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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応
予備自衛官でもあります。
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またまた、堂下さんの連載にあった
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防衛予算から読み解く日本の防衛力(33)
第2部 危機的状況にある日本の安全保障体制(12)
防衛費の経費削減は不可能にもかかわらず、閣議決
定される不思議
市川文一(元武器学校長・陸将補)
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□はじめに
前々回、行動経済学を紹介しましたが、防衛予算
を増額するための行動経済学の適用を考えてみます。
「人は、利益を得る可能性のある場面では『利益が
得られない』ことを、損失の可能性がある場面では
『損失すること』を回避しようとする傾向を持つ」
というプロスペクト理論を使います。
「(1)50%の確率で100万円が手に入る。
(2)100%の確率で50万円が手に入る」という選択
肢があった場合、多くの人が(2)を選択しますが、
100万円の借金を返済する選択肢として「(1)50%
の確率で100万円を返済できる。(2)100%の確率で
50万円を返済できる」の選択肢の場合は、多くの人
が(1)を選択するという統計結果が得られていま
す。
前者は利益が得られない可能性を回避し、後者で
は借金があるという損失についてリスクを負ってで
も回避したいという思いが働くということです。ま
ったく同じ選択肢でも、利益を得るのか、損失を減
らすのかで結果が異なるというのは非常に面白い事
実です。これは、人が利益の増加よりは損失の増加
を重く受け取るという心理構造に基づきます。
これを防衛予算の増額に適用します。政府が、
「防衛費を20%増額して日本の安全を盤石なもの
とします。このため、社会保障費を3%削減します
(防衛費の20%は社会保障費の約3%)」という
政策を打ち出したとします。前々回のフレーミング
効果を考えると、マスコミや野党は「防衛費を1兆
円増やし、社会保障費を1兆円削減する政策」と批
判するでしょう。この政策は、ほぼ確実に国民には
受け入れられないと思われます。国民の安全保障に
対する関心の低さに加え、損失を回避しようとする
人間の心理が働くからです。
これに対して、「現在の日本の安全保障体制は危機
的状況にあります。防衛費を20%増額しなければ、
日本の安全保障に重大な影響を及ぼす可能性があり
ます」という政策ならば、国民にも受け入れられそ
うです。当然、社会保障費は削減しません。安全保
障上の危機という損失を回避するという心理が働き
ます。フレーミング効果を考え、1兆円ではなく、
20%増額という印象を強く与えることも非常に重
要です。
▼25大綱と26中期防、30大綱と31中期防へと矛盾の
拡大(その2)
22中期防で初めて使用された二つの所要経費は、
予算の合理化・効率化をイメージさせました。26中
期防では二つの所要経費を使用して合理化・効率化
を謳うことより防衛費を削減し、31中期防ではさら
に削減幅を拡大しました。作成年度を基準とした防
衛力の規模と実際に予算編成される経費の差は、
23、26、31中期防の順に1000億円、7000億円、1兆
9700億円と大幅に拡大しています。
防衛費は、人件費が約40%程度、活動経費といわれ
る一般物件費が約20%程度を占めます。人件費は、
削減するというよりもベースアップでの増加が見積
もられ、活動経費は、基地、駐屯地の光熱水料や航
空機、船舶、車両の燃料等自衛隊が活動するのに不
可欠な経費です。しかも、一般物件費には在日米軍
駐留経費、基地周辺の騒音等への対策経費を含む基
地対策等経費が約40%含まれます。
つまり、防衛予算の60%は、削減がほとんど見込め
ない経費なのです。しかも、最近はトランプ大統領
が駐留米軍の経費の負担増を各国に要求しています。
日本の在日米軍の駐留経費の負担は世界的にも多い
とはいえ、さらなる負担を要求されることにより一
般物件費が膨れ上がる可能性も否定できません。そ
の場合は、削減困難な予算の割合がさらに増加しま
す。
防衛予算の60%が削減困難であり、それ以外の削減
対象となるのが残り40%の、航空機、艦艇、火器、
車両、弾薬等の購入、建物の建造、装備品や建物の
維持管理や装備品の研究開発等の予算です。31中期
防に当てはめると、27 兆4700 億円のうちの40%、
約11兆円が削減対象です。31中期防に示された削減
額は、1兆9700億円であり、20%近くの経費を削減し
なければならないということになります。
削減対象となる予算を科目ごと均等に20%削減する
と仮定しましょう。装備品を取得するための予算、
装備品の定期点検や定期整備、故障を修理するため
の予算、建物を建て直したり増築したりするための
予算、新しい装備品を開発するための予算をそれぞ
れ20%削減することになります。
31中期防の別表には陸・海・空自衛隊が中期防の5
年間に取得する各種装備品の数量が掲載されていま
す。数量は定められているため、単価を20%削減し
なければなりません。また、別表には戦闘服や小銃
等の個人装備品、兵站、後方支援等に不可欠な装輪
車両や施設機材、衛生器材、通信機材等は記載され
ていませんから取得数量が大幅に削減される可能性
があります。
装備品の単価低減については、31中期防のV所要経費
の2項で「徹底したコスト管理・抑制や長期契約を含
む装備品の効率的な取得などの装備調達の最適化」
と述べられているように、常に防衛装備品を製造す
る企業に求められていますが、20%の削減は極めて
困難であり、不可能ともいえる数字です。
国産装備品については、材料の取得から部品製造や
組み立て、製品の品質管理に必要な経費や工数、人
事・総務、販売等に関する経費等が装備庁により厳
密に管理されており、そのトータルである装備品単
価も装備庁の管理下にあるといえます。利益につい
ても、国内企業の平均的な利益率が適用されており、
世の中で誤解されている防衛産業は儲かるといった
事実は完全な誤りです。
しかも、ここ十数年の間、「装備調達の最適化」の
方針の下、装備品の製造に関する全ての工程でコス
ト削減の指導が装備庁(前装備施設本部、装備本部)
により徹底して行なわれてきました。この状態から
の20%削減は、装備品の製造による赤字をメーカー
に強要することになります。
装備庁により厳密に管理されている国産装備品と違
い、近年増加しているFMS(対外有償軍事援助)に関
しては、米国政府との契約であるためコスト管理は
できません。FMSについては、秘密を含む最新の兵器
を調達できる、教育・訓練も含めて契約できる等の
利点もありますが、兵器の価格については米国政府
主導の外交交渉の分野となり日本の希望価格に削減
することは、非常に困難です。
しかも、防衛予算の構造を解説する中で説明したと
おり、装備品の定期点検や定期整備、故障を修理す
るための予算は年々圧迫されており、装備品を100%
稼動できない状態になっています。削減の余地は全
くありません。また、自衛隊には未だ新耐震基準を
満たしてない建物があり、建物を建造する予算も不
足しています。つまり、削減対象になると考えられ
る約11兆円の経費でさえもほとんど削減の余地がな
く、これを削減すれば日本の安全保障体制の基盤が
崩れていきます。
このように、中期防の1兆9700億円の経費の削減と
は、ほとんど達成が不可能な常識外の数字なのです
が、それが閣議決定され政府計画となっているのは
本当に不思議な事実です。
(つづく)
(いちかわ・ふみかず)
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【著者紹介】
市川文一(いちかわ・ふみかず)
1961年生まれ。長野県出身。防衛大学校27期生。
1983年、陸上自衛隊に入隊。
2002年に1等陸佐に昇任後、第13後方支援隊長、統合
幕僚監部人事室長、装備施設本部武器課長、陸上幕
僚監部武器・化学課長、東北方面後方支援隊長、愛
知地方協力本部長として勤務、
2015年陸将補に昇任後、陸上自衛隊武器学校長の勤
務を最後に2017年8月に退官。退官後の9月には
YouTube「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演。
2019年9月に新刊『不思議で面白い陸戦兵器』を刊
行。
2017/9 YouTube「桜林美佐の国防ニュース最前線」
に出演。
https://youtu.be/6hPY3vgpidw
2017/10/21「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出
演
https://youtu.be/jESYh1lIeSE
2018/2/10「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/D_md0ZSJNds
2018/6/9「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/eHnT9jvqQjk
2018/10/6「桜林美佐の国防ニュース最前線」に出演
https://youtu.be/aEOhNJ3twN0
著書に、
『猫でもわかる防衛論』(大陽出版)
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