配信日時 2020/04/16 20:00

【ライター・渡邉陽子のコラム (274)】  ― メイキングオブ防衛白書(4)―

こんにちは、エンリケです。


「メイキングオブ防衛白書」
の四回目です。


体験談やご感想もお寄せください。
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エンリケ

追伸
東京五輪は一年延期されました。
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『ライター・渡邉陽子のコラム (274)
 ―メイキングオブ防衛白書(4)―

         渡邉陽子
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こんばんは。渡邉陽子です。
4月10日付けの毎日新聞に「それ、災害派遣でしかできませんか?
 増える要請、自衛隊からも疑問」という記事がありました。ネッ
トで目にしたので全文は読めなかったのですが、新型コロナウイル
スの感染拡大に伴う「食事配膳、ごみの回収、民家の屋根へのシー
ト張り」といった災害派遣は自衛隊にしかできない仕事なのかとい
う疑問を呈する内容のようでした。
自衛隊に際涯派遣を要請するには公共性、緊急性、非代替性の3要
件すべてを満たしている必要があります。この「非代替性」があや
しい要請も見受けられるものの、「緊急性」が優先され、初動の一
定期間のみ自衛隊が対応し、その後民間に引き継ぐという流れが主
流になっているようです。
以前から気になっているのですが、国民は言わずもがな、自治体レ
ベルですら自衛隊の災害派遣における3要素をしっかり認識できて
いない、あるいは軽視しがちな人がいるように思います。


■メイキングオブ防衛白書(4)


白書の作成とは文章の執筆のみならず、表紙、本文のデザイン、そ
して校正作業、印刷業者との調整、省高官への説明、各地方防衛局
への説明など多岐にわたります。
さらに防衛省を訪れた大学のゼミに対し、昨年版の防衛白書につい
て説明するといったイレギュラーな行事も舞い込みます。

取材した年の白書の文章は、白書室の陸海空自衛官3名がおもに担
当しましたが、文章に個人の癖や個性がまったく出ていないので、
誰がどこを書いたのかはまるでわかりません。公の書物だから相当
意識して文章を平衡化しているのかと思いきや、そういうわけでは
ないそうです。
「それぞれが書く段階では、どんなに意識してもやはり文体は違っ
ています。けれど各部署に意見照会して戻ってきたときは、実に多
くの意見がばーっと書き込まれているので、それを文章に反映させ
ていくといろんなものが混じり合って、書いた人間の個性なんてな
くなるんですよ」
なるほど、納得です。

白書の顔である表紙の選定も、これまた難しいです。
「例年通り」で無難に行けば「印象が薄い」「面白味がない」と言
われ、思い切った見せ方にすれば「奇抜」「前例がない」と言われ……
陸海空のバランスも重要で、誰がどう見ても文句のつけようがない
公平、平等な扱いでなければいけません。
取材した年は、前年が過去に例のないインパクトの強い表紙だった
ため、「今年はどうしたものかと」大いに頭を悩ませることになり
ました。
その結果、複数の写真をコラージュ風にし、任務の広さを表現しよ
うということになりました。写真をピンで止めるデザインは、なん
と舞鶴からやってきたWAVEの士長の提案でした。すごいですね!

写真は前年版に比べて90点増加、より見やすい紙面を徹底しました。
K2佐は写真1点選ぶ際にも心がけていたことを教えてくれました。
「1枚でも多く国民と自衛官が一緒に写っている写真を載せたいと
思っていました。国民のみなさんが自衛隊を身近に感じるときって、
地震とか水害とか、なんらかの不幸に見舞われたときでしょう。そ
ういうとき以外でも、少しでも自衛隊を身近に感じてもらいたいと
思って」

また、白書をより読みやすく、手に取りやすいものにしようと、コ
ラムの数も54本と昨年に比べて大幅に増えました。しかも隊員の声
だけでなく警察や海上保安庁、県知事など、幅広い声を掲載しまし
た。

いくつもの会議の前には、そのつど膨大な資料を終電ぎりぎりまで
かかって用意し、台車に乗せて防衛省内の別の棟の会議室まで運び
ます。
会議が終われば資料を回収して再び白書室に持ち帰る。そんな地味
な作業も、白書室のメンバー全員が協力しあって進めていました。
I2佐によれば、制服ごとに仕事の進め方は異なるものだそうです。
「たとえば陸の場合、動くということは隊員の命に直結しているの
で、十分に考えてから動くのが普通です。けれど空の場合、じっく
り考えていては領空侵犯には対応できないから、迅速な行動が求め
られます。おのずと白書の作成の際も最初は差異がありましたが、
いい白書を作りたいという思いは一緒ですからね。これだけ毎日顔
を突き合わせているとチームワークも生まれます」

K2佐とI2佐は異動の時期が迫っていたため、後任の担当者もやっ
てきました。
ファントムパイロットのN3佐は最後の修正やチェック作業、渉外
を担当しました。
陸のH3佐は翌年の白書も担当します。この年の版では、数か所の
防衛局へおもむき白書の説明などを行ないました。
「白書室に来るまでは、もっと読みやすい白書がいいんじゃないか
と思っていました。もちろん読みやすさの追求は大事ですが、専門
家も読むものだから、それだけじゃだめなんだとここに来て知りま
した。白書に関わることは、長い自衛官生活の中で貴重な経験にな
ると思います」



(つづく)


(わたなべ・ようこ)


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□著者略歴

渡邉陽子(わたなべ・ようこ)
神奈川県出身。大学卒業後、IT企業、編集プロダクション勤
務を経て2001年よりフリーランス。2003年から月刊
『セキュリタリアン』『MAMOR』などに寄稿。
現在は自衛隊関連の情報誌などで記事を発表。メルマガ「軍事
情報」で自衛隊関連の記事を配信中。
 
2016年6月、デビュー作
『オリンピックと自衛隊 1964-2020』を刊行。

 
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