配信日時 2020/04/17 08:00

【【海軍式】戦う司令部の作り方(最終回)】「戦うリーダーに求められるもの」 堂下哲郎(元海将)

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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応
予備自衛官でもあります。
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どうぞ
 
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WEB http://wos.cool.coocan.jp
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おはようございます。エンリケです。

堂下さんの最新刊、

『海軍式 戦う司令部の作り方─リーダー・チーム・意思決定』
堂下哲郎(著)
並木書房
2020/4/20発行
四六判240ページ
定価1500円+税
http://okigunnji.com/url/72/

には、有事のリーダーシップ、意思決定の在りようだけ
でなく、長期戦となる「感染症との戦い」で使える意思
決定手法「JOPP」も紹介されています。

いま、有事のまっただなかにいるリーダーたちのこと
ば・行動・ふるまいを、この本を手元に置いてリアル
タイムでチェックできます。こんな機会は二度と訪れ
ません。いまだから得られるものは、ビックリするほど
たくさんあることでしょう。

http://okigunnji.com/url/72/

いま、読んでおくべき書です。

http://okigunnji.com/url/72/


きょうで、この連載は終わりです。

貴重な記事を提供くださった
堂下様に心より感謝申し上げます。



エンリケ


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https://okigunnji.com/url/7/


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【海軍式】戦う司令部の作り方(最終回)

戦うリーダーに求められるもの

堂下哲郎(元海将)
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□はじめに

 新著『海軍式 戦う司令部の作り方』(*)の予約
注文ありがとうございました。先週末に版元でサイ
ンして参りましたので、今週中にはお手元に届くと
思います。

 さて前回は、リーダーの役割として、「象徴」「決
裁者」「先輩・教育者」という3つに加えて、海軍
で見られたリーダーシップの欠点を補うため「改革
者」と「執行者」について述べました。

 新型コロナウイルスとの戦いでは緊急事態が宣言
され、いわば「有事」モードになっています。日々
の安倍総理や小池都知事をはじめとする首長のリー
ダーシップぶりが報じられていますが、皆さんはど
のように見られているでしょうか?

 今回は、連載を終わるにあたり新著の最終章で述
べた「有事の心構え」についてお話したいと思いま
す。

▼平時と有事の違い

 戦う組織においてリーダーとして成功するために
は、その人なりのリーダーシップの発揮のしかたを、
平時と有事、それぞれの場面にあわせて工夫する必
要があります。

 有事の究極の形として戦争を考えてみます。国際
法上、戦争は違法化されたとはいえ、現実世界の国
際紛争をみると、奇略、策略を巡らせて敵をだます
こと、戦闘員を殺傷することが正当なこととされま
す。平時においては悪徳、犯罪と考えられることが、
有事においては一定のルールのもとで正当化されま
すから、平時と有事では行動規範が大きく変化する
ことを前提にして行動しなければなりません。

 このような行動規範の変化に加えて、有事におい
ては時間の要素が極めて重要になります。緊急時に
は時間やタイミングの感覚を研ぎ澄まし、素早い決
断とタイムリーな行動をとることが求められます。
与えられた時間一杯を使って満点の対応策を追求す
るよりも、半分の時間で合格点の行動をとることの
ほうが、評価される場面の方が多いでしょう。孫子
は「兵は拙速を聞く」といい、マキャベリも「次善
の策の欠点を嫌うあまり、最悪の策をとることの愚
かさ」を説いています。

▼組織の動かし方

 また、組織の動かし方も変わらざるを得ません。
平時においては、組織、事業の存続や発展のために
努力するのが普通でしょうが、有事では組織の存亡
をかけてでも思い切った行動をとらざるを得ない場
面があるかもしれません。

 さらに、組織の動かし方が変われば、これにあわ
せて部下の使い方も変えざるを得ません。海軍の先
輩は戦国武将の言葉を借りて、「敵が近くなったら
兵は手荒く扱え」と教えています。これは武田信繁
という武将(武田信玄の弟、川中島の戦いで戦死)の
言葉ですが、その裏には、「平素は兵を可愛がって
おけ」という意味が込められています。自分の部下
は、平素は愛情をもって育て鍛えておくものですが、
有事においては叱咤激励し、場合によっては危地に
向かわせないと、任務を果たすことはできないと教
えているのです。

 このように、戦う組織のリーダーとしては、状況
の変化を適切に判断して、自らのリーダーシップの
「平時モード」と「有事モード」の切り替えを間違
わないように行動する能力が求められます。

▼有事の心構え

 古来、有事においてリーダーに求められる精神的
な要素として「忍耐」「勇気」「沈着」「剛毅」な
どが重視されてきました。海軍の先輩たちは、その
人なりの方法で精神面の鍛錬に取り組んだわけです
が、そのやり方についてはここでは触れません。そ
の代わりに、こうした精神面の鍛錬を経た上での
「有事の心構え」が、海軍ではいろいろと言い伝え
られていますので、最も重要と思われるものを3つ
紹介します。

1)決断して指示を与える、責任をとる

 有事におけるリーダーの心構えで最も重要なのは、
「決断して部下に指示を与え自分が責任をとること」
です。何を当たり前のことをと思われるかもしれま
せんが、海軍の先輩は実はこれが難しく、最も大事
なことだと教えています。

2)動揺するな、我慢せよ

 2つ目は「動揺するな、我慢せよ」というもので、
多くの先輩が書き残しているものです。これまた言
葉にしてみると至極当たり前のことのように思えま
す。

 上海事変で出動した上海特別陸戦隊の中隊長の体
験談です。作戦を開始すると、味方に被害が出る、
敵が増加してくる、悪い報告がどんどん入ってくる、
本当にしまったと思うことがずいぶんあり、なかな
かつらい思いをしたといいます。
 
 そんな時に上位の指揮官である大隊長から「動揺
してはいけない、ここががまんのしどころ」として
いわれたことが、「昔、武田信玄は、いっぺん命令
を出したら、護摩を焚いて祈っていたということで
ある。もちろん、命令の出し放しで、情況の変化に
応じ得られないようでは困るけれども、被害が少々
出て来たからといってすぐ動揺するようではいけな
い。指揮官には勇気が必要である」ということでし
た。一旦決心をしたら「天はわれの上にあり」とい
う信念と勇気を持てと教えられたそうです。

3)闘志を持つ

 3つ目には「闘志を持つ」ということが挙げられ
ます。これもまったく当たり前のように聞こえます。
確かに状況が有利な時に、攻勢をとって徹底的に戦
果の拡大を図ることは理屈では当然のことだと思い
ますし、それほど難しくないように思えます。しか
し、ハワイ作戦で奇襲成功後に第二撃を行なわなか
ったように、戦術的に成功を収めながら作戦として
は追撃不足のため、戦果を十分にあげられなかった
例は、実は多いといえます。まして状況が不利な時
に、士気を高めて不撓不屈、味方の戦闘力を温存し
て徐々に形勢を挽回し最終的に勝利に導いてゆくよ
うな闘志、あるいは退却を決断する勇気を持つこと
は並大抵のことではないでしょう。

 以上で連載『海軍式 戦う司令部の作り方』を終
わります。お付き合いいただきありがとうございま
した。

 新著『海軍式 戦う司令部の作り方-リーダー・
チーム・意思決定-』では前著『作戦司令部の意思
決定』で詳しく解説した意思決定の手続き、仕組み
におけるリーダーやスタッフのあり方を中心に論じ
ています。4月16日に出版されます。(*)
どうぞよろしくお願いします。


(おわり)


(どうした・てつろう)

(*)http://okigunnji.com/url/72/


●著者略歴
 
堂下哲郎(どうした てつろう)
1982年防衛大学校卒業。米ジョージタウン大学公共
政策論修士、防衛研究所一般課程修了。海上勤務と
して、護衛艦はるゆき艦長、第8護衛隊司令、護衛
艦隊司令部幕僚長、第3護衛隊群司令等。陸上勤務
として、内閣官房内閣危機管理室(初代自衛官)、
米中央軍司令部先任連絡官(初代)、統幕防衛課長
(初代)、幹部候補生学校長、防衛監察本部監察官、
自衛艦隊司令部幕僚長、舞鶴地方総監、横須賀地方
総監等を経て2016年退官(海将)。


 
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