければ問題の解決は難しい
でしょう。
(つづく)
(いちかわ・ふみかず)
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【著者紹介】
市川文一(いちかわ・ふみかず)
1961年生まれ。長野県出身。防衛大学校27期生。
1983年、陸上自衛隊に入隊。
2002年に1等陸佐に昇任後、第13後方支援隊長、統合
幕僚監部人事室長、装備施設本部武器課長、陸上幕
僚監部武器・化学課長、東北方面後方支援隊長、愛
知地方協力本部長として勤務、
2015年陸将補に昇任後、陸上自衛隊武器学校長の勤
務を最後に2017年8月に退官。退官後の9月には
YouTube「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演。
2019年9月に新刊『不思議で面白い陸戦兵器』を刊
行。
2017/9 YouTube「桜林美佐の国防ニュース最前線」
に出演。
https://youtu.be/6hPY3vgpidw
2017/10/21「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出
演
https://youtu.be/jESYh1lIeSE
2018/2/10「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/D_md0ZSJNds
2018/6/9「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/eHnT9jvqQjk
2018/10/6「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/aEOhNJ3twN0
著書に、
『猫でもわかる防衛論』(大陽出版)
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「不思議で面白い陸戦兵器」(並木書房)
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