配信日時 2020/04/17 13:34

【特別寄稿】インテリジェンスから見えてくる 『新型コロナウイルスとインフォデミック』 ─フェイクの中にリアルを混ぜる:米・中・露の情報戦─ 山中祥三(インテリジェンス研究家)

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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応予備自衛官
でもあります。お仕事の依頼など、問い合わせは以下よりお気
軽にどうぞ
 
E-mail hirafuji@mbr.nifty.com
WEB http://wos.cool.coocan.jp
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こんにちは、エンリケです。


誰かが流す恣意に基づく情報に操られるだけのサル
になるか?
インフォデミックに負けない、物事の本質を見抜け
る知恵ある人間であり続けるか?

いま、重大な分岐点にあなたは置かれています。

でもあなたは、実にめぐまれていると思います。


インテリジェンス・情報戦のいま、を
最高レベルの分析で実感できる
「唯一で稀有で超贅沢な機会」に
あなたをお連れしましょう。

久しぶりとなる、
インテリジェンス研究家・山中さんの登場です。

今回のテーマは、
いま知っておくべき
「新型コロナ」をめぐる情報戦です。

「インフォデミック」に負けない
インテリジェンス脳をすぐ身につけるには、
この記事に接することが一番です。


さっそくどうぞ。


エンリケ


山中さんへの感想や疑問・質問やご意見は、
こちらから⇒ https://okigunnji.com/url/7/

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特別寄稿

インテリジェンスから見えてくる
『新型コロナウイルスとインフォデミック』

─フェイクの中にリアルを混ぜる:米・中・露の情報戦─

山中祥三(インテリジェンス研究家)

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□はじめに

皆様ご無沙汰しております。

インテリジェンスを考えるうえで、今回の新型コロ
ナウイルス問題は非常に興味深いテーマです。長文
になりますが、『新型コロナウイルスとインフォデ
ミック』と題して配信させていただきます。

新型コロナウイルスのパンデミック化は、とどまる
所を知りませんが、世界保健機関(WHO)が2月2日、
新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大ととも
に世界に警戒を呼びかけたのが「インフォデミック
(infodemic)」です。

これは、「情報(Information)」と、感染症の広が
りを意味する「エピデミック(Epidemic)」を組み
合わせた造語です。2003年にSARS(重症急
性呼吸器症候群)が流行した際に一部の専門家の間
で使われ始めたようです。

その意味は、正しい情報と不確かな情報が混じり合
い、人々の不安や恐怖をあおるかたちで増幅・拡散
され、信頼すべき情報が見つけにくくなる、ある種
の混乱状態を指します。SNSの普及で世界の「情
報拡散力」は、SARS流行時の68倍という試算
もあります。

新型コロナウイルスのパンデミック化にともない、
同ウイルスに関し、数多くのリアル(トゥルース)
ニュースだけでなくフェイクニュースが流され続け
ています。

たとえば新型コロナウイルスは熱に弱く、摂氏27
度で死滅するといった、誰が考えてもおかしいと思
うようなものから、実は米軍人が武漢やイランで新
型コロナウイルスを拡散させたとの陰謀説まで幅広
く流れています。

このようにネット上で玉石混交の膨大な情報が流れ
る時代では、いったいどれがリアルでどれがフェイ
クなのかすぐには分かりません。そしてそれらフェ
イクニュースにより、人が踊らされることが大問題
です。

トイレットペーパーがなくなるという噂については、
トイレットペーパーやティッシュペーパーのメーカ
ーで作る日本家庭紙工業会の事務局が「原材料は中
国に依存しておらず十分な供給量がある」(2月2
8日)と断言しても、一時期は買い占めに走り回る
人がいて、市民生活に影響が出ました。イランでは、
新型コロナウイルスの予防や治療と称してアルコー
ル(メタノール)を飲んだことが原因で、多くの死
者すら出ています。

このような、分かりやすいフェイクでも影響がある
ので、インフォデミックの状況で、国家レベルで本
格的にプロパガンダが流されたら、攻撃の対象とさ
れたところは多大な影響を受けることになります。
米国、中国、ロシアなどは、この状況下で情報戦を
繰り広げています。

米国務省でプロパガンダ・偽情報対策を担うグロー
バル・エンゲージメント・センター(GEC)の特
使兼コーディネーター、リー・ガブリエル氏は、3
月5日に行なわれた米国上院外交委員会の公聴会で
新型コロナウイルスをめぐるプロパガンダや偽情報
について次のように述べています。

「ロシアは、虚偽情報に関するエコシステム(組織
等の連携・協調)を総動員して新型コロナウイルス
に関する嘘の物語を宣伝している。
また、中国については、武漢でアウトブレイクした
新型コロナウイルスが、世界的に拡大したことに対
する批判をいかに国内外で抑えるかに努めている」

3月1日付けのワシントン・ポストによると、GE
Cは、1月20日から2月10日までの間の米国以
外の国を対象にソーシャルメディアの投稿を分析し
ました。合計2900万件の投稿を調査した結果、
およそ約200万件(7%)がコロナウイルスに関
する陰謀説をまき散らし、それらがより広範なソー
シャルメディアでの会話に影響を与える可能性があ
る、としています。不法で有害な投稿には、コロナ
ウイルスがビル&メリンダ・ゲイツ財団によって作
成されたとか、ウイルスが生物兵器であったことを
示唆するような内容があったとしています。

情報を収集して分析プロダクトを作成するインテリ
ジェンス・サイクルにおいては、情報を収集したら
それを処理することが必要です。情報の処理とは、
情報源の信頼性と情報そのものの正確性を評価する
ことです。コロナウイルスに関し、元の情報はどこ
から発信されているか、その中身は正確かどうかを
評価することです。

しかし、未知の新型コロナウイルスについて一般人
には、情報は限られています。したがって、専門家
といわれる人やコメンテーターの意見に頼ることに
なるのですが、感染症の専門医でさえ初めてのウイ
ルスの振る舞いについては分からないことが多いと
思われます。

つまり、本当に事実を解明してコメントを述べてい
る人はおらず、質問されるので可能性や推測を述べ
ていることが多いのです。正確性については、評価
できないということに皆が気づくべきです。

それらの中に、混在する巧妙なフェイクニュースが、
国家レベルの情報戦(宣伝戦)の一環としても、大
量かつ意図的に流されているのですから、真偽を判
定するのはなおさら困難です。

そして、このような状況の中で、米、中、ロなどは、
自国の国益のために情報戦を繰り広げています。そ
れは、どのようなものでしょうか。以下、その一端
を覗いて見ましょう。

▼新型コロナウイルスをめぐる米中の中傷合戦

米中においては、新型コロナウイルスをめぐって記
者会見や中傷合戦が繰り広げられている。3月12
日、中国外務省の趙立堅報道官は、Twitter上で「米
陸軍が武漢にコロナウイルスを持ち込んだ可能性が
ある」と投稿し、米側にデータを公開して説明責任
を果たすよう求めた。これに対し、13日、米国務
省は、中国の崔天凱駐米大使を呼び抗議した。

17日には、トランプ米大統領が新型コロナウイル
スを「Chinese Virus(中国ウイルス)とツイートし
た。同日の記者会見では「中国ウイルス」という言
葉を使ったことについて、ウイルスの由来を指摘し
たもので「正しい」と自己弁護した。これに対し、
中国外交部の耿爽報道官は定例記者会見で、「米国
の一部の政治家が新型コロナウイルスを中国と結び
つけていることは、中国に汚名を着せるための行為
だ。中国側はこれに非常に憤慨し、断固反対する」
と発言した。

19日、トランプ大統領は新型コロナウイルスのこ
とを再び「中国ウイルス」と表現した。その際、演
説の原稿にある「コロナ」ウイルスの文字が消され、
手書きで「中国(Chinese)」ウイルスと書かれて
いる写真がカメラマンに撮られ公開された。

20日の会見では「中国ウイルス」という表現こそ
使わなかったが、「不幸にも感染状況は制御不能に
なってしまった。中国から来たので制御できなかっ
た」と発言した。一方、新華社の公式Twitterは、
「Trumpandemic」(トランプ疫病)という表現を使
ったツイートを配信した。

その後、トランプ大統領は、米国内の中国系米国人
の有力者や団体から「人種差別的発言だ。それによ
り米国内のアジア系がハラスメントを受けている」
という抗議を受けるや、中国ウイルスという言葉自
体は使わなくなったようだが、中国への批判、さら
にはWHOが中国寄りだとの発言は繰り返している。

このように、これら一連の米中による新型コロナウ
イルスの発生源をめぐっての対立は、一見米中が巷
のフェイクニュースをもとに中傷合戦を行なってい
るように見える。

しかし、これらの両者が主張する背景をよく吟味す
ると、決してフェイクだけとは言えないリアルが含
まれているため、素人だけでなく知識人たちへも影
響を与えるなど世論を操作する情報戦が繰り広げら
れている。

▼中国による情報戦:米国による新型コロナウイル
スの拡散疑惑

中国が主張する米軍による新型コロナウイルス拡散
説、当初は唐突感があったが、巧妙に事実と推測が
混在している。

米国では、2019年冬から猛威を振るっているイ
ンフルエンザによる感染者は、今年3月中旬までに
3400万人にのぼり、2万人近くが死亡した。3
月11日、米疾病対策センター(CDC)のロバー
ト・レッドフィールド所長は、インフルエンザと新
型コロナウイルスについて米下院の公聴会で、「イ
ンフルエンザウイルスによる死亡と診断された人の
うち、実はコロナウイルス感染が原因だったケース
があった」と証言している。

前述のように翌12日、趙報道官は、ここぞとばか
りに「米陸軍が武漢にウイルスを持ち込んだのでは」
と投稿し、CDC所長が、米下院で証言するビデオ
をこれ見よがしに貼りつけていた。

また、趙報道官の投稿には、米軍が感染症を持ち込
んだとする根拠が示されている訳ではないが、その
背景には、2019年10月に武漢市で開催された
「世界軍人オリンピック」に参加した米国の選手の伝
染病への感染事例も含まれているものと考えられる。
その話は中国内で十分に拡散されている。

「世界軍人オリンピック」は、1995年9月ロー
マで第1回大会が開かれてから4年ごとに開かれ、
武漢大会は第7回目。今回は109か国・地域から
9300人余りの軍人が参加し、中国からは406
人、米国からは369人が参加した。そのうちの5
人の米国人選手が伝染病に感染し、武漢の病院で隔
離治療を受けていた。その、米国人が罹患した伝染
病こそが新型コロナウイルスであり、米国人が持ち
込んだというロジックが示唆されている。

▼イラン、ロシアも米国への情報戦に参戦

米国に反発するイランやロシアは、中国に同調する
かのように米国に対する情報戦を仕掛けてフェイク
ニュースを拡散している。

たとえば、『コロナウイルスは実験室で製造された─
元CIAオフィサー』のタイトルで、「コロナウイ
ルスは突然変異によって自然に発生したのではなく、
おそらく生物兵器として実験室で製造された」「米
国は、中国の経済的・軍事的影響力を低下させるた
めにウイルスを開発し拡散させた」「その前例とし
て、イランにイスラエルと協力してスタックスネッ
トというコンピューターウイルスを使ったことがあ
る」などと述べている。この主張は、2020年3
月6日にイランのテヘランを本拠とするニュースウ
ェブサイト(Press TV)によって公開された。

メディア専門教育研究機関のポインター・インステ
ィチュートによる事実検証では、イランのニュース
ウェブサイトは、元CIAの軍事情報将校が書いた
3月5日付けの以下のようなロシア系メディア(R
T)の記事を選択的に引用していることが判明して
いる。

 その『誰がコロナウイルスを作ったか、アメリカ
かイスラエルかまたは中国自身か』の記事の概要は
以下の通りである。

「いくつかの報告書は、HIVに関連するウイルス
は自然には発生しない構成要素が存在することを示
している。もし、ウイルスが兵器化のために開発さ
れたり製造されていることが正しければ、武漢ウイ
ルス研究所からウイルスが漏れ出し、動物や人にう
つった可能性もあることを示唆している。

一方で、米国は安全保障や経済上の脅威として、中
国のグローバル的な競争力の高まりを絶えず懸念し
ており、中国の経済や軍事力を数段低下させようと
ウイルスを開発し解き放ったという推測も可能であ
る。トランプ政権がこのような無謀な行動をとると
は信じがたいが、実は前例がある。

2005~09年、米国とイスラエル政府は、スタ
ックスネットと呼ばれるコンピューターウイルを密
かに開発した。これは、イランの核開発プログラム
で使用されているコンピューターの制御およびオペ
レーティングシステムへ損害を与えることを意図し
たものだった。

また、イスラエルには次のような話がある。イスラ
エルのガラリア研究所が数週間以内にコロナウイル
スのワクチンを有し、90日以内に供給し使用でき
るようになると主張している。同研究所は、イスラ
エル科学技術省と農業省から資金提供を受け、鳥コ
ロナウイルスに関して4年間研究しているという。

米国がかつてメリーランド州フォート・デトリック
の大規模な生物化学兵器研究センターで、コロナウ
イルスの開発の作成に関与していた可能性を考えれ
ばイスラエルがその研究のパートナーだった可能性
が非常に高い。おそらくウイルス開発とその対処法
のワクチンの開発は、同時並行的に行なわれるため、
ウイルス開発を手伝っていれば、イスラエルの科学
者らがいかに早くワクチン作成に成功できたかを説
明できる。

また、中国以外の国において、米国とイスラエルの
敵であるイランにおいて、新型コロナウイルスの感
染者や死者が多い(筆者注:この時期は、米国にお
ける感染者は少なかった)。

結論として、いくつかのシナリオが考えられる。一
つ目は、新型コロナウイルスは自然発生的に発生し
たというもの。二つ目は、中国内の研究室または、
イスラエルか米国の研究室から漏れ出したもの。も
う一つは、イスラエルと(または)米国が敵とみな
す2か国に対しダメージを与えるため生物兵器を開
発したという推測も成り立つ」

といったものである。

しかし、この記事をよく見ると、一部は事実を使い
つつも結論に至る論理は飛躍し、多くが推測である。
たとえば米メリーランド州フォート・デトリックの
米陸軍研究機関「細菌・生物兵器研究所」は201
9年7月、汚染水漏れを起こし閉鎖されているとい
う事実はある。しかし、イスラエルの科学者が同研
究所で米国人とともに新型コロナウイルスを研究し
ていたかどうかは不明である。

また、スタックスネットについても、イスラエルと
米国が協力して開発したことは一般報道されている
が、トランプ政権が、中国の経済や軍事力を低下さ
せるために新型コロナウイルスをばら撒いたとの主
張には、根拠がない。さらに、人間に危害を及ぼす
ための生物兵器の開発と基本的には人間に危害を及
ぼすことを考えていないコンピューターウイルスの
開発・拡散が同じ文脈で述べられているのは相当論
理に飛躍がある。

▼米国による情報戦:中国による「生物兵器」漏え
い疑惑

一方で、中国の主張に対抗する欧米は、新型コロナ
ウイルスが中国による「生物兵器」であるとの情報
を政治家が取り上げ、それをメディアやネットが取
り上げ拡散している。さらに、中国政府が新型コロ
ナウイルス患者発生当初、その情報を隠蔽したこと
などが、その主張を補強する材料として使われてい
る。

英大衆紙「デイリーメール」は、新型コロナウイル
スによって武漢市の封鎖が始まった2020年1月
23日「武漢国家生物安全研究所」について取り上
げている。記事の中では、同研究所が2018年に
中国初のBSL-4(Biosafety Level 4 Laboratory)
施設として稼働する前に病原体の流出を懸念する声
が米科学者たちから上がったと指摘している。

BSLは、細菌・ウイルスなどの微生物・病原体な
どを取り扱う実験室・施設の格付けで段階が上がる
ごとに、より毒性の強い病原体などを取り扱える。
レベル4は、多数存在する病原体の中でも毒性や感
染性が最強のクラスが取り扱える施設である。

「デイリーメール」は大衆紙であり、一般的には資
料源として信頼性が低いものの、事実がちりばめら
れている。一つは、2003年に北京でSARSの
集団発生が起こった際には、北京の国立ウイルス学
研究所において、BSL-3の実験室のSARSコロ
ナウイルスを、一般の実験室に持ち出して実験に使
用したため感染したことが明らかになっている点で
ある。2004年7月1日、WHOの専門家の協力
のもと、中国衛生部はその集団発生の調査報告を発
表した。

その結論は、北京の国立ウイルス学研究所(IOV)
が感染源である可能性が最も高いというものであっ
た。

二つ目は、2017年2月の科学誌「ネイチャー」
で、北京の国立ウイルス学研究所の安全性に米専門
家たちが懸念を表明していたことである。しかし、
実際に新型コロナウイルスの感染と武漢の研究所を
結びつける証拠が明らかにされている訳ではない。

2020年1月26日付けの「ワシントン・タイム
ズ」は、イスラエルの軍事専門家のコメントとして、
新型コロナウイルスの感染源が武漢国家生物安全研
究所の可能性があり、同研究所が関わる生物兵器計
画とつながっている、などと報じている。

また、同日、米共和党のトム・コットン上院議員は
FOXニュースに出演し、新型コロナウイルスの武
漢国家生物安全研究所からの流出疑惑を主張した。
その施設は、WHOが新型コロナウイルスの感染源
としている武漢華南海鮮卸市場から約10キロ南東
にある。

 ただし、コットン議員も、感染源がこの研究所だ
という証拠を有している訳ではない。中国が、新型
コロナウイルスの発覚当初に、それを隠蔽していた
ことなどから、疑念を持っており、それを正してい
く必要があるとしているのである。

中国の情報開示についての不信感で象徴的なのが武
漢の眼科医、李文亮氏のケースである。李氏は原因
不明だった今回の新型コロナウイルスについて、
2019年12月30日の段階でネット上において
感染への注意喚起をしたが、警察の事情聴取を受け
ネット上での発言を禁止された。その、李氏は、自
らも感染し、2020年2月7日に死亡している。

このような政治家やマスコミの報道の一部が切り取
られるとともに、中国の情報隠蔽体質への懸念によ
り、中国が生物兵器を拡散しているとの陰謀論やデ
マがネット上で拡散している。

このように、米国も米国が新型コロナウイルスの発
生源との情報戦への対抗策として、中国が発生源で
あるとの情報を流しているのである。

2月19日、世界的に著名な27人の専門家は、新
型コロナウイルスの感染源について、英医学誌「ラ
ンセット」に新型コロナウイルスは野生生物由来だ
との声明を発表した。ゲノム解析結果をもとに「新
型コロナウイルスに人為的な変異は見られない」と
して、生物兵器説を完全否定している。

新たなウイルスのことであり、科学的検証が100%
の確率で断言できるとは言いがたいが、各国が新型
コロナウイルス用のワクチン開発に協力している現
状を見れば、もし人為的なものであれば、その痕跡
が発見され公表されている可能性が高いと筆者は考
える。

▼我々はどう対応すればいいのか?

以上のように、新型コロナウイルスに関するインフ
ォデミックの状況下で、米国は中国のみならずイラ
ンやロシアなどとも強烈な情報戦を繰り広げている
ことが分かる。

マサチューセッツ工科大学(MIT)が、2006
年から2017年にTwitterで拡散された情報データ
について調査したところ、真実よりも嘘の方が、よ
り早くより多く拡散することが分かったという。

今回の新型コロナウイルスをめぐっては、感染者の
多さから、短期間に、より膨大な偽情報が拡散して
いる。米国が、中国のみならず、イランやロシアが
仕掛ける情報戦に敗れ、仮に新型コロナウイルスの
発生源が米国だと世界で認識されるようになれば、
米国の国際的影響力は一気に低下する。

一方で、中国が本当に新型コロナウイルスの抑え込
みに成功し、その後マスクや人工呼吸器などを外国
に送り世界に貢献している印象を操作する情報戦に
勝てば、新型コロナウイルス後の国際秩序は大きく
変わることが予想される。

しかしながら、それは、新型コロナウイルスのワク
チンがいつ開発されるか、中国で再ブレイクするか
どうかにもかかっている。中国の武漢で収束したと
習近平国家主席がパフォーマンスしつつも、中国全
土では未だに毎日100人弱、感染者が増加してい
る。

たとえば、SARSは、2002年11月16日に
中国での症例に始まり、台湾の症例を最後に、約8
か月後の2003年7月5日にWHOによって終息
宣言が出された。32の地域と国にわたり8000
人を超える感染者が報告され、死者は約800人だ
った。

また、2013年から2015年にかけて西アフリ
カで大流行したエボラウイルス病は、約2万人が感
染して、その半分の1万人が死亡した。一旦終息し
たものの、中央アフリカのコンゴ民主共和国で20
18年8月に再ブレイクした。2019年7月、W
HOは緊急事態宣言を出したが、その後画期的な治
療薬の開発で状況が好転し、今年4月12日に終息
宣言の予定だった。しかし、10日に新たな感染者
が1人確認されたため、宣言は延期されることにな
った。

このようなフェイクニュースの蔓延に対してニュー
スの真偽を確認するサイトや試みもある。数的には
不十分であるものの、世界のフェイクニュースに対
応するため国際的なネットワークも発展してきてい
る。それらは、特定の記事のファクトチェックを行
ない、その理由やエビデンスなども示しているため、
「おかしなニュース」だと思えば、誰でも容易に活
用できる。

国際ファクトチェックネットワーク(IFCN)は米国
のポインター研究所に拠点があり、世界各国のファ
クトチェックメディア・組織が加盟している国際団
体である。ポリティファクト(PolitiFact)は、米
国のファクトチェック専門団体で、主に政治家の発
言を検証している。姉妹版サイト(PunditFact)で
はメディアに出演する評論家などの発言も検証して
いるほか、最近はFacebookの投稿などもチェックし
ている。「ワシントン・ポスト」紙は、2007年
からサイト内でファクトチェッカーという組織を運
営している。

わが国においても、2017年に発足し、ファクト
チェックの普及活動を行なうFIJ(ファクトチェ
ック・イニシアティブ)という非営利団体などがあ
る。

 とはいえ、これらのサイトの評価が正しいかと言
えば100%正しいとは言えない。フェイクニュー
スを検証するのに比べ、フェイクニュースを拡散さ
せるのは極めて簡単であるため、当然ながらすべて
を検証できる訳ではない。

また、わが国のトイレットペーパー買い占め騒動に
関して言えば、「トイレットペーパーの供給は心配
するな」という「正しい情報を広めたい」とする善
意の数多くの投稿が、かえってトイレットペーパー
不足を煽るという現象すら起きている。

 今回述べたように、フェイクニュースが国家レベ
ルの情報戦の一環として、より大量かつ意図的に流
されるようになると、真偽を判定するのは極めて一
層困難になってくる。

現在、世界がこのような状況下にあることを考えつ
つ、我々は個人レベル、国家レベルでインテリジェ
ンスリテラシーを高め、収集した情報を適切に評価
して今回のインフォデミックに立ち向かわなければ、
実際のウイルスよりも先にインフォデミックに侵さ
れてしまうことになる。

パンデミックからもインフォデミックからも、自ら
判断して自分の身は自分で守りたいものです。


(了)

(やまなか・しょうぞう)



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