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エンリケ
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自衛隊警務官(22)
陸軍憲兵から自衛隊警務官に(22)
国際法上の非難はなきや
荒木 肇
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□はじめに
本来なら楽しいGW。みなさま自粛に協力されて、
静かな毎日を送られていたのではありませんか。わ
たしも1日に1時間ほどの散歩をくり返すばかりで
す。
嫌な言葉を聞きました。「自粛警察」です。他人
の至らないところを指摘して、強い口調で咎め、あ
るいは紙に脅迫まがいの文字を書き、それを貼り付
ける。そうした行為は、むしろ心弱い人のすること
ではないか、そう思います。
同じようなことですが、文句しか言わないテレビ
のコメンテーターたち、多くの視聴者の代弁をして
いるつもりでしょう。ああすればいい、こうすれば
良かった、中にはこう言っておいたのにとか、当事
者でなければ誰でも言える「後出しジャンケン」で
す。さらにはPCR検査に関しての実態を知らせな
いでの非難報道。がっかりします。
それにしても学年9月始まり。あっという間に終
息しました。都知事も、大阪府知事も県知事たちも
何も言わなくなりました。何かの黙契、密約があっ
たのでしょうか。
語弊がありますが、そんな制度いじりよりも関心
が高い話があります。公立学校現場を知るわたしと
しては、学校給食や学校使用教材の関係者の皆さん
の暮らしに思いがいたります。給食の現場は、さほ
ど大きくない業者さんが物資を納入し、派遣社員と
思われる調理員さん方が働いています。
小学校なら大きいところでは供給量は1日に600
食から1000食に及びます。働く方々も民間委託
なら正社員は1人、その下にパートの方々が5人・・・。
また、1つの単価が200円、せいぜい300円と
いった教材を納入されている会社もあります。利潤
の幅は小さいのに、営業の方は電話一本で駆けつけ
てくれるのです。
こうした方々への支援も忘れないでと望みます。
▼「今夜中に沈めてよいか」
1904(明治37)年2月7日のことである。夜明け
の前に山本海相は一通の電文に驚かされた。仁川に
碇泊中の巡洋艦千代田艦長からの至急電である。発
信は午前0時20発だった。
「我、露艦に先んじて戦闘行動を為さざれば危険な
り。今夜中に轟沈せんことを試み宜しきや」
千代田は「3等巡洋艦」に分類された14センチ
アームストロング速射砲10門を備えた1891
(明治24)年に就役した英国製である。喫水線周
辺に装甲帯があったので、装甲巡洋艦と誤解される
こともあるが、むしろ快速(19ノット)の軽快な
巡洋艦だった。
千代田はすでに前年の12月18日以来、仁川に
碇泊中である。同じ港内にはロシア巡洋艦「ワリヤ
ーグ」、砲艦「コレーツ」、ロシア商船の「スンガ
リー」と英国巡洋艦「タルボット」、フランス巡洋
艦「パスカル」、イタリア巡洋艦「エルバ」、アメ
リカ砲艦「ウィックスバーグ」と韓国砲艦「揚武」
がそれぞれに錨をおろしていた。まさに列国の関心
の的でもあった。
砲艦コレーツは1月末以来、千代田の東300メ
ートルに位置を占め、ワリヤーグは南西にいた。真
横と斜め左に位置されては、雷撃と砲撃を受けるお
それが十分にある。
村上艦長は警戒態勢をとった。2月3日には千代
田は南に動き、ワリヤーグとの間に英国巡洋艦タル
ボットを置くようにした。
しかし、事態は切迫しつつある。「先制攻撃」を
許してほしいという村上艦長に返電がもたらされた
のは午前1時である。発信者は山本海相自身だった。
「仁川港内にありては、各国軍艦碇泊しあるを以て、
露国軍艦に向ひ我より敵対行為をなすは国際上穏か
(おだやか)ならざるに付、之を為すべからず」
(原文の表記を改めた)
つまり、列国注視のまとにあるから、決してこち
らから撃つなということである。
▼ロシア艦長は気付いた
巡洋艦ワリヤーグ艦長は知っていた。7日に英・
仏・伊の艦長たちから「日露が国交を断絶したらし
い」との知らせを受けていたのである。すぐに京城
にいたロシア駐韓公使に事実関係を教えてほしいと
電報を打った。公使の返事は、私人による伝聞にし
か過ぎないと答えている。
艦長は続いて旅順の極東総督のもとの海軍参謀長
ウィトゲフト少将に国交断絶のうわさがあることを
告げて、千代田が出港準備をしていることも知らせ
た。しかし、返電は来なかった。そこで艦長は上陸
し、汽車に乗り京城に向かった。公使に面談するつ
もりだった。
公使に会うと、「この1週間、本国からも旅順か
らも電報が一通も届かない」という。おそらくそれ
は日本人が故意に電報を届けていないのだと艦長は
判断した。砲艦コレーツを旅順に派遣することを決
心した。ただちに帰艦すると、砲艦艦長に翌朝旅順
に向かうことを命じた。
▼旅順の2月7日
日本人居留民の引き揚げが明日には始まる。旅順
には多くの日本人商人が店をもっていた。アレクセ
ーエフ総督はすでにラムスドルフ外相からの電報で、
国交断絶の事実を知っていたのである。しかもきわ
めて楽観的な判断のもとであった。外相は依然とし
て話し合いが続くと希望的観測を行ない、総督もま
た軍事的に圧倒的に優越するという自信のもとに戦
争が起きるなどと少しも考えていなかった。
むしろ偶発的な戦闘が起き、それが拡大すること
を恐れた。総督は太平洋艦隊司令長官スタルク中将
にも、「韓国沿岸に我が艦隊を派遣するな」「大警
戒をするのは不要」と指示した。
スタルク中将は、戦艦の舷側に張ってあった「防
雷網」を外させて、これまで実行してきた艦船部隊
の「午後8時以降の外出禁止」も解除した。こうし
たロシア側の配慮に対して、日本聯合艦隊は粛々と、
黙々と接近を続けていた。
午前5時45分、外務省は在ロシア栗野公使から、
前日の午後4時(ロシア首都ペテルブルク時間)に
通告文をロシア外相に渡し、10日には当地を退去
するという電報を受けた。山本海相は通報を受ける
とすぐに小村外相に電話し、これ以後、いつ戦端を
開いても国際法上で非難を受けることはないかと質
問した。
外相は次のように答えた。ロシア側には「最良と
思惟する独立の行動」を取ると通告してある。これ
は「戦争を含むすべての行動」を意味する。これが
国際的諒解事項である、だから何の問題もないと。
ただし、「ロシア側の先制攻撃もまた可能であるこ
と」を付け加えることも忘れなかった。
次回は仁川での記念すべき戦闘開始を調べよう。
(以下次号)
(あらき・はじめ)
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●著者略歴
荒木 肇(あらき・はじめ)
1951年東京生まれ。横浜国立大学教育学部卒業、同
大学院修士課程修了。専攻は日本近代教育史。日露
戦後の社会と教育改革、大正期の学校教育と陸海軍
教育、主に陸軍と学校、社会との関係の研究を行な
う。
横浜市の小学校で勤務するかたわら、横浜市情報処
理教育センター研究員、同小学校理科研究会役員、
同研修センター委嘱役員等を歴任。1993年退職。
生涯学習研究センター常任理事、聖ヶ丘教育福祉専
門学校講師(教育原理)などをつとめる。1999年4月
から川崎市立学校に勤務。2000年から横浜市主任児
童委員にも委嘱される。2001年には陸上幕僚長感謝
状を受ける。
年間を通して、自衛隊部隊、機関、学校などで講演、
講話を行なっている。
著書に『教育改革Q&A(共著)』(パテント社)、
『静かに語れ歴史教育』『日本人はどのようにして
軍隊をつくったのか―安全保障と技術の近代史』
(出窓社)、『現代(いま)がわかる-学習版現代
用語の基礎知識(共著)』(自由国民社)、『自衛
隊という学校』『続自衛隊という学校』『子どもに
嫌われる先生』『指揮官は語る』『自衛隊就職ガイ
ド』『学校で教えない自衛隊』『学校で教えない日
本陸軍と自衛隊』『あなたの習った日本史はもう古
い!―昭和と平成の教科書読み比べ』『東日本大震
災と自衛隊―自衛隊は、なぜ頑張れたか?』『脚気
と軍隊─陸海軍医団の対立』『日本軍はこんな兵器
で戦った─国産小火器の開発と用兵思想』(並木書
房)がある。
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