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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応
予備自衛官でもあります。
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こんにちは、エンリケです。
市川さんの最新刊
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は、陸戦兵器や装備に興味ある人にとっては、
知的体力を養う上で欠かせない
「必須サプリメント」のような存在でしょう。
得難い本です。
●月刊『軍事研究』(2020年3月号)で、
「国産製品が割高・低性能の誤解を解く!
『日本が弾薬を国産する理由』」という市川さんの
記事が掲載されました。不良弾や欠品が許されない
国内事情、継戦能力の確保だけではない弾薬を国産
する理由が解説されています。
ご一読をおススメします。
『軍事研究』
2020年3月号
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「防衛予算から読み解く日本の防衛力」第二部の
十三回目です。
さて今回からこの連載を目にする方も
いらっしゃるようなので、少しご案内を。
この連載は、誰もが目にして誰もが知ってる言葉なのに
誰もがその中身を知らない、にもかかわらず誰もがここ
を核にわが防衛を考えざるを得ない
「防衛予算」
という名のブラックボックスを、
わが国史上はじめて取り上げ、丁寧に腑分けし詳細
に解説し、関係者以外の日本国民すべての啓蒙を図
るため毎週配信されています。
すでに33週(8か月以上)継続しています。
ほぼすべての日本国民が初めて目にする内容で、
疑問点は著者に直接質問できます。
とはいえ、初めて目にする内容なので
取り付くしまも、よりどころも、とっかかりもない
でしょうし、理解もなかなか深まらないかもしれません。
この点を
「ユニークだから面白い、モノにしよう」
ととるか
「どうせ自分に関わりないからいいや」
と捉えるかはあなたの自由です。
では今日の記事、
さっそくどうぞ
エンリケ
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防衛予算から読み解く日本の防衛力(34)
第2部 危機的状況にある日本の安全保障体制(13)
拡大する一方の「大綱」と「中期防」の矛盾
市川文一(元武器学校長・陸将補)
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□はじめに
前回に引き続き、防衛費増額を国民に納得させる
ため、行動経済学の別の理論を使います。ある商品
を販売するときに、「特別価格1,000円」で販売す
るよりも「定価2,000円を半額セールで特別価格
1,000円」で販売するほうが、売り上げが増えると
いうアンカリング効果を使います。
アンカリングとは船の錨を下すことで、最初に印
象的な数字や情報が与えられると、そのあとも最初
の数字や情報が基準となって判断に影響を及ぼすと
いうものです。ミーティングの時間を最初に40分の
予定として実際が50分であれば長いミーティングと
感じますが、最初に60分の予定として実際が50分で
あれば短いと感じるのも同じ心理効果です。
防衛費でも、「現在の日本の安全保障体制は非常
に厳しい状況にあります。日本の安全を確保するた
めには防衛費の40%増額が必要です。しかし、日本
の財政状況に鑑み、半分の20%増額に抑えて日本の
安全を確保します」とすれば、単に20%増額を訴え
るよりも、理解促進の効果は高まります。(実際は
40%以上の増額が必要でも財政上20%の増額しか認
められない場合として)
さらに、「日本の防衛費はNATOを基準とするとGDP
の1.3%が必要となります。現在の防衛費を40%増
額することで先進国の標準となります」を加えると
効果はさらに高まるでしょう。40%増額という数字
を強く印象付けることで、20%増額はやむを得ない
数字となります。
間違った情報を発信することは、同然、問題があ
りますが、正しい情報を上手く組み合わせることで
国民が納得しやすくするためのテクニックは、大い
に駆使すべきです。
▼25大綱と26中期防、30大綱と31中期防へと矛盾の
拡大(その3)
26中期防のVI所要経費の1項で示された経費は、
「この計画の実施に必要な防衛力整備の水準に係る
金額」とあるように、大綱で定められた防衛力の水
準を達成するための金額です。ところが、大綱で定
められた防衛力の水準が「所要防衛力」の水準に近
くなればなるほど1項の経費は膨らみ、現状の予算
を大幅に超えることとなります。
そこで、苦肉の策として考え出されたのが、合理化・
効率化による経費の削減であり、中期防における2
項目の経費額です。しかも、大綱で所要防衛力の理
想を追求すればするほど、新たに導入しなければな
らない最新鋭の装備品が増えることになり必要経費
が膨らみ、中期防の1項と2項の二つの経費額の差
は拡大していきます。その結果が23、26、31中期防
の順に拡大している1,000億円、7,000億円、
1兆9,700億円という二つの経費の差です。
また、矛盾の拡大は「補正予算頼みの防衛予算」、
「FMS調達の著しい増加」という形でも現れていま
す。「補正予算頼みの防衛予算」に関しては第1部の
「防衛予算の構造」で詳しく説明しましたが、毎年
編成される補正予算の「自衛隊の安定的な運用態勢
の確保」「災害派遣活動で使用した装備品等の損耗
更新等」の経費がなければ、必要な防衛力を整備で
きないのが実体です。
大綱水準を達成するために必要とされる経費と実際
に中期防や年度で編成される予算の差を埋めるのが、
防衛費とは別に編成される補正予算です。防衛予算
が補正予算頼みになっているのも、防衛予算編成の
基準を例年並みとしているからであり、この考え方
こそ「基盤的防衛力構想」なのです。
FMS調達については、24年度契約から急増し、28年度
契約で約4,900億円と10年前の5.5倍となっており、
30中期防では、この傾向がさらに強くなっています。
26中期防の代表的FMS調達品は、F35、オスプレイ、
水陸両用車ですが、30中期防では、F35の調達数量が
28機から45機へと増加し、グローバルホーク、イー
ジスアショアが追加されています。
防衛予算が少ないと、装備品の開発や試験に充てる
経費が捻出できません。ところが、海外から装備品
を導入すると、完成品を買うことで開発や試験に充
てる経費を節約できます。また、海外で大量生産し
ている兵器であれば、スケールメリットで単価が安
く抑えられます。デメリットとしては、最新鋭の兵
器については秘密に関する事項がネックとなり、輸
入することができないことです。また、一般的な輸
入品については、最低限の試験は必要となります。
これらのデメリットを解消するのがFMSです。FMSの
場合、米国と日本の政府間の契約となるため、秘密
が含まれる最新鋭の兵器も導入の対象となります。
また、米国政府が兵器の性能を保証するため、試験
についても必ずしも必要となりません。日本の各種
法規の適用により改造が必要な場合は試験を行ない
ます。最近では、オスプレイやF35がFMSで、米国で
も最新の兵器です。
最新の兵器を安価に導入する(開発経費を含めてト
ータルとして安価)という観点では、FMSは非常に
優れたシステムです。大綱の「所要防衛力」の理念
を追求し、「基盤的防衛力構想」の枠組みで防衛予
算を限定するならば、FMSでの装備品導入が増加す
るのも当然のことです。ただし、輸入も含め海外か
らの装備品の導入は多くの問題があり、FMSの拡大
は日本の安全保障に大きな問題を与えています。こ
れらについては、のちほど説明します。
大綱も中期防も、本文においては、日本の安全保障
環境に適応した防衛の態勢と防衛力を述べ、それを
着実に整備することを謳っており、それぞれが整合
した形となっています。しかし、経費という視点か
ら捉えると、大綱においては「所要防衛力」の理念、
中期防においては「基盤的防衛力構想」に基づく経
費計画と、完全に矛盾した捻れた関係にあるのはこ
こまで説明したとおりです。
しかも、大綱は「所要防衛力」の理念をより強く打
ち出す方向で進化しているため、大綱と中期防の矛
盾は拡大する一方です。この矛盾した捻れた関係が、
防衛予算の様々な問題の大きな要因となっているの
は間違いありません。次回からは、防衛予算の構造
で説明した様々な問題も踏まえ、大綱と中期防の矛
盾が日本の防衛力に及ぼしている影響について解説
します。
(つづく)
(いちかわ・ふみかず)
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【著者紹介】
市川文一(いちかわ・ふみかず)
1961年生まれ。長野県出身。防衛大学校27期生。
1983年、陸上自衛隊に入隊。
2002年に1等陸佐に昇任後、第13後方支援隊長、統合
幕僚監部人事室長、装備施設本部武器課長、陸上幕
僚監部武器・化学課長、東北方面後方支援隊長、愛
知地方協力本部長として勤務、
2015年陸将補に昇任後、陸上自衛隊武器学校長の勤
務を最後に2017年8月に退官。退官後の9月には
YouTube「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演。
2019年9月に新刊『不思議で面白い陸戦兵器』を刊
行。
2017/9 YouTube「桜林美佐の国防ニュース最前線」
に出演。
https://youtu.be/6hPY3vgpidw
2017/10/21「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出
演
https://youtu.be/jESYh1lIeSE
2018/2/10「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/D_md0ZSJNds
2018/6/9「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/eHnT9jvqQjk
2018/10/6「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/aEOhNJ3twN0
著書に、
『猫でもわかる防衛論』(大陽出版)
https://amzn.to/2qBGuNJ
「不思議で面白い陸戦兵器」(並木書房)
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