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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応
予備自衛官でもあります。
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「防衛予算から読み解く日本の防衛力」第二部の
十四回目です。
FMSの実態がようやくよくわかりました。
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防衛予算から読み解く日本の防衛力(35)
第2部 危機的状況にある日本の安全保障体制(14)
FMS調達の増加と防衛産業の衰退
市川文一(元武器学校長・陸将補)
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□はじめに
防衛費を増額するための行動経済学的アプローチ
の3回目です。防衛省のホームページや広報活動、
大綱や中期防、防衛白書などでの日本の安全保障体
制強化の必要性を記述するときの表現について、フ
レーミング効果やプロスペクト理論の損失回避を使
います。
今までは、防衛力強化を訴えるときに、「安全保
障の現実に正面から向きあい、従来の延長線上では
ない真に実効的な防衛力で新たな防衛力を構築する
ため、防衛力の質及び量を必要かつ十分に確保して
いく必要があります」(防衛白書)のように必要性
のみを淡々と説明してきました。これではインパク
トに欠けます。
そこで、「防衛力の質及び量を必要かつ十分に確
保しなければ、現実の日本の安全保障環境に応じた
各種脅威に対応できません」のように表現を変えま
す。防衛力の増強がなければ損失があるという表現
で、損失を回避するために防衛力の強化が必要だと
いう印象を持たせます。
今までの日本の安全保障に関する政府側からの発
信は必要性だけしか訴えないため、「今の防衛力で
何とか対応できる」という印象を与えてしまいます。
新型コロナ感染対応では「緩やかな外出自粛で接触
を2割減らしただけでは、いったん感染者が減って
もすぐに再び増加に転じる」といったような、危機
感を与える(損失がある)表現を使用しています。
日本の防衛力の実態は本連載でも説明してきたとお
り非常に厳しい状況にあります。コロナの感染と同
レベル以上の問題です。3回にわたって紹介したよ
うな様々な手法を活用してでも、防衛力の強化(防
衛費の増額)について国民の理解を得られることが
急務となっています。
▼大綱と中期防の矛盾が日本の防衛力に及ぼす影響
(FMS調達の増加と防衛産業の衰退 その1)
大綱と中期防の矛盾により、防衛予算がほとんど増
加しない中においては最新鋭の装備品の調達を優先
せざるを得ない状況となっています。しかも、30大
綱においては、「宇宙・サイバー・電磁波を含む全
ての領域における能力を有機的に融合し、平時から
有事までのあらゆる段階における柔軟かつ戦略的な
活動の常時継続的な実施を可能とする、真に実効的
な防衛力として、多次元統合防衛力を構築していく」
と、米・ロ・中といった軍事大国とも方を並べられ
るような最先端の防衛体制を作ろうとしています。
大綱の想定する10年という期間は、最新鋭の装備品
を開発し調達するのに、多額の研究開発費を投じて
ギリギリの年数です。当然、限定された防衛予算の
中では多額の研究開発費を投じることは不可能です。
そのような状況の中で最新鋭の装備品を導入するた
めには、前述したようにFMSに頼らざるを得なくな
ります(開発期間の実例として、74TKから90TKまで
16年、90TKから10TKまで20年)。
31中期防であれば、イージスアショア(輸入とFMS
の混合)、早期警戒機(E-2D)、F-35などがFMSによ
る調達となりますが、30年度の見積価格でこれら合
計金額は約1兆円となります。FMS調達は、過去にも
契約時に単価が高騰することもあり、最終的には1兆
円以上と考えておくのが妥当です。年度の予算にす
ると2,000億円がFMS 調達となり、その経費は米国
に支払われます。
最新鋭の装備品を導入するという観点で大きなメリ
ットを有するFMS調達ですが、同時に、様々の問題
を有しています。まずは、FMS調達の契約上の問題と
して、納期が確定していないことがあります。
FMS調達は、納期が確定されておらず納入時期は目標
でしかありません。FMS調達により米国から兵器を導
入する国は100か国以上あり、導入時期が複数国、重
なる場合もあります。兵器の製造能力には限界がある
ため、納入先の優先順位が付けられ米国政府が決定
します。米国の戦略上の思惑も絡み、紛争当事国や
調達金額が大きい国が優先となります。
日本の場合、米国との同盟関係という強みもありま
すが、紛争の危機が迫っているという環境ではない
ため、特に調達数量が少ない場合は優先順位が落と
され、5年以上も納入されないこともあります。当
然、米国に対して日本の安全保障上の問題を訴え毎
年交渉しますが、それでも納入が遅延します(弾薬、
ミサイル関係が多い)。
最近のオスプレイやF-35の場合、まとまった数量で
の調達となることから本機の納入時期の優先順位は
高くなりますが、それ以外の定期整備に関連する契
約や付随する弾薬(ミサイル)等の契約についての
履行は大幅に遅れる可能性もあります。
また、FMS調達で導入した装備品の維持管理もFMSで
の契約となります。簡単な部品交換でも部品の購入
はFMS調達となり、部品の納入時期も確定されません。
必要な部品を事前に大量に購入して保管し、これを
修理に使うのであれば納期の問題は最小限に抑えら
れます。大量購入により日本の優先順位も上がりま
す。
しかしながら、日本の防衛予算は必要部品を事前に
大量購入するほど潤沢ではありません。少量の部品
しか購入できないため、日本の優先順位が下がり部
品の納期が遅れ、故障したら長期間修復できないと
いう状態が生起します。大規模な整備であれば、米
国のメーカーに輸送しなければならず、さらに時間
を要します。日本に整備基盤を作れば整備期間は短
縮しますが、基盤を作るためのコストが整備費用に
上乗せされます。
また、陸・海・空自衛隊の装備品は古いものが多い
ため、修理費が毎年膨れ上がっており、定期整備も
先送りの傾向があります。整備の先送りによってFM
S契約の金額が減ることで、さらに米国の優先順位が
下がるという悪循環が生じる可能性が高いといえま
す。整備の先送りとFMS契約履行の遅れで装備品の可
動率は一気に低下し、せっかく最新の装備品がある
のにほとんど動かないという最悪の状況も想定され
ます。
(つづく)
(いちかわ・ふみかず)
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【著者紹介】
市川文一(いちかわ・ふみかず)
1961年生まれ。長野県出身。防衛大学校27期生。
1983年、陸上自衛隊に入隊。
2002年に1等陸佐に昇任後、第13後方支援隊長、統合
幕僚監部人事室長、装備施設本部武器課長、陸上幕
僚監部武器・化学課長、東北方面後方支援隊長、愛
知地方協力本部長として勤務、
2015年陸将補に昇任後、陸上自衛隊武器学校長の勤
務を最後に2017年8月に退官。退官後の9月には
YouTube「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演。
2019年9月に新刊『不思議で面白い陸戦兵器』を刊
行。
2017/9 YouTube「桜林美佐の国防ニュース最前線」
に出演。
https://youtu.be/6hPY3vgpidw
2017/10/21「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出
演
https://youtu.be/jESYh1lIeSE
2018/2/10「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/D_md0ZSJNds
2018/6/9「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/eHnT9jvqQjk
2018/10/6「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/aEOhNJ3twN0
著書に、
『猫でもわかる防衛論』(大陽出版)
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